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領主

 領主の館に行くと、前回と同じ門番さんがいたため挨拶をする。

「こんにちは。今日は依頼の報告をしに来ました。中に入ってもよろしいでしょうか?」

「パックさん。どうぞ。主人がお待ちです。ところで昨日は回復薬ありがとうございました。なにかおきた時に飲ませてもらいますね」

「いえいえ、そんないい物ではありませんので疲れた時にでも飲んでください」


 門番は深々と僕に頭を下げてくれる。

 別にそんなに気にしなくてもいいのに。


 前回と同じように玄関まで行き呼び鈴を鳴らす。


 さすがに2回目になると、この大きな家にも少し慣れてくる。

 メイドさんは前回と違いまた別の人だった。

 ここのメイドさんはどの人もきれいで近くにくると、とてもいい匂いがする。


 僕が一瞬見とれてしまっていると、リリが僕のお腹を肘でつつく。

「ちょっとパック……横にこんな美人がいるのにメイドさんに見とれているなんて、どういうこと?」


「違うよ。ちょっといい匂いがするなって思っただけで」


「ふーん。それも悪いわよ」


 リリに突っ込まれてしまったが、メイドさんは何も聞いていないかのように普通に案内をしてくれる。


「こちらへどうぞ」


 また同じ部屋へ案内されるのかと思っていたが、今回は別の部屋らしい。

 前回とは違い、2階の奥の部屋へと案内された。


「失礼します。旦那様お客様がお見えになりました」

「どうぞ」


 そこにはブレナさんと、この屋敷の主人のような威厳のある立ち姿の男性がいた。

 ピシッとした服装に、引き締まった身体。

 年齢はかなり上のようにも思えるが、身体から溢れる気力は若い人に引けをとらない。


「初めまして。奥様より墓地の依頼を受けましたパックといいいます。こちらが仲間のリリとドラです」


「よくいらしてくれました。パックさん。私は領主のロイド・アレンです。よろしくお願いします。実はあなたにお礼が言いたくてお待ちしていたんですよ。どうぞ。こちらにお座りください。メアリーお茶の準備を」


「かしこまりました」

 メアリーと呼ばれたメイドは頭を下げるとそのまま部屋からでて行った。

 僕は、まずゴーストやゾンビのことを報告する。

 ヴァンパイアのことは……今回は害がなかったので報告はやめておいた。


 今から探したところで見つかる可能性は低い。

 それにゾンビがいなくなった以上、ここの街でヴァンパイアが何かをする可能性は低いからだ。


 一通り報告が終わるころにメアリーさんがお茶を持って来てくれる。

「どうぞ」

 すごくいい花の香りのするお茶だった。

 さすが領主ともなるとお茶も今まで飲んだことのないような素晴らしい香りのするものだ。


「お墓の清掃の件もありがとうございました。それも助かったんですが、今回はこちらの件でお礼を言いたくて」

 

 ロイドは懐から1本の回復薬を取り出した。

 それは昨日、ブレナさんに渡したものだった。


「自分が作った回復薬ですね。昨日ブレナさんにお渡ししたものかと思うんですか?」

「そうです。実はずっと私はここ数週間、原因不明のめまいや吐き気に襲われることが多くて。今回のライアンへの依頼もそうだったんですが、夕鈴草で押さえていたんです。でもそれがこの回復薬を飲んでからは完全に回復しまして。本当にありがとうございます」


「いえいえ、治ったなら良かったですが……」


 僕にはちょっと疑問がでてくる。

 今回渡した回復薬で吐き気やめまいが治るというのは聞いたことがなかった。

 例えば、それが何か別の原因があるのであれば話は別だが……。


「どうかされましたか?」

「いえ、今回の回復薬はあくまでも疲れの回復や簡単な解毒などように使われるもので、慢性的なめまいや吐き気の根本的な治療に使われるものではないんですよ。それが治ったというのにちょっと違和感がありまして。今まで吐き気やめまいはどんな時に起こることが多かったですか?」


