第二話「S-1部隊へようこそ」
ダチーはマラチーの腕を掴み、迫ってくる姫から逃れるように、扉へ向かって後ずさった。
だが、扉には鍵がかかっている。
それだけではない。
扉の前には剛平が立ち、その両脇を米村と衛兵たちが固めていた。
「冗談だろ」
ダチーが吐き捨てる。
「帰らせろ! いくらなんでも、もう『誤解』で済む範囲を越えてるだろ!」
マラチーは必死に玉座の間を見回した。
「窓があるはずだよ! 裏口とか、落とし戸とか、避難室とか! 出口が一つしかない玉座の間なんてある? そんなの欠陥建築だよ!」
姫が片腕を持ち上げた。
「人間の建物なら、そうかもしれぬな。だが、我らヴォルティアナ族は問題から逃げぬ」
その目が冷たく細まる。
「その場で始末する」
「俺たちは問題じゃない! 家に帰りたいだけだ! 今すぐ放してくれれば、二度とここには顔を出さない!」
姫が首を鳴らした。
「否」
ダチーは両手を投げ出し、姫を睨みつける。
「否ってなんだよ! 気に障った奴を片っ端から殺して回ってんのか?」
姫は少し考えるように、顎を指で叩いた。
「否。殺すのは人間だけだ」
姫が胸の前で両手を合わせる。
その間に、白く輝く光球が生まれた。
ダチーの目が見開かれる。
マラチーの腕を引っ掴み、二人で横へ飛んだ。
ドォンッ!
直後、玉座の間の奥にある壁が砕け散った。
(選抜試験とかいうやつでも、まったく同じことをしてきた。魔法があるのは知ってるけど、あれはいったい何なんだよ)
「動くな」
姫が命じる。
「お前たち人間は、跳ね回りすぎる」
ダチーは背後のマラチーを振り返った。
「その頭で、何か思いついたか、弟?」
「僕たちはこれから死ぬ! しかも、ものすごく痛い方法で!」
「なんだよ、それ!」
城内の照明が明滅する。
周囲を漂っていた奇妙な力が、姫の片手へ吸い込まれていった。
次に生まれた光球は、先ほどの倍近い大きさだった。
放たれた一撃が、マラチーの首を掠める。
ダチーは咄嗟に、姫と弟の間へ身体を滑り込ませた。
「もういい、知るか! 俺がこいつを引きつける。お前はその間に何か考えろ!」
ダチーが姫を睨む。
「俺の家族に手を出して、遊びで済むと思わせるかよ!」
「待って、やめ――!」
ダチーは拳を上げ、戦う構えを取った。
姫がゆっくりとその周囲を回る。
獲物を狙うような眼差しは、一瞬たりともダチーから離れない。
「女を殴るのは、あんまり好きじゃないんだ、お嬢さん」
ダチーも姫の動きに合わせ、身体の向きを変える。
「でも、こうさせたのはあんただ」
姫が掌を開く。
膨大な光が掌を包み込み、バスケットボールほどの大きさにまで膨れ上がった。
「受けた屈辱と同じだけ、苦しめて殺してやる。人間」
掌の光球が高速で回転を始める。
白い閃光が一条。
続いて、さらに二条。
ダチーは連続する閃光を避け続けた。
だが、攻撃の間隔が徐々に長くなるにつれ、その足取りも遅くなっていく。
(待てよ……こいつ、普段の攻撃より遅い)
閃光が止まる。
姫が再び両手を合わせた。
ダチーはその隙を逃さず、一気に距離を詰める。
振り抜いた拳が、姫の顔面を捉えた。
「あっ! 悪い、そんな強く殴るつもりは――!」
姫がゆっくりと頬を撫でる。
