伝言
五十話の side秋司茜1が抜けておりました
誠に申し訳ございません
俺が回復系ラストスキル「祝祭」を使用した瞬間、目を閉じていて自分では見えないが上の方から光がおりてきたはずだ。
暖かい光が、ブレーメンちゃんを包み込んでいく。その余波で、俺もほんのりと暖かさを感じる。
「暖かい。なんか、元気が沸いてくる……」「すごいです」「な、何がおきて──?」「さすが、八郎さんですね。あれほどの傷があっというまに消えました……」
祝祭の光の余波が、茜さんたちにも及んだのだろう。俺が感じているのと同じ暖かさを体感しているようだ。
そして茜さんが意識して伝えてくれたのだろうが、無事にブレーメンちゃんの傷は消えたようだった。
俺はスキルを使用し終わり、ふーとため息をつくとゆっくりと目を開ける。
しばしの静寂ののち、俺は何も見ていない振りをしつつ、再び目を閉じる。
そう、俺は何も見ていない。
大きさも形も、なにもだ。
「──あっ」
茜さんの焦ったような呟き。
祝祭の光が消えたことで治療が終わったことは伝わっているはずだ。
俺は目を閉じたまま、あたりに響く衣擦れの音をおさまるまで、じっとしている。
──目、開けたくないな……。このまま、そっと逃げ出せないかな……
まさかそんな俺の考えが読まれたかのように、ガシッと俺の両肩に手がかかる。まるで逃げ出せないようにしているように。
「八郎さん?」
「は、はい」
俺の肩をおさえているのは茜さんのようだった。
「ブレーメンさんが目を覚まされましたよ。いつまでそうしているんですか」
「いや、その、ほら、スキル使用の後遺症的なものがあったり、なかったり──」
「あら、本当に?」
「いやー、やっぱりそんな後遺症的なものはないかも──」
「はぁ、いいからはやく目を開けてください」
「はい」
目を開けると、グリマーズの面々がブレーメンちゃんに抱きつき、その無事を喜んでいる場面だった。
「あっ」
ブレーメンちゃんがこっちを見ると、グリマーズの抱擁を抜けてこちらへとやってくる。
服の上からでもわかる、かなりの破壊力に、思わず俺はそっと顔をそらしてしまう。
「はじめまして、ブレーメンです。あの、助けて頂きありがとうございました」
そう、告げて、勢いよくお辞儀をするブレーメンちゃん。
「いや、その。無事で良かったです」
なぜとは言えないが、思わず敬語になってしまう。
「あの、木村八郎さん、ですよね」
「そうですけど」
「その、伝言を預かってます」
両手を胸の前でぎゅっと握って、ブレーメンちゃんはそんなことを告げたのだった。




