アンデットたちが……
俺たちはブレナさんの依頼でもう一つの墓地の方へ向かった。
ライアンさんが馬車に乗せてくれるというのでお言葉に甘え、急ぐことにする。
あまりゆっくりしていると日が暮れて来てしまう。
ライアンさんはブレナさんとは古い付き合いで、ちょくちょく雑用をしに家まで行っているとのことだった。その雑用をしているおかげで、領主からの依頼の多くを回してもらっているらしい。
墓地までは馬車に乗ったおかげか、思ったよりも早くついた。
「もうすぐつきますからね」
「さすが、馬車は早いですね」
「維持費はかかりますが、あると便利ですよ。ぜひ購入する時には私のところで」
ライアンさんは抜け目なく、さらりと馬車を勧めてきた。
馬車の旅も憧れるが、リリと相談をしてからだな。
俺が馬車を褒めていると、耳元でドラがボソッと、
「俺が飛べばもっと早いよ」
なんて馬車と競っている声が聞こえる。
ドラが空を飛ぶのと比べたら大半の移動手段は遅くなってしまう。
空の旅も気持ちいいだろうな。
どこまでも続く地平線を見ながら、ドラの背中でゆっくりと空の旅。
街の近くに降りなければいいわけだから、それも今度提案してみよう。
その墓地は、庭園墓地とは、街を挟んで反対側にあった。
向こうが比較的新しい墓地だとするなら、こちらはかなり古い物が多い。
墓石も雨や風などで、だいぶ痛んでしまい、中には欠けてしまっているものもあった。
墓地の近くに馬車を止め、そこからは歩いて行く。
一番初めに異変に気が付いたのはリリだった。
「パック! あれを見て」
リリが指さした先にはぽっかりと穴が空いている。
どうやら遅かったようだ。
「パックさんあの穴って、もしかしてアンデットが復活したってことですかね?」
「今まで来たことがないので、わかりませんが、前から穴が空いてなかったのならその可能性すごく高いと思います」
近づいて穴の中を覗くと、穴の中は空っぽになっていた。
穴の土はまだ湿っており、それほど時間はたっていないようだ。
僕は回復薬をいれる空き瓶に聖水をいれ、リリとライアンさんに渡す。
「アンデットには聖水が一番効果的ですので、もしあらわれたらこれをかけてください。今見える範囲にいないってことは、どこかへ行ってしまったか、土の中に眠っている可能性がありますので注意してください」
「わかりました。ありがとうございます。これはおいくらですか?」
「無料でいいですよ。この依頼に含まれているってことで。そう言えばライアンさんの回収するものっていうのはなんですか?」
「私のほうは白い花が咲く夕鈴草です。街の外に出なくてもここのお墓には生えているもので。でも、今日はこっちの方が危険かも知れないですけどね。ここだけの話ですが旦那様の体調があまり良くなくて」
夕鈴草はめまいや吐き気を止める薬になる薬草だ。
ただ、それは対処療法にしかならないはずだ。
「それなら、僕の方でも掃除しながら、探してみますから」
「ありがとうございます。それではさっさとやってしまいましょう」
ライアンさんは迷いなく墓地の中に入り早速草を回収していく。
「パック、あれ見て」
リリがが指さす方を見てみると、お墓の中ではゴーストたちが飛び回っている。
リリの身体は小刻みに震えていた。
「リリ大丈夫だよ。僕が必ず守るから。僕の側にいて」
「うん。ありがとう」
リリは僕の服を掴みながらついてくる。
先ほどの墓地よりも広さ的には広くないので手入れをするのにも、それほど時間はかからなさそうだ。
ただ、掃除をしていくうちに、墓石の下に結構穴があるのがわかる。
リリには言わなかったが、この数はかなりまずい。
なかにはかなり前にあいたと思われる穴もあった。
リリには草を刈ってもらっているが、どうしても一緒に行動しているため、予想外に時間がかかる。そして、日が傾きだした頃、どこかからか不思議な音色が聞こえてくる。
「リリあれなんの音?」
「やだ、パックそんな怖いことを言わないで」
リリには聞こえていないのか?
辺りを見まわしていると、急に地面がボコボコと膨れ上がり、スケルトン騎士やゾンビがあらわれた。
「キャッ―! ゾンビ無理!」
リリが問答無用で切りかかり、ゾンビやスケルトン騎士を蹴散らしていく。
こっ……怖いのは怖いが。
目に見えるアンデットたちはすべてリリによって倒されてしまった。
普通は生き返ってくることが多いアンデットが生き返れないほど粉々にされている。
僕の渡した聖水はまったく使われることはなかった。
聖水よりもリリの剣の方が効果があるなんて。
普通の剣士だったらありえないことだ。
リリがアンデットたちを倒し終わるころには辺りはすっかり暗くなっていた。
とりあえず草刈りは終わり、アンデットたちもリリによって退治された。
あとは草の回収だが、明日にまたきてやればいいだろう。
ライアンさんに頼まれた夕鈴草も無事に回収することができた。
僕が戻ろうとすると、うっすらと霧がでてきていた。
夜の墓地で霧なんて相性最悪だ。
「リリ、そろそろ帰るよ」
リリの方を見るとリリがいつの間にか地面に座り眠っている。
「ドラ?」
ドラもリリの上で眠りについている。
「ライアンさん!」
ライアンさんからも返事がない。
なんだこれ。不味いぞ。
この霧か?
いつのまにか魔法をかけられている。
それにしても、こんな範囲のかけるなんて、相当な腕だ。
「あらあら、私の霧で眠らないなんて困ったものね」
いつのまにか僕の側に、赤い大きな羽根をつけた女性が立っていた。
こいつは……ヴァンパイアだ!
リリ「キャッ―アンデット怖い!」
ゾンビ(出番一瞬だけだったな)
スケルトン(俺も……)
待ち時間数年……
いつも応援ありがとうございます。




