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パックの失敗

 翌日、朝日と共に起きると、リリもドラもまだ眠っていた。

 恒例の身体を少し動かしてこよう。


 外は昼間と違い、外を歩いている人が誰もいなかったが、表の道ではさすがに剣を振りまわすわけにもいかず、宿屋の近くにあった空き地で身体を動かすことにした。


 うん今日は調子がいい。

 途中で、リリを起こすのを忘れたと思ったが、昨日は夕食も食べずにすぐに寝てしまうくらい疲れていたので、寝かしておいてあげようと思う。


 べっ……別に朝の訓練が大変になるからとか、そんな理由じゃないんだからね!

 なんてことを一応理由として考えておく。


 しばらく剣を振っていると、段々と明るくなるにつれて、少し霧がでてきた。

 霧=ヴァンパイアのイメージがあり、あまり良くないが……いつもの霧よりはまだ見通しもいいので大丈夫だろう。頭の中で仮想の敵をイメージして剣を振る。

 いろいろな想定をして、身体を慣らさせておくことで、いざという時に動けるのだ。


「訓練中……すみません」

 気が付くといつの間に現れたのか、ショートの赤い髪が特徴的な女の子が目の前に立っていた。

 剣に集中していたとはいえ、目の前に来たことを気が付かないとは……こういった油断がいざという時に危機をもたらす。


「すみません。ちょっと空き地をお借りしちゃてて。もしかして、ここで剣を振ってるのって迷惑ですか?」

「わわわ、違うんです。あの……友人が怪我をしてしまって……もしかしたら……回復薬とか……頂けないかと……思いまして……」

「いいですよ」

 彼女は一生懸命話しかけてくれているが、恥ずかしいのか全然視線があわない。


「本当ですか! それで……ですね……お金が……あまりないんですけど……できるだけ安く譲ってもらえると……助かるんです。ごめんなさい。初対面なのに、こんな……お願いばかりで」


「その怪我した人はここから近いんですか? もし良ければ直接見させて頂きますよ」

「あっいえ、そんな。大丈夫です! 回復薬だけもらえたら……嬉しいです」


「わかりました。ちょっとここで待っててもらえますか? 部屋に行って取ってきますので」

「わかりました!」

 救済の森にいた頃、街で普通に声をかけられて、回復薬をプレゼントしていたことがあった。


 その流れで今日も承諾してしまったが、彼女はなんで僕が回復薬を持っていることを知っていたのだろう。

 

 僕は、静かに部屋に戻ると、リリもドラもまだぐっすり眠っていた。

 そっーと、静かに部屋に戻りバックから回復薬を2本取り出す。


 別に2本もいらないかもしれないが、余計にあげておけば何かの時に使えるだろう。

 そのまま、回復薬を持って急いで戻る。


「お待たせしました。これ回復薬です。どうぞ」

「ありがとうございます。えっ2本も? あの……お金……2本分も払えないです」


「お金がないなら無料でいいですよ。あっでも、本来は教会とかで売っているので、無料でもらったことはみんなに内緒にしておいてくださいね。それと僕にお金を払ったつもりで、美味しいお肉でも食べてください」


「ありがとうございます」

「そういえば、どうして僕が回復薬を持っているって知っていたんですか?」


「あっ……友人が教えてくれたんです。ありがとうございます。急いで友達にあげないといけないので……お礼のかわりにこれあげます。常に持っているといいことがあるお人形なんで……」


 彼女が僕の手を取ると、アンバランスな布で作られたおもちゃの人形を渡してきた。

 なんと表現したらいいのか……キモ可愛いとでも言えばいいのだろうか。


「ありがとう……あれ?」

 来た時も急だったが、いなくなるときも一瞬だった。


 それにしても……なんの人形なんだろう。

 持っていてくれればいいことがあるって言っていたけど……どちらかと言うと呪われそうな人形だ。


 急に背後から殺気のような……僕は急いで人形をポケットにしまう。

 この死の気配は……。


「パック……今の誰かしら……」

 そこにはリリが半泣きしながら立っていた。


「今のは……回復薬が欲しいって言われたから、あげていたんだ。お金がないっていっていて、人形と引き換えに……」

 僕はしまった人形をリリに見せるが、リリの表情は変わらない。


「そんな都合よくある? パックが回復薬持ってるなんてなんでわかったの?」

「なんか……友達に聞いたって」


「そうなの。私はいつもパックと一緒に朝訓練しようって言ってるのに、私のことは誘ってくれないのに、知らない女の子はすぐに誘うのね」

「違うって、疲れていると思って」


「違わないわよ! 疲れていたって、パックと一緒に訓練したいんじゃないの。なんでわかってくれないの? 昨日はビキニアーマーの人に鼻の下伸ばしててたし」

 リリの目から涙が溢れ出る。


「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだよ」

「そんなつもりって何よ! もうパックなんてしらない。好きにしたらいいじゃない」


「リリ!!」


 リリはそのまま走って宿に戻ってしまった。どうしたらいいんだろう。

 追いかけた方がいいんだろうけど……なんて言えばいいんだろうか。

 今のリリにどう伝えたらいいのかわからない。


 リリが部屋に戻ってから少しして、僕は部屋に戻った。

 ドラが慌てて部屋中を飛び回り、オロオロしていた。


「リリ、ごめん」

「パック、私の方こそごめんなさい。ちょっとだけ今日は寝ていたい気分だから、寝ていてもいいかな」


「もちろんだよ。何か食べたいものある?」

「大丈夫。お腹空いてないんだ」


「そっか。ドラ悪いんだけどリリの側にいてあげて。ご飯は食べられそうならこれ食べて。僕は少し調べ物をしてくるよ」

 僕はドラとリリが食べやすいように前に作った料理と回復薬を置いておく。


 ゆっくりと部屋からでる。

 僕はどうしたらいいんだろう。正解がわからないまま、僕はこの街にきた目的だった図書館へ向かった。

リリ「ねぇドラ……パックってバカなの? ねぇバカなの? バカだよね?」

ドラ「リリ……パックは前から……」


ドラ、生まれて初めて人の愚痴に付き合う。

ドラの長い戦いが今始まった……。


★★★★★

ポイントが全然増えないことに心折れそうです。

もしよろしければ、評価とブックマークよろしくお願いします。


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挿絵(By みてみん)

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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