「女の子はね、意地を張ったり、好きなのに嫌いって嘘をついちゃうものなんだよ」
「君、こんなところでどうしたの?」
「お兄ちゃんいた! 噓つきは泥棒の始まりって言うんだよ!」
その強い言葉とはうらはらに彼女が僕の足に抱きついてきた。
足元に柔らかいモフモフが当たって気持ちがいい。頭を軽くなでてやると手触りがいい。
なんか悪いことをしているような気分になってくる。
「嘘?」
「だって、目が覚めたら、優しい人たちが助けてくれるって言っていたのに。誰も助けてくれなかったよ!」
「天使の湧き水の人たちのところで、助けてくれなかったの?」
「うん。すごく胡散臭い集団だったから逃げてきたの。お兄ちゃんはどうしてここに私がいることがわかったの?」
「いや、君を助けにきたわけじゃないんだ。ちょっとお土産を買いにたまたま来ただけなんだ」
「そっか……私は君じゃないよ。ナキっていうの。よろしくね」
「僕はパックだよ」
「それよりもお土産? もしかして、あの可愛い女の子に? さては……彼女かな?」
「いやただの幼馴染なんだけど……怒らせちゃって」
「ふむふむ。お姉さんに話してみなさい」
なぜか彼女とリリのことの話になってしまい、今日あったことを彼女に話してしまった。
「あぁーそれはお兄ちゃんが悪いよ。女性心がわかってない。幼馴染だからって扱いが適当すぎるわね」
「だって……」
「だってじゃありません。早くお土産買って帰ってあげな。女の子は時々意地を張ったり、好きなのに嫌いって嘘をついちゃうものなんだよ。男の子はそれがわかってない癖に空回りするから上手くいかなくなるのよ」
「わかった。ありがとう。ナキはこれからどうするの?」
「私は……大丈夫よ。こう見えて優秀だから。一人でもなんとかなるわ。さっきは少し疲れていたのよ」
「ナキ知ってる?」
「何を?」
「女の子は意地を張ったり、大変なのに大丈夫って嘘ついて頑張りすぎちゃうらしいんだ」
「真似したぁ!」
むすっとした感じで頬を膨らませている彼女はとても可愛かった。
先ほどまで大人びていたのが嘘のようだ。
「私は大丈夫よ。パックさん考えて、女性問題で揉めた彼氏が、新しい幼女を連れて帰ったら彼女泣くわよ。あなた鬼なの? 仲直りするつもりないの?」
「うーん。リリならきっと大丈夫だよ。それよりも困ってるナキを一人放置して帰る方が怒られるよ。それにこれから行く場所ないんでしょ?」
「まぁ……それはそうだけど……」
「また誘拐されるよりはいいから、一緒に行こう」
僕が手を出すと、彼女は恐るおそるその手をだしてきた。
狐族の手は肉球がぷにぷにしていて気持ちいい。
今度じっくりぷにぷにさせてもらいたいものだ。
「まずは、リリにお土産を買ってだな」
「仲直りするんだから、素敵なものを選ばないとダメだよ」
「大丈夫、僕にセンスはないけど、これはリリが見ていたものだから」
露天商のところへいくと、リリが見ていた王子さまとお姫様が華麗にダンスを踊るガラスの像はまだ置いてあった。
「おじさん、これをください」
「ありがとうございます。プレゼントですか」
「はい」
「じゃあ包みますね」
「素敵な置物だね。センスいいじゃん」
「お嬢様、いかがですか? 他にも素敵物が沢山ありますよ」
ナキも興味深くガラス細工を見ている。
その中でナキは手には取らなかったが、一つじっと見ている物がった。
それはガラスでできた葡萄のネックレスだった。
「ナキはこれが欲しいの?」
「べっ……別に欲しくなんかないわよ。子供じゃないんだから。ただ……母さんが葡萄が好きだったから見ていただけよ」
「そっか。おじさんこのぶどうのネックレスも一つください」
「パックさんいらないわよ! 別に私には必要ないわ」
「別にナキのために買ったわけじゃないよ。僕が個人的に欲しかったからだよ」
「そっ……それなら仕方がないわね」
「こちら包みますか?」
「いや大丈夫です」
僕はリリのお土産と、ネックレスを受け取ると、ネックレスの方はナキに渡す。
「パックさんが欲しいから買ったんでしょ? なんで私に渡すのよ」
「これは、ナキに持っていてもらおうと思って」
「いらないって言ってるでしょ!」
「違うよ。あげないよ。迷子になった時に葡萄のネックレスをしている狐族の子供を知りませんかって探すためだよ。目印がないと大変でしょ?」
「私は迷子になんてならないわよ!」
「そうだね。でも、ほらまた誘拐される可能性だってあるからね」
「それは……たしかに……」
ナキは僕からネックレスを受け取る。
「つけてあげるよ」
「ありがとう」
「少し大きいかな?」
子供のナキには少し長かったようだ。
胸より少し下のお腹の方まできている。
「パックさん、このままでいい」
「本当に?」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして」
余程嬉しかったのか、ころころと笑う彼女はやっと年相応の年齢になった気がする。
さて、それではお土産を持ってリリのところに帰ろう。
リリがこのお土産で許してくれるといいけど。
僕の心の中にはまだ少し不安があった。




