ヴァンパイア
僕はとっさに剣を抜きヴァンパイアに向かって剣を構える。
「あら、いやだわ。そんなおっかない顔しないでくださいな」
「うるさい。お前らヴァンパイアは街の人を襲うんだろ? リリは僕が守る!」
「はぁ。もしかして救護院の関係者かしら? 本当に困っちゃうわ。別に私たちは街の人なんて襲ってないわよ」
ヴァンパイアは両手をあげ、敵意がないことをアピールしてくる。
だけど、夜はヴァンパイアの時間だ。油断することはできない。
「嘘をつくな。必ずヴァンパイアがいた街では人が消えるって言われているぞ」
「そりゃそうよ。私たちは街で生活していて、その街にアンデットたちがでたら街で暴れないように、ヴァンパイアの街まで連れて行くんだから」
「はぁ?」
そんな話は一度も聞いたことがなかった。
確かにヴァンパイアがでた後にゾンビたちはいなくなるとは聞いているが、元から街にヴァンパイアが住んでいる?
「まぁ仕方がないわよ。ヴァンパイアと救護院はずっと対立してきていたからね。そういうデマを流されているのもわかるわ」
「いや、そんなことあるわけない。だってお前らは日の光に弱いはずだろ? それなら日中生活なんてできるわけないじゃないか」
「日の光に弱いことは否定しないわ。だけど、普通に考えて。そんな弱点をずっと放置しておくわけないでしょ? 日々ヴァンパイアだって進化しているのよ。予防方法くらいあるわよ」
確かにそれはそうだ。
弱点がわかっている状態でそれをそのまま放置しておくなんてことはありえない。
「それで、今回はお前は何しにあらわれたんだ?」
「何しにって! あんたち救護院がしっかり手入れしておかないから、アンデットが発生したから私が連れ出そうとしたのよ。まっ結果的には連れ出す必要もなく土に返ったみたいだけど」
ヴァンパイアの目の前には骨やゾンビの粉々になった死体が置かれている。
リリが全部退治してくれたからな。
「あぁ。だが、このままお前を逃がすわけにはいかない。もちろん、信じていないわけではないが言い訳は救護院で聞かせてもらおうか」
「それはイヤ。見逃してくれない?」
「見逃せるわけないでだろ?」
「そっか。じゃあ仕方がないわね。私逃げるから。あっこの人たちこのままにしておくと風邪ひくからちゃんと家に連れて帰るのよ」
「お前に心配される必要はない」
僕が追いかけようとするも、一瞬で霧と共に消えていってしまった。
出てくるときもそうだが、逃げる時も早い。
だが、今はリリとライアンさんを助けなければいけない。
それにしても、ドラまで寝かせてしまうとは、かなり強い魔法のようだ。
むちゃして回復薬を作ったおかげで、睡眠耐性があって良かった。
まずはみんなを起こすか。
「リリ、ドラわかるか」
「うっ……うっ……パック……ご飯作って……あと掃除も」
リリはどんな夢を見ているんだ。
夢の中でも僕に家事全般やらせるな。
僕は耳元でリリに囁く。
「リリは掃除も料理も洗濯も大好きだから任せるよ。ほら大丈夫。リリならできるよ。頑張って」
何度か耳元で囁いているとリリの表情が曇ってくる。
「掃除……キライ……料理……食べる方が……」
僕が囁いてリリの潜在意識を変えようとしていると先にドラが起きる。
俺のことを見ていたドラもリリの耳元で囁く。
「ほら、料理しないとゴーストが来るぞ。掃除しないとゾンビがでるぞ」
ドラが悪い顔で笑っている。
僕とドラは音を立てないようにハイタッチした。
「そう……ドラは私のことを敵に回したいみたいね」
リリの目がパチッとあく。
僕とドラは顔を見合わせ、ゆっくりと後ずさりする。
リリはゆっくりと剣を抜く。
「リリ話せばわかる。なパック」
「うん、うん。別に悪気はなかったんだよ」
「あら? 悪気はなかったの? 私も悪気はないわ。だけど、ちょうどいい穴も沢山あるし。一つや二つ新しいのが埋まっても大丈夫よね?」
それからリリをなだめるまでかなりの時間をようした。
それにしても不思議なヴァンパイアだった。
どうしても今回は先入観から戦うことを考えてしまったが、もし次会うことがあれば話を聞いてもいいかもしれない。
上空よりリリたちを見下ろしている影があった。
ヴァンパイア「楽しそう。私も家に帰ってゆっくりしよ」
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