森林演習: 三班三様の初動と環境変動
戦闘時猿のエネルギー総量が100億ジュールこえるやろ?という突込みがあったので、修正しました。この猿は危険度5なので、1億ジュールが最大値となるように設計されています。
設計へのフィードバックを受けて台本修正です。
主に迷路ロジックの明確化をして、戦術ロジックという紹介文の要素を強化しました。
TID:C01_P01_T0520_I00__07H__森林演習: 三班三様の初動と環境変動
EID:07H
タイトル:森林演習: 三班三様の初動と環境変動
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【0:メタ情報】
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■ 季節:ベイルスレイブの夏(湿度高・朝夕の寒暖差大)
■ 地形:低地(広葉樹)→ 中腹(針葉樹)→ 高所(森林限界)
■ 主題:
・環境は味方にも敵にもなる
・生存は「準備 × 分担 × 設計 × 技術」
・三班の“生存哲学”の差を描く
■ 目的:
・A班:戻れる形の思想を読者に定着させる
・B班:静かな破滅 → 泥臭い生存の流れを作る
・C班:技術で生き残る姿勢を強調
・ニーコスの“森の民”としての本領を描く
・夏季ベイルスレイブの森の危険性を提示
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【1:1日目・午前/森林限界以下の低地へドロップイン】
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● 情景
・朝光がまだらに落ちる広葉樹林
・湿度高、土の匂い濃い、鳥の声多い
・獣の足音が時折する
● A班
・ミナト:ニーコスの呼吸の浅さを観察(持久力弱いと誤認)
・ニーコス:川の音を聞き分ける
・ミナト:「戻れる形」を宣言(撤退ルート3本)
・さやか:光魔法でマーキング
・ランド:荷物運搬
● B班
・高所ルートへ
・鳥の声が減り、静寂が増える(捕食者の前兆)
● C班
・大型魔獣遭遇 → 陸斗が撃破
・おと:燻製箱制作
・新:維持魔法で温度・湿度を安定化
・朔太郎:記録
・初日で補給リスクゼロ化
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【2:A班・川沿いの低地での“戻れる形”構築】
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● ニーコス:食べられる木の実を選別
● ミナト:倒木を目印に、光の糸で帰路を固定
● ニーコスの疲労が少ないことに気づく(森の民の特性)
● A班は安定した初動
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【3:B班・高所ルート(静かな破滅の前兆)】
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● 風が通り視界は良いが、音が少ない
● はるな:捕食者の存在を察知
● 悠真:不安
● レン:冷静に警戒
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【4:C班・燻製箱×維持魔法の技術描写】
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● おと:煙道の設計、低温燻製
● 新:温度±0.2度の維持魔法
● 朔太郎:データ記録
● 陸斗:力仕事
● 技術で生存を確立
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【5:2日目・A班/標高変化と森の“顔”の変化】
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● 広葉樹 → 針葉樹へ
● 鳥の声が減り、風の音が増える
● ニーコス:森の匂いの変化を即察知
● ニーコスの疲労がゼロ(森の音で歩行効率UP)
● ミナト:植生変動の計算漏れに気づく
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【6:A班・植生の貧困化と“補給線の崩壊”】
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● 木の実がほぼ消える
● ニーコス:戻る判断を提案
● ミナト:ニーコスに身体強化を付与(魔力全振り)
● 採集範囲を拡大し、補給線を維持
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【7:A班・ミナトの泥仕合(現場の戻れる形)】
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● ニーコス:森の影から食料確保
● ミナト:退避路の再構築、夜営地の判断
● A班:補給線崩壊を回避
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【8:B班・捕食者の知恵(逆探知の森)】
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● 魔物が風の音に足音を同期
● 光・音・魔力を逆探知
● 悠真が光を点けようとする → はるな制止
● 奇襲開始
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【9:B班・奇襲 ― 死角からの“ジリジリ削り”】
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● 琉生負傷
● はるな:木々で射線が通らず苦戦
● レン:広範囲睡眠魔法(視界外にも効果)
● 体力・魔力が削られる
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【10:B班・夕方/限界 → はるなの“面”の結論】
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● 疲労・負傷・魔力枯渇
● はるな:「射線を通すために面を作る」
● 森を切り開く決断
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【11:B班・10m四方の死地(人工空間)】
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● はるな:巨木を切り倒す
● レン:不可視のスキで根を掘り返す
● 10m四方の空間が完成
● しかし遮蔽物消失 → 冷気・突風 → 魔力残渣拡散
● 悠真・琉生:体力尽きる
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【12:B班・野生のリブート(※獣化ではない)】
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● 魔物が迫る
● はるな:枝を武器に物理戦闘
● 魔物を撃破 → レンが焼いて食べる
● B班:泥臭い生存へ移行
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【13:C班・2日目午前/技術で生き残る運用】
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● 燻製箱の安定稼働
● 新の維持魔法で温度・湿度固定
● おと:低温燻製の調整
● 朔太郎:記録
● 陸斗:肉の吊り下げ
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【14:C班・2日目午後/水処理と保存技術】
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● 二段ろ過(砂→炭→布)
● 弱火長時間煮沸
● 「生き残る水は味が変わらない」
● 技術で安全を確保
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【15:A班・3日目夕方/R1:濡れた綿 → 低体温症】
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● ランドのインナーが汗で濡れる
● 夕方の冷気で急速に体温低下
● ミナト:乾燥魔法+外套で保温
● 「濡れた綿は森では死」
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【16:A班・3日目夜/C2:水処理ミス → 集団下痢】
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● さやか・ランドが腹痛
● ニーコス:水の匂いで原因を察知
● ミナト:流れる水を探しに行く
● 焦りは毒 → 冷静な再処理
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【17:A班・4日目朝/R3:靴擦れの化膿】
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● ミナトの足が腫れる
● 杖を作り、薬草で応急処置
● さやか:炎症抑制魔法
● 「戻れる形はまだ崩れてない」
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【18:A班・4日目昼/持ち味で回っている】
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● ニーコス:森の耳で夜営地判断
● ミナト:設計
● ランド:運搬
● さやか:魔力運用
● 泥魚事件(ランド→ニーコス→さやかの流れ)
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【19:A班・4日目夜/視覚狭窄と精神の機能不全】
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● 夜間の完全暗黒
● ライトの反動で視覚ゼロ
● ニーコスの“音だけで読む”能力に全員が依存
● 精神の限界が近い
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【20:次回予告(5日目の帰還へ続く)】
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● A班:最も綺麗な帰還
● B班:泥臭い生存の帰還
● C班:技術で整った帰還
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【Scene 1:1日目・午前/森林限界以下の低地へドロップイン】
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【ト書き】
朝の光が森の上から差し込む。
ブナとミズナラの葉が風で揺れ、光がまだらに地面へ落ちる。
湿度は高く、土の匂いが濃い。
鳥の声が遠くで重なり、時折、獣の足音が落ち葉を踏む。
【ト書き】
三班がそれぞれ別方向へ散開する。
森の入口で、ミナトは深く息を吸う。
ニーコスは逆に、浅く短い呼吸を繰り返している。
ミナト(観察)
(……ニーコスは呼吸が浅い。森の民だけど、持久は弱い……
最初の一時間は負荷をかけないようにしよう)
ランド
「よし、行くか。荷物は任せろ」
さやか(軽く笑って)
「ランド、最初から飛ばしすぎないでよ?
ミナトくん、この方向でいいの?」
ニーコス(耳を澄ませながら)
「……川の音、聞こえる。あっち」
ミナト
「川沿いを基軸に行く。まずは“戻れる形”を作る」
ランド
「戻れる形?」
ミナト
「帰り道が常に“見える”状態。
川沿いなら迷わないし、水もある。
最初の一時間で、撤退ルートを三つ作る」
さやか
「三つも?」
ミナト
「一つだと詰まる。二つだと事故で潰れる。
三つあれば、誰かが倒れても戻れる」
ニーコス(小さく頷く)
「……うん。森は、帰り道が命」
【ト書き】
A班は川沿いへ向けて歩き出す。
足元の土は柔らかく、踏むたびに湿った音がする。
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【Scene A-1:A班・川沿いの低地での“現場の戻れる形”構築】
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【ト書き】
川のせせらぎが近づく。
水音は一定のリズムで、森のざわめきよりも落ち着いている。
さやかとランドは川の水を水筒に入れる。
ニーコス(しゃがみ込み)
「この木の実、食べられる。甘い。
でも、こっちはダメ。苦い。毒」
ランド
「おお、すげぇな」
さやか(採集しながら)
「ニーコスちゃん、これも?」
ニーコス
「それは……うん、焼けば大丈夫」
【ト書き】
ミナトは周囲を見渡し、地形を頭の中で組み立てる。
ミナト
「ランド、あの倒木の位置、覚えておいて。
撤退ルートの“目印”にする」
ランド
「了解!」
ミナト
「さやか、魔力の残量、今どれくらい?」
さやか
「八割くらい。まだ余裕あるよ」
ミナト
「じゃあ、軽い光魔法で“川沿いの方向”をマーキングして。
帰り道の“光の糸”を作る」
さやか
「了解、やってみる」
【ト書き】
さやかが指先で光を弾く。
淡い光が木の幹に吸い込まれ、微弱な“方向の印”を残す。
ニーコス(感心して)
「……森の中で光を残すの、上手い」
ミナト
「これで、戻れる形が一つできた
(ニーコスのペースが崩れない……どころか、皆より元気だ)
(持久力がないっていうのは間違い??)」
【ト書き】
A班は安定したペースで採集と移動を続ける。
森の音は穏やかで、まだ危険の気配は薄い。
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【Scene A-2:A班・初日の場所】
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【ト書き】
川のせせらぎが聞こえる場所、平地を見つけていた。
耳を凝らせば水音が聞こえ、森は静けさに満ちていた。
ニーコス(足元を確かめながら)
「ここは良いね。葉が積もっているし、水はけも悪くない
おちている樹皮を重ねて、ベッドにしよう」
「それから、樹液をいぶして虫よけにもしよ」
「あと、あと……」
ミナト
「ニーコス、ありがとう。急がなくていいからゆっくり教えてくれ」
ランド
「すげぇな……森の人」
さやか
「ニーコスちゃん、私に出来る事も教えてね」
ニーコス
「うん、まず、樹皮を集めてきて敷き詰めると、ベッドになるよ」
ミナト
「うん」
ニーコス
「樹液を集めていぶすと、虫よけにもなる」
ミナト
「うん」
ニーコス
「落ちている太めの倒木とか枝……うん、ランドそれくらい、を集めて井桁を組むと寝やすいよ」
ランドは二メートルくらいの木の枝を見せる
ミナト
「うん、ニーコスそれくらいかな?」
ニーコス
「うん、寝袋があるなら、これくらいかな」
ミナト
「ありがとう、じゃあ、ランド、木の枝を集めよう
さやか、水炊きと樹液をいぶす準備をしておいてほしい
僕は、樹液と樹皮を集めに行く。
樹液はたぶん、5日間ずっとあった方がいいよね?」
ニーコス
「うん、そうだね、じゃ、私は食べれそうなものをできるだけ集めてくる」
ランド
「おっけ!行ってくるわ!」
さやか(腕をまくって)
「よっし、やるわね!」
【ト書き】
ミナトは周囲を見渡し、腕をあげて合図して、自分も樹液と樹皮を探しに行く。
【ト書き】
集められた樹皮を4人分敷き詰め、その上に寝袋を乗せ、ランドが持ってきた倒木と
枝を魔法で切り刻み、井桁を組んで、それに樹液をいぶした煙を掛けていった。
ニーコス(感心して)
「……うん、これなら、ここを拠点にずっと居られるね」
ミナト
「よし!」
【ト書き】
A班は初日の寝床を確保でき、皆がやった気分になれた。
森の冷気がじわじわと迫る中、確かな一歩に皆の胸が躍っていた
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【Scene B-1:B班・高所ルートへ(静かな破滅の前兆)】
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【ト書き】
B班は斜面を登っていく。
風が通り、視界が開ける。
だが、森の音が少ない。鳥の声が減り、静寂が増える。
悠真(不安げ)
「……音が少ない」
はるな(淡々と)
「捕食者がいると、鳥は鳴かない」
琉生
「おいおい、縁起でもねぇな」
レン(冷静)
「でも、事実だね。慎重に行こう」
【ト書き】
はるなの呼吸は深く、悠真は浅い。
風が木々を揺らすたび、枝の影が揺れ、何かが潜んでいるように見える。
稜線にたどり着いたとき、坂道が緩やかになり、メンバー達の息が軽くなっていく。
悠真
「川はあっちだった、チェックポイントは向う……ミナト達は今日は奥まで行かないって言ってた
うん、僕らもこのあたりにしようか」
レン
「悪くないんじゃないのか?なんだか、ちょっと湿っぽいが、魔法で乾かすか」
【ト書き】
小域除水魔法をレンが唱え、あたり一帯から水分が飛んでいく。
カサカサになった広葉樹の葉は一転してふかふかにわかる。
琉生
「すげー、ふかふかになった、これなら寝心地いいんじゃないのか?」
はるな
「……」
悠真
「水を汲んで焚いてろ過しておこう。あと、初日は食料が見つかってない」
「みんな保存食ある?」
レン
「そいつは大丈夫だ」
【ト書き】
4人とも持参した保存食を確かめた。
レン
「じゃあ、俺、さっき通った斜面を戻って川を探してくるわ」
琉生
「レン、俺も行くよ、悠真とはるなちゃんはここで待ってて」
【ト書き】
琉生がカッコつけて言って、レンの後を追って水を汲みに行く。
悠真
「頼むねー」
「じゃあ、はるなちゃん、寝床の用意しようか?」
はるな
「まって……何か、居る」
悠真
「え?」
【ト書き】
悠真は索敵の為に探知魔法を使う。
2体、木の上から何かが見ている。
慌てて検知した方向を悠真が見る。
悠真
「あっち……?なんだろ、くそ良く見えない」
はるな
「行ってみる。多分そこまで危なくない。待ってて」
【ト書き】
はるなは、細剣を抜き、腰を落とした後、跳ねあがり、木々を交互に
跳ねわたりながら上に上がっていく。
悠真
「……まぁわかってたけど、凄すぎ」
