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 街への入場は特に問題なくすんなりと入ることができた。

 僕たちは門の近くにある犯罪者奴隷の収容所でいったん盗賊たちを引き渡す。

「手続きの方は私の方でやらせて頂きますので」

 そう言って対応をしてくれたのはドロスの執事のコクリンだった。


 年は結構年配のようだが、最後までトガを守るため戦っていた執事だ。

 護衛がやられていく中でトガを守りながら戦い続けられたのは、きっと年齢を重ねていても地力が他よりも上だったのであろう。


 かなり腕が立つに違いない。


「パックさん本当に命が危なかったところを助けて頂いてありがとうございました」

「大丈夫ですよ。そんな何度も言わないでください。たまたま運がよかっただけですから」

「いえいえ、そういうわけにはいきません。あのままパックさんが来てくださらなかったら、私一人ではトガ様を守りきることはできませんでした」


 コクリンは先ほどまで御者をしていたので、一緒の馬車の中にはいなかったが帰る途中何度もお礼を言ってくれていた。


「それでは、引き渡しの間パックさんたちは街でも見ていてください。あそこに見えるのが街の市場になりますので。この街はガラス製品が有名ですのでぜひ見ていってください」

「わかりました。お任せしてしまってすみません」

「いえいえ、これくらいなんでもありません。では」


 そういうとコクリンはそのまま引き渡し所の方へ盗賊たちを連れて行った。

 これから、奴隷たちは最初に会った男以外は全部奴隷として売り払ってくる予定だ。


「パック早く市場見に行こうぜ。美味しいもの食べたい」

「美味しいものいいわね。あと、私はガラス製品見たいわ」


「そうだね。お金には余裕があるからコクリンさんが戻ってくるまでの間に買い物しておこう。この後は忙しくなりそうだからね」

「そうね。遊んでばっかりもいられなくなるからね。まぁそっちもさっさと終わらせてゆっくり観光するつもりだけど」

「そうだね」


 僕たちはそのまま街の市場を見に行く。

 市場は犯罪奴隷の収容所からすぐ近くだった。


 大通りから一本入った道の両サイドに露天商が並び、色々なものが売っている。

「ねぇねぇ! すごいわよパック! ここの露天商キラキラがいっぱいよ」

「本当だね。これは思ったよりもすごい」


 僕たちの目の前にはガラス製でできた食器などが並んでいた。

 ガラスは見た目が綺麗だが、割れやすく馬車のガタガタを受けている間に割れてしまったりすることが多くこの街以外で見ることは少なかった。

 幸いにも僕の袋なら揺で割れることはないので大丈夫だけど。


 僕たちが露天商を見て回りながら、ドラに頼まれてレッドオークのピリ辛お肉を買ったり、足らなくなってきている食料品を買い足したりしていると一軒の露店の前でリリがとまる。


「パックあれ見て! あれ!」

 

 リリが指さした先には王子さまとお姫様が華麗にダンスを踊るガラスの像が置いてあった。 


「すごい芸術作品だね。こんなに細かいガラス細工は見たことないね」

「お客さんいい作品に目をつけたね。これは最近売り出し始めている作家の作品で踊る月下の姫っていう作品なんだよ」


「本当にすごい。綺麗だなー」

 リリの目が恋する乙女のように輝いている。

「リリそれ……」

 

 僕がリリに声をかけるとほぼ同時に声をかけられた。

「パックさん買い物中なのに申し訳ありません。犯罪奴隷の収容所まで来ていただけますか?」

 やってきたのはコクリンだった。額に汗がにじみでて呼吸が少し早い。

 盗賊と戦ったときよりも呼吸が速そうだ。


「どうしたんですか? 何か問題でもありました?」

「それがですね……何者かの手によって収容所に毒を撒かれたみたいなんです」

「えっどういうことですか?」

「私も詳しくは……」


 僕たちは急いで犯罪奴隷の収容所へ行くと扉が大きく開けられ人が倒れている。

 周りの人たちは遠巻きに見ているが近づくことはできないでいるようだ。


「リリとドラは周りを警戒して、不審な人がいないか確認をして。入ってくる人はいないだろうけど、入ろうとする人がいたら注意促して。僕は中の人を助けに行ってくる」


「わかったわ。気を付けてね」

「えっちょっとパックさん、毒の中に突っ込むのは危険です! 恩人を危険にはさらせません。とりあえず奴隷の料金がまだなので事件を知らせるために報告しただけですから。あんな中に入るなんてダメです」

 コクリンは僕の前に両手を広げ立ちふさがる。

 だが、先ほどよりもコクリンの呼吸がどんどん速くなっている。

 もしかしたら、コクリンも毒をうけた可能性がある。


「大丈夫です。毒も少しなら僕には効かないので。俺よりもコクリンさん、毒を吸ったんじゃないですか? これ解毒剤渡しておきますので飲んでください」

「えっなんで見てもいないのにそんなことがわかるんですか?」

「なんとなくですよ」


 僕は入口で倒れている人に解毒薬と回復薬の混ざったのをかける。

 この位置なら再度毒を吸う危険は少ないだろう。


 僕はクリーンの魔法を使いながら収容所に入り一階の窓を全部開ける。

 クリーンの魔法で空気をキレイにはしていくが、まずは毒の空気を薄める必要がある。


 倒れている人を見つけるたびに、解毒と回復薬をかけてまわる。

 かなり広範囲に毒が広がっている。


 この毒は遅効性の毒のようで、できるだけ長く苦しめるために使う毒だった。

 回復が遅ければもちろん死に至るが……僕が近くにいなかったとしても回復術師か解毒薬さえあれば問題がなく回復できる可能性が高い。

 なぜこんなことを?


 騒ぎをおこしただけなのか。それとも何か別の理由が……?

 僕は最初に一階から見て行き、そして二階へと階段を駆け上がって行き急いで回復させていった。どちらかというと二階の方が比較的軽症のようだ。


 倒れて動けない人もいるが、吸ったのが少量だったのかまだ意識がある人もいる。だけど、話すのは後だ。今は一人でも多くの人を助けないといけない。


 一階と二階のクリーンが終わると僕は奴隷が収容されている地下室へと向かう。

 こっちが……毒の発生源のようだ。


 あきらかに毒の濃度が濃い。二階よりも先にこっちを優先するべきだったか。

 少し気合を入れていかないと。

 僕はゆっくりと地下室へと降りて行った。

ご覧頂きありがとうございます。

かなりつです。

この度、『聖女の雑用係をクビになった僕は幼なじみと回復スキルで世界最強へ!』が書籍化されることになりました。

発売日は2020年9月5日(土)

BKブックス(ぶんか社)様から発売となります。

よろしくお願いします。


Twitter始めました。もしよろしければお友達になりましょう。

@kanaritu7


今回画像公開はモリヤです。

腹黒いのに可愛い。


挿絵(By みてみん)

絵riritto様

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
[一言] 誤字 誤)リリが指さした先には王子さまはお姫様と華麗にダンスを踊るガラスの像が置いてあった。 正)リリが指さした先には王子さまとお姫様が華麗にダンスを踊る(踊っている)ガラスの像が置いて…
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