コクリンさんたちと合流
僕たちはそれからしばらく雑談をしていたが、さすがにリリが眠たそうだったので宿に行くことにした。
アニタの家は街の中心からは結構離れていたが、さすがにドラに乗って戻るわけにはいかなかったので、歩きで街を散策しながら宿屋を探す。
「パック、彼女たちが言っていたことって本当かしら?」
「それはなんとも言えないね。ただ、僕たちは救済の森で教わってきたことだけが本当だとは限らないと思う。僕たちは小さな頃から暗記することがいいと言われてきていたけど、解答は一つじゃないことが沢山あるんだと思うよ」
「それはそうね。どうしてもその場の空気を読んでってことがあるけど、逆の視点や、疑うってことも必要なのかもね。そうなると……何を信じたらいいのやら」
「パック、難しい話もいいけどお腹空いた」
「ドラ、僕もだよ。宿に着いたら何か食べさせてもらおう。それまではこれで我慢して」
ドラとリリに回復薬を飲ませてあげる。これでお腹が満たされるわけではないけど、ないよりはマシだろう。
「やったー!」
ドラは受け取るとグビグビと一気に飲み干す。
「ぷふぁー、やっぱりパックの回復薬が一番美味しい」
「そう言ってくれてなによりだよ」
街の中心部に近づいていくと、昼間はあまりゆっくり見て回ることができなかったが、街の至る所にガラスでできた木や花などが飾られている。
月夜に照らされる中で、キラキラと輝くガラスは幻想的な雰囲気をかもしだしてくれている。
「ねぇ、パックとてもキレイだね」
「そうだね。こんな景色が見られるなんて死んでもいい」
「パック、死んじゃダメよ。うーんと長生きしてもらわないと」
「そうだ、そうだ。ドラゴンは長生きなんだから、パックもリリもずっと一緒にいてくれないとダメだぞ」
「そうだね。ごめんよ」
それでも、僕はこの景色を二人と見れることがとても尊いと感じていた。
僕たちが散歩をしながら戻ると、街の中を歩いているコクリンとエディがいた。
彼らを置いて来てしまっていたのをすっかり忘れていた。
「よかった、パックさんたちがどこに消えたのかと思って心配していました」
「コクリンさん、申し訳ないです。あの後大丈夫でした?」
「いや、それが天使の湧き水の人たちと会ったんですが、パックさんが魔物に襲われて逃げて行くのを見たって言っていて、助けたくってもすぐに森に消えて行ったから間に合わなかったって。本当に心配してたんですよ」
「あいつら、パックさんたちが魔物に殺されたんじゃないかってひどいことを言ってたんですよ!」
「魔物ねぇ」
リリが僕の顔を見てウィンクしながら目をあわせてくる。
「えぇ。でも、私たちも殺されるなんてことはないと信じてはいたので、いったん戻って捜索の人を増やそうかってなって戻ってきたんです。ご無事でなによりでした。大丈夫でしたか?」
「もちろんです」
「少し魔物に追いかけられて、それで森の中で迷っちゃったけど無事になんとか帰ってこられました」
僕たちはわざと天使の湧き水の言ったことにのっかった。
これでもし、後で会うことになっても笛を折ったことを追求されることはなくなる。
「そうそう。森の中で迷っちゃって」
「そうですか。無事で良かったです」
「そういえば、滝の裏側はどうでした?」
「あちら側には何もありませんでした」
「そうですか。あれで終わりだといいんですけど」
「本当に……集められた子供たちは天使の湧き水の方で面倒見るらしく、全員保護されたって言ってました」
「それなら良かったです。明日はどうされる予定ですか?」
「子供たちが無事に救出されたのなら、僕たちがやることは特にないでしょうからね。明日はゆっくりこの街を観光でもしてみますよ」
「わかりました。それでは明日は宿でゆっくりなさって明後日にでもお店に顔をだしてください。旦那様も明日はでかけていますので。では、手配してあった宿の方にお連れしたいと思いますので、どうぞこちらへ」
コクリンさんが、紹介してくれた宿は普段僕たちが泊まる宿ではなく、貴族が泊まるような宿だった。
夜遅くだというのに、受付には人が待機しており、護衛の兵士までいる。
「コクリンさん……こんな宿泊まれないですよ」
「なにをおしゃっているんですか、旦那様たちの命を救って頂いたのに安い宿に泊まらせることなんてできません。お代は旦那様がお支払いになりますのでご自由にとのことです」
「パック……すごいキラキラしてる」
「ドラ……僕も初めて見たよ」
「パックとこんな素敵な場所に泊まれるなんて夢みたい」
「コクリンさん、ありがとうございます。」
「それでは受付をしてきますので少々お待ちください」
コクリンさんが受付に行き鍵をもらってきてくれた。
まだロビーだったが、あたりをキョロキョロしてしまうくらい、すべてが豪華だ。
「こういうのを目的に人助けしたわけじゃないけど……人助けするといいことあるんだね」
「うん」
「パック。どんどんこれからも人助けしていこう」
「ドラ、こういうのが目的じゃないからね」
「それでは、私は帰りますが、何かありましたらいつでも連絡ください。主人のお店はあそこの斜め前になります。何泊されても問題ありませんので、どうぞこの街をゆっくり観光していってくださいね」
コクリンさんが示した先には他の店の3倍くらいある大きなお店があった。
まさかあんなに大きなお店だったとは思わなかった。
「コクリンさんありがとうございました。ドロスさんにもよろしくお伝えください」
「わかりました。お伝えしておきます。それではよい夜をお過ごしください」
コクリンさんが帰り、部屋に案内してもらうと、部屋の中もすごいことになっていた。
「パックーふかふかのベットだよー」
「気持ちいい」
「本当だねー。少し休憩してからご飯を……」
あまりの気持ちよさのせいか、ベットの上でリリとドラがすぐに眠りについてしまった。
よっぽど疲れていたのだろう。
リリはいつも、僕のために無理をしてくれる。とても空気が読めるいい子だ。
今日もだいぶ無理をしてくれた。リリは本当はありがとうね。
僕は優しくリリの頭をなでる。
絹糸のような髪の毛がサラサラとして気持ちいい。
今日は疲れただろうからね。
ゆっくりおやすみ。