【ト書き】
生暖かい風が吹いた後、木々が揺れる音がして、
ざざっと、はるなが上から降りてきた。
はるな
「魔物じゃない感じ、獣だと思う」
串刺しにした膜を持った獣を見せる。
悠真
「んー、多分、ムササビだよこれ」
はるな
「そ……」
【ト書き】
レンと琉生が水を汲んで戻ってきた。
レン
「おーい、水汲んできたぞ」
悠真
「ありがとう、さっそく沸かしてろ過しようか」
「今日はこのあたりで一旦休もう」
【ト書き】
ムササビの死体を見て、うわっと驚いていたがレンは動じずに
寝袋を広げていた。
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【Scene C-1:C班・幸運の大型魔獣遭遇】
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【ト書き】
低地の奥。C班は今度桜都の方針に沿って、チェックポイントを目指すのは明日、今日は拠点を決めるそれも高地に上がらない
としていた。
低地で朔太郎がけもの道を見つけた
朔太郎
「これ、何かが通った道だよね。人にしては、なんか違うけど間違いなく」
新
「もしかして、獣道ってやつじゃないか?、これ、蹄の足跡じゃ?新しいぞ」
おと
「捕まえられないかな……蹄もちならきっと食べられるよ」
陸斗
「よっしゃ、そうしようぜ」
新
「じゃぁ、まず気配を消して、罠を張ろうか」
【ト書き】
新が人間の痕跡を消すための、隠蔽魔法を掛けていく
朔太郎
「罠って……餌?木の実とかかなでもないよ」
おと
「ん……任せて、疑似餌の魔法知ってるから」
陸斗
「おい、都合いいな、何で知ってるんだ」
【ト書き】
陸斗が笑いながら聞く
おと
「……戦場で人を死なせないため、獣を取る方法、
調べたとき、これならできると思ったんだよ」
新
「おとちゃん、優秀すぎる」
おと
「……セットで罠魔法も覚えたけど、虎バサミがないと使えないんだ……」
朔太郎
「それ、道具の強化系?」
おと
「うん、虎バサミの強化系」
朔太郎
「じゃあさ、これは?ロープで輪を作る。足を縛れるよね?」
新
「いけるぜ、ロープを操るなら俺もできる。張ろう」
【ト書き】
低地の奥。湿った土の匂いが濃くなる。
疑似餌の魔法を維持するおと。額に薄く汗が浮かぶ。
突然、茂みが大きく揺れ、獣の唸り声が響く。
陸斗
「来たッ!!」
新
「縛ったる!!!」
【ト書き】
巨大な鹿型の獣の前足が吊り上がる。
陸斗が前に出て、鹿型の大獣を殴り倒す。
地面が震えるほどの衝撃。
新
「でっか……!」
朔太郎(冷静に)
「……肉だ。保存できれば、五日間の補給が消える」
おと(工具箱を開く)
「やる。燻製箱、作る」
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【Scene C-2:C班・燻製箱×維持魔法の技術描写】
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【ト書き】
おとは木材を組み、金具を固定し、煙の流れを調整する。
新は魔法陣を描き、煙の温度と湿度を一定に保つ。
おと
「煙は低温で長時間。
新、魔法で“温度の揺れ”を抑えて」
新
「了解。維持魔法、展開!」
【ト書き】
魔法陣が淡く光り、燻製箱の内部が安定する。
朔太郎(記録しながら)
「……これで、初日の肉が最終日まで持つ……」
陸斗
「すげぇ……!」
おと(微笑む)
「これが“工夫で生き残る”ってこと」
【ト書き】
C班は初日で十分すぎる食料を手に入れる。
おと
「ね、寝床作るの手伝って」
「陸斗君、木を切り出してすのこ作れる?」
「朔太郎君、新君、川までの道を確認してもらえる?水源を押さえておきたいんだ
そして、帰りに樹皮を集めてきてほしい。すのこの下に引くと安定すると思う」
陸斗
「任せとけ、切り出すための鉈も持ってきているしな」
朔太郎と新
「分かったよ、行ってくる。水も汲んでくるよ」
おと
「お願いね、私は、炭焼きの準備しておく、使うのは明日以降でいいと思うけど、二段階ろ過を作る準備しときたいな」
【ト書き】
C班は初日で十分すぎる食料を手に入れ、おとの指示によって
寝床の確保をはかる。
持参した鉄缶に詰め込んだ木片を焚き火にかけて、4人周りを囲んでいた。
陸斗
「わるい、すのこあんまり平に出来んかったな」
新
「いや、これもなかなかいいよ。とくに沈み込まないのがいいな」
朔太郎
「明日一緒に削りだそう。快適にできるし。今は直接土に寝袋が触れないのがいい」
おと
「うん、陸斗君ありがとうね。鹿もおかげで……」
【ト書き】
おとは疲れたのかそのまま寝息を立て始めた。
新は、煙の出なくなった缶を火から外し、中が炭になったのを見ていた。
そのまま冷えてくれれば完成だとつぶやいてから眠りについた。
そしてほどなくして、みんな眠りについた。
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Scene K-1:1日目・夜 演習場麓のロッジ
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【ト書き】
陽子は持ってきた荷物を広げながら、日程の確認をしていた。
光
「ここで、過ごすのか……」
【ト書き】
後ろから声をかけてきたのは、同僚の光だった。
陽子
「そうね、四泊五日、よろしくお願いします。光さん」
光
「こちらこそな。ところで酒は持ってきたか?」
陽子
「……もちろん、ないともたないわ」
【ト書き】
ニヤリと光は笑い、アルコールの入っていない発泡酒を取り出す。
光
「酔えねーが、一杯やるか?」
陽子
「言わなくてもわかってしまうのが、この仕事の嫌なところね」
【ト書き】
陽子は短く息を吐いて、光が差し出すコップを手に取り
一気に飲み干す。のど越しは酒だ、しかし、酔わない。
状態異常無効とコップに書かれている。
が、別に魔法陣でも何でもない。ただのロゴだ。
いや、戒めか。ここにきている者で状態異常になんてかかってはダメだよという。
光
「この時期は、冷えが弱いから助かるよな」
陽子
「夜の冷えが答える年になってきたもんね」
光
「そぉおなんだよ。最近、ビックリするぐらい体力が落ちててな。そろそろ助けてくれよ」
陽子
「……真智に言うよ?」
光
「まて、誤解してないか?もうアラフォーを働かせないでくれって意味だ」
陽子
「……どうだか、とりあえず、半径0.5メートル以内に近づいたら、焼くか刻むか凍てつかせるから、全部が良ければ言って」
光
「マジでもう少し大人を労わってほしいわ……布団は出してベッド作っておいたぞ」
【ト書き】
光は、陽子用の部屋を指さして言う。
陽子
「ふうん……一つ教えて、なんで、今回真智が選ばれなかったの?光さんでしょ?推薦したの」
光
「はぁ……その話は、また今度してやるよ。今日は疲れたろ?ここまでの移動も楽じゃなかったろうし
こいつも差し入れだ。んで、ゆっくり休んでくれ、俺はもう寝るよ」
【ト書き】
光は、陽子の前にノンアル発泡酒の瓶を置き、ついでにお菓子とつまみも置いておいた。
陽子
「……あ、おいしい」
【ト書き】
陽子はつまみを食べて、発泡酒を飲んで、一息ついたあと、自分の部屋に入ってベッドを確認した。
陽子
「構築系か、相変わらずこういうの上手だよね。」
【ト書き】
ふかふかのベッドにもぐりこんで、丸まると眠気が襲ってきてそのまま寝てしまった。
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【Scene A-2:2日目・午前/標高変化と森の“顔”の変化】
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【ト書き】
朝。森の湿度は昨日より高く、空気が重い。
川沿いの低地を離れ、A班はゆっくりと斜面を登っていく。
ブナの葉は減り、針葉樹が増える。
鳥の声が少なくなり、代わりに風が枝を擦る音が増える。
地面は乾き、落ち葉のクッションが薄くなる。
ニーコス(呼吸が軽い)
「……森の匂いが変わった。
ここから上は“針の森”。木の実は少ない」
【ト書き】
ニーコスの呼吸は浅いが、軽い。
疲労の色がまったくない。
むしろ、森が変わるほど彼女の動きは滑らかになる。
ランド(息が少し荒い)
「ニーコス……お前、なんでそんな元気なんだ……?」
ニーコス(首を傾げて)
「森だからかな、みんな、深く踏みすぎ。
それは疲れる歩き方。
……あと、みんなより“森の音”が聞こえて、崩れない」
【ト書き】
ニーコスは耳を澄ませる。
遠くで小動物が走る音、木の皮を剥ぐ音、風の流れ。
すべてが“地図”のように聞こえている。
さやか(感心して)
「……すごい。私、何も聞こえないよ」
ミナト(観察)
(ニーコスは疲労が少ない。動きを見ていてはっきり分かった。
重心移動が上手い、バランスを取るための筋肉の張が少ない。
すぐに芯が立っている。というか、芯が立ったまま飛び跳ねているように見える。
これ、慣れだけじゃないな、体がそう出来ているのか……
でも、採集の“対象”が減ると、彼女の強みが消える……
ここからが本番だ)
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【Scene A-3:植生の貧困化と“補給線の崩壊”】
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【ト書き】
チェックポイントに近づくにつれ
標高があがり、木の実がほぼ消える。
地面には針葉樹の葉が積もり、食べられるものが見当たらない。
ニーコス(眉を寄せる)
「……ここは、ないね。
昨日までの森と違う。
ここでは、木の実はほとんど……ない」
ランド
「マジかよ……!」
さやか(焦り)
「え、じゃあ……今日の食料は?」
ニーコス(静かに)
「……探せば、ある。
でも、ここは時間がかかる。
出来れば戻った方がいい」
【ト書き】
ニーコスの呼吸は軽いが、表情は険しい。
“森の民”としての直感が危険を告げている。
ミナト(小声)
「……そうか」
さやか
「え?」
ミナト
(小さく)
「標高による植生変動……計算漏れ。
この高度だと、木の実は急激に減る。
ニーコスの採集能力が“環境に殺される”」
ランド
「じゃあどうすんだよ!」
ミナト(決断)
「ニーコス、身体強化をかける。
採集の“範囲”を広げる。
俺の魔力でニーコスを回す」
ニーコス(驚き)
「えっ……でも、ミナトが倒れたら……」
ミナト
「倒れない。
“戻れる形”を維持するために、今はお前が軸だ」
【ト書き】
ミナトが手をかざす。
淡い風の魔法がニーコスの脚と肺に流れ込む。
ニーコス(息がさらに軽くなる)
「……すごい……身体が、森と同じ速さで動く……!」
ランド
「おおっ……!」
さやか(安心の息)
「これで……今日の食料、なんとかなる?」
ミナト
「まだ分からない。
でも、“詰まり”は回避できる」
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【Scene A-4:ミナトの泥仕合(現場の戻れる形)】
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【ト書き】
ニーコスが森の奥へ走る。
その動きは、まるで森の影のように軽い。
ランド(見惚れて)
「……速っ……!」
さやか
「森の人って、こんなに……」
【ト書き】
ミナトは地形を見渡し、即座に“戻れる形”を現場で構築する。
ミナト
「ランド、あの倒木を“第一退避路”にする。
さやか、光の印を二つ追加して。
ニーコスが戻るルートを“一本道”にする」
ランド
「了解!」
さやか
「分かった!」
【ト書き】
ミナトは地面の土を掬い、匂いを嗅ぐ。
ミナト(独白)
「……湿度が高い。
この辺りは夜になると冷える。
やはり、昨日の場所まで戻ろう」
【ト書き】
ニーコスが戻ってくる。
手には木の実、根菜、小さなキノコ。
ニーコス(息が軽い)
「……あった。
森の“影”の方に、少しだけ」
ランド
「すげぇ……!」
さやか
「ニーコス、ありがとう!」
ミナト(微笑む)
「……助かった。
これで今日の“戻れる形”は維持できる」
【ト書き】
A班は、ニーコスの動きで“補給線の崩壊”を回避した。
チェックポイントに班印となる石を置く。
森の奥では、風が枝を揺らし、
遠くで獣の低い唸り声が響く。
さやか
「んー……」
ランド
「どした?」
さやか
「なんかお腹おかしい」
ランド
「木のみ、食い過ぎじゃね?
繊維ものらしいから、腹ビックリしてんじゃ?」
さやか
「かも……」
2日目の本当の地獄は、まだ始まっていない。
────────────────────────────────
Scene K-1:2日目・午前 演習場麓のロッジ
────────────────────────────────
【ト書き】
光は薪割りをしながら山を見上げる。
光
「初日はなんとかってところかな」
【ト書き】
呟いた後、まだ割らないといけない薪の束を見てため息をついていた。
【ト書き】
朝食の支度を終えて、陽子は隠蔽化を施した探知魔法を使い、一年生たちの居所を探る。
見つけた生徒たちの位置を地図へ書き込んでいく。
陽子
「へー、今度たちは、もうチェックポイントの側か、
位置固定するのかしら、何か手に入れたみたい」
陽子
「守屋の班も位置固定?
でもそこって、川にもそんなに近くないし、
様子見ってことかしら? それとも、慣れてない?
衛生チェックが必要かしら」
陽子
「水理班は、行儀よく位置取りしているわね。
ニーコスね、森の人か……
各班、チェックポイントの経過は良好っと」
【ト書き】
扉が開く。
光
「終わったぞー」
【ト書き】
光がロッジへ入ってくる。
光
「あいつら、動き出してるか?」
陽子
「それぞれって感じ。
人員が多いとこうなるのね。
私の時は一班しかなかったから、よくわからなかったけど」
光
「色が出てたからな。
それに、他班協力禁止がきいてるだろ、
これがルールになかったら、みんな集まってやってたんだろうよ」
陽子
「光さんの時も?」
光
「二班、別々だったな。
結局、木の実・キノコ・魚集め、水確保ってことで、
動線は違っても、やってたことは同じだった」
陽子
「そうよね……
そうなるわよね」
光
「飯、いただくよ」
陽子
「どうぞ」
【ト書き】
朝日が差しこむロッジに、冷めたパンとバターの香りが広がっていた。
陽子
「んー……光さん、顔艶が昨日よりいい?」
光
「んあぁ?」
パンを飲み込んだ
「そうか?そうかもしれんな」
陽子
「真智に言ってもいい?」
光
「何を?」
ボケッと聞き返す
陽子
「構築系の魔法を使って、何やら艶々になることしているって」
「朝、みょーにさっぱりしてるって」
光
「……おい、それ、悪意がないか?」
陽子
「じゃ、真相を語って?」
光
「……はぁ……」
光は部屋に戻り、筒状の道具を持ってくる。
「こいつだよ、魔力通してみ」
陽子は渡された筒に魔力を通してみると筒の先から湿った温風が出てきた。
陽子
「これって?あれ、なんか気持ちいい……」
陽子は筒から出る湿った温風を顔に当てながら目を細める。
光
「だろ?湿温風機を作ってみたんだ。寝る前と起きてから使うとなんかいい感じなんだよ」
陽子
「……こういうので釣るの狡いと思うけど?」
光
「釣られるのはお前くらいだよ、まったく」
陽子
「真智は?」
光
「あいつなんか用事があるって言ってな」
陽子
「用事?でもじゃ、なんで私?」
光
「はぁ、聞いてないんだよな、その反応だと」
陽子
「知らない、あ、気持ちいい……」
光
目をぎゅっとつむって、眉間に手を当てた後
「ま、しゃあないか、話す」
陽子は目を細めて、湿温風を感じていた。
光
「真智がお前を指名しろっていったんだよ」
陽子
「ッ!?」
「なんで、私?」
光
「そこまでは知らん、が、ここんところ恒例だったからな、一緒にやるか?って聞いたら、用事があるから陽子にしてって言われたんだよ」
「理由はこっちが聞きたいよ」
陽子
「ふーん……」
陽子は光の側に立つ。
光
「ちょ、お前から近づいて、ぶっぱなさいよな?」
陽子
「何を?」
上目遣いで光を見上げる。
光
「ま、撃ってこないならいいわ、で、この話は終わりだ」
陽子
「そ、じゃ、この演習が終わったら」
陽子は離れて、再び、短い探知魔法を飛ばし始める。
光
一息吐いて、痛覚麻痺させられていないか全身を手で調べている
「何がだ?」
風の刃も、氷も火もついていないことが分かり安心して聞き返す。
陽子はすでに仕事に入っており、集中していた。
光はため息をついて、この演習用にロッジに仕掛けた構築魔法が壊れていないか
点検するために動き出はじめた。
────────────────────────────────
【Scene B-2:2日目・午前/高所ルートの静寂(前兆)】
────────────────────────────────
【ト書き】
朝、レンが起きて、続いて琉生が起きて離れていった
レン
「く、なんだこれ、何かあるって思ったら……」
琉生
「あ、レンもか?これなんだろ、くそくっついてて取れない」
レン
「解らん、痛くないが張り付いていて気持ち悪いな」
琉生
「うん、どうすればいいんだ?」
レン
「はぎ取るか……ぬめってて気持ち悪い、くっつきやがる」
【ト書き】
レンが自分の足にへばり付く小指ほどの大きさのぬめった生き物を
はぎ取ろうとつまんだ時、小さく声を上げる。
レン
「いてぇ、触ったとたん急に痛みがでた、いてぇ……くっそ!」
【ト書き】
レンは思わず手をかざし、火魔法を起こす。
がしばらくたって、焼くより凍結させるべきか?と手のひらの魔法を凍結魔法に変えようとしたとき
悠真の声が聞こえてきた。
悠真
「レン!、何しようとしている?なんで魔法を?」
レン
「いてぇんだよ、こいつら剥がしてぇ」
凍結魔法をヒルにぶつけようとしたとき、悠真が止める
悠真
「待て、それヒルだ、氷じゃない、あ、違う火でもない」
レンは凍結魔法から火焔魔法に器用に切り替えてぶつけようとしているのを止める。
琉生
「ゆうまぁ、これどうすればいいんだよ~」
悠真
「ヒルはがしは、塩か酒だ、塩出せるか?持ってきたやつでもいい」
レン
「塩?酒?そんなのねぇ……あーくそ痛い、マジで痛い」
悠真
「分かった、ちょっと待ってろ」
レンの側により、悠真はレンに張り付くヒルの上で手を握る。
悠真の手から白い靄が吐き出されて、握りこんだ手のひらから
粉状のものがこぼれだしてヒルにかかった。
ヒルは悶えだし、ぽろぽろとレンの足から剥がれ落ちていった。
悠真
「琉生も」
琉生も同様に悠真の手から零れ落ちる白い粉を掛けられたヒルを剥がしていった。
悠真
