違う視点から見るヴァンパイア
この街の図書館は宿からすぐ近くだった。
外見もきれいで、入り口のところに商人ドロスさん寄贈と大きく書かれていた。
どうやら、この図書館を建てたのもドロスさんらしい。
いったい、どれほど稼いでいるというのだろう。
ここの図書館は誰でも出入りが自由になっており、本を持ち出す時には受け付けて許可を得る必要があるようだ。
本には一つずつすべてに魔力マーカーがあり、手続きをしないで外部に持ち出そうとするとブザーがなり盗難できないようになっている。
僕は図書館の中から、ヴァンパイアに関する資料を探す。
今まで救済の森からでした情報を得ることはなかったが、実際のところが知りたいのだ。
これだけ大きな図書館なので、ヴァンパイアについての情報も沢山あるかと思ったが、見つかったのは3冊だけだった。
『吸血鬼と共存の未来』
『なぜ人はヴァンパイアと敵対をするのか』
『真実のヴァンパイア』
ただ、その内容は今まで僕が知っている内容とは違い驚くべきものだった。
今まで救済の森で教え込まれてきたものは、ヴァンパイアは敵であり、出会った瞬間から処分をしなければいけないという内容であったが、ここでは、ヴァンパイアが荒れた墓地のアンデットたちを密かに処理をしてくれていたり、人が生活をしていく中で、影ながらこの世界を助けていたと言うのが書かれていた。
でも、その行動を表で広めようとしなかったこと、血を吸うという行為を受け入れられない人々によって、悪い情報操作がおこり、救済の森の中でヴァンパイアはすべて敵だという認識ができあがったと書かれていた。
本の中で、人にも悪い人間がいるように、ヴァンパイアにも悪い奴がいるが、でもそれだけで種族全体が悪いというわけではないと書かれていた。
どうやら、僕は一方的な視点で物事を見すぎていたのかもしれない。
今まで僕が生きてきた中で、救済の森から与えられた情報というのは、神様から言われたような絶対的なもののイメージがあった。
だけど、その常識こそが実は疑うべきものであったなんて……。
もし、僕が救済の森からでていなければ、常識を疑うことすらしていなかった。
僕はそのことに恐怖を抱いた。
自分から真実をしろうとしなければ、その環境によって、自分の信じていた正義が作られていたのだ。
とは言っても……僕にはまだ、すべてをいきなり信じきれてはいなかった。
ラリッサの街で出会ったヴァンパイアも、森であったヴァンパイアも悪い人ではなかった。森で会った方は、寝ていたらどうなっていたかはわからないけど。
油断はできないけど、でも今までのように一方的に敵だと考える必要はなさそうだ。
もちろん、この判断が正しいかどうかはわからないけど。
でも、それを確認していくのも僕の使命なのかもしれない。
今まで自分が誰かに教わり、盲目的に信じていたものだけがきっと正解ではない。
選択肢は無数にあっていいはずなんだ。
僕が図書館で調べ物をしていると、あっという間に時間がたってしまった。
どれくらい集中して本を読んでいたのだろう。そういえば朝から何も食べていない。
本を本棚に戻し、図書館を後にする。
外に出ると、屋台から美味しそうな豚タン肉の油の香りが鼻をくすぐる。
美味しそうな食欲を誘う匂いだ。
つい涎がでてきそうになる。
「リリ……」
頭の中でリリの笑顔が思い出される。
お腹は空いているが、自分一人で食べてもきっと美味しくない。
リリと一緒に食べるご飯だから美味しいんだ。
まずはリリと仲直りすることの方が大切だ。
僕は、昨日リリが見ていたガラス細工を買うために、露天商へ向かった。
さすがに夕方になると、昼間とは違って、街の中も活気に溢れていた。
歩くたびに露天商の人たちから声をかけられる。
反応をしたいが、反応すると一気に群がってくる怖さがあるので、できるだけ目線を避けて歩いて行く。
たしか……大通りから一本入った裏通りだったはずだ。
この近くだったと思うんだけど……。
僕が昨日来た場所で辺りを見回すと、道路の端に狐族の女の子が座っているのが見えた。
どこかで見覚えがある。
あの子は……昨日、天使の湧き水にお願いして助けたはずの子供だった。




