ノーマンとの決闘
「草を刈ったのが俺とリリで、草を集めたのがパックだと正確な勝負にはならないと思うんだが」
ノーマンは最初に気が付かなかったので、そのまま押し切れるかと思ったがやっぱりダメだったらしい。僕はとっさにリリにふる。
「リリどっちが勝利?」
「うーんじゃあ引き分けってことで。庭園もきれいになったし、見る限りゴーストも消えたからね。これでしばらくは大丈夫でしょ」
うん。妥当な回答だ。
ここで変に勝敗をつけてしまうとイチャモンをつけられかねない。
だが、ノーマンは意外としつこかった。
「引き分けか。まぁ仕方がないだろう。それで次は何で勝負をするんだ?」
「次の勝負か。付き合ってやりたいのはやまやまなんだけど、先ほどご婦人から冒険者としての依頼があると言われてしまったからな。勝負より仕事を優先しなければいけない」
これ以上ノーマンの相手をしているとめんどくさいことになりそうなので、この辺りで終わりにした方がいいだろう。
「仕事も優先だが、それよりもリリを救出する方が俺にとっては大事だ。リリさぁどっちがいいのか選べ!」
ノーマンのこの自信はどこからくるのか不思議だが、ある意味羨ましい。
リリはあっさりと僕を選ぶ。
「ごめんね、ノーマン。あなたのような人嫌いじゃないけど、生理的に受け付けないの。草刈り手伝ってくれて助かったわ。また試合をしましょうね」
「そんなはずない。お前、さてはなにかリリの弱みを握っているんだな。そうだな。やっぱり俺と勝負だ。卑怯だと言われても、なんだろうと剣で決着をつけてやる」
ノーマンが剣を抜き上段に構える。
まさかここで勝負をすることになるとは思わなかったが、ノーマンはもうやめる気はないようだ。
「悪いけど、僕は剣は得意じゃないから魔法も使わせてもらうよ。それでルールはどうする?」
「どちらかが負けを認めるか、動けなくなったらだ」
「わかった。その代わりこれが終わったら、もうリリにつきまとうなよ」
「そういうのは俺に勝ってから言え」
僕も剣を抜き構える。
普段リリとしか剣での打ち合いはしていないため、手に汗がでてくる。
緊張で呼吸が早くなるが、まだ打ち込んですらいない段階で熱くなってはいけない。
冷静に落ち着いて呼吸を整え、ノーマンの呼吸を読む。
来る! そう感じた瞬間ノーマンが動く。
細かく剣先が動きフェイントも織り交ぜられた激しい剣だ。
一見雑のように見えなくもないが、その中でも隙がまったくない。
きっと剣を何万回、何十万回と振ってきたのだろう。
努力をした者の剣だ。
「なかなかいい動きをするじゃないか。さすが剣聖リリの幼馴染ってところか」
「ノーマンも動きに無駄がないね。場数が僕とは全然違うのがわかるよ」
「ふん。当たり前だ。お前と一緒にするな」
僕は一度ノーマンから距離をとる。
接近戦ではやはり分が悪い。
どうしても、守りばかりになってしまう。
悪いが僕は魔法を使わせてもらう。
「さて、俺はなぶり殺しは好きじゃないんでな。そろそろ終わりにしよう」
「僕もそろそろ終わらそうと思ってたんだ」
ノーマンの動きから逃げるようにして生糸を地面に仕掛けていく。
この勝負は負けを認めるか、動きを封じれば終わりだ。
「これで終わりだ! リリは俺がもらいうける」
ノーマンは僕が逃げる先を読んでフェンイントを織り交ぜながら、剣を振り下した。
軌道は僕の肩に一直線だ。だが、僕の方の仕掛けもほぼ同時に終わった。
「何度も言ってるだろ。リリは物じゃないから、かける賞品になんてできないって」
生糸の魔法を発動し、それを一気に引っ張る。
ノーマンの剣は僕の肩に落ちる寸前でその軌道を変える。
ノーマンの身体が一瞬宙に浮き、体勢を入れ替えようとするがもう遅い。
「まさか、俺の方が圧倒的に有利だと思っていたのに、こんな状況になるなんてな」
僕はノーマンに剣を向けいつでも止めをさせる位置にいた。
「勝負は時の運だよ」
剣を鞘にしまい手を出し起こしてやる。
「同じ手は二度使えないから、もうノーマンとはやりたくないかな。でも、これで僕の本気が少しでも伝わってくれるとありがたい」
「君の苦手な剣で負かされてしまった以上、俺は何も言えないよ。今までの無礼を詫びよう。悪かった」
「いいよ。元は救済の森の同じ仲間だ。僕の方も謝罪を受け入れるよ」
「それにしても、回復メインなのかと思ったら剣も使えるんだな」
「小さい時からずっとリリと一緒に剣を振ってきたからね。リリに鍛えてもらったんだよ」
「さすが剣聖の幼馴染か」
ノーマンはどこかすっきりとした顔をしている。
「さて、それじゃあ僕たちは新しい依頼と墓地の報告をしてくるよ」
「あぁわかった。何かあればいつでも救護院へ来てくれ。君の恋の応援以外なら力になろう」
ノーマンはそう言って救護院へ戻っていった。
リリを諦めてくれたようで良かった。
「いやーパック、胸がキュンとなる戦いだったね。やっぱりあそこでは、私をとりあって勝負なんてやめてってヒロイン風に飛び出した方が良かったかしら?」
「いや、リリそれならパックとノーマンとの決闘に混ざってリリが勝利するっていう方がいいな。本気を出せばリリが一番強いんだろ?」
「どうかな? そこは乙女の秘密ってことで」
いつも通り、ドラとリリがふざけている。
「そろそろいくよ。さすがに次の依頼はレイナは連れて行けないから一度宿屋によらなきゃいけないし」
僕たちは次のお掃除依頼へ向かうことにした。
そこで予想外の人物と再会することになった。
リリ「パックー負けたらドラと一緒にご飯抜きよ!」
パック(そこには負けられない戦いがある)
ドラ(えっ巻き添え?)
応援ありがとうございます。