「はぁはぁ……演習用に魔法で作れるものは極力魔法でって思って習得しておいてよかった」
レン
「すまん悠真」
レンは血が垂れる脚に治癒魔法をかけながら、悠真に言う。
琉生
「ほんとに、悠真ありがとう」
【ト書き】
唐突にギィイインと金属音が鳴り響いた。
レンが即座に探知魔法を飛ばす。
はるなが、何かと戦っている。魔物だ。
レン
「あっちだ、はるなが魔物と戦っている」
琉生と悠真は立ち上がる。が悠真はふらっと蹲った。
悠真
「ごめん、ちょっと立てない」
琉生
「レン、どうする」
レン
「ちっ、琉生、悠真を見ててくれ、俺ははるなの方に行く」
琉生
「分かった」
レンは、身体強化魔法をかけて、音のする方に走っていった。
【ト書き】
ギィイイン、ギィイインと金属音が鳴る場所にレンが現れる。
はるなが、飛び掛かってくる魔物を細剣で串刺しにしていた。
肩で息をしている。
はるな
「ふーふー……」
レン
「はるな、大丈夫か?」
レンは治癒魔法をはるなに放った。
はるなは、少し肩を下げてレンを見る。
はるな
「レン、ありがとう、大丈夫、3匹」
レン
「みたいだな」
足元に転がる3体のトカゲ様の魔物の死体をレンは見ていた。
悠真を肩で担いで、琉生が現れる。
琉生
「お、倒したのか?」
レン
「はるなちゃんが全部な」
琉生
「やるね!悠真まだ立てないか?」
悠真
「ごめん、もう少し」
はるな
「悠真どうしたの?」
レン
「俺と琉生がヒルに食われてな、悠真はそれを剥がすために無理して魔法を使ったんだ」
はるな
「そ、じゃ、今はみんな無事?」
レン
「ま、俺はな」
琉生
「俺も大丈夫だよ」
【ト書き】
琉生のズボンのすそに血の染みが出来ていることに誰も気づいていない。
レンとはるなは、魔物がいないことを確認した後、へたり込んでいる悠真が立てるようになるまで、休むことにした。
悠真
「いける、行こう」
悠真は回復し立ち上がり声を掛ける。
3人が立ち上がり、歩き出す。
琉生の靴に血の跡がついていた。
【ト書き】
チェックポイントに石を置いたB班は斜面を登っていた。
針葉樹の森は薄暗く、風が枝を擦る音が絶えない。
鳥の声はほとんど消え、代わりに“沈黙”が森を満たす。
悠真(息を潜めて)
「……音が少ない」
はるな(淡々と)
「何かが潜んでいる」
琉生(冗談めかして)
「獲物か?……」
レン(冷静)
「ならいいが、慎重に行こう」
【ト書き】
はるなの呼吸は深く、悠真は浅い。
風が木々を揺らすたび、影が揺れ、何かが潜んでいるように見える。
悠真(内心)
(……嫌な静けさだ……)
────────────────────────────────
【Scene B-3:捕食者の知恵 ― “逆探知”の森】
────────────────────────────────
【ト書き】
森の奥で、何かが“カサッ”と動く。
だが、姿は見えない。
風の音と同じリズムで足音が混ざる。
琉生が唐突に倒れる。
レン
「風の音と同期してる……琉生?」
はるな(目を細めて)
「……魔物。
“音を隠す”知恵を持ってる」
【ト書き】
悠真が魔法光を点けようとする。
はるな(即座に手を掴む)
「ダメ。光は“逆探知”される」
悠真
「逆……?」
はるな
「光と音は、森の捕食者にとって“位置情報”になる。
詠唱の光、魔力の揺れ……全部、餌の場所」
【ト書き】
その瞬間、右側の茂みが“バサッ”と揺れる。
レン
「来るぞッ!!」
────────────────────────────────
【Scene B-4:奇襲 ― 死角からの“ジリジリ削り”】
────────────────────────────────
【ト書き】
魔物が死角から飛び出す。
木々の影を利用し、光の届かない角度から襲いかかる。
琉生
「うあぁ、あううあ」
レン
「後ろ! はるな、右!」
はるな
「……っ、木が邪魔……射線が通らない……!」
【ト書き】
はるなのレイピアは細い。
だが、木々の密度が高すぎて“直線”が作れない。
悠真
「どうすれば……!」
【ト書き】
魔物は“風の音”に足音を合わせ、
“木の影”に体を隠し、
“光の反射”を避けて動く。
まるで、森そのものが敵になったようだった。
レン
「……このままじゃ、削られるだけだ……!」
レン
「ちょっと派手なのいくぞ!」
【ト書き】
レンの手が黄色い光を纏う。
レン
「眠れ!」
【ト書き】
レンの声と同時に、メンバーを中心とした半径三十メートルの範囲に黄色い靄が走り抜ける。
ガサガサッ
【ト書き】
小さな何かが倒れる音がする。
レン
「くそ……視界に入ってないのを眠らせるのは……骨が折れる」
【ト書き】
レンがその場に座り込み、倒れている琉生を見て青ざめる。
レン
「ぐっ、悠真!」
「くそ声がかすれる」
【ト書き】
レンはなけなしの魔力を琉生にそそいで治療を優先し、倒れこんだ。
【ト書き】
はるなと悠真は、音が鳴った方へ向かい、魔物にとどめを刺していった。
────────────────────────────────
【Scene B-5:夕方/限界 ― はるなの“結論”】
────────────────────────────────
【ト書き】
夕方。気温が下がり、風が冷たくなる。
B班は負傷し、魔力も削られ、疲労が蓄積している。
悠真
「……これ、風走トカゲか」
はるな
「二人が来ない……」
悠真
「……風走トカゲ、トカゲが変性したっていう魔物、霧散しない」
はるな
「ねぇ!二人が来ないよ!」
悠真
「え?はるなちゃん?」
はるな
「何かあったのかも、レンはともかく琉生は?」
悠真
「戻ろう」
はるな
「ん」
【ト書き】
眠り堕ちた風走りトカゲを始末しながら、二人はレンと琉生のいたところに戻る。
そこには、真っ白な顔で倒れこむ二人がいた。
特に琉生は足元に血が広がっている。
悠真
「琉生!」
悠真は慌てて、琉生に治癒魔法をかける。
掛けている途中で糸が切れたように倒れこむ。
はるな
「悠真君!、レン君、琉生君、みんな……」
【ト書き】
はるなの脳裏に失格、落第という文字が浮かぶ。
いやだ、振り払うように首を横に振って、悠真から見ていく。
はるな
「(これは、魔力きれ……少しだけ呼吸を楽にして)」
はるなは悠真の体を抱きかかえて、息が詰まりにくくなるように横たわらせる。
次に琉生の側に行く。
はるな
「(ひどい、出血が何が?ごめんね琉生)」
はるなは琉生のズボンを短剣で切り裂いて、出血元を探す。
脛、脹脛に傷跡がある。一応出血は、止まっているようだ。
が、琉生の呼吸は浅く、瞼が震えている。
はるな
「(だめ、これ、治癒魔法じゃないと、でも私使えない。どうしよ、死なせちゃう)」
はるなの目から涙がこぼれる。悔しい。
レン
「う、、、っく」
レンが目を覚まし頭を手で叩きながら起き上がる。
レン
「はるなちゃん、ちょっとどいて」
はるなは、びくっとして、体をどける。
レンは全身を緑色に輝かせて、琉生に触れる。
琉生の体が緑の光に包まれていく。少しずつ琉生の顔色が戻る。
レン
「っはぁ……」
レンは肩で息をしながら、はるなの肩にを置いて体重をかける。
レン
「すまん、ちょっと肩貸してくれ」
はるなは、肩に置かれたレンの手がずれてしまわないように体幹を立てて、その手に手を重ね支えた。
はるな
「大丈夫?」
レン
「悪い、魔力切れの酔いだ、もう大丈夫」
レンが立ち上がる。
「しっかし、どうするよ」
【ト書き】
はるなは静かに立ち上がる。
目は冷たく、呼吸は深い。
はるな
「……射線を通すために“面”を作る。行ってくる」
レン
「面……?」
はるな
「森を“切り開く”。魔物が来ても反応が遅れる。木が邪魔、だから、全部倒す」
【ト書き】
はるなが細剣を構える。
刃に燃えるような光が宿り、空気が震える。
────────────────────────────────
【Scene B-6:10メートル四方の死地 ― “人工空間”の構築】
────────────────────────────────
【ト書き】
はるなが踏み込む。
巨木の根元へ刃を滑らせ、魔力を叩き込む。
“バギィィィィン!!”
【ト書き】
巨木が横倒しになり、地面が揺れる。
レン
「うおっ……!」
「くっそ、仕方ねぇ、俺もやる!」
【ト書き】
レンは再び回復したてのなけなしの魔力を絞り
手から不可視の巨大なスキを生む。
雑に作り出したスキを使い、木を根から掘り返す。
はるな
「……了解」
【ト書き】
はるなは、目を見開いて、口角をあげて、細剣で森の木々を切り刻み始めた。
一本、一本、はるなの目の前を白線が通るたびに、木が倒れる。
倒れた木をレンがスキを使って、積み上げていく。
次第に、二本、三本と巨木が倒れ、
森の中に“10メートル四方の空間”が生まれる。
悠真
「……すご……」
【ト書き】
いつしか騒音に目を覚ました悠真が、声をあげる
だが、同時に――
・遮蔽物が消え、冷気が染み始める
・突風が体を冷たく叩く
・魔力残渣が森中に緩やかに拡散していった
レン
「……魔力、空っぽ……」
はるな
「はぁっ、はぁっ……、こんな、くらいで、いやだ」
【ト書き】
髪を汗で顔に張り付け、肩で息をしながら、はるなは顔をゆがめる。
立ち上がり背筋を伸ばし、細剣を構え、邪魔な木の根をつき、粉々に砕いていく。
琉生
「寒い……動けねぇ……」
【ト書き】
開けた地に風が吹き込んだ時、
琉生が目を覚まし、震えながら言う。
悠真
「琉生、動けるか?」
琉生
「あ、ああ、聞こえるよ」
悠真
「ん?いや動けるか?」
琉生
「動ける」
【ト書き】
ぴょんと立ち上がって、悠真に向かって笑う。
悠真
「切った木を寄せて、拠点にしよう。琉生、力を貸してくれ」
琉生
「分かった」
【ト書き】
切った木を積み上げ、風よけの囲いを作る。
【ト書き】
その時点で、悠真と琉生の体力も尽きた。
【ト書き】
四人は毛布にくるまり、静かに休みにつく。
────────────────────────────────
【Scene B-7:獣化 ― “野生のリブート”】
────────────────────────────────
【ト書き】
更地のキワから、魔物がゆっくりと迫る。
B班は魔力ゼロ、体温低下、疲労限界。
悠真
「……誰か……動けるか……」
琉生
「……無理だ……」
レン
「……くそ……!」
【ト書き】
はるなは、泥だらけの手で“へし折れた巨木の枝”を掴む。
はるな
「……魔力がないなら……肉体で……」
【ト書き】
風走りトカゲが飛びかかる。
はるな
「――ッ!!」
【ト書き】
細剣の柄で、風走りトカゲの頭を叩き割り、掴んでいた枝で風走りトカゲを岩に叩きつける。
【ト書き】
風走りトカゲは岩に打ち付けられ、骨が砕ける鈍い音が響く。
悠真
「はるな……!?」
はるな
「……脂質、タンパク質。
効率はこれが最短。
……だから、やる」
【ト書き】
はるなが風走りトカゲの肉を掴み、
泥と血にまみれたまま、無表情で噛みちぎる。
【ト書き】
筋を噛み切り、吐き出す。
はるな
「レン、焼ける?これ、肉がある」
琉生
「……マジかよ……」
レン
「……はるな……」
【ト書き】
レンは立ち上がる。
レン
「……焼けるぜ、任せとけ、焼けば食えるだろ!」
【ト書き】
悠真も、琉生も、レンも――
【ト書き】
“生きるために”、はるなが狩ったトカゲを焼き、その肉を食べ始める。
【ト書き】
はるなは、トカゲの血で汚れた服をさすりながら、じっと森の境目に潜む魔物へ目を向けていた。
────────────────────────────────
【Scene C-3:2日目・午前/C班の“技術で生き残る”運用】
────────────────────────────────
【ト書き】
朝の低地。
湿度は高いが、風は穏やか。
【ト書き】
C班は昨日作った燻製箱の周囲に集まり、静かに作業を始めている。
【ト書き】
燻製箱の内部では、煙が一定の温度で循環している。
【ト書き】
新の維持魔法が“温度の揺れ”を完全に抑え、
おとの設計した煙道が“湿度の偏り”を消している。
朔太郎
「……温度、安定。湿度、安定。
これ、五日間持つ……」
おと
「昨日の肉、全部“低温燻製”に切り替えた。
脂が落ちすぎないように、煙の流れを弱めてる」
陸斗
「これ、全部食えるのか?」
おと
「うん。今日の夕方には“半乾燥”になる。
明日には“完全保存食”になるよ」
新
「維持魔法、再展開。
煙の温度、±0.2度以内で固定」
【ト書き】
魔法陣が淡く光る。
【ト書き】
燻製箱から漏れていた熱と空気が、ぴたりと止まる。
朔太郎
「……これ、学園の授業より高度だよ」
おと
「生き残るための技術は、授業より厳しいからね」
朔太郎
「……誰か派手にやってる……」
「ここに魔物が来ないのは、あっちに行っているからか」
【ト書き】
魔力が混じった風が流れてくる。
新
「身体強化をしていれば、動かせるね。
チェックポイントはこの奥だ。
今日はそこまで行こう」
【ト書き】
C班は“技術”で生存を確立していく。
森の奥から漂う血の匂いは、ここまで届かず
音は穏やかで、危険の気配は薄い。
────────────────────────────────
【Scene C-4:2日目・午後/水処理と保存技術の徹底】
────────────────────────────────
【ト書き】
チェックポイントに石を置き、最初に大鹿をとらえたところと水源との
距離をみて、このC班のチェックポイント付近を拠点にすることを決める。
【ト書き】
燻製箱を設置し、その近くに天幕を張る。
【ト書き】
その後、四人は途中で見つけた川の浅瀬まで戻る。
【ト書き】
水は澄んでいるが、流れは弱い。
おと
「ここは“留まる水”に近い。
布ろ過だけじゃ危ない。
朔太郎、二段ろ過の準備して」
朔太郎
「了解。砂→炭→布の順で積む。昨日、新が作ってくれた炭を使うね」
新
「煮沸の魔法、弱火で長時間にするね」
陸斗
「火、強すぎると味が変わるんだろ?」
おと
「そう。
“生き残る水”は、味が変わらない水。
焦りは毒になる」
【ト書き】
朔太郎は砂、炭、布を順番に積み上げていく。
新は魔法で水を浮かせながら煮沸を行う。
陸斗は薪を割り続ける。
おとは水の流れや濾過の状態を確認する。
【ト書き】
C班は焦らず、丁寧に、確実に作業を進める。
【ト書き】
その姿は、まるで“野営の職人集団”のようだった。
────────────────────────────────
【Scene K-2:2日目・午後/演習場麓のロッジ】
────────────────────────────────
【ト書き】
コーヒーの香りが漂うロッジ。
【ト書き】
タンクトップ越しに湿温風機の風を受け
湿った肌をさらしながらカップを見つめていた
陽子の手が止まる。
陽子
「ね、見えた」
光
「おー、丸見え、
ずいぶん派手にやってるな、地肌がみえてら」
【ト書き】
ラフにはみ出たシャツをたらしながら、
光は落ち着いた様子で答える。
陽子
「どこだと思う?」
光
「うーん……今度桜都、あたりが地形変えてるんじゃないかな?
そういうの得意そうだし」
陽子
「ならいいけど」
光
「違ったら、うん、衛生チェックだな
それにしても、今年は数が多い上に元気なのが多いな」
陽子
「ジンさんが言ってたからね。
豊作だって」
光
「守屋廉と春日井陽菜、怖いよな」
陽子
「私はそこに、水理湊と今度桜都も、
でも、しいて言うなら春日井陽菜。
研ぎ澄まされ過ぎてて、触ると切れそうだって思った」
光
「切れそう……ね。
死なせないようにしなきゃな」
【ト書き】
夕日が山の裏に沈む。
冷気が広がり始める。
二人のコーヒーカップからも、いつの間にか湯気が消えていた。
────────────────────────────────
【Scene A-5:2日目・夜:夜の冷え】
────────────────────────────────
【ト書き】
夕方。気温が急激に下がる。
A班は最初に作った拠点まで戻り、焚火を囲んでいた。
湿った空気に包まれている。
ランド
「……なんか、魔力と闘気が渦巻いてんな……?」
ミナト
「誰かが、戦っている。こっちも油断できない」
「初日に殺気を感じたし」
ランド
「ミナトもか?俺もなんか首筋がチリチリするなぁって思ってたんだ」
【ト書き】
ランドとミナトは、女子二人が休んでいる天幕の方を見る。
ミナト
「結界魔法だけじゃなくて、鳴子もどきを作るか」
ランド
「ん?なんだって?」
ミナト
「枯れ木を作って、踏むと音が鳴るように、敷いておけば、
神経とがらせて魔法を張り続けなくても、歩き寄ってくるものは検知しやすくなる」
ランド
「お、いいね、薪の余りを使うか?」
ミナト
「そうしようか、さやかに頼もう。乾燥させるなら彼女が適任だろ?」
【ト書き】
ランドがニヤリと笑い、頷いて、さやかを呼びに行く。
ミナトは立ち上がり、薪の残骸と比較的乾いていそうな細い枝を
まとめて始めていた。
さやか
「何々、ミナト君何すればいいの?」
【ト書き】
ランドに呼ばれ、元気よくやってきたさやかを見る。
ミナト
「除水してくれ、枯れ枝を作って、
踏み鳴子を作ろうと思うんだ、そうすれば結界魔法に頼る負担を減らせる」
さやか
「りょうかい!ここにあるやつ乾かせばいい?」
ミナト
「ありがとう、頼むよさやか」
【ト書き】
不穏な空気をまき散らす森を見ながら、踏み鳴子代わりの枯れ枝を
蒔いて、A班は眠りについた
────────────────────────────────
【Scene C-5:3日目・朝/燻製箱の違和感】
────────────────────────────────
【ト書き】
山の冷気はまとわりつくようにしみこみ、
遠くから血の匂いを運んでいた。
【ト書き】
新は朝食の準備のため、燻製箱へ向かう。
新
「ん? 箱が少し開いているな……誰か夜中に食べたか?
……内側から押されたみたいに、浮いてるな。
……うーん、ちょっとつまみ食いした奴いるな」
【ト書き】
新は四人分の肉を削り取り、皿へ盛る。
燻製箱の扉を閉め、焚火を起こしに向かう。
【ト書き】
陸斗は焚火を起こしている。
新
「……なぁ陸斗、お前夜中、食ってない?」
陸斗
「いや? なんも食ってないぞ」
【ト書き】
おとは焚火を囲う石の上に座っている。
おと
「なんかあった?」
新
「肉が少し削れてた」
「昨日削ったところじゃないと思うんだ」
朔太郎
「……」
おと
「どこ削ったか覚えてる?」
新
「ごめん、あんまり覚えてないんだ」
おと
「そう、
じゃあ、気のせいかもしれないし、
今度は覚えとこ?
二人で見ておこうよ?」
【ト書き】
C班は焦らず、丁寧に、確実に作業を進める。
【ト書き】
確認も二人で行う。
【ト書き】
おとは肉を手に取り観察する。
おと
「これ?
端だけ細く削れてるね……
やすりで削ったか、欠けた刃物?
……これ、同じ方向に揃って削れてるね」
新
「あー……爪?