 ロイドは少し考える。

「特に決まった時間や場所ではなかったかな。ずっとここ数週間続いているような感じだったからね」


 回復薬で回復するもので、数週間続くめまいや吐き気というのは今まであまり聞いたことがなかった。

 もちろん、すべての病気を知っているわけではないが。

 やっぱり、何かがおかしい。


「めまいが始まる前に何か特別なことや、おかしなことなどはありませんでしたか?」

「始まる前か……おかしなことではないが、ちょうど街に盗賊があらわれた頃で、この街の像が博物館から盗まれてしまった後くらいだな。町長と話し合いがこじれてしまって。めまいが治ったら解決するといってそのままになっているんだが」


「町長との話し合いは? それはどんな風にこじれたんですか?」


「街の英雄の像が博物館から盗賊に盗まれてしまってな。それを知った町長が館長に責任をとれと詰め寄ったんだよ。その像は歴史的に価値はあるのはあるんだが、高い物でもないし、また作り直せばいいと言ったんだが、町長は頑としてうんとは言ってもらえなくてね。結局館長が、博物館の展示品を売って違約金を払うことになったんだけどね。それは可哀想だから違約金を私が払うと言ったんだが、それも断われてしまってね。盗られた人が責任を負うべきものだって。なかなか町長もやり手で私も領主ではあるんだけど揉めたくはない相手でね。それでまた話し合いをすることになってたんだけど、耳鳴りと吐き気がでてきてしまって延期になっているんだよ」


「町長と会った後にその症状がでてきたってことですよね?」

「そうだな。確か会った日の夜だった」

 

 病気ではなく、嫌がらせにしかならないが長期的に吐き気とめまいを起こさせる植物があった。それは夕鈴草との相性が最悪で使えば使うほど、症状が長期化してしまう朝日草という。


 これを飲まされると一時、吐き気やめまいがある。

 ただ、すぐに治まってしまうものだが、この草はある植物と一緒にとるとその症状がずっと継続してしまうという特性があった。

 

 それは本来吐き気やめまいをなくす夕鈴草だ。

 これを使うと一端は落ち着いたような症状になるが、またすぐに症状が悪化してしまう。

 

「夕鈴草を使うと言ったのは誰ですか?」

「それは町長だけど? ちょうど、翌日に忘れ物をしたからと家まで取りにきて、夕鈴草を飲むと治るって言われて渡されたんだよ。しかも生えている場所まで教えてもらって」


「町長が持っていたんですね?」

「あぁそうだよ」


 夕鈴草は採ってから長くても1日以内に使わないと効果がなくなってしまう。

 たまたま持っていたとは正直考えられない。

 そうなると……町長は何かを狙って領主に吐き気を出させていた方がいいと判断しても良さそうだ。


 だけど……なんのために?


「盗賊は結局捕まらずですか?」

「そうだよ。確かマッシュとかっていう盗賊が率いている盗賊団らしいことまではわかったんだけどね。私たちも色々調べはしたんだが、それ以上のことはなかなかわからなかったんだよ」


 僕とリリは顔を見合わせる。

 マッシュは先日捕まえた盗賊にいた奴の名前だった。

 あいつに話を聞けば何かわかるかも知れない。


「そうなんですね。とりあえずめまいと吐き気の方治って良かったです。ちょっとこれからやらなければいけないことがあるので僕たちはそろそろ失礼します」


「あぁ悪かったね。引きとめてしまって。報酬はギルドから受け取ってくれ。少し多めに渡してあるから。それと墓地の清掃助かったよ。ゾンビがでていたようで、ヴァンパイアがくるようになったら大変だからな」


「アハハハ……そうですね。聖水もまきましたのでしばらくは大丈夫だと思いますが今後も定期的に掃除してもらったほうがいいかと思います。それではこれで失礼します」


「本当にありがとう」

「ありがとうございました」


 ロイドとブレナさんが2人とも僕たちのようなただの冒険者に頭を下げてくれた。

 こんないい人たちの手助けができるなら、ちょっと頑張ってみてもいい。


 僕たちは盗賊の元へ話を聞きに行くことにした。

少しでも面白かったら★とブックマークよろしくお願いします。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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