第7話:ブラック神殿の闇
街の中央にそびえ立つ大教会は、白亜の石造りで一見すると神聖そのものだった。しかし、裏口に回ったタクトが目にしたのは、神聖さとは程遠い「労働基準法違反」の現場だった。
「おい、エルナ! 早く次の怪我人の治療をしろ! 休む暇などないぞ!」
「う、うぅ……でも、もう喉がガラガラで、声が出なくて……」
怒声を浴びせられているのは、14歳ほどの少女――エルナだった。
本来なら、神秘的な白銀の髪を持つ美しい少女のはずだった。しかし、今の彼女は完全に「すり減って」いた。
髪は手入れを怠ってパサパサに広がり、着ている法衣は汚れでボロボロ。何より痛々しいのは、その顔だった。寝不足と過労により、エメラルドグリーンの瞳の生気は消え失せ、目の下にはドス黒い「クマ」がクッキリと刻まれている。まるで、前世のデスマーチに狂うシステムエンジニアを見ているようだった。
「贅沢を言うな! お前の歌は神の恵み、それを人々に分け与えるのがお前の義務だ!」
司祭と呼ばれる肥満体の男が鞭を地面に叩きつける。エルナは恐怖に身体を震わせ、今にも泣き出しそうになりながら、枯れた声を絞り出そうとしていた。
「おいおい、そこの生臭司祭。ずいぶんと古典的なブラック労働を強いてるじゃないか」
地味な平服を着た平凡な男――タクトが、ひょっこりと生垣の影から姿を現した。