ここ持ちながらやったかも」
おと
「ふーん……
一応、重量記録と形状記録とっとこ。
特に削った部位を削る前の絵を描いて、印付けしない?」
新
「ああ、そうしよう。
そうすれば確実だな」
おと
「うん! お願いね」
【ト書き】
C班は焦らず、丁寧に、確実に作業を進める。
【ト書き】
そして記録方法も少しずつ洗練されていく。
────────────────────────────────
【Scene B-8:3日目・午前/“狩り続ける”B班】
────────────────────────────────
【ト書き】
朝。霧が薄くなり、森の影が濃くなる。
B班は疲労の色を隠せないが、
その足取りは昨日より“強い”。
はるなは前衛。
レンはそのすぐ後ろで“刃の角度”を常に調整している。
琉生と悠真は後衛で周囲を警戒。
【ト書き】
森の奥で“ガサッ”と音がする。
悠真(小声)
「……来る……!」
はるな(即応)
「レン、右!」
レン
「任せろ!」
【ト書き】
魔物が飛び出す。
はるなが一歩踏み込み、レイピアの“柄”で軌道を逸らす。
レンがその隙に風の刃を滑らせ、急所を正確に断つ。
“ズシャッ”
琉生(驚き)
「……息ぴったりじゃん……!」
レン(息を整えながら)
「はるなが“動きの癖”を読んでくれるからね。
俺はその“後ろ”を刺すだけ」
はるな(淡々)
「……次、来る」
【ト書き】
森の奥で、また枝が折れる音。
悠真(震え)
「まだ……来るの……?」
はるな(静かに)
「魔の“匂い”が濃い。
今日は……狩りの日」
【ト書き】
はるなとレンが前衛として、
まるで“二枚刃”のように魔物を切り伏せていく。
────────────────────────────────
【Scene B-9:3日目・午後/レンの“火を通す”調理】
────────────────────────────────
【ト書き】
小さな空間。
倒木の陰で、レンが火を起こしている。
琉生
「……腹減った……」
悠真
「……生肉は……もう嫌だ……」
【ト書き】
レンは苦笑する。
レン
「分かってるよ。今日はちゃんと火を通す」
「……あんまがっつくなよ、焼き加減見てから食ってくれ」
【ト書き】
薄く切った肉を石の上で焼く。
ジュッ――
香ばしい匂いが立ち上る。
はるな
「……いい匂い」
【ト書き】
レンは焼けた肉を四等分し、一人ずつへ渡していく。
悠真は涙ぐみ、
琉生は肉へかぶりつく。
【ト書き】
はるなは細剣の柄を握りながら、
森の奥へ視線を向けていた。
【ト書き】
食事は短い安堵を与える。
だが――
【ト書き】
はるなが立ち上がり、琉生へ飛びかかる。
琉生
「ッ!?」
【ト書き】
次の瞬間。
琉生の背後に迫っていた風走りトカゲへ細剣が突き刺さる。
ガサゴサッ!
【ト書き】
刺されたトカゲが暴れる。
琉生は勢いのまま、はるなの方へ倒れ込む。
【ト書き】
はるなは体をずらして琉生を避ける。
そのまま剣を深く押し込んだ。
【ト書き】
暴れていたトカゲが静かになる。
琉生は石に顔をぶつけたままうずくまった。
悠真
「おい、琉生大丈夫か?」
琉生
「あ、ああ……」
【ト書き】
顔をさすりながら起き上がる。
レン
「ち……探知をすり抜けるな、ここのやつら」
はるな
「人に慣れてる感じがする。
多分」
【ト書き】
はるなは淡々とトカゲを捌く。
はるな
「はい。折角だし、食べよ」
【ト書き】
捌いた肉を差し出す。
悠真
「……俺、もう無理かも……」
【ト書き】
悠真は魔物の肉を見ながら呟く。
【ト書き】
はるなは焼いた肉を齧りながら、更地の隅を見つめている。
はるな(内心)
(悠真も琉生も限界)
(レンは大丈夫)
(でも……近い)
(唇が割れる)
(肌もざらざら)
(熱い)
(ううん、寒い)
(乾く)
(あれ? レン?)
【ト書き】
世界が回る。
強い熱に襲われ、
はるなは思わず目を閉じる。
【ト書き】
目の前で、レンが倒れていた。
琉生も悠真も倒れている。
魔物の気配はない。
【ト書き】
手を伸ばそうとする。
だが動かない。
はるな(内心)
(あれ?)
(私どうした?)
(レン、目にハエが……)
【ト書き】
レンの瞳から虫が這い出る。
琉生も悠真も、
干からびた皮膚の奥から骨が覗いていた。
【ト書き】
手が動かない。
息ができない。
はるな(内心)
(違う)
(違う!)
(違う!!)
【ト書き】
はるなの口から濁った音が漏れる。
体が軋む。
割れていく。
しぼんでいく。
はるな
「うわあああああああ!!!」
────────────────────────────────
【Scene A-5:3日目・夕方/R1:濡れた綿 → 低体温症】
────────────────────────────────
【ト書き】
夕方。気温が急激に下がる。
A班は森の果実を求めて、ねぐらから移動し
斜面を降りながら、湿った空気に包まれている。
ランド(肩で息をしながら)
「……なんか寒くねぇか……?」
さやか(眉を寄せる)
「うん、そうだね、ランド君、インナー濡れてるよ。汗?」
ランド
「たぶん……」
【ト書き】
ランドの顔色が急に悪くなる。
呼吸が浅くなり、目の焦点が合わない。
ミナト(即座に駆け寄る)
「ランド、返事して!」
ランド
「……あ……?」
【ト書き】
ランドが突然、バタリと倒れる。
ニーコス(耳を澄ませて)
「……体温、落ちてる。
森の冷気、強い」
ミナト(判断)
「R1発生。
さやか、火を!
ニーコス、乾いた葉を集めて!」
さやか
「了解!」
【ト書き】
ミナトはランドのインナーを脱がせ、
自分の外套をかける。
露を少しでも速く乾かすために、乾燥の魔法を使う。
ミナト(独白)
(……濡れた綿は、森では“死”。
戻れる形を……崩させない……!)
バタっと音が鳴る。
ニーコス
「さやか?さやか!!!」
さやか
「……なんか、熱い……のに、寒い……」
ミナト
(……早すぎる、食あたりや低体温にしては……進行が速すぎる)
────────────────────────────────
【Scene B-10:3日目・夕方/“迫りくる魔物”との継続戦闘】
────────────────────────────────
レン
「はるな! はるな!」
【ト書き】
レンははるなの肩を掴み、激しく揺らす。
【ト書き】
はるなは喉の奥から、理性をもぎ取られたような悲鳴を上げていた。
血の気の引いた顔は恐怖で引きつり、
見開かれた瞳には絶望が映っている。
全身が震え、
両手は何かを拒絶するように宙を掻いていた。
レン
「ちっ、悠真できないか?
はるなが精神汚染だ」
悠真
「やってみる。
発動系鎮静」
【ト書き】
悠真ははるなの手を握る。
悠真の身体が淡く光る。
はるなは糸の切れた人形のように倒れ込む。
レン
「落ち着いたか?」
悠真
「多分……
パニック症状の人と同じだと思う」
【ト書き】
悠真は青白い顔で俯いた。
レン
「くっそ……
いよいよやべーか……持つかな」
────────────────
【ト書き】
夕方。
森の影が長く伸びる。
魔物の気配が濃くなる。
はるなは突然目を開ける。
はるな
「……来る」
レン
「何体?」
はるな
「三。
右、正面、左奥」
悠真
「見えてるの……?」
はるな
「……匂いと、風」
【ト書き】
魔物が三方向から飛び出す。
はるな
「レン、正面!」
レン
「了解!」
【ト書き】
はるなが右の魔物を牽制する。
【ト書き】
レンが正面の魔物を斬り伏せる。
【ト書き】
琉生が左奥へ石弾を撃ち込み注意を逸らす。
悠真
「……はるな、後ろ!」
はるな
「分かってる」
【ト書き】
はるなが後ろ蹴りで魔物の顎を弾く。
【ト書き】
レンがその隙に炎の刃を滑らせる。
“ズシャッ”
琉生
「……やべぇ……俺ら、強くなってる……?」
レン
「違うよ」
レン
「“噛み合ってる”だけ」
はるな
「……次も来る。
動こう」
悠真
「……きたぁぁあ!!」
【ト書き】
魔物を打倒し、気配が去る。
【ト書き】
はるなは血で汚れた毛布にくるまりながら、
背中を掘り返した木の根に身体を預ける。
【ト書き】
レンがしゃがみ込み、はるなの様子を確認する。
レン
「はるな、大丈夫か?」
【ト書き】
はるなは毛布にくるまったまま森の奥を見る。
そして小さく頷いた。
切り倒し、掘り返したことで開けた場所。
四人は毛布にくるまり休息している。
【ト書き】
夕闇が迫る森の端で、
束の間の安堵が流れる。
【ト書き】
だが――
はるなの目だけは既に森の奥を向いていた。
次の気配を、
風と匂いで探している。
────────────────────────────────
【Scene K-3:3日目・夜/演習場麓のロッジ】
────────────────────────────────
【ト書き】
光と陽子は地図を見ながらため息をつく。
緯度のわりに暑い夏の演習場の傍ら、
上半身裸の光は、山の中腹にある開けた斜面を注視していた。
光
「派手だな。
こんなことやってたら、あと一日もたんかもしれん」
陽子
「位置が変わってない。
ずっと陣取って魔物を相手にしている。
危険度1とはいえ、怪我をするわね」
【ト書き】
陽子の声は揺れている。
光
「中止要件には入ってないからな。
行動不能者が出るまで手は出せないし、まいったねこれ」
【ト書き】
光は頭を掻く。
陽子
「ルール変更は?」
光
「全員退学させられるぞ」
陽子
「この程度ってことかもしれないけど、
山の魔物を一手に引き受けるのは、ちょっと無茶じゃない?」
【ト書き】
光はしばらく沈黙する。
【ト書き】
そして、ある道具を思い出す。
光
「あ、魔呼の香炉、あったよな、確か」
陽子
「なるほど、間引き用の」
光
「あふれてて、小屋の周りの間引きをしたことにして、焚くか」
陽子
「そうね、時々焚こうか」
光
「狩れるよな?」
陽子
「当然」
「今度は逆に組み伏せようか?」
光
「よしてくれ」
「じゃ、準備しとく」
陽子
「遊んでられないわね」
【ト書き】
二人は戦闘がいつ起きてもいいように、
制服を羽織りながら、山の中腹にいるだろうレン班の班員を思い出していた。
そして、山の夜に一筋の煙が昇る。
谷底の喧噪が、遠く静かに響いていた。
────────────────────────────────
【Scene A-6:3日目・夜/C2:水処理ミス → 集団下痢】
────────────────────────────────
【ト書き】
夜。
A班は小さな天幕の下で休んでいる。
風が強く、天幕が揺れる。
さやか
「……お腹……痛い……」
ランド
「俺も……やべぇ……」
ニーコス
「……水、悪い。
煮沸、足りなかった」
ミナト(内心)
(水? いつだ……)
(川、汲んでた、あれか)
(ニーコスも俺も飲んでない)
(飲んでないのか?)
ミナト
「……C2発生。
ニーコスは飲んでないか?」
【ト書き】
ニーコスは水筒を振りながら首を傾げる。
ニーコス
「……私?」
ミナト
「さやかやランドが飲んだ水、
ニーコスは飲んでない?」
ニーコス
「多分。
水は……わかんない、
でも、全部沸かした、よ?
それに、お腹は大丈夫、
熱もない」
【ト書き】
ニーコスは額に手を当てる。
続いて腹に手を当てる。
ニーコス
「大丈夫」
ミナト
「そうか、よかった。
こっちも、お腹は大丈夫……
二人とも、動けるか?」
ランド
「無理……」
さやか
「……ごめん……私が……」
ミナト
「責めない。
今は“戻れる形”を作り直す。
ニーコス、水を鍋で煮沸して……
さやかの服の消毒を頼む。
ランドの方は俺がやる……
布マスクは、そっちのバッグ、
……中は、もう回らない。
外を回せるのはニーコスだ。
頼む」
ミナト(内心)
(立て直す)
(さやかもランドも消毒と衛生が必要)
(さやかの対応にはニーコスに頼むしかない)
(ランドは……俺?)
(いや……)
(何とかしろよランド)
(違う)
(やることを決める)
ニーコス
「……うん、わかった。
こっちはやるよ」
ミナト
「ランド……
きついと思うが、いったん出し切れ」
【ト書き】
ミナトは手袋越しにランドの手を握る。
解析魔法を開始する。
────────────────
【ト書き】
ニーコスは衛生用品の予備を確認する。
その後、天幕の外へ出て川沿いの流れる水を探しに向かう。
【ト書き】
風が冷たい。
森の影が揺れる。
【ト書き】
ニーコスは風に混じる魔力を感じ取る。
ニーコス(内心)
(……誰か、戦っている……)
(ダメだ)
(今はこっちだ)
(焦りは毒)
(でも……臭い、強い……)
【ト書き】
ニーコスは川で水を汲む。
天幕の外で沸かし、二度布ろ過を行う。
完成した水を全員へ配る。
そして再び水を汲みに向かった。
【ト書き】
ミナトは手袋越しにランドとさやかの手を握る。
解析魔法を進める。
ミナト(内心)
(……もう一度、血流じゃない……)
(消化器のチェックだ)
(口、咽頭、舌、喉、食道……問題ない)
(胃)
(さやか炎症がある)
(ランドはない)
(ッ……切れた)
(もう一度、二人同時は無理か)
(ランドすまん)
【ト書き】
ミナトはさやかの手を両手で握る。
再び解析を行う。
ミナト(内心)
(……もう一度……)
(消化器のチェックだ)
(胃、炎症がある)
(その先……)
(なんだこれ)
(ただれている)
(そんな……)
(ランドは?)
【ト書き】
ミナトはそっとさやかの手を離す。
今度はランドの手を両手で握る。
解析を続ける。
ミナト(内心)
(……消化器のチェックだ)
(胃)
(その先……同じだ)
(ただれている)
(そんな……)
(これって……)
(……違う)
(これは食あたりじゃない)
(増えてる……“何かが”)
ミナト
「ニーコス……
腸がやられてる。
水様、急性……進行が速すぎる」
【ト書き】
ニーコスは洗浄作業の手を止める。
ニーコス
「それは、虫、
腸を保護する薬草と、魔術による施術がいい」
ミナト
「……寄生……?
薬草、手に入るのか?
術式はわかる?」
ニーコス
「ごめん、わからない
薬草は手に入る」
ミナト
「……分かった」
【ト書き】
ミナトは目を閉じる。
ミナト(内心)
(臭い)
(鼻が痛い)
(きつい)
(考え、まとまらない)
さやか
「うぅ……」
【ト書き】
さやかが苦しそうな音を漏らす。
ミナト(内心)
(戻した)
(まずい)
(ほんとに、さやかの肌、薄い)
ミナト
「……さやか……
ニーコス、熱湯を、
煮沸した布で拭く、
さやかが戻した。
……さやか、聞こえるか?」
【ト書き】
さやかがうっすらと目を開ける。
さやか
「み、なとく……ん」
【ト書き】
さやかは再び目を閉じる。
【ト書き】
額に汗が浮かんでいる。
ミナト(内心)
(……え?)
(目の白いところ……黄色い……?)
(唇も渇いている)
ランド
「……ミナトぉ……
これ……ヤバい奴じゃねぇのか……?」
ミナト
「……これ、放置したら終わる。
……俺がやる」
ミナト(内心)
(できる?)
(できないと血を吐く)
(いや、出てる)
(さやかも、ランドも)
(血が口に)
(死……)
ミナト
「……原因、俺が潰す。
……ニーコス
水の運搬と煮沸、頼む。
俺は虫を施術する。
やり方を見つける」
ニーコス
「わかった、
薬草も探してくる。
あると、回復が速くなる」
【ト書き】
ミナトは頷く。
そして、ミナトはさやかの腹へ手を当てる。
小さく何かを呟いている。
ミナト(内心)
(……まず見つけろ)
(小さいやつだ)
(見つけられれば……)
(一つでいい)
(潰せれば……)
(爛れがひどい)
(血が混じっている)
(くそ)
(自分の体内の異物と違って)
(全部が同じに見える……)
(もっと精度を上げろ……)
(だめだ、わからない)
【ト書き】
ミナトは握り締めた拳を地面へ叩きつける。
ドン
【ト書き】
十五センチほどの窪みができる。
ミナト
「何か手はないのか……
血が出ているなら、そこにいるはず。
だが、血が多くてわからない……
血じゃないやつなんだ……」
【ト書き】
ミナトは顔を上げる。
ミナト
「そうか、逆だ
血だ、血を、まず認識する」
【ト書き】
再び、さやかの腹へ手を当てる。
ミナト(内心)
(これがさやかの血だ)
【ト書き】
ミナトは大きく息を吸う。
顎を汗が流れ落ちる。
夜風が濡れた服へ染み込んでいく。
ミナト(内心)
(さやかの中に)
(さやかの血と違うやつを探す……)
(どこだ)
(もっと小さいのか……)
(血が出ているところ……)
(居た!!)
(意外とデカい)
(だが!)
(識別できたなら)
(焼ける)
(いや)
(壊す)
(この別物を全部壊す)
【ト書き】
さやかの手がぴくりと動く。
ミナトの手袋の中から強い光が溢れる。
ミナトの身体が淡い青い炎のような光に包まれる。
ドサ
ミナトがさやかの隣へ倒れ込む。
────────────────
【ト書き】
ニーコスは水を運んでいる。
【ト書き】
服越しにも肩や背中の筋肉が波打っているのがわかる。
顔は紅潮し、呼吸は深く乱れている。
足取りが止まる。
一歩が出ない。
ニーコス
「……まだ……だめ、さやか、ランド、助ける……できる子になる」
【ト書き】
水袋が手から滑り落ちる。
数秒後。
拾い上げる。
再び抱える。
膝と腕が小刻みに震える。
それでも一歩ずつ進む。
ニーコス
「……届ける……私は、はぁ、はぁ……できる」
【ト書き】
視界が揺れる。
だが三人の姿だけは見失わない。
そして、ミナトが倒れるのを見る。
ニーコス
「ミナト!」
【ト書き】
ニーコスは駆け寄る。
水を置き、顔を覗き込む。
ニーコス
「ミナト!」
【ト書き】
頬を軽く叩く。
ミナト
「ニーコス……
ちょっと疲れた。
少しだけ休む、
さやかの衛生頼む……」
ニーコス
「……
……わかった」
さやか
「う……ニーコスちゃん……」
ニーコス
「さやか、まだ寝てて
今衛生中だから、痛かったら言ってね
後、ごめんね、着替え勝手に取り出しちゃった」
さやか
「うん……
お腹痛い……
ありがと、大丈夫」
ニーコス
「自分で回復魔法使える?
