回復系ラストスキル
「ブレーメンちゃんっブレーメンちゃんっ!」
解放され地面に横たわる少女に白雪さんが駆け寄ると抱きつくようにして名前を叫んでいる。
「白雪さん、大丈夫。息はある。いま、回復スキルをかけるから──」
そう、語りかけた俺の声すら、届いていない様子だ。
ここまで全然心配している様子なんて微塵も見せていなかったのは、どうやら必死に耐えていたのだろう。
白雪さんとブレーメンちゃんを見つめるグリマーズの残り二人の視線からもそれは明らかだった。
──そんなに大事な仲間が生死不明の状態であれだけ平常に見えるように振る舞っていたのか。
俺はどうやら白雪さんのことを少し見くびっていたようだった。
「──赤帽子さん、頼む」
「スキルマスターさんなら治せるんですか?」
「今なら、間に合う」
無言で頷くと赤帽子さんとグレーちゃんが二人がかりで白雪さんの両腕を掴んで引き剥がしてくれる。
「茜さん、少しだけ手伝ってくれる?」
「もちろんです」
白雪さんが引きずられて空いたスペースに、滑らかに滑り込んでくる茜さん。
ピタリと、俺が動くのにギリギリ邪魔にならないほどの近さだ。
「何をすれば?」
「服の下に傷があるかの確認だけお願い。あれば治る様子を見てて。これから回復系ツリーのラストスキルを使うんだけど目を閉じないといけなくて」
「お任せください」
頼もしい茜さんの返事に俺は早速目を閉じて集中する。
俺の耳に衣擦れの音が届く。
茜さんがブレーメンちゃんの服を脱がせているのだろう。
ブレーメンちゃんにとりついていたものが、マガツヒノセオリツの時と同じなら、多分回復系ラストスキルの「祝祭」が最適だと判断したのだ。
他の回復系スキルと比べ、この祝祭だけは異質なのだ。
神への祈りをもってして癒すスキル、それが祝祭だった。
「っ! ひどい……」
茜さんが思わずといった様子で呟く声が聞こえる。
少しでと身動ぎしたら触れそうなぐらい近くにいるので、茜さんが思わず体を強張らせたのも把握できた。
その背後では赤帽子さんたちも息をのんでいる。
どうやらブレーメンちゃんの傷の具合はよほど酷いらしい。
俺は茜さんにそれを見せてしまったことを後悔しながらも、今は成すべきことをすべきだと自らに言い聞かせる。
そして、回復系ラストスキルを発動させるのだった。
「「祝祭」」




