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ヴォルティアナ  作者: rimuru the jūto
対ドワーフ戦争編
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4/20

第四話「故郷」

二人の少女が邸内へ足を踏み入れると、ダチーとマラチーは揃って後ずさった。


 ルカが頭を掻きながら、少女たちと兄弟を交互に見る。


「気まずい再会だね」


 姫が拳を強く握り締める。


 もう一人の少女は、持っていた買い物袋を床へ落とした。


 ルカが小さく咳払いする。


「ダチー、マラチー。こっちが光。で、こっちが灯里姫」


 灯里へ一瞬だけ目を向ける。


「まあ、灯里のほうはもう知ってるだろうけど。紹介は一応、義務だから。以上」


 続いて、兄弟を手で示した。


「そっちにも一応。こいつらが新入り」


 灯里の瞳が白く閃く。


「ルカ。その人間どもから離れろ。何故そのように馴れ馴れしくしている」


「え? 別にいいでしょ」


 光が震える指を兄弟へ突きつけた。


「ここ、私たちの家よね……? どうして人間がいるの?」


 嫌悪を隠そうともせず、さらに声を上げる。


「小屋でも檻でも地下室でも造って、そこに閉じ込めておけばいいじゃない!」


(はいはい、始まったよ)


 ダチーは顔をしかめた。


(綺麗な奴って、なんで一番面倒な騒ぎを起こすんだ)