効くはずだから、やってみて」
さやか
「うん……できる……」
【ト書き】
さやかの手が青い光を帯びる。
自分の腹をさする。
────────────────
【ト書き】
ミナトがふらりと起き上がる。
よろめきながらランドの方へ歩く。
ランドの腹へ手を当てる。
【ト書き】
ミナト内心
(手が動く、今のうちに、ランドを助ける)
ミナト
「ランドの血……見つけた……
壊れろ」
【ト書き】
再び光が放たれる。
ミナトの身体が青く輝く。
(くっそ、覚えとけよランド、これがミナトだからな
ふっ、ランドを助けた男ミナトってやつだ)
そして糸が切れたように崩れ落ちた。
ニーコス
「……っ
……さやか
もう動ける?
……動けるなら、手伝って……」
【ト書き】
ニーコスはさやかを見て、ランドを指さす。
さやかは、汗ばんで顔に張り付いた髪を剥がしながら
顔色の戻った顔で、確かにうなずいた。
────────────────
【ト書き】
天幕の外から悲鳴が聞こえる。
ランド
「いいい、そこは自分でやれる!」
【ト書き】
ニーコスに馬乗りに組み伏せられて、
なぜか振り払えなくてランドは焦っていた。
しかも、上半身はさやかに押さえつけられている。
ランドは、そんな、この俺が女子二人を振り払えない
そんな事、あってはならないことだと焦っていた。
自分より20キロは重い男でさえ振り払えていたんだ。
このありえない状況に、腹の痛みも相まって、パニックになっていた。
ニーコス
「ランド
動けないくせに、もう少しじっとして
さやか、ランドの肩を押さえて
背中冷えてる……」
【ト書き】
ニーコスは、ランドを横向けにして腹あたりに馬乗りになり、
ランドが動こうとするたびに即座に重心を移動させて
腰で体勢を固定させていた。
そして、力強くズボンを脱がしにかかっている。
さやかは、じたばたもがくランドの肩に腕を回しこんで極めてくる。
ランド
「ちょ、さやか、それ、極まってる、いてぇし動けねぇ!
当たってるし、うやぇめてぇぇぇ」
さやか
「ランド君じっとしてて、見てないから!」
さやかが体全体を使ってランドの上半身を抑え込む。
ランド
「あったかい……
気持ちいい……やめないで
いや、いや、いやぁあーやめてぇええ」
────────────────
【ト書き】
しばらくして。
天幕の裾が揺れる。
声
「ミナトくん?
起きてる?
水と治療、ありがとう
だいぶ楽になったよ」
【ト書き】
少しの沈黙。そっと頬に触れる温かい手
声
「ごめんね」
【ト書き】
ミナトは肩に温もりを感じる。
そして、左右から同じく温もりと寝息を感じながら
そのまま微睡みの中へ沈んでいく。
────────────────────────────────
【Scene B-11:3日目・夜/風呂 ― “生命力の回復”】
────────────────────────────────
【ト書き】
3日目の夜。
B班は魔力も体力も底をつき、
それでも“まだ生きている”という実感だけで動いている。
【ト書き】
はるなが倒した魔物の肉をレンが焼く。
【ト書き】
琉生と悠真は無言で肉を食べている。
【ト書き】
肉の脂が喉を通るたび、
体の奥へ火が戻ってくる。
レン
「……生き返る……」
琉生
「……これ、魔力……戻ってきてるよな……?」
【ト書き】
はるなは服についた返り血を拭う。
はるな
「生命力が戻れば、魔力も戻る」
「森では、そういうもの」
はるな(内心)
(手、力入らない)
(硬い……動かない……)
(肩に痛みが走る)
(魔物が齧りついていた!)
(痛い)
(冷たい)
(レン?見えてない?)
(足、骨?)
(手が……透ける……)
(うーー、ダメ違う……)
【ト書き】
はるなは目を閉じる。
再び目を開く。
そこにはいつもの自分の手があった。
はるな
「……悠真、ありがとう。」
────────────────
【ト書き】
はるなは立ち上がり、河原へ向かう。
泥と血に汚れた背中が夜闇の中を進む。
悠真
「は、はるな……どこ行くの……?」
はるな
「……風呂」
「このままでは、明日、体が動かない」
────────────────
【ト書き】
河原。
はるなは石を積み、
川の水を引き込み始める。
小さな浴槽の形が作られていく。
レン
「……はるな、それ……風呂……?」
はるな
「うん」
「石で囲って、底に熱を通す」
「魔力は……少しだけ残ってる」
レン
「……なるほど」
「じゃ、あっためるのは俺がやる」
【ト書き】
レンが手をかざす。
石の底がゆっくり温まり、
川の水が湯気を立て始める。
琉生
「……すげぇ……」
悠真
「……入っていいの……?」
はるな
「入らないと、明日死ぬ」
────────────────
【ト書き】
はるなは迷いなく服を脱ぎ、
水浴び用の薄着姿になる。
【ト書き】
その瞬間。
琉生と悠真の肩が僅かに跳ねる。
驚きと疲労、
そして年相応の反応。
二人は慌てて視線を逸らす。
レン
「……お、おう……」
「湯が冷えないように刻印を打っとく
これでしばらく持つだろ」
琉生
「……あ、ご、ごめん……」
悠真
「ぼ、僕も入る……!」
【ト書き】
はるなは気付いていないのか。
気付いていて気にしていないのか。
何事もなく湯へ入る。
はるな
「……あったかい……」
(血が巡る、これで明日も動く、痛みが引く
ううぅ、なんでこんなに……)
────────────────
【ト書き】
レンと琉生も汚れた服を脱ぐ。
下着姿で湯へ浸かる。
レン
「……これ……天国……」
琉生
「……生きてる……」
「生きてる……!」
悠真
「……ぼ、僕も……」
はるな
(入ってくる、皆、疲れた、眠い
ダメ、あと少しだけ、起きる)
レン
(はるなの隣に座る)
「はるなちゃん、よく気づいたな」
はるな
「冷えた筋肉は温めて、休ませないと」
「明日、帰れない……から」
「あと、さすがに、臭う」
琉生
「……そんなにくさいか?……」
悠真
「……分からない……」
レン
「……匂いが分からなくなるくらい」
「やばかったってことか……」
「あぁあ、生き返る」
────────────────
【ト書き】
四人は湯へ浸かる。
湯気が立ち昇る。
冷えた身体へ血が戻っていく。
レン
「……あと一日……」
琉生
「……帰れる……」
悠真
「……帰りたい……」
はるな
「帰る」
「四人で」
はるな
(この服、体に張り付く
あ、気になり始めた、ダメ、
最後に出る。みんな先に出てくれないかな
あぁ~、眠い)
【ト書き】
湯気の向こうで、
四人の呼吸がゆっくり揃っていく。
“生命力”が戻る音がした。
────────────────────────────────
【Scene C-6:3日目夜/湯あみ ― 技術で生き残る】
────────────────────────────────
【ト書き】
3日目の夜。
C班の拠点は、燻製箱と維持魔法で温度が安定している。
風は弱く、焚き火の煙が真上に昇る。
おと(木材を並べながら)
「……よし。これで“桶”になる」
陸斗(目を丸くして)
「え、風呂作るの?」
おと(淡々)
「湯あみ。
森の菌は強い。
汗と汚れは、早めに落とした方がいい」
新(魔法陣を描きながら)
「温度、±0.2度で維持する。
熱すぎると皮膚が荒れるから」
朔太郎(記録しながら)
「……C班は衛生も技術で管理する、と」
【ト書き】
木のおけに湯が張られ、
湯気が静かに立ち上る。
陸斗(手を入れて)
「……あったけぇ……!
これ、風呂じゃん……!」
おと(微笑む)
「風呂じゃない。湯あみ。
でも、気持ちいいでしょ?」
新(袖をまくりながら)
「文明の力だよ。
魔力があるなら、使わないと損」
【ト書き】
四人は順番に桶の前に座り、
布で体を拭き、
湯をかけ、
汗と土を落としていく。
陸斗(満足げ)
「……生き返る……」
朔太郎(眼鏡を拭きながら)
「衛生状態が良いと、疲労回復も早い。
データにも出てる」
おと(髪をまとめながら)
「明日も動ける。
それが一番大事」
【ト書き】
C班の風呂は、
“技術で生き残る”という哲学そのものだった。
────────────────────────────────
【Scene C-7:3日目・夜/寝る前、記録、就寝後の音】
────────────────────────────────
【ト書き】
湯上りの熱が冷めず、ほわほわとした空気が流れる
新は、記録を整理するため燻製箱を開けて、測り形状を紙に書く。
新
「これで、今日削った場所が分かるっと」
「重さもOK、うん、あと2日もつね」
「……持って帰れるくらいはありそうだ」
【ト書き】
新の頬が緩む。
おと
「新君、記録ありがとう」
新
「いや、いいよ、おとちゃんももう寝たら?」
おと
「一人頑張っているのは良くないから」
「私も見るね」
【ト書き】
おとは、新の記録を見ながら肉の状態を確かめる。
おと
「うん、完璧」
新
「じゃ、休もうか」
おと
「うん」
【ト書き】
闇が落ち、山の冷えが湯で温まった体を冷やすころ
カサ、カサ……
カッ、カッ、カッ……
頭上のどこかで、小さく硬い音がした。
風の音の中に混じるには、あまりに近い音が、
C班のまどろみの奥にしみ。
だが、その音に反応した者はいなかった。
────────────────────────────────
【Scene A-7:4日目・朝/R3:靴擦れの化膿】
────────────────────────────────
【ト書き】
朝。ミナトが目を覚ますと隣にランドとさやかとニーコスがいた。
なぜか団子になって寝ていた。
ミナト
「……凍えなかったのはそういうことか…」
A班は再び移動を開始するが――
ニーコス(足を見て)
「……ミナト、足、腫れてる」
ミナト
「……昨日の靴擦れか……」
ランド
「靴、入らねぇじゃん……!」
さやか(焦り)
「どうするの……?」
ミナト(冷静)
「R3発生。
ランド、杖を作れるか?
ニーコス、薬草を探して。
さやか、魔力で炎症を抑えて」
ニーコス
「分かった!」
【ト書き】
A班は即席の杖を作り、
ミナトの足を固定する。
ミナト(苦笑)
「……俺が倒れたら終わり、って言ったのに……」
さやか(涙目)
「倒れないでよ……!」
ミナト(微笑む)
「昼には魔力が戻る」
「そしたら、直せる」
「戻れる形は……まだ崩れてない」
────────────────────────────────
【Scene B-12:4日目・朝/川で血を洗い流す】
────────────────────────────────
【ト書き】
川の浅瀬。
冷たい水が流れ、霧が薄く漂う。
B班は全員、泥と血で汚れている。
レン(服を脱ぎながら)
「……風呂入ったせいか、服の匂いが分かる。うっはっ!臭いな、俺たち」
レンが脱いだ服の匂いを嗅ぎながら言う
琉生(川に顔を突っ込み)
「ひゃっ……つめてぇ……!」
悠真(服を洗いながら)
「でも……気持ちいい……」
【ト書き】
はるなは静かに川に手を入れ、
血のついた細剣の柄を洗う。
はるな(小声)
「……冷たい。
でも……生きてる」
レン(はるなの隣で)
「はるな。
昨日の狩りと風呂……本当に助かった」
はるな(淡く微笑む)
「……レンの支援があるから、狩れた
あと火ありがとう。ほぐれた」
【ト書き】
二人は言葉少なに、
しかし確かな“信頼”を共有している。
悠真(川から顔を上げて)
「……ねぇ、今日も……狩るの?」
はるな(静かに)
「……来るなら、狩る。
来ないなら、休む」
レン(頷く)
「それだけだね」
────────────────────────────────
【Scene C-8:4日目朝・C班“技術とほころび”】
────────────────────────────────
【ト書き】
C班の野営地。
燻製箱は安定し、乾燥ネットは風を受けて揺れている。
水処理装置は二段ろ過+煮沸で完璧。
おと(木材を削りながら)
「天幕の骨組み、補強するね。
風向きが変わっても崩れないように」
新(魔法陣を描きながら)
「維持魔法、再展開。
温度と湿度、一定に保つよ」
朔太郎(記録)
「……これ、学園の教科書に載せるべきだ……」
陸斗(薪を割りながら)
「おと、これでいいか?」
おと
「うん、完璧。
陸斗の力、ほんと助かる」
【ト書き】
C班は、
“技術 × 魔法 × 力 × 記録”
が噛み合い、
まるで“野営工房”のように回っている。
【ト書き】
新は、朝食用に燻製箱から肉を取り出そうと
記録台帳と比較していた。
新
「!!!!……減っている、明らかに!」
おと
「え?」
【ト書き】
おとは、新の側により、形状確認をしようと燻製肉を見る――――
記録台帳と突き合わせるまでもなく、明らかに、削れていた。
ザラメの刃物で同じ方向に削ったような
ざらざらの削れが、肉のあったところから
骨を見せていた。
新
「昨日、ここに印を付けたはずだ……」
……骨が、昨日より露出している」
【ト書き】
陸斗と朔太郎が燻製箱の前までくる。
陸斗
「……これ、人がやったんじゃねえよな?」
【ト書き】
C班に数拍の沈黙が訪れる。
────────────────────────────────
【Scene K-4:4日目・朝/演習場麓のロッジ】
────────────────────────────────
【ト書き】
ベッドで目を覚ました光は、陽子が先に起きて外にいることに気づく。
光
「はやいな、昨日遅くまでやってたんだがな。相変わらず朝が早い」
【ト書き】
光は外へ出る。そこら中に昨夜集まってきた、小さな魔物の死骸が転がっていた。
陽子は、すでに着替えていて、制服のまま山の中腹を見つめている。
光
「どうした?」
「こんなに早く」
陽子
「多分感染症」
「水理の班」
「煮沸布を使った衛生行動が増えていた」
「血の匂いはないけど、立花と佐伯が昨晩動いていない」
【ト書き】
陽子は振り返らずに答える。
【ト書き】
光は不意に杖を取り出す。
陽子の正面から飛び出した風穴獣へ向けて岩弾を放つ。
ドシャッ
【ト書き】
魔物は倒れ、動かなくなった。
光
「全然気づかなかったな。陽子はよく気づいてたな」
「回復してそうか?」
陽子
「光さんは集中しすぎ、もう少し周りも見た方がいいんじゃない?昨夜、やってる時、
A班が一番うごきが怪しかった。そして、回復はまだわからない」
「午前中はちょっと様子見かな」
光
「そうか……陽子は?回復は出来ているか?」
陽子
「私?おかげさまで、昨夜は光さんのお蔭で楽させてもらえましたし」
【ト書き】
光は視線を別方向へ向ける。レンズ状のものが二つ浮かび、
山の斜面の大きく開かれた空き地がその向こうに見える。
光
「あっちは?」
「あ、元気そうだな」
「いや、元気すぎないか?」
陽子
「ん」
「あっちは多分、もう大丈夫」
光
「そうか」
「すげえな」
「あの歳であれが出来ちまうのか」
陽子
「……確かにすごい」
光
「飯食おうぜ」
陽子
「そうしよっか」
光
「ちょっと回復させてから、昼はそこらを回ってくる」
【ト書き】
光は目を細めて山を見る。
陽子
「私は、休むね」
【ト書き】
陽子はほっと息を吐いた。
────────────────────────────────
【Scene A-8:4日目昼前/湯拭き ― “戻れる形”の衛生】
────────────────────────────────
【ト書き】
4日目の昼前。
必要な森の幸を収集したため
標高を下げ、再び寝床のある平地
に戻ったA班は、水を求めて近くの川まで進んだ。
空気は湿っているが、風は冷たい。
川の水は手を入れると、骨に響くほど冷たい。
さやか(3人に向かって)
「お願い……入らせて。もう限界……」
ランド
「……さっぱりしたいよな、うん」
ランド(手を突っ込んで)
「……冷てぇ……これ、入ったら死ぬやつだろ……」
ミナト(即答)
「入らない。
冷えは“戻れる形”を壊す」
さやか(肩をすくめて)
「だよね……じゃあ、どうするの?」
ミナト(周囲を見渡しながら)
「囲いと壁……あと、桶。
桶は……作るか」
【ト書き】
ミナトは近くの倒木の皮を剥ぎ、重ねて縛り、
魔力で熱を与えて柔らかくし、
形を整えていく。
ニーコス(横で見ながら)
「……森の木は、熱で曲がる。
ミナト、上手い」
ミナト(淡々)
「沸かした水を少しの間溜めて置ける。
鍋で沸かしながら、続けられる」
ニーコス(川の音を聞きながら)
「……お湯、作る。
布で拭くのが一番いい。
森の匂い、落とした方がいい」
【ト書き】
ランドが鍋に水を汲み、
ミナトが火を起こし、
さやかが布を絞る準備をする。
ニーコスは、拭いているときに隠す天幕を張る。
湯気が立ち上がり、
冷えた空気に白く溶けていく。
ミナト(桶に湯を移しながら)
「……これくらい。熱すぎると皮膚が荒れる」
さやか(布を浸して)
「じゃあ、私から……」
【ト書き】
さやかは天幕に入り、入り口を閉める。
袖をまくり、布を湯に浸した。
泥と汗が落ち、肌が少し明るくなる。
さやか(ほっとして)
「……あ、これ……気持ちいい……」
「さっぱりした」
天幕が空き、さやかが出てくる。ほんのりと頬が上気している。
「じゃ、次俺な!」
ランドがそう言って、布をもって天幕に入る。
入り口は開けっ放し。
「文明を感じる……」
ランドが布で体をふきながら、感動したように呟く。
「湯の冷めが早まる。閉めて」
ミナトが淡々と言う。
「匂いが敵を呼ぶ。拭くだけでも違う」
ニーコスも淡々と告げた。
「へーい」
ランドは答えて、入り口を閉める。
「生き返った!、俺、新生ランド!」
湯気の立つ布を振り回しながらランドが出てくる。
【ト書き】
湧いた湯を代わりの桶にためていたミナトは、桶をもって
天幕の中のおけと交換する。
ミナト
「ニーコス、先に」
ニーコス
「ミナトは?」
ミナト
「最後でいい」
ニーコス
「そう、じゃあ、使うね」
【ト書き】
ニーコスがそう言って、布をもって天幕に入る。
天幕に入ったとたん、おもむろに服を脱ぎだす。
ランドの視線がくぎ付けになり、さやかが、慌てて天幕の前に立つ
さやかが、ランドの方を見ると、ランドは顔を横に向ける。
ミナトは、森の方を力なく眺めている。
さやか
「ちょっとこっちみちゃだめ!」
天幕の入り口を閉め、入り口前に座るさやか。
ランド
「いや、みてねーし」
さやかの目が鋭く光る
ランド
「……ごめん……」
天幕の入り口が開き、ニーコスが出てくる。
「さやか、ありがとう、不用心だったね。
ランドならもういいかなと思ってしまってたよ」
さやか
「ちょッとそれ誤解される」
ニーコス
「あそこまで世話したら、もう、なんていうか、あはは」
さやか
「ニーコスちゃん……ダメだよ」
【ト書き】
ランドが顔芸を披露しているかのように目まぐるしく表情を変えていた。
ニーコス
「ミナト、どうぞ?」
森の奥をのぞき込むように見ていたミナトが振り向く
「今日、森が静かだ」
ニーコス
「ミナトにも見える?」
ミナト
「すこし」
【ト書き】
ミナトは最後に布を受け取り、
静かに腕と首筋を拭く。
ミナト(小さく)
「……これで、夜の冷えに耐えられる」
ニーコス(頷く)
「うん。“戻れる形”、まだ崩れてない」
【ト書き】
四人は湯気の中で、
静かに体を拭き、
冷えを避け、
明日に備える。
A班の風呂は、
“生き残るための設計”だった。
────────────────────────────────
【Scene A-9:4日目・A班の“持ち味で回っている”】
────────────────────────────────
【ト書き】
4日目の昼。
ミナトはメンバーの顔を見る。
肌に張り付いた髪
てかった顔
乾いた唇
目をこすりながら、皆、やることをやっている。
ニーコス(耳を澄ませて)
「……右の斜面、風が弱い。
釣るならあっちがいい」
ミナト(即座に判断)
「了解。ランド、行くぞ。
さやかは待機、僕とランドが不測の事態になったら
救助を頼む」
ランド
「任せろ!」
さやか
「はーい!」
【ト書き】
ニーコスの“森の耳”が獲物の位置を教え、
ミナトの“設計”がルートを整える。
ミナト(独白)
(……ギリギリだけど……
“戻れる形”はまだ崩れてない……
また、戦闘の魔力……、レン?
