睡眠系の味
天使の湧き水の人たちが去って行ったあと、ドリアンが率先的に事務処理を行ってくれたのでその後はスムーズに取引きが終了した。
コクリンさんが奴隷になった元盗賊を連れて戻ってきた。
「パックさんお待たせしました。こちらが盗賊から奴隷になったエディです」
「改めてよろしく」
エディは借りてきた猫のようにおとなしくなっている。
「エディ、改めてよろしくね。それでこの街へ戻ってきたらすぐに行く手はずになっているの?」
「集まるのは夜になってからです。夕方になって南側の門番の交代が行われると、誘拐した子を連れて続々と集まってきます。もし、倉庫の見張りをするなら小鳥のお宿で見張るのがいいと思います」
もうまもなく夕方になる。
早めに行って見張っていたほうがよさそうだ。
「よし、それじゃあ小鳥のお宿で見張りをしよう。でも全員で行くと目立つから行くのは僕とエディで」
僕がそう提案すると大反対を受けてしまった。
「パック、私は行くわよ。絶対行く」
「俺も行くよ。パックだけでは心配だからね」
リリもドラも目を輝かせている。
遊びに行くわけじゃないのだが、非常に楽しそうだ。
「いや、みんなで行くと目立つし」
「ダメよ。さっきだってパックしか活躍してないじゃない。私はパックの横に立つの。絶対に行く」
「俺も行く。それに俺は小さいからそれほど目立たないしいいだろ?」
二人とも行かないという選択肢はないようだ。
「わかった。仕方がない。コクリンさんはドロスさんのところへ戻っていてください」
コクリンさんはニコニコしながら僕にやんわりと断りを入れてきた。
「パックさんそういうわけにはいきません。私はご主人様からパックさんたちのお世話も仰せつかっております。二人にはおよびませんが私だってそこそこ腕がたちますから」
にこやかにそう答えてくれているがテコでも動かないといった感じだ。
まぁそれもそうか。
ドロスさんたち家族を襲った黒幕がいるところへいくのに、自分だけ帰るなんてことはできないだろう。
「わかったよ、全員で行こう。小鳥のお宿に行って倉庫を見張ろう。だけど、さすがにこの人数で見張るのは目立ちすぎるからコクリンさんとリリ、ドラは一緒に。僕はエディと一緒に行くから」
「わかったわ」
「いいよ!」
「承知しました」
それから僕たちはそれぞれ別れて、小鳥のお宿に行く。
小鳥のお宿には僕とエディが先に入ってから、そのあとリリたちに来てもらう。
人があまりいないお店ということなので少し時間差で来てもらう。
小鳥のお宿は街はずれのさびれた場所にあったが、お店は新しく掃除がいきとどいていた。
外観もきれいだ。
ただ、本当に町からは外れていて人通りも少なく寂しい場所に建てられているのがもったいない感じもする。
最初に僕とエディがお店に入る。
「いらっしゃいませ。お泊りですか? 食事ですか?」
お店の中にはお客さんが誰もおらず、メイド姿の可愛い女性が案内をしてくれる。
「食事でお願いします。窓側の席に座ってもいいですか?」
「大丈夫ですよ。どうぞ、こちらへ」
僕たちは倉庫が見える場所へと座りお茶とすぐにできる食事をお願いする。
「エディ」
「わかっていますって。来たら教えればいいんでしょ」
エディはもう余計なことは言いたくないと窓の外を眺める。
「どうしてエディは盗賊になんて身を落としたんだい?」
「別になんでもいいだろ。俺の話なんて今は関係ない」
「関係ないか……でも、聞いておけば何か手助けできることもあるかもしれない」
エディは僕の方をちらりと見る。
だけど、お前には言うだけ無駄だと言わんばかりにまたすぐに窓の外へと視線がうつる。
「言いたくなければ無理にはいう必要はないよ」
「はぁ……騙されたんだよ。商売をしようとして上手い話に飛びついたらあっという間に借金漬け。その借金を返すために今度は奪う側にまわろうと思ったんだよ。でもまさか盗賊になって初仕事でお前らに出会って奴隷落ちなんてな。本当についてないぜ」
エディは窓を見たままそう答えた。
「盗賊を初仕事って言うのもおかしなことだけどね。でも、人を傷つける前で良かったじゃん」
「全然良くない。俺は奴隷だぞ。もう俺の人生終わり。あっ……あいつ前の時に見たことあるぞ」
エディが見つめる先には、旅のマントを着た大柄な男が歩いていた。
背中には大きな木の箱を背負っている。
「あの中に子供が入っているのか?」
「多分な……」
よく見ると、続々と大きな箱や鞄を持った男たちが倉庫の中に入っていく。
これだけ沢山の人間がかかわっているとなると、かなり大規模な組織のようだ。
「予想以上だな」
「今さらかも知れないけど、いくら強いとはいえやめておいた方がいいんじゃないか?」
倉庫の中に入っていったのは少なくとも10人はいる。
まぁ、倉庫という密閉空間の中ならやるのはいつもと同じ方法だけど。
僕たちが窓の外を見ているとお店の人がお茶と軽食を持ってきてくれる。
「どうぞ、こちらお茶と軽食になります」
僕はお茶から頂く。うん。とても独特な香りがして美味しい。
エディは目の前の食事にまったく手をださなかった。
「どうしたんだ? エディ飲まないのか?」
「あぁ、頂く。ただ、俺金ないぞ」
「大丈夫だよ。支払いは俺がするから」
エディがゆっくりとお茶を飲む。
「上手いな」
「あぁ……」
エディがいきなり前のめりに机の上に倒れる。
「エディ大丈夫か?」
あれ? この味って……もう一度お茶を口に含むと微かに睡眠系の粉の味がする。
エディが倒れなければ全然気が付かなかった。
厨房から先ほどとは別の棍棒を持ったおばちゃんのウエイトレスが現れる。
「なんであなたには効かないんだい? エディが裏切ったのかい?」
「エディを知ってるってことは、あなたは組織の一員ってことですね」
僕があてずっぽうで言ったことにおばちゃんの顔色が変わる。
どうやら、ここは本当に組織の息がかかった場所らしい。
エディは知らなかったようだが……。
どうやらここへ誘導されたようだ。
ご覧頂きありがとうございます。
かなりつです。
いよいよ明日発売になります。
・アニメイト様、メロンブックス様、とらのあな様ではそれぞれに書き下ろしSSが特典として付きます
(一部店舗ではお取り扱いのない場合がありますので、各店舗でご確認ください)
・その他の一部の書店様でも、共通特典が付く書店様があります
(特典のある書店様はお知らせできないため、各書店様の店頭告知やWEB、SNSでご確認ください)
・電子書籍には全て専用特典SSが収録されています
ぜひよろしければお手にとってもらえると嬉しいです。
Twitter始めました。
@kanaritu7
こちら表紙になります。
滅茶苦茶いい絵ですよね!
中身の扉絵は感動ものです。
絵riritto様




