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創世神話Ⅰ 赤い瞳に創造と破壊を宿す転生女神、滅びの島から紡ぐ女神たちの三国志  作者: ゆみとも
第一章 神婚の儀

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第141話 竈の神ヘスティア


料理開始の合図とともに、曹英の檄が飛んだ。


「まずは星愛、竈に火を入れて! ここにある炭だけじゃ足りないから、

ここに書いてある量の炭を用意してから火を入れてね」


「了解です!」


「次は燈三姉妹ね。三人には料理を担当してもらうから、

まずは前菜の仕込み。これとこれを用意して、同時に進めるのよ!」


曹英はレシピを指さしながら説明し、終わると三姉妹に手渡した。


「うん、わかった」


長女の燈灯(デンデン)が頷き、三姉妹は手をつないで

食材の荷車へと走っていった。


そのあとも曹英は、碧衣と秦の四女神に

冬の市で買ってくるものを書いた紙を渡していく。


「さて、最後は沙良ね。楼蘭商隊、知っているでしょ?」


「ええ、でもどこにいるかまでは……」


「あそこの席よ。この紙に書いてあるわ」


二人が紙を覗き込み、その方向を見ると楼蘭商隊が観戦席に座っていた。


「沙良は商隊から香辛料を入手してきてくれる? それとね、

よく分からないけど、商隊と交易の話まで進めておくと

将来役に立つって書かれているのよ」


「ふーん。でも私たちと交易したいみたいだし、交渉は簡単そうね」


「うん、多分うまくいくわ。それじゃお願いね」


「了解です。何かあったら呼んでね」


曹英はにっこり笑い、「琴葉がすぐに飛んでいくから」と答えた。


こうして皆がそれぞれの目的に向かって散っていった。


「さて、琴葉は私と一緒にここで待機ね。

何かあったらすぐに飛んでいくのがあなたよ」


「みんなの服に蜘蛛の糸つけてあるから、すぐ行けるよ」


琴葉は鼻を鳴らしながら微笑んだ。


その間、妃良は腕を組み、じっと私を見ていた。

気になって私は尋ねた。


「妃良様、ずっと私を見ているようですけど……何か気になることでも?」


「久しぶりにあなたと会って、赤ちゃんだったころのことを思い出していたの」


「えー、そうなんですか……で、今の私はどうですか?」


「ずいぶん立派に成長したわね。

さて、いつまでもここにいたら邪魔でしょ。そろそろお茶の席に戻りますね」


「はい。女神さまたちのために美味しい料理たくさん作るので、

お茶の席で待っていてくださいね」


「はいはい、楽しみにして待っているわね」


妃良はそう言い残し、ふわりと浮いて中央の舞台へ戻っていった。




◇◆◆ 妃良視点 ◆◆◇


私は星愛の神能のレベルを確認し、女神席へ戻ることにした。


(はあ……ヘスティアお姉さまは、ほんと手がかかるわね)


中央の舞台に設けられた女神席では、女神たちが真剣な眼差しで私を見つめていた。


(あーあ、気が重いわね……)


席に戻ると、観衆は私の心配など知らず大騒ぎしている。


(どうでした? 星愛の赤い瞳はどのくらいのレベルで発動していました?)


心話を送ってきたのは、地上で母役を務めるテイア(芳美)だった。


(ええ。ミレイアを呼び出して、しかも支配されていたわ)


カレンドール(華蓮)が腕を組み、ティーカップを睨みながら答える。


(ミレイアを呼び出して支配できなかったということは……

今回の人の子として転生したヘスティアの神能は、二〜四割程度かしら)


そこへ、邪魔な女神が割り込んできた。


「さあ、皆さん! 料理は始まったばかりですが、

ここで女神たちに料理への期待を聞いてみたいと思います!」


怖い顔でエレシュキガル(絵蓮)を睨むペルセポネ(芽衣)。


(ちょっとエレちゃん、わざとここでインタビュー入れたでしょ)


(ペルちゃん、そんなことないよ〜。智遊祭も盛り上げないといけないからね)


(で、誰にインタビューするつもりなの?)