)
ランド
「さやか、魚捕れたぞ!」
さやか
「うっそほんと?おいしい奴?」
ランド
「知らん。食えばわかる」
ミナト
「魚、捕れた」
ランド
「うっそ、いいな、敗けねぇ―ぞ」
さやか
「頑張れ二人とも―!!」
ニーコス
「頑張れー、釣れたら行者ニンニクと塩で煮込んであげるからね、お魚楽しみだねぇ」
ランド
「よっしゃー2匹目だ」
ミナト
「びくともしない、川には結構いそうなんだが……手づかみの方が楽か?」
ニーコス
「手づかみはほとんど無理だよー冷えるからやめてねー」
ミナト
「なるほど……」
【ト書き】
しばらく間があって、冷たい風が吹き始めた。
さやか
「そろそろ、戻らない?風が冷えてきたよーー」
ミナト
「日が陰り始めたな、ランド戻ろう」
ランド
「おう、所でミナト、何匹だ?」
ミナト
「聞くのか」
【ト書き】
釣り場から川岸に移動しながらランドは聞いてくる。
チラリと見えた籠には4匹以上いる。
ミナトの籠には2匹しかいない。
ミナト
「2匹だよ」
ランド
「ふっふー、6匹だ!!よっし、勝った!借りは返したぞミナト!」
【ト書き】
ミナトはやや理不尽だと思いながらまぁいいかと、頷いて拠点前の
焚火場所まで行く。
ミナト
「ニーコス、これ食べられるか?」
ニーコス
(見てすぐに)
「二匹ともアマゴだよ、おいしいよこれ凄いミナト」
ニーコスが抱き着いてきた。
ミナト
「ちょ、なんで?ニーコス!」
【ト書き】
ニーコスは、ほっぺたをすりすりしながら、喜んでいる。
なぜだ?アマゴ、そんなにうまいのか?
ランド
「ニーコスこっちも見てくれ、いっぱいいるぞ」
ニーコス(耳を澄ませて)
「……そいつは、骨ばっかり。
それに、肝が泥臭い。
食ってみる?」
ひらひらと行者ニンニクとヨモギを見せながら言う。
さやか
「ランド、どぞ……」
ランド
「うぉーせっかくのたんぱく質だぁ!!うめええぇなあああ」
ランドはむせながら釣った泥魚を行者ニンニクと一緒に煮込んで、
ヨモギをちぎりながら食べていた。
ニーコス
「アマゴ美味しい♪」
さやか
「ミナト君、ほんとに食べていいの?」
ミナト
「ああ、いいよ、食べてくれ」
(少し胃が荒れているのか、あまりたくさん今は食べたくないんだ……)
────────────────────────────────
【Scene B-13:4日目・午後/“獣ではなく、人間の強さ”で突破】
────────────────────────────────
【ト書き】
4日目の午後。
森は深く、影は濃い。
魔物の気配はまだある。
はるな(内心)
(手が動く)
(見える)
(体が、感じる)
(レン、琉生、悠真、いる)
(生きてる)
(これなら、いける!)
【ト書き】
はるなは冷静に前衛を張る。
【ト書き】
レンは魔力の刃の角度を調整している。
【ト書き】
琉生は軽口を叩きながら周囲を警戒する。
【ト書き】
悠真は地図を見ながら最短ルートを探している。
悠真
「……今日を過ぎれば……
後……半日……!」
レン
「よし、行けるな」
はるな
「……うん」
【ト書き】
四人の視線が交差する。
魔物の返り血と汗でむせ返る拠点。
四人の吐息だけが規則的に重なる。
琉生
「……今日の夜が最後……
気を抜けない」
レン
「大丈夫だ」
「日を追うごとに魔物が小さくなっている」
はるな
「あらかた狩りつくしたかもね」
悠真
「……でも、安心はダメ……だろ?」
【ト書き】
はるなの表情から笑みが消える。
はるな
「そうね」
「勝った時が一番死ぬ」
【ト書き】
レンも表情を引き締める。
レン
「結界発動用の刻印が潰れてないか、
日が落ちる前に見てくるわ」
琉生
「レン、俺も行くよ!」
【ト書き】
二日間の夜が四人を叩き上げた。
削られ、追い詰められ、それでも生き残った熱が残っている。
最後の夜を越えるための火が、
四人の中で静かに燃えていた。
────────────────────────────────
【Scene C-9:4日目夕方・C班“寝ずの番”】
────────────────────────────────
【ト書き】
C班の野営地。
燻製箱は安定し、乾燥ネットは風でもないのにわずかに揺れた。
水処理装置は二段ろ過+煮沸で完璧。
しかし、見えない足音にかすかにふるえていた。
おと
(嫌だ、盗られる、何だ、私は間違ってない。汚嫌だ、嫌だ……捕まえてやる)
「私が今晩、夜通し番をする……うん。見張る」
新
「一人は危ないよ、それに……」
朔太郎
「……これ、みて……毛……」
陸斗
「ん……鹿の毛か?」
朔太郎
「……短い。鹿じゃない」
「それに……細すぎる」
「ありえないはず、皮を剥いで、
血抜きしてからここに持ってきてる
毛が残る余地がない」
陸斗
「じゃ、なに?」
新
「獣か……これ、動物だ」
おと
(獣!嘘、嘘、汚い、汚い、汚い………消す、消さないと、食べられない!)
「うそ!……あぁ……一度殺菌しないと!」
朔太郎
「僕がやるよ」
新
「とにかく一人番は危ないよ」
おと
「でも、二人で番をすると、最後の帰投で万一があると……」
陸斗
「じゃあさ、動物なら、灯をともしておけば追い払えるんじゃないのか?」
新
「魔物が来ないかな?」
おと
「魔物なら……倒して終われる。動物は、来れられても気づけない」
陸斗
「探知、結界……俺らそんなにうまくないか?」
新
「いや、俺たちの術を潜り抜けてきてるんだ」
「ここの動物、慣れてる」
「……箱も、吊るしも、開けられてないのに……」
おと
「ここって演習でよく使うから?」
陸斗
「あるのか!?そんなこと!!動物って油断ならねぇな」
「じゃあ、寝ずの番だな、魔物が来たら倒す!」
「見えねぇ相手より、来る相手の方がマシだろ」
「おと、俺、体力には自信あるから、今晩付き合うよ」
新
「うん、ふたりなら、まだ……」
おと
「そうしよ? 灯用の術式を刻印してくるね」
「……見逃したくない」
「もう、削られるのは嫌だ」
【ト書き】
C班は、
“技術 × 魔法 × 力 × 記録”
が噛み合い、
“野営工房”を”野営陣”へと改造していった。
────────────────────────────────
【Scene A-10:4日目・夜/視覚狭窄と精神の機能不全】
────────────────────────────────
【ト書き】
夜。
森は完全な暗黒に包まれている。
A班は天幕の中で交代しながら監視を続けている。
ランド
「……暗すぎる……」
さやか
「ライト、唱える……?」
ミナト
「ダメ」
「“光の反動”で数分間、完全暗黒になる」
【ト書き】
パキッ
天幕の外で枝が折れる音が響く。
ミナト内心
(なんだ、何かいる?それとも?気のせいじゃない、だが探知できない。小さいものか?)
ニーコス
「……風」
「でも……何か、いる」
【ト書き】
さやかは恐怖に負ける。
咄嗟にライトを発動する。
“パッ”
【ト書き】
小さな光が生まれる。
そして、その直後。
A班全員の視界が真っ黒になる。
ランド
「見えねぇ……!」
さやか
「ごめん……ごめん……!」
ミナト
「動かないで」
「ニーコス、音だけで周囲を読んで」
ニーコス
「……大丈夫」
「敵、いない」
「風だけ」
【ト書き】
A班は恐怖の中で動きを止める。
頼れるのはニーコスの耳だけだった。
────────────────
「キャァー!!!」
【ト書き】
遠くから悲鳴が聞こえる。
ニーコスの耳がぴくりと動く。
周囲を見回す。
天幕の中。
ランド、さやか、ミナトは目を押さえている。
【ト書き】
ニーコスは静かに外へ意識を向ける。
探知魔法を発動する。
薄い光膜がニーコスの身体を包む。
その光は輪となり周囲へ広がっていく。
探知に映るのは小さな昆虫。
その虫を狙う野鳥。
森のいつもの生き物たちだけだった。
危険はない。
ニーコスはほっと息を吐く。
そのまま身体を丸める。
再びさやかとミナトの間へ潜り込む。
ニーコス
「……大丈夫」
「敵、いない」
「寝よ……」
さやか
「ありがと」
「おやすみなさい」
ミナト
「何か聞こえなかったか?」
ニーコス
「……んっ、大丈夫、ここは危険ない……」
ランド
「……」
【ト書き】
やがて天幕の中へ静かな寝息が満ちていく。
────────────────
【ト書き】
翌朝。
ミナトが目を覚ます。
隣にはランド。
反対側にはさやか。
そしてニーコス。
四人は固まるように眠っていた。
もう何も言わなくても団子だった。
────────────────────────────────
【Scene C-10:4日目夜・C班“接触・おとの悲鳴”】
────────────────────────────────
【ト書き】
夜、C班の野営地。
灯に照らされ、燻製箱は安定し、乾燥ネットは静かに垂れている。
おとと陸斗の息遣いだけが、虫の声に紛れて聞こえる
おと
「……」
陸斗
「……おと、灯疲れたら代われよ?俺が発動するから」
おと
「……大丈夫、この調子なら数時間続けられる……」
陸斗
「無理すんな」
おと
「……うん」
【ト書き】
ドン!キン!
風に乗って、ぶつかる音が聞こえる
陸斗
「毎夜毎夜、やってんなぁ……どこの班だろ?ミナト……は考えにくいから、レンか……」
おと
「……ちょっと離れてもいい?」
陸斗
「ああ、いいぜ……この箱は俺が見てる」
おと
「……お願い」
【ト書き】
しばらくして、おとが消えた方向から音が消える。
陸斗
「なんもこねーな」
【ト書き】
草の間で、無数の小さな気配が一斉に動く。
足元。
背後。
左右。
視界の外で、何かが走る。足元を這う感触――一瞬、静かになる。
カサカサカサカサ――
おと
「……っ?」
次の瞬間――
「ァァァァァ きゃーあああ」
【ト書き】
陸斗の体から球形に波が一走りする
おとの方向で、動き回る気配を察知する。
陸斗はおとのいた方向に駆け付ける。
陸斗
「なんだ!」
「おと!」
【ト書き】
乱れた服でうずくまるおとと目の前に切り倒された草木が広がっていた。
陸斗の体から再び球形に波が一走りする
そこには、荒れた草と、おとしかいなかった。
陸斗
「おと!、大丈夫か、何か見たのか?」
おと
服を直しながら
「あっち、あっちから、音が」
「慌てて、撃ったけど……」
【ト書き】
陸斗は暗視の魔法を使い周囲を見る。風に揺れる草木以外何も見えない。
陸斗
「おと、大丈夫だ、何もいない」
「立てるか?」
おと(立ちながら)
「うん、カサカサって小さな何かが動く音がたくさんして……」
陸斗
「とりあえず、戻ろう」
(小さく)
「……さっきまで、確かにいた気配はあったのに」
おと
「うん……」
【ト書き】
箱が黒い波に覆われていた。
燻製箱は、一回り大きな影を纏その縁から、細い影が滑るように降りる。
ロープ。
継ぎ目。
隙間。
そこから、次々と黒い小さな影が津波のように溢れ出る。
陸斗
「な、なんだ!!」
おと
「ちょっと!!」
【ト書き】
ざぁっと黒い影のような小さな者たちが、波うって箱から出ていく
陸斗
「くそ、逃がすかよ」
【ト書き】
陸斗は複数の風の刃を影に投げつける
陸斗
「……ちっ!」
【ト書き】
風の刃が一つ、影を切り裂く。
小さな塊が地面に転がる。
だが――
他の影は止まらない。
おと
「あいつらか……よくも!」
おとは燻製箱を見て息を呑み、火炎の魔法を撃とうと構える。
陸斗
「おらぁ!……おと、火はやめとけ!」
四方八方に風の刃を飛ばしながら、陸斗が吠える。
おと
「また、削られてる。あいつら……」
「こうなったら、しんどいけど……密封の術式を組む」
(絶対、近寄らせない……汚い汚い……消毒しないきゃ……嫌だよぉ)
【ト書き】
バサッバサッと草木を薙ぐ音が響く
陸斗が複数の風の刃を影に投げつけている。
陸斗が小さな動物の死体をつまんで持ってくる。
陸斗
「……鼠……か? こんなに……?」
おとは目に涙を浮かべ真剣に燻製箱に刻印を打っていた
おと
「ごめん、あとで、今はこっちをする」
陸斗
「ああ、わかった」
【ト書き】
おとは額の汗を涙ごと拭いながら、密封術式と進入時に衝撃を与える罠をくみ上げた。
陸斗は、新と朔太郎を起して、起きた事を説明する。
新
「分かった。ありがとう。危なかったね。
それから、明日の朝、この密封術式を解除しないとだね」
朔太郎
「おと、解除を容易にするための符丁を設定してもいい?」
おと
(息が浅い)
「うん、お願いしてもいいかな、まだ魔力通してないから、発動してない」
「……さっきの、まだ……近くにいる気がする」
朔太郎
「分かったあとやるね」
【ト書き】
おとは疲れたように蹲る。
新
「念のため、番は交代しよう。俺と朔太郎がおきてるから、
陸斗とおとは休んで」
陸斗
「俺はいい、新の方が休め、お前が明日しゃんとしてる方がいいだろ」
「……来るなら来いだ」
新
「そっか、うん、じゃ朔太郎、陸斗と頼む」
朔太郎
「いいーよー」
【ト書き】
その夜、空が白むまで何事も―――――
ただ時折、風の中に
小さく何かが擦れる音が混じった気がした
その度に、石の上からゆらっと二人の影が揺れていた。
それが何回目だったか、
もう誰も数えていなかった。
────────────────────────────────
【Scene K-5:4日目・夜/演習場麓のロッジ】
────────────────────────────────
【ト書き】
ふっと目を覚ました光は、悲鳴が聞こえた気がした。
光
「……」
【ト書き】
光は目を閉じる。
集中し、広域探知を発動する。
光
「ばれるかもしれんが、ま、いいか」
【ト書き】
小さな言い訳を呟く。
探知に掛かった反応を一つずつ確認していく。
光(内心)
(ないな)
(別に戦闘も事故も)
(今度班が少し慌ててる、くらいか)
(今度班は今日、寝ずの番だな)
(森の獣対策だな)
(燻製箱は餌持ってますと言っているようなものだからな)
(寝よ寝よ)
【ト書き】
光は探知を解除する。
再び毛布へ潜り込んだ。
ロッジの外では、山の夜が静かに更けていく。
【ト書き】
陽子は目を覚まして、体を起こす。
隣に光が寝息を立てているのを見て、ベッドから降りる。
隠蔽式探知魔法を広域に放って、顔をしかめる。
陽子
「いない……香炉を焚いているのに魔物がいない」
「いてもすばしっこい小型だけ」
「守屋班が狩りつくした?そんなに集めたのかしら……」
【ト書き】
スースーと寝息を立てている光をみて、彼が反応しないことも不思議だと思っていた。
陽子
「ほんとに、脅威がないってことなのかしらね」
「ま、明日、皆を迎えて帰れば任務終了……ね」
【ト書き】
再びベッドにもぐりこみ明日誰が衛生点検が必要そうかチェックを忘れない様にしようとと
考えながら眠りについた。
────────────────────────────────
【Scene F-1:5日目・午前/帰還ルートの分岐】
────────────────────────────────
【ト書き】
朝。霧が晴れ、森の影が薄くなる。
五日間の疲労が全身にまとわりつくが、
三班はそれぞれの“生存の形”で帰還ルートへ向かう。
・A班は“静かに、正確に”
・B班は“泥と血のまま、前へ”
・C班は“整った野営の延長のように”
森の音が、三つの足音を迎える。
────────────────────────────────
【Scene F-2:A班の帰還 ― 完璧なアーキテクチャ】
────────────────────────────────
【ト書き】
さやかが目を覚ます。
みんな団子になっている。
ふと視線を回すと、自分の手がミナトとランドに絡まっていることに気づく。
さやか(小声)
「ッ……」
もぞもぞと動こうとすると、背中が重い。
ニーコスに抱きつかれていて動けない。
さやか(心の声)
(詰んだ……はずいよ……)
しょうがないから、もう一度寝ることにした。
(間)
ニーコスが先に起き、
その動きに合わせてさやかもそっと抜け出すように起きる。
ミナトが一番最後に起きた。
【ト書き】
川沿いの道。
水音が一定のリズムで流れ、
A班の足音はそのリズムに溶け込む。
ニーコス(耳を澄ませて)
「……風、弱い。
このまま行けば、危険はない」
ミナト(頷き)
「ランド、荷物の重心を少し下げて。
さやか、魔力残量は?」
さやか
「五割。十分だよ」
ランド(軽く笑う)
「五日目で五割って……お前、化け物かよ」
さやか(照れ笑い)
「えへへ……」
【ト書き】
ミナトは地形を見渡し、
“戻れる形”の最終チェックを行う。
ミナト(独白)
(退避路、三系統。
水、十分。
食料、最低限。
全員の足取り、安定……
よし、崩れてない)
ニーコス(小さく微笑む)
「……ミナト、すごい。
森の中で、ずっと“帰り道”を作ってた」
ミナト
「みんなが動いてくれたからだよ」
【ト書き】
A班は、
五日間で最も“綺麗な状態”でゲートへ向かう。
────────────────────────────────
【Scene F-3:B班の帰還 ― 最強のフォールトトレランス】
────────────────────────────────
【ト書き】
正面から熱を感じて目を覚ましたはるなは、
目の前でレンが焚いた焚火を見る。
はるな
「あったかい……」
レン
「起きたか?