 マラチーが慌てて両手を前へ出す。


「お二人とも、ご迷惑はおかけしないと約束します。おとなしくして、邪魔にならないようにしますから!」


「げっ」


 光は顔を歪め、灯里の背後へ回り込んだ。


「小さいほうが喋った。私、この子たち嫌よ、灯里」


「安心しろ。母上があれほど強く言い張らなければ、今頃はすでに処理されている」


 灯里がダチーへ歩み寄り、その喉を片手で掴んだ。


「では改めて、正式に問おう」


 細い指に力が込められる。


「何故、我が国にいる。何故、私を襲った。答えろ。さもなくば、衛兵に命じて処刑させる」


 灯里の目が鋭く細まった。


「王族の命令を拒むことも、反逆の一種だ」


 マラチーが動こうとしたが、ルカが片手で制した。


「やめたほうがいいよ。王族と貴族は、必ず自分たちの望みを通す」


 ルカは淡々と続ける。


「違うのは、その過程でこっちがどれだけ痛い目を見るかだけ」


「なあ……!」


 ダチーが絞められた喉から、どうにか声を押し出す。


「この話は、もう済んだだろ! 俺たちは祖父さんを探してただけだ!」


 灯里の手を掴み、必死に引き離そうとする。


「この力がどこから来たのかも、なんで手に入ったのかも知らない。でも誓って、あんたを傷つけるつもりはなかった!」


 苦しそうに息を吸い込む。


「俺は女を殴らない! というか、誰だって殴らない! 向こうから襲ってこなければな!」


 灯里を真っ直ぐに見返す。


「悪かったよ、姫殿下! これ以上、何を言えば信じるんだ!」


 灯里の瞳が、再び白く閃いた。


「嘘の気配がする」


「そうよ、灯里。私も同感」


 光が大きく頷く。


「こいつらは有罪よ。顔を見ればわかるわ。人間に化けて偵察に送り込まれた、ドワーフの実験体かもしれない」


 灯里が僅かに首を傾ける。


「あり得るな」


 ルカがため息をついた。


「あの闘技場で、本当は何があったの、灯里? 何かにそこまで感情を出すなんて、珍しいよね」


「新との試合に割り込んできた」


 答えている間も、灯里の視線はダチーから離れない。


「規定上は、私の勝利となった。だが、あのような勝ち方は好かぬ」


 灯里の表情が険しくなる。


「ヴォルティアナの姫が、中断裁定で勝利など……」


 ダチーはその手の中でもがいた。


「でも、それのどこが俺の責任なんだよ……? 金か? 食い物か? 何を渡せば気が済むんだ?」


 灯里は答えず、ダチーを部屋の反対側へ投げ飛ばした。


 ダチーの身体は台所の調理台へ叩きつけられ、そのまま床へ落ちる。


「もうよい。終わったことだ」


 灯里は光へ顔を向けた。


「光、行くぞ」


 マラチーとルカを肩で押しのけ、階段へ向かう。


 途中で一度だけ、倒れたダチーを振り返った。


 光はマラチーを大きく避けて通り、吐く真似をしてから、友人の後を追った。


「大げさすぎるだろ……」


 ダチーは頭をさすりながら呻いた。


「言ったでしょ。あの二人は血筋が特別なんだ」


 ルカが答える。


「お前らよりも、俺よりもね」


「どうして、そう思うの?」


 マラチーが尋ねた。


「俺は平民だから。この国で育ってすらいない」


 ルカは自分の汚れた服を見下ろす。


「部隊のほかの連中は、全員が貴族か王族の類だ。でも俺は、近くの森で狼に育てられた」


 ダチーが眉を上げる。


「本当か? じゃあ、だからそんなに……」


 ルカの汚れた服を指さす。


 ルカは気にした様子もなく肩をすくめた。


「まあね。どうせまた汚れるのに、服を洗って何の意味があるの?」


「振れ幅が極端すぎるよ」


 マラチーが小声で呟く。


「この国は、進みすぎた技術と不安定すぎる人格で満ちてる」


 ルカは冷蔵庫を開け、炭酸飲料の缶を取り出した。


「この家でうまく生きるコツを教えてあげる」


 指を一本ずつ立てていく。


「女の子とは目を合わせない。見られたら頭を下げる。見られていない間に避ける。それから、居間には近づかない」


 缶を軽く振る。


「あそこは二人の共有スペースだから」


「藤井が、あの二人を抑えられないのか?」


「できるよ。でも、やらない」


「俺の首には刀を突きつけるのにな。……なるほど。筋が通ってる」


 ダチーはマラチーを脇へ引き寄せ、声を潜めた。


「あいつらの様子、こっそり探りに行かないか?」


「正気なの!?」


 マラチーが目を見開く。


「僕たちは、あの姫に二戦二敗だよ! それなのに三回戦をやる気!?」


 階段のほうを指さす。


「それに、あの友達まで強かったらどうするの!」


「光?」


 ルカが会話へ割り込む。


「あの子は……まあ、いろんな意味で厄介だね。でも能力はかなり役に立つ。欲しがっていた部隊はいくつもあったよ」


「つまり、行けば返り討ちに遭うってことか」


「まさにそう言ってる」


 ルカは調理台へ飛び乗り、炭酸飲料の缶を開けた。