絵蓮はニコリと笑い、観客席に耳を傾けた。


「さーて、だれにしましょーか?」


「華蓮様よ!」「初代星環府長の妃良様だろー!」

「新しい女神の愛麗さまの話も聞きたい!」


観客席から次々と名前が飛んでくる。


(決まりました。アフロディテにします)


(えっ、私!? いやん、ちょっと先輩方を差し置いて……どうしよう)


アフロディテは一瞬ためらったが、すぐに誰からも愛される微笑みを作った。


絵蓮はその様子に目を細め、観客席へ向けて声を張り上げた。


「では、皆さんの声が大きかった、愛麗にしまーす!」


「いいぞー!」「待ってましたー!」「キャー!愛麗様ー!」


再び大歓声が巻き起こる。


絵蓮はアフロディテの脇に立ち、マイクを向けた。

アフロディテは満面の笑みで会釈する。


「愛麗は今回初めて智遊祭に参加だよね。どうだった? 楽しかったかな?」


アフロディテは片手を上げ、慎ましやかに観客へ手を振った。


「みなさん、私たち麗麗姉妹の歌を楽しんでくださって、

とても嬉しかったです」


胸の前で手を合わせ、小首を傾げ、頬を赤く染める。


「可愛い仕草ですねー! ところで愛麗さん、

この料理対決で何か期待するところはありますか?」


絵蓮が覗き込むように尋ねる。


「そうですね……皆さんが心を込めて作られた料理。

そのぬくもりを感じられたら幸せです」


アフロディテは許褚の方へにこりと笑いかけた。

許褚は胸を張り、大声で応える。


「任せておけー! われらの料理、心を込めて届けますぞ!」


観客席が一斉に盛り上がる。


アフロディテは今度は灯花庵の舞台へ向き、

料理をするヘスティアお姉さまと燈三姉妹に可愛く手を振った。


三姉妹は手を取り合って跳ねるように喜び、

ヘスティアお姉さまは焦ったようにぺこぺこお辞儀をしている。


(お姉さまは天界では絶対にあんな態度とらないのに……)


再び拍手の波がコロシアムを包む。


絵蓮は観客が静まるのを待ち、手を振りながら声を上げた。


「黄河の猪親子も灯花庵の偉い人も、愛麗の笑顔に力をもらったみたいですね。

どんな料理ができるか楽しみですねー!

では、しばらくの間、冬の市での女神奏会の映像と音楽をお楽しみくださーい!」


絵蓮の声とともに、コロシアムのスクリーンに女神たちの奏会映像が映し出され、

観客席は大盛り上がりとなった。


観客に手を振りながら席に戻る絵蓮。


私は指を鳴らし、女神席に結界を張った。

席ごと異次元へ移動し、結界の外からは

私たちが優雅にお茶を楽しみながら談笑している幻影が映し出されていた。


「もう声を出しても大丈夫です」


私は皆の顔を見回し、胸の奥が重く沈むのを感じた。

アクエス島の大惨事のあと、転生門の管理神オーディンに報告したミューズ(美優)が、

心配そうに私へ問いかけてくる。


「どう? 星愛の神能は、今回の転生で何割くらい有効だと思う?」


私は首を左右に振り、重い口を開いた。


「星愛が覚醒したら……二〜四割くらいの神能を発揮するわね」


最年長のエレシュキガル(絵蓮)が渋い顔をする。


「困ったね。二割でも大陸を炭に変えられるし……

四割なら、生きるものすべてを生命の構造からやり直させることもできる」


テミス(理沙)が腕を組み、目を細めた。


「破壊神……ヘスティアお姉さま、というわけね」


お茶の席に重い空気が落ち、沈黙が訪れる。

その沈黙を破ったのはカレンドール(華蓮)だった。


「そもそも、あの子が鈍感なのが悪いのよ。

竈の神として君臨していたのは千七百年前。

生涯処女神である誓いの代わりに竈の神になったのでしょう?

でも、神もそれなりに成長していくものですわ」


テイア(芳美)が静かに頷く。


「あの子は私との神核融合で光の神能も授かり、

本来の竈の神として、家、都市、世界の中心に置かれるハースの神……

食を生み、家族を守り、都市を温める存在」


カレンドール(華蓮)が続ける。


「そして――すべてを燃やし尽くす破壊の力」


イリス(虹麗)が、どこか懐かしむような口調で言った。


「でも、アクエス島の大惨事の件もあるから、

天界ではヘスティアやアルテミス、そして四聖女には、

地上界に目を向けさせないようにしていたわよね」


アフロディテ(愛麗)が苦笑いを浮かべる。


「そうそう。天界では宇宙に目を向けさせていたものね……

転生神なのに、人の子の魂の転生なんてしたことがない。

不自然な女神たちよね」


ペルセポネ(芽衣)が感慨深く頷いた。


「そうよね。冥界にも呼ばなかったし、

天界にいる間は人の子と接する機会を与えなかったわ」


私は頷き、そして首を振った。


「仕方ないことよ。ディオニュソスにオリンポスの席を譲るほどの

平和主義で優しいお姉さまよ……

もし、アクエス島の大惨事が自分の神能の影響だと知ったら、

一万年は立ち直れないわ」


テミス(理沙)が腕を組み、ミューズに確かめるように尋ねた。


「でも、オーディンは言っていたのでしょう?