「……貴様……貴様……!」
その顔が、怒りに歪んだ。
「殺す!」
裏拳がダチーの顔面を打ち抜く。
ダチーの身体は壁へ叩きつけられ、その表面に大きな亀裂が走った。砕けた破片が、いくつも床へ転がる。
「ダチー!」
マラチーが駆け寄った。
「大丈夫?」
「ああ……死んでるはずなんだけどな。なんでか、思ったほど痛くない」
「今の威力なら、首も背骨も折れてるはずだよ! 選抜試験のときと同じだ。僕たちは、あの時点で死んでるはずなんだ!」
「ならば、その望みを叶えてやろう。今すぐにな」
姫が冷たく言い放つ。
「汚らわしい人間の手で私に触れ、私の選抜試験での初陣を台無しにし、悪魔じみた力を振り回しながら我が城にまで現れた」
姫の姿が、一瞬で消えた。
「それを何と呼ぶか、知っているか?」
一秒。
二秒。
消えたときと同じ唐突さで、姫が再び姿を現す。
その脚がマラチーの顔面を蹴り上げた。
マラチーは玉座の間の反対側まで吹き飛ばされる。
「万死に値する罪だ」
倒れているダチーへ、姫の踵が振り下ろされた。
ダチーは反射的に両腕を交差させ、どうにか受け止める。
だが、姫はそのまま踵を捻じ込んできた。
衝撃が電流のように、ダチーの全身を駆け抜ける。
(殺されかけてなきゃ、ちょっとドキドキする状況なんだけど……って、何考えてんだ! 集中しろ、ダチー!)
姫の拳が床へ振り下ろされる。
ダチーは間一髪で横へ転がった。
拳が落ちた場所には巨大な窪みが生まれ、床下の土が剥き出しになっている。
ダチーは跳ね起き、その場で左右へ小刻みに跳び続けた。
(来いよ、変な力。本当にあるなら、今だ。今、必要なんだよ!)
その瞬間。
ダチーの身体が、淡い灰色の光を帯びた。
姫の動きが止まる。
まるで、その光を見て呆然としたかのように。
「その力……何故……?」
ダチーはその隙を逃さなかった。
一気に踏み込み、姫の顔面めがけて右のジャブを振り抜く。
姫の困惑が、即座に決意へと変わった。
「――足りぬ」
姫が顔の前へ前腕を滑り込ませる。
完全な不意打ちだったはずだ。
ダチーには、彼女の腕が動くところさえ見えなかった。
だが、気づいたときには、そこにある。
ダチーの拳は、完全に受け止められていた。
拳と前腕がぶつかった瞬間、轟音が玉座の間を揺らした。
衝撃波が広がり、すでに傷ついていた壁をさらに削っていく。
(大した効果はなかった。でも、こいつはビビった)
ダチーは歯を食いしばった。
(ビビって当然だ。俺を好き勝手に踏みつけられると思うなよ)
そのまま姫の顔面へ頭突きを叩き込む。
姫が後方へよろめいた。
鼻から流れた血を指で拭う。
その瞳が、暗く沈んだ。
姫が強く床を踏み、ダチーへ詰め寄る。
ダチーは警戒しながら距離を取った。
それでも国王と王妃は、何もせず眺めているだけだった。
(本気なんだ)
マラチーは指先を噛んだ。
(あの親たち、本当に自分の娘に僕たちを殺させる気だ。このままじゃ駄目だ。ダチーを助けないと!)
ダチーが投げ飛ばされ、マラチーのすぐ隣へ落ちた。
だが、すぐに跳ね起き、そのまま横へ飛び込む。
直前まで立っていた場所に、白い光弾が突き刺さった。
マラチーの目が細くなる。
(違う。違う。違う! 僕たちは家に帰るんだ!)