悠真がまだ寝てる。もう少ししたら行くか」
【ト書き】
レンは湯をコップに入れて差し出す。
はるな
「ん……」
悠真
「そういやさ、昨日、悲鳴聞こえなかった?」
琉生
(ニヤッと笑い)
「悠真の悲鳴は聞こえたぞ」
悠真
「そうじゃなくて、夜中だよ」
はるな(静かに)
「……聞こえた、でも剣戟の音はしなかった」
「……だから、寝た」
レン
「……魔力反応が届いたな、探知してたみたいだが……」
「ま、手助け無用ってやつだ」
悠真
「そっか……」
【ト書き】
湯を受け取り、皆がのどを潤す。
はるな
「……行こう」
────────────────────────────────
【ト書き】
谷底の道。
泥と血の匂いが濃く、
B班の足音は重く、荒い。
だが――
その目は鋭く、
呼吸は深く、
足取りは迷いがない。
琉生(泥を払いつつ)
「……俺ら、見た目ひっでぇな……」
悠真(苦笑)
「でも……生きてる……」
レン(前を見据えながら)
「はるな、右の茂み。
何かいる」
はるな(即応)
「……大丈夫。
“逃げる音”」
【ト書き】
五日間の狩りで、
はるなとレンは“森の音”を読めるようになっていた。
悠真(感慨)
「……俺たち、強くなったね」
琉生(肩で笑う)
「強くなったっていうか……
生き残るために“噛み合った”だけだろ」
レン(静かに)
「それで十分だよ」
【ト書き】
B班は、
服はボロボロ、
血と泥にまみれ、
匂いもひどい。
だが――
その姿は、
**“生き残った者の強さ”そのもの**だった。
────────────────────────────────
【Scene F-4:C班の帰還 ― 天才的なリソース活用】
────────────────────────────────
【ト書き】
低地の道。
風が穏やかで、
C班の足音は軽い。
燻製箱はまだ温かく、
乾燥ネットには保存食が揺れている。
朔太郎(記録しながら)
「……五日間、補給リスクゼロ。
これ、奇跡じゃなくて……技術だ
ついでに鼠狩りも!」
新(魔法陣を撫でながら)
「維持魔法、最後まで安定してたよ
ついでに鼠狩りも!」
陸斗(胸を張って)
「俺、薪割りめっちゃ上手くなった!
ついでに、鼠狩りも!!」
おと(微笑む)
「みんなのおかげだよ。
“工夫で生き残る”って、こういうこと
鼠はもういらない!」
【ト書き】
C班は、
五日間の疲労はあるが、
最も“安全で、整った状態”で帰還する。
────────────────────────────────
【Scene F-5:ゲート前 ― 帰還】
────────────────────────────────
【ト書き】
ゲート前。
【ト書き】
北川光と南沢陽子が待っている。
【ト書き】
最初に現れたのはA班だった。
光
「……綺麗だな。
五日間とは思えん」
陽子
「ミナト君、あなた……
本当にすごいわね」
ミナト
「いえ……
みんなのおかげです」
陽子
「さやかちゃん、ランド君、こっちにきて」
陽子
「感染症にあったでしょ?
確認させて」
【ト書き】
さやかとランドは陽子に連れられ、
衛生点検を受けに向かう。
ミナト
「……皆戻れた……」
────────────────
【ト書き】
その時――ズウウウウウウン!!!
ランド
「っなんだ!?」
【ト書き】
山腹から火と風が巻き上がる。
巨大な岩塊が何十個も噴き上がり、
ゲート前へ降り注いだ。
光
「全員伏せろッ!!」
【ト書き】
光の怒号が響く。
さやか
「あ……」
【ト書き】
ドン!!!!
鈍い音がなり熱い風が吹き抜ける。
飛来した岩がさやかへ直撃する。
左腕と右足が不自然な方向へ折れ曲がる。
さやかは地面へ転がった。
【ト書き】
陽子と光が同時に防壁を展開する。
続く飛来物を弾き返す。
ミナト&ランド
「「さやか!」」
【ト書き】
ランドが留まり叫ぶ。
ミナトは叫びながら既に走り出していた。
ミナト内心
(走れ!いやな音がした……)
【ト書き】
ミナトはさやかの傍へ膝をつく。
首へ手を当てる。
耳をさやかの鼻元へ寄せる。
瞼が痙攣している。
かすかな吐息がある。
ミナト
「発動系痛覚緩和」
【ト書き】
ミナトの身体が淡く光る。
治療ではない。
痛みだけを和らげている。
ミナト内心
(手が手じゃない。青い、いや赤い。足が……地面に張り付いている。
おい、嘘だろ、おい、さやか、マジか、これ現実なのか……)
陽子
「水理湊!!
そこをどきなさい!」
【ト書き】
陽子が走ってくる。
さやかの隣へ座り込む。
ミナトは立ち上がり、陽子を見る。
ミナト内心
(おい、南沢陽子、何してた、ここは危険度1(いち)なはずだろ───)
光
「ぐっはっ!」
【ト書き】
激しい金属音が響く。
金属鎧を纏った光が地面を転がる。
ミナトは光―――それから、熱の感じる方を見る。
ニーコス
「猿……」
「炎の猿」
【ト書き】
ミナトは熱源の方向を見ている。
ミナト
「南沢陽子」
ミナト内心
(出来るんだろうな、出来なければ――――)
「さやかは助かるのか?」
【ト書き】
ミナトは陽子の方を振り向く。
治療する陽子を見据える。
ミナト
「いや」
「助けられるのか?」
【ト書き】
陽子は振り返らず、治癒術式を発動している。
さやかの足がゆっくりと伸び、服の中で厚みを増し、
正しい向きに変わり元の位置に戻る。
陽子
「なめないで」
「助ける」
「あなたは仲間と光の支援をして」
「あれは危険な奴だ」
【ト書き】
さやかの腕がゆっくりと伸び、回転し正しい向きに変わり元の位置に戻る。
ゆっくりとさやかの呼吸が戻る。
ミナト
「南沢陽子」
「必ずだ」
「失敗は許されない」
陽子
「……行って」
────────────────
【ト書き】
ミナトは息を吐く。
虹色の光を宿した目で山腹を見る。
ミナト(内心)
(なんだあれは)
(火、風、土)
(三属性の渦……)
(光教官は食い下がっている)
(だが、あれでは……)
(強化だ、弱体化も、視線誘導、全部だ、誰がいる?ニーコス、ランド、居る)
ミナト
「ニーコス!
風で支援を!」
「ランド!
飛来する風と火を弾けるか?」
「俺は岩を撃つ!」
ミナト
「光教官、強化します!」
【ト書き】
ミナトは光へ向かって手を伸ばす。
緑色の光膜が光の身体を包んだ。
────────────────
【Scene F-5②:火風岩猿との交戦開始】
────────────────
光
「お、分かってるね」
「よっし」
「ミナト、お前が指揮をしろ」
「あれは火風岩猿────カラヨドロスガパだ」
「三属性を使うが、根っこは単純」
「力押しだ。ただし、めっぽう硬い!最大火力で押すぞ!」
【ト書き】
光はそう言い残す。
次の瞬間、火風岩猿へ向かって跳躍した。
────────────────
【ト書き】
山腹。
二メートル近い燃える猿が咆哮を上げている。
炎を纏った腕で巨大な岩を持ち上げる。
それを次々と投げつけてきた。
光は左右へ飛びながら接近する。
岩が地面を砕き、
火が草木を焼き、
風が砂塵を巻き上げる。
────────────────
ミナト(内心)
(猿は岩を武器にしている)
(光教官は接近戦)
(近付ければ戦える)
(なら――)
ミナト
「ランド!」
「岩を拾え!」
「猿の頭を狙う!」
ランド
「おう!」
ミナト
「ニーコス!」
「風でランドの投げる岩を加速できるか!」
【ト書き】
長い耳をピンと立て、ランドと猿を交互に見る。
ニーコス
「できる!」
ミナト
「頼む!」
────────────────
【ト書き】
ランドが大岩を抱える。
【ト書き】
ニーコスの風がその周囲へ集まる。
【ト書き】
岩に風が巻き付く。
ランド
「いっけぇぇぇ!!」
【ト書き】
猿は、岩を掲げて、光に向かって投げようとしている。
その直後、大岩が火風岩猿へ飛ぶ。
ドゴォン!
【ト書き】
猿の肩へ命中する。
猿がよろめいた。
ランド
「入った!」
ニーコス
「もう一回!」
【ト書き】
猿は岩が来た方向を見る。
ランドを見つけ睨む。
ランドが一拍固まる。
────────────────
光
「――上出来だッ!!」
【ト書き】
その隙へ光が飛び込む。
その様子をミナトは、虹色に輝く瞳で見ていた。
フレーム1
金属光沢を纏った人型が猿の脇腹の燃え盛る岩にあたる。
フレーム2
猿の首が当たった岩の方向に向く。
当たった銀色の塊と岩が猿の脇腹にめり込む。
フレーム3
猿の巨体が九の字に曲がり、銀色の塊から離れ始める。
銀色の塊が猿の体から逸れ始める。
フレーム4
猿の巨体が地面に触れる。
銀色の塊が地面に触れる。
フレーム5
猿の巨体が地面をへこませ、地面を割り後ろに流れていく。
銀色の塊が地面に刺さる。
フレーム6
猿の巨体がそのまま、地面を削りながら後方に流れていく。
ドゴン!!バキバキバキッ
音が遅れてやってくる。
山腹が大きく揺れ、野鳥が群れとなって飛び立つ。
光
「こっちだっているんだぜ!」
────────────────
【ト書き】
光の叫び声に合わせるように、火風岩猿が咆哮する。
全身の炎が一気に燃え上がった。
周囲へ炎の竜巻が広がる。
ミナト(内心)
(まずい)
(強化だけじゃ足りない)
(あの炎は――)
────────────────
【ト書き】
その瞬間。
ランドが投げた二発目の岩が飛ぶ。
ドゴォッ!
【ト書き】
カラヨドロスガパの胴体へ直撃し砕け散る。
ランド
「当たれぇぇ!!」
ニーコス
「もう一発!」
【ト書き】
風が唸る。
岩が加速する。
────────────────
【ト書き】
光はカラヨドロスガパの側の岩の上へ飛び乗った。
そのまま高く飛び上がり、猿の頭に拳を叩き込む。
ドドドン!!
【ト書き】
地面が沈む。
山腹全体が振動する。
ミナト(内心)
(押している)
(このまま――)
────────────────
【ト書き】
だが。
次の瞬間。
ゴガン!!
岩が地面ごと爆ぜた。
光の姿が見えなくなる。
【ト書き】
砕けた岩の上へ、
カラヨドロスガパが立ち上がった。
カラヨドロスガパ
「グウォオオオオ!!」
────────────────
【Scene F-5③:崩壊と増援】
────────────────
【ト書き】
火風岩猿──カラヨドロスガパが咆哮する。
周囲の炎と風が一気に膨れ上がる。
【ト書き】
ミナトの視界が歪む、猿の周りの景色が歪んでいく。
ミナト(内心)
(倒せない)
(あれは―――――)
────────────────
【ト書き】
猿の魔力の渦が一点に集まった。
次の瞬間、世界が突然白く弾けた。
ガッッシャアアァアアン!!激しく防壁が割れる音と共に
衝撃がミナトを飲み込む。
ミナト
「な、ぐ、がっ!」
【ト書き】
地面へ叩きつけられる。
砂が口へ入り込む。視界が赤と黒そまり、白い衝撃が来る。
ミナト(内心)
(痛い)
(息ができない)
(詰まる)
(撃たれた、燃える岩を風で加速させたか)
【ト書き】
こちらを見ていたカラヨドロスガパがその口角を釣り上げて視線を移す。
その視線の先。
陽子とさやかへ向かっていた。
ミナト(内心)
(猿が陽子とさやかの近くに)
(俺は飛ばされた)
【ト書き】
手に力が入る。
動ける。
防壁が効いたらしい。
口の中に血の味が広がる。膝が落ちる。
手を地面につける。ニーコスの叫び声が遠くに聞こえる。
────────────────
【ト書き】
カラヨドロスガパの姿がブレ、ドン!と音が鳴る。
燃える猿は、陽子とさやかの数メートル先に居た。
【ト書き】
陽子が立ち上がり、一気に十数メートルの無数の水弾を無数に作り出した
カラヨドロスガパは吼え、自分が纏う燃える岩を陽子に投げつける
陽子は、水弾を微細化して迎撃する。
ドン! ドン! ドン!
腹の底から響く音が鳴る。
微細化された水粒の表面が瞬時に沸騰した。
爆ぜた水粒が白い蒸気となって広がる。
カラヨドロスガパはさらに燃え上がり、その一帯の水粒を焼き払う。
燃える岩の弾を放つ。
陽子はさらに水粒を撒き散らす。
蒸気と霧が折り重なり、煙幕のように辺り一帯を覆っていく。
【ト書き】
その隙に、陽子はさやかを抱き上げる。
その場を離れようとする。
【ト書き】
その瞬間。
火風岩猿が純粋に燃え上がる数メートルの火炎弾を無数に放つ。
炎は真っ直ぐさやかへ向かう。
【ト書き】
陽子は咄嗟に身体を入れた。
炎が陽子を飲み込む。
二人まとめて地面へ崩れ落ちる。
逃がさない、食らう、食らいつくす――――
まるでそう叫ぶ魔獣の声が聞こえた。
ミナト
「ニー……」
ミナト(内心)
(うわあああああああ!くそくそくそ、ふざけるな、ふざけるな!)
(くそぉおおお、声が出ない)
(強化)
(支援)
(ランド誰でもいい!)
(撃てるか)
【ト書き】
ランドを見る。
ランドは猿を見ながら硬直している。
ニーコスは、こちらを見ている。
────────────────
ミナト
「発動系水縛拘束!」
「ランド!!!!」
【ト書き】
ミナトは声にならない音を出し魔法を放つ。
ランドとニーコスの身体が震える。
二人とも我に返る。
岩を拾い上げる。
全力で投げた。
ドゴン!!
【ト書き】
火が消え赤黒い塊と化した陽子とさやかへ猿が近づく────その時
岩が猿へ直撃する。
そして、とっさに猿は水縛を回避する。
その視線は、小賢しくも小岩を当ててきた───────ランドに向いていた。
────────────────
【ト書き】
火風岩猿はランドへ向かう。
ニーコスが手を猿の方に出し、顔をそむける。
燃え盛る巨体が走る。
ランドとの距離が消える。
【ト書き】
その直前。
黒い影が割り込んだ。
ギィン!!