「藤井が兵士をあまり取らないのには理由がある。あの人は、属性者しか引き入れないんだ」


「ルカも属性者なの?」


 マラチーが尋ねる。


「違うよ。俺はただの清掃係」


 一拍置いて、面倒そうに付け加える。


「……なわけないだろ。もちろん属性者だ。見てて」


 ルカは両腕を伸ばし、そのまま調理台から飛び降りた。


 緑色の閃光が、室内を満たす。


 光が収まったとき、そこには緑と白の毛並みを持つ一匹の狼が立っていた。


 狼となったルカは再び調理台へ跳び乗り、缶へ口を近づける。


 犬のように舌を伸ばし、中身を舐め始めた。


「なあ、ルカ?」


 ダチーが指を鳴らす。


「おい。聞こえてるか? ただの野生の狼になったのか、それとも――」


 マラチーがルカの前へ屈み込んだ。


「声は聞こえてると思う。でも、返事も反応もないね」


 ルカは顎で缶を潰し、そのまま屑籠へ放り込んだ。


 調理台から飛び降りると、再び緑色の閃光が弾ける。


 毛皮が消え、ルカは元の人間の姿へ戻った。


「ね? これが獣属性ってやつ」


 自分の身体を軽く叩く。


「野生の獣に変身できるんだ」


「すごい!」


 マラチーが思わず声を上げる。


「竜にもなれるのか?」


 ダチーが尋ねた。


「無理だけど?」


「なんだ。つまらん」


 ダチーは長椅子へ腰を下ろし、背もたれに頭を預けた。


「そもそも、なんであんたらの種族は、そこまで俺たちを嫌うんだ?」


 天井を見上げる。


「バタンゴ地区にいたときは、貧困と死と飢えしかなかった。選抜試験で生き延びられたのも、この力があったからだ」


 ルカは抽斗から一本の干し肉を取り出し、噛み始めた。


「俺たちは、そう教え込まれて育つんだよ」


 壁へ寄りかかる。


「逆境を知らない。苦労もしない。他種族より圧倒的に強い。頭を下げるのは相手であって、自分たちじゃない」


 ルカは干し肉を一度置いた。


「……少なくとも、みんなはそう信じてる」


 気怠げな目が、僅かに細くなる。


「そんな常識に疑問を挟まないほうがいい。追放されるだけだ。もっとひどい目に遭うかもしれない」


「でも、ルカはみんなと違うだろ?」


「俺だって、国境の内側で育っていたら、間違いなく同じようになってたよ」


 ルカは自嘲気味に笑った。


「平民だって人間を憎んでる。自分の怒りをぶつけられる相手が必要だからね」


 マラチーが床へ視線を落とした。


「つまり、力が偏見を生むってこと?」


 言葉を整理するように、ゆっくりと続ける。


「誰もヴォルティアナ族を力で抑えられない。だからヴォルティアナ族は、人間やほかの種族を好き放題いじめる?」


「考えてみて」


 ルカが答える。


「何でも思いどおりになって、理解するより征服することしか教わらず、他国の助けを必要としたこともなく、本当の苦難も知らない」


 干し肉をもう一口噛む。


「そんなふうに育ったら、どうなると思う?」


 ルカは階段のほうへ目を向けた。


「灯里と光は、自分たちの信念を揺るがすほどの屈辱を経験したことがない。王家も、周囲の貴族も、将軍たちのほとんどもね」


 その瞳が、不意に硬くなった。


 気怠げだった表情が消えている。


「でも、藤井は違う。それは感じる。森野将軍もそうだ」


 ルカは静かに続ける。


「森野将軍が人間だから、というだけじゃない。あの二人は、何を見てきたんだろうな。あれほど地に足をつけていられるほどの、何かを」


「そういえば、祖父さんはどうやって将軍になったんだ?」


 ダチーが尋ねる。


「あんたらがそこまで人間を憎んでるなら、その地位には就けないはずだろ」


「複雑なんだ」


 ルカは腕を組んだ。


「昔、人間への憎しみさえ押し通せなくなるほど、伝説的な何かを成し遂げたらしい」


 ダチーへ視線を戻す。


「でも、あの人は例外だ。原則じゃない」


「待て。それってつまり、あいつらだって俺たちに歩み寄れるってことか?」


「あのさ……俺は……」


 ルカは何かを言いかけ、首を横に振った。


「いや、なんでもない。喋りすぎた」


 大きく息を吐く。


「まったく。俺まで、あの人みたいなことを言い始めてる」


 腕に力を込め、身体を伸ばした。


「それで? 邸の続きを見たい? どうする? 次の訓練までは時間があるし、別に急ぐ必要もないけど」


 マラチーが勢いよく立ち上がった。


「あ、うん。研究室を見せてくれない?」


 目を輝かせながら、ルカへ詰め寄る。


「今、何か複雑な装置を造ってる? 空飛ぶホバーボードとか、超改造ジェットパックとか?」


「うわ……」


 ルカが呻いた。


「人間がヴォルティアナ族以上のオタクになれるとは、知らなかったよ」


「ごほん。僕は分析官と呼ばれたい」


「はいはい」


 ルカとマラチーが歩き去っていく。


 ダチーはその場に座ったまま、自分の両手を見つめていた。


(森野を見つけて逃げ出せたとしても、こいつらの軍事力なら、俺たちを一生追い回すには十分すぎる)