マラチーは腕を銃のように突き出した。
青い閃光が室内を照らし、姫がそちらへ顔を向ける。
「金属の腕……」
マラチーの右手が変形していた。
手があった場所には、ぽっかりと砲口が開いている。その奥には、青く輝く薬室。
照準は、真っ直ぐに姫の頭へ向けられていた。
マラチーは固く目を閉じる。
そして、目を開いた瞬間――
太い光条が放たれた。
姫は軽やかにそれを飛び越え、そのままマラチーの背後へ着地する。
予告もなく、姫の蹴りがマラチーの頭へ振り抜かれた。
だが、その直前にダチーが割って入る。
両手で姫の脚を受け止めた。
「下がれ!」
――悪手だった。
姫の顎が引き締まる。
「触れるな、人間風情が!」
姫は一度脚を引き戻し、そのままダチーの額へ叩き込んだ。
さらに、白い力が炸裂する。
ダチーはマラチーのいる方向へ吹き飛ばされた。
(痛え……今の、ただの蹴りじゃなかった。こいつ、いくつ技を隠してるんだよ)
「わからないけど、動きは読めてきたよ!」
マラチーが叫ぶ。
「あの光弾は無限には撃てない! 撃った直後、力を回復させてる間を狙って!」
「よし!」
実際、姫は肩で息をしていた。
口元を拭い、乱れた呼吸を整えようとしている。
ダチーは立ち上がると、一気に姫へ突進した。
拳がその頬へ飛び込む。
打撃で姫の頭が下へ跳ねた。
だが、ゆっくりと顔を上げたとき、その瞳は白く輝いていた。
流れるような一挙動。
姫はダチーの手首を掴み、身体を回転させ、その腕を背中側へ捻り上げる。
「兄を放せ!」
マラチーが姫の手首へ砲口を向け、光条を放った。
姫も空いている手から光弾を撃ち出す。
二つの攻撃が正面からぶつかり、互いに打ち消し合った。
それでもマラチーは怯まず、もう一発を撃つ。
今度は、姫が大きく腕を引いた。
バンッ!
姫の光弾がマラチーの光条を貫き、そのまま顔面へ直撃する。
マラチーは床へ崩れ落ち、目を回した。
ダチーは拘束を振りほどこうともがく。
だが、姫は片手だけでその身体を床へ叩きつけ、背中に足を置いた。
「母上?」
王妃は見ていた。
ただ、見つめ続けていた。
ダチーは床の上で身をよじる。
マラチーも倒れたまま、何度か瞬きを繰り返していた。
やがて、王妃が片手を握る。
「もうよい。見るべきものは見た」
姫はダチーの背中から足を退け、母親のもとへ歩いていった。
衛兵たちが一斉に少年たちへ照準を戻す。
米村が二人の前に立った。
「ご命令を、陛下」
「属性者だ。やはり、私の見立てどおりだった」
王妃が静かに告げる。
「ならば、藤井将軍の部隊にこれ以上なく適している」
その一言で、部屋全体が凍りついた。
息を呑む音。
硬直した表情。
国王までもが背筋を伸ばし、身を乗り出している。
藤井将軍――?
「妃よ。本気で、その可能性に賭けるつもりか?」
「属性者が二人、目の前にいるのだ、我が君」
王妃は平然と答える。
「ここで殺せば、その力が次にどこで、いつ、誰へ移るかもわからぬ。そして我らは、一つでも多くの力を必要としている」
その視線が、倒れた兄弟へ向く。
「この者たちは、我が娘に何度か攻撃を当ててもいる。選抜試験の参加者は、誰一人として成し得なかったことだ」
穏やかだった眼差しが、一瞬で冷酷な色を帯びた。
「それに、もし足手まといとなるようなら――藤井なら容易に始末できよう」
ダチーは痛む腕を伸ばしながら、王妃を見上げた。
「待ってくれ! 軍隊になんか入りたくない! 俺は祖父さんに会うために来ただけだ!」
どうにか上体を起こす。
「そんな話、どうでもいいから家に帰してくれ!」
王妃が小さく笑った。
「ふむ。ここへ来たばかりゆえ、その口の利き方は見逃してやろう」
王妃の瞳がダチーを射抜く。
「だが――『ダチー』。この国で物事がどのように決まるのか、教えておいてやる」
瞬き一つ。
次の瞬間には、王妃がダチーの真上に立っていた。
その身体から放たれる凄まじい気配が、玉座の間を震わせる。
国王でさえ、指先の震えを抑えられずにいた。
「お前は私に仕える。そして、持てる限りの力で務めを果たす」
王妃がダチーを見下ろす。