猿が後方へ吹き飛ぶ。
そこには、細剣を刺突姿勢で猿に向くはるなが居た。
はるな
「何、この猿……」
「硬すぎる」
【ト書き】
はるなは目を見開く。
細剣が刺さらなかった。
────────────────
レン
「動きを止めるぞ!」
「はるな!」
【ト書き】
レンが拘束魔法を重ねる。
三重の拘束術。
はるな
「はい!」
【ト書き】
蛇の様にうねり迫る束縛の縄を猿は跳躍して
逃れる。猿が、反転の跳躍にはいろうとした────
その瞬間。猿の巨体がそのまま後ろに流れ、
岩へ激突する。
────────────────
【ト書き】
ミナトが息を吐く。
震える手を伸ばす。
ミナト
(滑らせた、逃がさん、絶対に止める!)
「終結系解除!」
【ト書き】
猿を覆っていた炎が消える。
岩が崩れる。
風が霧散する。
三属性の強化が掻き消える。
【ト書き】
同時に。
ミナトの口から血が溢れた。
その場へ膝をつき、
倒れこむ。
ミナト(内心)
(さやか)
(陽子)
(光)
(死なせない)
(絶対)
(暗い……冷たい)
────────────────
【Scene F-5④:火風岩猿討伐】
────────────────
【ト書き】
はるなが走る。
はるな(内心)
(猿が弱った)
(ミナトがやった)
(今なら――)
【ト書き】
細剣を握る。
繰り返し積み上げてきた型をなぞる。
最も力が乗る軌道。
最も速い踏み込み。
その全てを重ねる。
【ト書き】
猿が吠え立ち上がる!
はるなの細剣が火風岩猿へ突き立つ。
同時に鉄針が猿へ突き刺さる。
一拍の後、猿がゆっくりと膝をつく。
レン
「まだだ!!」
レン
「鉄針の手ごたえが弱い!」
────────────────
【ト書き】
陽菜が飛び跳ね距離を取る。
火風岩猿が咆哮する。
次の瞬間。
爆発するように立ち上がった。
【ト書き】
弾かれた鉄針が四散する。
何本かがはるなへ向かう。
ギギギギン!!
【ト書き】
火花が散る。
鉄針が弾き飛ばされる。
ランドがニーコスをかばうように大かぶさり伏せさせる。
【ト書き】
はるなは立ち尽くす。
腹部に突き刺さった鉄針を見つめていた。
────────────────
【ト書き】
猿が吠える。猿から血が飛び散る。
血をまき散らしながら、はるなをにらみつける。
【ト書き】
はるなの目前に、空を突くような巨大な氷柱が落下した。
ドガァン!!
【ト書き】
氷柱が猿を叩きつけ、猿は後ろへ飛び退く。
その少し離れた場所では、巨大な氷柱の魔法陣を維持していた今度桜都が、力尽きたように膝を揺らしていた。
新が素早く駆け寄り、その肩を支える。
新
「陸斗!」
「行ってくれ!」
陸斗
「おうよ!」
「強化最大!」
【ト書き】
新に桜都を託し、陸斗が跳ぶ。
風を裂く速度で猿へ迫る。
頭を振る猿。
【ト書き】
拳を振り抜く。
ドゴォン!!
【ト書き】
火風岩猿が地面へ叩きつけられる。
土が吹き飛ぶ。
周囲が揺れる。
────────────────
【ト書き】
はるなは腹の鉄針を引き抜く。
戻ってくる血を飲み込み。
細剣を構える。
はるな(内心)
(足が震える)
(痛い)
(でも)
(弱体が効いているうちに――撃つ)
(あっぐ……狙いがつけ……)
【ト書き】
はるなの膝が落ち、
一拍後、再び細剣を構える。
────────────────
【ト書き】
猿と陸斗が殴り合う。
陸斗は拳を叩き込む。
猿も腕を振るう。
ドゴン!!
【ト書き】
陸斗の首が曲がる。
レンは、手を広げ陸斗に向けて光球を投げる。
陸斗は光り、猿を殴る。
猿は殴られた勢いを借り縦方向に回転し踵で陸斗の肩を砕く。
陸斗の肩が凹む。血が飛ぶ。陸斗の目が上を向く。
レンは、再び陸斗に向けて光球を投げる。
陸斗はそれを受けて、目を剝き、動き出す!
【ト書き】
陸斗は猿を殴り、蹴る。
抑え込む。
はるなが細剣の切っ先を猿に向け狙いを定めている。
陸斗
「ぶぁぁあぁ!」
火風岩猿
「ぐぁぁぁああ!」
【ト書き】
ランドがニーコスを起し、ミナトに向かって歩き出す。
────────────────
【ト書き】
血をまき散らし、猿が咆哮する。
陸斗の腕へ噛みつこうとする。
その瞬間だった。
【ト書き】
猿の頭蓋へ一本の線が走る。
バン!
猿の頭蓋を貫く細剣があった。
衝撃に頭を揺らしながら、猿がガリガリと音を立てて後ろを振り返る。
自らの頭を切り裂いた存在を見る。
そこには、はるながいた。
猿の瞳にはるなの瞳が映りこむ。
猿の瞳の奥。
一瞬だけ別の瞳が映った。
【ト書き】
次の瞬間。
猿の脳が散る。
火風岩猿が崩れ落ちた。
────────────────
【ト書き】
ミナトはうつぶせになり腕を巻き込み、
上体をあげ血を吐いて、立ち上がる。
ミナト(内心)
(喉が熱い、手足が寒い……)
(くそぉ……)
(さやか)
(陽子)
(胸が……腕も痛い)
(筋断裂は確定か)
(骨はある)
(でも手が握れない)
【ト書き】
ミナトは腕を押さえながら歩く。
陽子とさやかのもとへ向かう。
ニーコス
「ミナト!」
ミナト
「ぁぁッ……」
【ト書き】
ミナトは声にならない音を鳴らす。
顎で陽子とさやかの方を指す。
────────────────
【ト書き】
ミナトに向かって歩いていた、ランドとニーコスが陽子とさやかの所に走る。
ニーコス
「さやか!」
「陽子!」
「生きてる?」
「返事して!」
【ト書き】
ニーコスの身体が青く発光する。
癒しの光が二人を覆う。
【ト書き】
悠真と朔太郎がやってくる。
陽子とさやかの二人に手を添える。
悠真
「ニーコス、代わって!」
「発動系火傷治癒」
【ト書き】
淡い光が灯る。
赤黒くなり炭化した皮膚が治っていく。
悠真は膝をつく。
悠真
「続き……頼む……」
【ト書き】
そのまま倒れ込む。
────────────────
【ト書き】
ミナトが這うように近付く。
ミナト
「光は……?」
「さやかと陽子は助かる……?」
朔太郎
「陽子さんとさやかは大丈夫だ」
「光さんは分からない」
「誰かタオルないか!二人に!」
【ト書き】
その声を聴いて、新に支えられておとがやってくる。
朔太郎が青い光を二人に当て続けている。
新が何枚かのタオルを持っている。
新が大部分が燃えて破れている服から覗く肌を
見ない様に顔を背けながら、陽子とさやかにタオルを添える。
おと
「ここは、私が……」
おとががタオルと服に手を当てる。タオルが溶け、焼けて破れた服を修復していく。
おとの顔にみるみる汗が浮く。
ミナト
「っ……」
【ト書き】
ニーコスがミナトに駆け寄る。
ニーコス
「ミナト」
「貴方も治さないと」
【ト書き】
ニーコスが肩へ手を置く。
青い光がミナトを包む。
【ト書き】
ミナトの顔色が良くなる。
ニーコス
「ミナト、痛いところはない? う、う……」
【ト書き】
かすれた声で言った後
ニーコスは、その大きな瞳からぽろぽろと涙を流し
ミナトを抱きしめた。
ミナト(内心)
(痛みが引いていく……だが、光は……どこに)
ミナト
「光……」
【ト書き】
呟いた直後、いたぞーー!遠くから声が響いてきた。
ミナトは、声の方向を探して周りを見まわした。
────────────────────────────────
【Scene F-6:光 ─ 構築系上級位階の提示】
────────────────────────────────
【ト書き】
――視点は少し戻り、別の場所。
泥。
血。
破れた服。
五日間の“狩り”の痕跡を、火と土と風に書き換えられた全身で治療と探索を行っていた。
琉生
「見つからない。どこに飛ばされたんだ」
レン(治癒魔法をはるなに掛けながら)
「はるなちゃん大丈夫か?」
はるな
「ありがとう、レン、血は止まったわ。あいつ硬かった……」
レン(消え入りそうに)
「ああ、とっさに出した魔法、あれ以外傷をつけられる気がしなかった……」
「結果、傷つけてしまった」
はるな
「ふふっ、気にしないで、五本飛んできて、四本はじけた、全部はじけなかったのは修行不足、まだまだ……」
新
「いたぞ!!!!!!」
「光さんだ!」
「ここにいる!!」
「悠真! いや、誰でもいい!」
「治癒使えるやつ! 残してるやつ来てくれ!!」
────────────────
【ト書き】
ミナトは走り出す。
ニーコス
「ミナト!まだ治り切ってないよ」
【ト書き】
腕はまだまともに動かない。
それでも走る。
ミナト(内心)
(失いたくない)
【ト書き】
息を切らしながら光の元へ辿り着く。
――猿と戦っていた場所から五百メートル近く離れていた。
光
「お、お前ら……」
「なんだその……野生みたいな……!」
【ト書き】
光は目を剥いている。
首は不自然な方向へ曲がり、
肩は裂けていた。
琉生
「生きてる……」
「問題なし……なのか?」
光
「あ?」
「ああ、これか」
「衝撃が強くてな」
「自分で骨を外したんだが、勢い殺し切れなくてな、割れちまった。ははっ」
「動けないから無事ってわけじゃない。無理やり支えるのも限界だぜ」
「よーこは?」
【ト書き】
光は苦しそうにしながらも口角を上げる。
陽子
「ここよ……」
「新君ありがとう」
「光さん、だいぶやられたわね」
【ト書き】
いつの間にか南沢陽子が新に支えられて近くまで来ていた。
ミナト
「陽子随行員」
「光随行員の治療を、してほしい」
【ト書き】
ミナトは絞り出すように言う。
陽子
「勿論よ」
【ト書き】
陽子の身体が青白く燃え上がる。
その光が光を包み込む。
光の首が伸び、向きが正しく向き直り、縮んで正しい位置に戻る。
裂けた肩が胸辺りから徐々に接合されていく。
顔色が少しずつ回復していく。
朔太郎
「すごい、こんな治癒術見たことない」
琉生
「戻り方がえぐいな」
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【ト書き】
ミナトの眉間から力が抜ける。
肩が落ちる。
ミナト(内心)
(よかった)
(戻れる)
(よかった)
【ト書き】
ミナトが振り返る。
向うでは意識を取り戻したさやかが泣いている。
ランドが必死になだめている。
【ト書き】
はるなは遠くからこちらを見ていた。
だがすぐに視線を悠真へ移し、
何かを話し始める。
光
「さて」
「帰還するかね」
「あっち行くか」
「遅れるなよ」
【ト書き】
いつの間にか光の鎧は消えていた。
砕け散ったはずの鎧は影もない。
乱れのない教官服へ戻っている。
ミナト(内心)
(換装術式……)
(一瞬で着替えた)
(あの状況で)
(まだそんな魔力が残ってる……)
(これが構築系上級位階か)
【ト書き】
光が歩き出す。
陽子がその後に続く。
生徒たちもゆっくりと帰路についた。
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【Scene F-7:帰ろう ─ 生存の哲学の結び】
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光
「はい、集合!」
「春日井陽菜、立花蘭土、佐伯紗耶香」
「お前らは衛生チェックを受けろ」
「陽子、頼む」
陽子
「三人とも、こっちにきて」
「確認させて」
【ト書き】
三人は静かに頷く。
そのまま衛生点検へ向かった。
五日間の戦いの痕跡が、その背中には刻まれている。
────────────────
光
「あとは、あの猿だが」
「あれについては後日調査書が回るはずだ」
「そっちを見ておけ」
「予断はするなよ」
「ただ……」
「あれは火風岩猿──カラヨドロスガパっていってな」
「ま、かなり危ない奴だ、ここだけの話、危険度で言えば……五だ」
「俺らみたいな上級位階者が四~五人で袋叩きってのが定石だ」
「はっはっはっは、それを、お前らぁああ、よくやったぞ!」
「それだけは今、噛みしめていい」
「お前らは優秀だ」
────────────────
【ト書き】
生徒たちは静かに言葉を受け止める。
三班三様の演習。
【ト書き】
そして凶悪な猿との戦い。
それら全てを乗り越えた合同課程一年生たちの姿は、
それぞれの“生存の哲学”を鮮やかに示していた。
【ト書き】
森の風が三班を撫でる。
五日間の物語へ、静かに幕が下りた。
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【Scene D-1:演習後の夕方/水理邸の“ただいま”】
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【ト書き】
演習から戻った日の夕方。
水理邸の玄関を開けた瞬間、
温かい空気とスープの匂いがふわりと流れ込む。
リーンは、ミナトの体を上から下まで見た後、
顔を背け、下を向く。
リーン
「その腕、まずは直しましょう」
【ト書き】
振える声で言った後、リーンはミナトに抱き着く。
二人の触れているところから、巨大な水滴の様な膜が広がり
二人の身体が巨大な水滴に浸かったようになる。
ミナトの姿勢の歪みが治り、膜が消え去る。
ミナト:「リーン……ありがとう。完全に動く」
リーン(静かに近づき)
「主様、お疲れ様です。
……大変香ばしくなられていて、リーンは少し涙目です。
まずはお風呂へ。
その後、少々……お話合いをさせてください。」
【ト書き】
漸く震えの留まった手をミナトの肩に添える。
ミナトは玄関に座り込み、
靴を脱ぎながら小さく呟く。
ミナト
「……ああっ、わかった……
風呂に行く……」
【ト書き】
ミナトは玄関に座り込み、靴を脱ぎながら小さく呟いた。
シャツの匂いを嗅ぎながら「そんなにくさいか?」と呟く。
五日間の疲労が、ようやく重力として身体に戻ってきた。
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【Scene D-1-2:風呂場】
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【ト書き】
かぽーん。
湯気が立ち上り、木の香りが広がる。
ミナト(湯に沈みながら)
「……生き返る……
この風呂、こんなに生き返るもんなのか……
……あああぁ……ふぅー……ぶくぶく……」
リーン(戸の向こうから)
「主様、お背中を流しましょうか?」
バシャッ
ミナト
「リ、リリリ……リーン!?なんで!?」
リーン(落ち着いた声)
「大変お疲れでしたので、つい……いつもの癖で」
ミナト
「いや、絶対……ないことも……ないのか?……」
【ト書き】
リーンはそっとタオルを差し出す。
リーン
「おかえりなさいませ、主様」
ミナト
「そこに置いておいて」
リーン
「わかりました」
「それで、お背中は?」
【ト書き】
ぽちゃん……。
ばちゃばちゃ。
ミナト
「あ”あ”ぁ……ごめん、湯につかっていたい」
リーン
「わかりました」
(小さく)
「……残念です」
(間)
リーン
「では、食堂でお食事を用意しておりますので。
主様のペースでお越しくださいませ。」
【ト書き】
かぽーん。ぶくぶく
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【Scene D-1-3:食堂】
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【ト書き】
食堂は温かい空気とスープの匂いに満ちている。
リーンは壁際に控えており、
テーブルには一人分の食事が丁寧に並べられている。
ミナト
「リーン?話があるって言ってなかった?」
リーン
「はい、ございます。」
ミナト
「食べながら聞ける話?」
リーン
「はい、左様でございます」
ミナト
「分かった、聞かせて」
リーン(姿勢を正して)
「では……お話させていただきます。
この五日間のことです」
「主様がいない間、リーンは……退屈でした。
ですが、生還された主様です。
そこで、お伺いしたいのです」
(ふわっと笑う)
「ミナト、森は楽しかった?」
(ミナトの目をしっかりと見る)
「さやか嬢とニーコス嬢は、いかがでしたか?」
(目を伏せる)
「……同伴しなくて、よかった?」
【ト書き】
“さやか嬢”“ニーコス嬢”
これまではただの音だったものが、
急に体温を帯びて胸に落ちてくる。
ミナトの目は見開かれ、
視線はリーンを通り越えた向こう側を見ている。
そのまま、少し頬が上がってから落ちる。
ミナト
「……はっ!……
ごめん、ちょっと意識が飛んでた」
「うん、次は同伴を頼むよ。
……これ、美味しいね。ありがとう」
リーン(小さく舌打ち)
「ちっ……」
(すぐに微笑みに戻る)
「同伴、承りました。
次は必ず」
【ト書き】
リーンは深く頭を下げ、
静かに食堂を後にする。
ミナトは温かいスープを口に運びながら、
五日間の森の匂いが、ようやく自分から離れていくのを感じていた。
【ト書き】
翌朝、ミナトは誰よりも早くおきて着替え、洗濯している。
森林演習では、川辺で叩き洗いをしたことを思い出していた。
食堂に移り、食卓に座りノートを広げ、火風岩猿との死闘を
振り返りながら、リーンが起きてくるのを待っていた。
しばらくしてリーンが起きて降りてくる。
リーン
「おはようございます。主様」
「やはり、おはようございますを言う人がいるのはいいものです。
何を召し上がりますか?主様」
【ト書き】
跳ねるようにリーンの方を見てから袖のボタンを触り
ミナトは、立ち上がる。
ミナト
「リーン、おはよう。パンとスープを一緒に食べよう」
ミナトの声を聴いて、ぱぁっと顔をほころばせて
今日の同伴に備えた外行の制服にエプロンを掛け紐をキュっと結び
機嫌よさそうにリーンが支度を始めた。
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