悪役の名は、ゴブ・リン子!
俺は、裏道具屋との交渉を成立させた。ガーネットはホッとため息をついて、
「あ、あのっロアス」
ガーネットは、もじもじして続ける。
「だ、代金のことありがとなのだっ……。それに、嘘をついて悪かったのだ……。つい、魔王としてしゅうげきの血が騒いで……」
「いいんだいいんだ! このドライヤーがあれば、もう襲撃はできないからな!」
「ロ、ロアスはいじわるなのだ……。ドSなのだ……」
「ごめんごめん、俺こそイタズラして悪かった」
「べ、別にいい……」
「えっ?」
「いやっ、何でもないのだっ! もう寝るのだっ!」
逃げるように走り出したガーネットの後を追う。
その時、ガーネットの前に何者かが現れた。
ガーネットは、急ブレーキをかける。それから、彼女は身体を黒ローブで覆い隠した。
「へぇ、素直じゃないのね」
ガーネットの前方にいる者がしゃべった! 何やら、リボンをつけたゴブリンだ!
リボン付きゴブリンは、ニヤけながらガーネットを見る。
「その男が、好きなんでしょ?」
「そ、そそそ……そんなわけないのだっ!」
「必死だね、あやしい」
「な、何を言うのだっ! そんなわけないと……」
リボン付きゴブリンは、わたわたしているガーネットを通りすぎる。それから、俺の前に立った。
「へぇ、人間の勇者か。どこか頼りない感じがするわ!」
むっ、嫌なやつだな!
リボン付きゴブリンは、さらにイヤミを言う。
「この勇者の服もビンボー臭いし。あたしの彼の大トカゲは、ボンボンなのよ! 参ったかしら!」
そのわりに、服すら着てなかったぞ!
大笑いするリボン付きゴブリンに、ガーネットが質問をした。
「彼氏が大トカゲ……。すると、貴様が噂のゴブ美か?」
リボン付きゴブリンは怒って、
「あたしを、ゴブ美なんかと一緒にしないでっ! あたしはゴブ・リン子! ミスゴブリンにも選ばれた絶世の美女なのよっ!」
待てよ、平ゴブリンと同じ顔なんだが! ゲームなら、リボン付きの2Pカラーだぞ!
「そこの男! 信じてないわねっ! あたしは、週刊紙の表紙も飾ったこともあるのよっ!」
人間界なら、絶対妖怪図鑑の表紙になるだろう……。
「まあ、いいわ。ゴブリンの魅力は、人間ごときには伝わらない。ならば、これを拾いなさい!」
うおっ、ゴブ・リン子が金貨をバラまいてきたぞ!
「それーそれー、さっさと拾いなさいよ! 貧乏人ども! あたしの彼氏はボンボンなのよ!」
さっき死んだと言うべきか?
ゴブ・リン子が夢中になってバラまいていると、何かに引っかかって転ぶ。それは、大トカゲの死体だった。
「いったーい、何この黒こげのボロクズ! 邪魔……」
ゴブ・リン子は、大トカゲの死体をよーく観察する。そして、俺と大トカゲを交互に見た後、
「ま、まさか嘘よね……。大トカゲが人間ごときに殺されるなんて! いやっ、嫌だ!」
ちょっと悪いことしたかな……。しかし、正当防衛であって。
ゴブ・リン子は、悲しみに暮れる。
「大トカゲ、どうして死んでしまったの。夏休みに、約束したじゃない! 『10月には、絶対生命保険に入る』って!」
やっぱりクズだーっ! っていうか、夏休みに保険金をかけるのバズってるのか!?
ゴブ・リン子は俺をにらみつける。
「よくもあたしの金づる……いや、彼氏を殺したわねっ!」
本音がもれてるよっ!
「あんたにも、恋人が殺される辛さを思い知らせてやるわ!」
そう言って、ゴブ・リン子はなぜかガーネットに襲いかかる。ガーネットは恋人じゃないんだが……。
奇声混じりに、ガーネットに殴りかかったゴブ・リン子。それを、ギリギリガーネットはかわした。
「ホーッホッホッホ! 貧しい上に弱いのねっ! 黒ローブを羽織って、魔王様のつもり!?」
そう叫びながら、連続パンチを繰り出すゴブ・リン子。しかし、その手はすぐに止まった。なぜならガーネットが、
「つもりではない。余は魔王だからなっ!」
と言ったからだ。
ゴブ・リン子は大笑いして、
「ホホホホホッ! あんたが魔王様? 冗談もたいがいにしなっ!」
「冗談ではないのだ! 今すぐに、証拠を見せてやるのだ! 魔王の、封印を解く!」
ガーネットは気合いをためた。すさまじい気迫だっ! ひょっとしたら、本当に魔王の封印を……?