「そうすれば、私の庇護はすべてお前のものとなる。果たさぬのなら――」
掌に、白い炎が燃え上がった。
「私より先に、藤井の手に渡ることを祈るがよい」
炎に照らされた瞳が細くなる。
「理解したか?」
ダチーの喉が鳴った。
顔から、雨のように汗が滴り落ちていく。
「は、はい、陛下!」
「よし。衛兵、この者たちを飛鳥地区へ連れて行け」
二人は儀礼も何もなく、そのまま玉座の間から引きずり出された。
王妃は自らの玉座へ戻り、重要な勝利でも収めたかのように脚を組む。
「娘よ。お前も行くがよい。藤井がお前に、新しい隊員と親睦を深めてほしいそうだ」
「ですが母上、私は城にいたいのです。飛鳥地区で暮らすなど、私の身分にはふさわしくありません」
「お前の兄も部隊と共に暮らしている。決まりは知っているな。特別扱いはせぬ」
王妃はわずかに声を和らげる。
「ただし、城を訪ねるのはいつでも構わぬ」
「……わかりました」
両親に見送られ、姫も玉座の間から去っていった。
国王がようやく、隣に座る妃へ顔を向ける。
「本当に間違いではないのか。あの小僧ども、制御するのは難しそうだが」
「馬鹿な」
王妃は鼻で笑った。
「本当にそれほど厄介な相手なら、力を持っていようがいまいが、拘束するのにもっと手間がかかっていたはずだ」
背もたれへゆっくりと身を預ける。
「危険は小さく、見返りは大きい。そういうことだ、我が君」
残っていた衛兵たちも玉座の間から退がっていった。
*
またしても、揺れる車の後部座席。
ただし今度は、同乗する男たちから、以前のような侮蔑の眼差しを向けられることはなかった。
米村は前方の席に座り、眉間に深い皺を寄せている。
やがて、その口から低い独り言が漏れた。
「何故、陛下はあのような賭けに出た。ヴォルティアナ族以外の者が属性能力を発現した例など、一件も存在せぬ」
米村は険しい顔で窓の外を見つめる。
「王妃陛下は、勝算もない賭けに出ておられるのか……?」
ダチーが身を乗り出そうとすると、衛兵が腕で進路を塞いだ。
「動くな」
その隣では、マラチーがようやく意識を取り戻していた。
「あれ……? ここ、どこ?」
「車の後部座席」
ダチーが答える。
「行き先は、さっぱりわからん」
衛兵は誰一人として答えなかった。
聞こえているのか。
おそらくは。
だが、そんなことはもうどうでもよかった。
車はただ走り続ける。
残りの道中は、静かなままだった。
一時間。
あるいは、二時間。
やがて車が止まり、衛兵が扉を開けた。
外には米村が立ち、不機嫌そうに地面を足で叩いている。
「急げ。貴様ら人間には、すでに十分な時間を奪われた」
ダチーは心の中で鼻を鳴らす。
(殺すか捕まえるかで大騒ぎしたのは、そっちだろ)
だが、口は閉じたままだった。
米村は二人を車から引きずり出し、外へ押し出す。
夜明けが、空を橙色に染め始めていた。
ダチーは周囲の光景に目を奪われ、思わず足を止める。
そこに並んでいたのは、どれも巨大な邸宅だった。
家々は高い門で区切られている。その門は、どれも十五メートル以上はある。
最も近くにある邸宅が、この区画では一番大きかった。
ほかの邸宅が白、灰、銀を組み合わせた色合いなのに対し、その一軒だけは金色と淡い青色で彩られている。
屋根の上には、大きな看板。
そこには、こう記されていた。
〈S-1邸〉
米村が正面扉を指す。
玉座の間にあったものと、よく似た金属扉だった。
「藤井将軍と、その部隊が中にいる。行け」
米村の鋭い眼差しが二人を射抜く。
「逃げようとすれば、我々の目がどこにでもあることを、すぐに思い知るだろう」
そう告げると、自らの車へ乗り込み、そのまま走り去っていった。
二人だけが、その場に取り残される。
「捕虜二人の拘束を解いて、外に放置するなんて、あまり賢くないと思うけど」
マラチーが指摘する。
「どうして、そんな危険を冒すんだろう?」
「逆らったら、いつでも自分たちで殺せると思ってるんだろ」
ダチーが答えた。
「あの綺麗な女の喋り方、見ただろ。俺たちのことなんか、少しも心配してない」
二人の顔の前を、一羽の鳥が横切った。
――いや、あれは本当に鳥だったのか?
