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ラリッサの街の博物館

 翌日、朝から墓地の方へ行き穴を埋めるのと、残りの草の整理、それから墓石の清掃をした。

 あの後ライアンさんを起こしてやったが、なんで眠ってしまっているのかはわからなかったようだ。


 だから僕たちも特には説明をしなかった。

 ヴァンパイアはこの世界では嫌われている種族だ。


 救護院では退治をすることが必須のようになっているし、ヴァンパイアが見逃してくれたと言っても信用してくれるかもわからない。


 でも、実際に現れた彼女は本当に何もせずにいなくなってしまった。もしかしたら、僕たちが知らないだけで、彼女の言うことにも一理あるかも知れないのだ。


「やっと終わりそうね」

「そうだね。これでゴーストたちがでてくることも当分ないだろうね」


 僕たちは午前中のうちに作業を終わらせ、最後に聖水をまいてゴーストたちの冥福を祈る。

 墓地は来た時とは違ってキレイになり新品のようになっていた。


「よし。それじゃあブレナさんの家に行って報告してこようか」

「そうだね」


 今日は宿から歩いて来ていた。

 ライアンさんは昨日で依頼が終わり、そのまま報告にいったため、残りは僕たちだけが単独での依頼となった。

 

 街の中を歩いてブレナさんの家に向かっていると、ラリッサの街博物館という看板があった。

「ねぇパック、今日ってあとはブレナさんに報告だけでしょ? あそこの博物館見て行かない?」


 リリは昔から色々なものに興味を持つ。博物館の前には横断幕が張られ、そこには伝説の勇者の像展示中と書かれていたが、その上に盗難により中止と大きく書かれていた。


「リリ、でもあそこに中止って書いてあるよ」

「勇者の像がないだけで、他のはあるはずよ。ちょっとだけ行きましょ。せっかくだから観光しなくちゃ」


 リリはなかば強引に僕の手を持つと博物館の方へ進んで行く。

 別にあとは報告するだけだから、問題はないけど。


 僕たちは入口でお金を払い、博物館の中に入った。

 博物館と言ってはいるがこの街の歴史などが飾られており、それほど大きいものではない。

 金額も子供のお小遣い程度の金額だった。


 ただ、地方の街の博物館にしては色々な絵や像、キレイな花瓶などが飾られている。

 芸術的なものはよくわからない僕でも、色使いや、繊細な装飾品には目を奪われずにはいられなかった。


 その中で、一番メインとされていたのが勇者の像だった。

 だが、その像は盗賊に盗まれてしまったとのことで、かわりに勇者の像の模写が飾られていた。


「パック、この像ってどこかで見たことない?」

「この絵に描かれた像だよね? 僕もどこかで見たような気がするんだよね」

 どこかで見た覚えはあるのだが……全然思い出せそうにない。


「パック、像よりご飯食べようぜ」


 ドラは博物館にはまるで興味がないのか、絵を見てはずっと、

「これは食べられる。これは食べられない。あれは火であぶると美味い、これはダメだな」

 なんて言いながら全部食べられるかを基準にして見てまわっていた。

 芸術を理解するのはなかなか難しいようだ。


「わかったよ。ここをでたら回復薬飲ませてあげるからちょっと待ってて」

「おっいいね。それなら待ってる」


 ドラは本当に回復薬が好きだ。

 たいがいのことは回復薬で手を打ってくれる。

 意外とチョロイ。


 僕とリリが勇者の像の前で見ていると、髪に白髪の混じったおじさんから声をかけられる。


「やぁ、こんにちは。観光の方かな? この像はこの街を救ってくれた勇者様の像なんだけど、先日盗賊に盗まれてしまってね。せっかく来てくれたのに生で見せてあげられなくて残念だよ。はぁ」


 男の人は本当に残念なようで、絵を見ながら何度もため息をついていた。


「本当に愛されていた勇者様だったんですね」


「そうだね。この街の子供たちは必ず勇者様のように人を守れる人になりなさいって言われて育つくらいだからね。この街にとってこの像は象徴みたいなものだったんだよ。それが盗まれてしまうなんて、管理していた僕としては本当にどう責任をとったらいいのやらわからなくて。おっとごめんね。こんな話を旅の方にしてしまって。どうぞいい作品が沢山ありますので続きを見てください」


「大丈夫ですよ。素晴らしい博物館堪能させてもらいます」

 僕たちが去ろうとするとおじさんはまだ話足りないのか、話し始める。


「ありがとう。でも、あの像は街から借りていたものだから、街から違約金を求められているんだよ。それで、もうすぐここは中の展示品を売って取り壊しになることが決まったんだ」


 どうやら愚痴を言いたかったらしい。


「えっそんなに高い像だったんですか?」

「文化的なものの値段はすごく微妙なところなんだけどね。領主様も頑張ってはくれたんだけど、それでも難しいようなんだ。ここの町長は昔からやり手だからね」


「そうなんですか。早く見つかることを祈っていますね」

「あぁありがとう。本当に引きとめてしまってすまなかったね」


 そのおじさんは後で他の人から館長と呼ばれていたので、きっとここの責任者の人だったのだろう。


 僕たちは結局あの像をどこで見たのか思い出せなかったが、他にも色々な物が飾ってあって、なにげに博物館を楽しむことができた。

 こんなに素晴らしい場所がなくなってしまうのはもったいない気がする。


 領主ってことはブレナさんのことなのだろうけど。領主でも対応ができないというのは……。

 僕たちは余計なお世話かも知れないとわかっていつつ、博物館のことをそれとなくブレナさんに聞いてみることにした。

少しでも面白いと思いましたら☆とブックマークよろしくお願いします。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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