 顔を両手で覆う。


(藤井、姫、王妃、あの衛兵ども……あいつらは、この力の限界を俺よりもよく理解してる)


 胸の奥が締めつけられる。


(どうやって母さんのところへ帰る? アヤナのところへ?)


 指先に力が入った。


(こんなの望んでなかった。何一つ、望んでなかったんだ! ただ家に帰りたいだけなのに……)


 目元を押さえる。


(俺にとっての家は、母さんとアヤナのいる場所なのに。どうして帰れない?)


 ダチーは目を閉じた。


 もう何日も、まともに眠っていなかった。


 そして、一つの記憶が頭の中に蘇り始める。


     *


 ――一か月前。


「それ、スプーンで食べるものだよ、ダチー。……ふふっ、本当に変な人」


「あ? なんでだよ。ただのアイスだろ」


 ダチーは溶けかけたアイスを見下ろす。


「溶ける前に食っちまったほうがいい。じゃなきゃ、どっかの馬鹿ないじめっ子に横取りされる」


「はいはい。『強い男』さん」


 ダチーと、長い黒髪をした褐色肌の少女が、公園の長椅子に並んで座っていた。


 そこには、左右へ位置を変える摩天楼もない。


 空飛ぶ車もない。


 巨大な金属の城もない。


 代わりにあるのは、オフィスビル。木々。晴れ渡った空。そして、道路を走る普通の車。


 一機の飛行機が頭上を通り過ぎていく。


 ダチーはその姿を見上げた。


「アヤナ。お前、自分が将来何になるか、考えたことあるか?」


「わかんない。この前、レスリングに申し込んだんだ」


 アヤナは少しだけ頬を膨らませる。


「男子にはみんな笑われたけど」


 やがて口元を手で覆い、自分でも笑い始めた。


「馬鹿みたいでしょ?」


「いや。お前、いつも俺を簡単にねじ伏せるからな。馬鹿な選択だとは思わない」


 アヤナがダチーへ向き直る。


「じゃあ、もう一回勝負する? 今すぐ腕相撲!」


「本気か? ここで? 台もないだろ!」


「膝の上でやればいいよ」


 アヤナが挑発するように笑う。


「怖いなら、やらなくてもいいけど。ダチー」


「……ああ、もういい。やってやるよ」


 二人は互いの手を組み、肘を太腿の上に立てた。


 ダチーは歯を食いしばり、アヤナの腕を押し倒そうとする。


 だが次の瞬間、アヤナが一気に力を込めた。


 ダチーの腕が膝へ叩きつけられる。


 その勢いで、身体ごと長椅子の背もたれを越え、反対側へ転がり落ちた。


「わっ! ダチー!」


 アヤナが長椅子を飛び越える。


「大丈夫?」


「平気だ。こうなるのはわかってた」


 アヤナはダチーの両肩を掴んで引き起こし、そのまま強く抱き締めた。


「じゃあ、行く前に、最後にもう一回恥をかかせてくれてありがとう」


 アヤナが身体を離す。


 その明るかった表情が、静かで寂しげなものへ変わっていた。


「本当に、あの場所へ行くの?」


 ダチーを心配そうに見つめる。


「海を渡るのは危険だって、みんな言ってる。森野おじいちゃんがいい人なのは知ってるよ。でも、もう歳でしょ?」


 一度視線を落とす。


「もし、判断を間違えていたら?」


 ダチーはアヤナの腕に手を置いた。


「母さんは病気で、もう俺たちを家に置いておけない。次に頼れるのは祖父さんだ」


 穏やかな街並みを見渡す。


「俺だって、あんな遠くに住んでなければって思うよ。でも政府が、近親者じゃなきゃ駄目だって言うんだ」


 アヤナは腕を組んだ。


「そんな決まり、なくなればいいのに。……本当に馬鹿みたい」