「それに、あの扉の向こうで兵隊が待ち構えてるかもしれない。何かあったら、すぐ動けるようにしとけよ」
マラチーが身を震わせた。
「それは……考えてみると、かなりあり得るね」
巨大な扉を見上げる。
「入るの?」
「そうするしかないだろ」
二人は階段を上がり、扉の前へ立った。
ダチーが二度ノックし、少し脇へ寄って返事を待つ。
沈黙を破ったのは、一人の声だった。
気怠げで、どこか退屈そう。
その両方が混ざったような声だ。
「将軍、玄関に誰か来てるー」
「開けとけ、ルカ! まだ髪が決まってねえんだよ!」
「はいはい」
軽い電子音が鳴り、扉が壁の中へ格納されていく。
その向こうに立っていたのは、ぼさぼさの翠色の髪と、半分閉じた目を持つヴォルティアナ族の少年だった。
顔とシャツにはピザの欠片。
ズボンには炭酸飲料の染み。
その姿だけで、ダチーにはだいたいの性格が察せた。
「何か用?」
「ああ。藤井将軍のところへ行けって言われた。来なきゃ殺されるらしい」
ダチーが扉の奥を覗き込む。
「ここで合ってるか?」
「うん。合ってるよ」
少年は眠そうな顔のまま頷いた。
「でも、中へ入るには専用の通行証が必要なんだよね。通行証がないなら、入場はお断り」
「えっ?」
マラチーが声を上げる。
「そんなの、誰も言ってなかったよ!」
「運が悪かったね。王城へ戻って、将軍に入場を拒否されたって伝えてきて」
ダチーが顔を覆う。
隣では、マラチーが過呼吸を起こし始めていた。
その様子を見て、少年が吹き出す。
「冗談だって。人間ってさ、もうちょっと肩の力を抜いたほうがいいよ」
少年が扉から退く。
「入って。もし許可が出てなかったら、藤井がとっくに君らの顔を潰してるから」
ダチーが長い息を吐いた。
「……ああ、助かった」
「全然面白くなかったからね!」
マラチーが強く言い張る。
少年は肩をすくめ、邸宅の奥へ歩いていった。
兄弟も、その後へ続く。
継ぎ目のない滑らかな壁。
家具はチェスの駒のように、部屋の中を勝手に動き回っている。
隅には上階へ続く階段。
長い廊下の両側には、十を超える部屋の扉が並んでいた。
「藤井ー! 連れてきたよ」
返事はない。
「おーい、藤井? 聞こえてる? 人間だよ。中に入れたからね」
直後。
背の高い男が、階段から前方宙返りで飛び降りた。
そのまま三人の背後へ着地する。
ダチーとマラチーは、揃って飛び退いた。
男の髪も瞳も、氷のように青い。
「うわっ!」
「よく来た、よく来た!」
男は明るく二人を迎え入れた。
「不作法な出迎えで悪いな。到着を知らされたのが、ついさっきだったもんでな」
「あんた、誰だよ」
ダチーが尋ねる。
「俺がわからんのか? 参ったな」
男は額へ手を当てる。
「……ああ、そうか。お前たちは外から来たんだったな」
男が明るい笑みを浮かべた。
だが、その笑顔とは裏腹に、周囲の空気がひやりと冷える。
「俺は藤井剣士」
両腕を広げ、兄弟を歓迎する。
「S-1部隊へようこそ」