発展しすぎたアクエス島を見て、星愛が戻したいと思ったから、

神核が反応して、津波と火山でアクエス島を更地にしたのだろうと」


美優は静かに頷いた。


「ええ、確かにそう言いました。

ただ、可能性としてとも言っていたわね」


ペルセポネ(芽衣)が小首を傾げる。


「でも、津波で自分たちも亡くなった……

それに大親友のミレイア(澪)を、初めての人への転生なのに巻き込んだ。

そんなこと、できるのかしら?」


カレンドール(華蓮)がじっと芽衣を見つめ、静かに答えた。


「だから厄介なの……

神の姿であれば自分の意志で破壊するけれど、

人の子として生まれているときは違いますわ。

恐らく、この世界を“やり直したい”と思った瞬間に神核が反応し、

本人の意識とは別のところで神能が発動したのよ」


「はあ……今回はいろいろ重なりすぎましたね」


私がため息まじりに呟くと、テイア(芳美)が仕方なさそうに口を開いた。


「ただ、神核の数が増え、何とかしたかったのも事実よね。

その答えが浮島夢咲計画。地上界に女神の隠れ島を作る計画。

ただ、その技術をこの大陸にも持ち込んだのが、事の始まりね」


カレンドール(華蓮)が頷き、言葉を継ぐ。


「そして今回の転生者には、銀の鉄扇を使える碧衣がいた。

土地の開発なんて、簡単にできてしまうわね」


アフロディテ(愛麗)が華蓮を見て微笑む。


「でも、カレンドール流に今手を打っているのでしょう?

この夢咲襄陽府を見せることで、星愛に自分の力で行き過ぎを是正させるつもりなのよね?」


華蓮はニヤリと笑った。


「ええ。ここは時代の要には最新技術を使っていない……

いろいろな工夫で襄陽府は成り立っているの。

この街を見て、感じてもらいたいと思っていましたわ。

そして、新しい開発を構築してもらいたい。

それが、モノレールや超電導などの技術を封印する形になっても」


ミューズ(美優)が微笑みながら言葉を添える。


「そして、変なことを考えないように音楽へ目を向けさせた。

それが冬の市の奏会なの」


私は二人の話に頷いた。


「秦の四女神が、今のところ良い歯止め役になっていそうね。

何より扶美の未来視がいいわ。もう半日先まで見えるみたいね。

音楽でさらに神能を上げれば、予防策にもなるわね」


華蓮がニヤリと笑う。


「ヘスティア(星愛)は本来は長女だけど、クロノスに最初に飲み込まれ、

ゼウスに最後に救出されたから……

クロノスから生まれた順で言えば末っ子なのよね、うふふ。

この末っ子気質でいる間は余計なことは考えないわ。

そして末っ子が甘える相手――アルテミス(沙良)、曹英、燈柚(デンヨウ)、亜衣。

四人もいるもの。この転生ではずっと末っ子のままよ」


華蓮の迷信めいた話に、思わず笑みがこぼれる。


「ふふ、だとしたらいいけど……

取りあえずは、発展しすぎた夢咲星環府を少し退行させた方が良さそうね」


テイア(芳美)が頷く。


「アクエス島では星愛は十二歳だった。

もしオーディンの仮説が正しいとすれば、

来年四月に十八になるヘスティア(星愛)の神能は、

最悪この星の全生物を滅ぼす。

そうなる前に、彼女の心を導いていかないといけないわね」


皆の表情が、結界を張る前より柔らかくなったのを見て、私は言った。


「では、そろそろ地上界へ戻ります」


皆が静かに頷き、談笑を始めたふりをする。

私は最後に頷き、指を鳴らした。


結界が一瞬で解かれ、私たちは再び智遊祭の決勝の舞台へ戻った。

静寂だった世界は、一瞬で観衆の熱気に包まれた。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

初めての投稿ですので、いただいたご感想や評価は次回作品づくりの大きな力になります。

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更新は偶数日の朝7時過ぎを予定しています。

引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!

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