「そういえば、母さんの顔も見に行かないとな。マラチーは今、そっちにいるはずだ」


「わかった。じゃあ、行こう」


 二人は並んで通りを歩いていった。


 郊外の家々が道の両側に並んでいる。


 その突き当たりには、控えめな桃色の一軒家。


 表札には、こう記されていた。


〈ジョーンズ家〉


 ダチーが扉を叩くと、マラチーが中から開けた。


「おかえり! アヤナとのデートはどうだった?」


「待て。誰がデートだって言った?」


 ダチーは眉をひそめる。


「別にデートじゃなかったとは言わないけど、誰がそう言った? アヤナが一緒に来てほしいっていうから、出かけただけだ」


 アヤナの拳がダチーの腕へ飛んできた。


「痛っ! なんでだよ! 今の何!?」


 振り返る。


 アヤナは顔を真っ赤にして、そっぽを向いていた。


(最高だ。また始まった)


 アヤナはマラチーを抱き締めた。


「やあ、マラチー! 馬鹿な兄のことは無視していいよ」


「いつもそうしてる。入って。母さんは中だよ」


 マラチーが二人を家の中へ案内する。


 台所では、車椅子に座った長身の女性が料理をしていた。


 右手に持ったスプーンで、鍋の中身を器用にかき混ぜている。


 扉が閉まる音を聞き、女性が振り返った。


「マラチー? そこにいるのは誰?」


「ダチーとアヤナだよ」


「ダチー! もう出発したと思ってたわ」


「まだだよ、母さん。迎えが来るのは今日の後だ」


 ダチーは母親へ歩み寄り、その身体を抱き締めた。


「森野将軍の家、本当に安全なんだよな?」


 母親の肩へ顔を寄せる。


「別に怖いわけじゃない。でも……もし俺たちが帰ってこられなかったら?」


 母親は人差し指を、ダチーの唇へそっと当てた。


「しっ。大丈夫よ。私にはわかるの」


「なんで、そう言い切れるんだ?」


 母親は少しだけ間を置いた。


「マラチー。アヤナと一緒に、戸棚から香辛料をもう少し取ってきてくれる?」


「すぐ行くよ、母さん!」


 マラチーとアヤナが台所から離れる。


 二人きりになると、母親は長男をさらに強く引き寄せた。


「楽な道ではないわ」


 ダチーの背中へ腕を回し、強く抱き締める。


「あの人たちは、あなたに地獄を見せるでしょう。でも、あなたは真実を知らなければならないの」


「真実……?」


「あなたは、自分で思っている以上に特別な子なの」


 母親の声が震え始める。


「そして、その時が来たら、私にはもう、あなたを守る力も、導く力も残っていない」


「母さん、何を言ってるんだ?」


 母親の瞳に涙が滲んだ。


「一つだけ約束して。弟を守ること」


 ダチーの頬へ手を添える。


「そして、あなた自身も面倒に巻き込まれないこと。あなたたち二人を失うなんて、私には耐えられないの」


「……わ、わかった。約束する、母さん」


「ありがとう、私の子」


 ダチーも母親を抱き締め返した。


「でも、俺は家を離れたくない。ここにいたいんだよ!」


「わかってる」


 母親は優しく、ダチーの髪を撫でる。


「あなたは帰ってこられるわ。時が来たら、すぐに」


 涙を浮かべたまま、微笑んだ。


「私はここにいる。ずっと、あなたたちを待っているから」


     *


 ダチーが目を覚ますと、ルカが顔を覗き込んでいた。


「あー……なあ」


「なんだよ」


「お前……泣いてるよ」

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