墓地の草刈り
まずは早急に対処をしなければいけないものに、庭園墓地の整備がある。
ゴーストがでてくるようになると、次にはゾンビやレイス、最悪リッチなどまででてきてしまう。
だいたいはそこまで行く前にヴァンパイアがでて来て、ゾンビたちを下僕にしてどこかへ消えていってくれるが、ヴァンパイアがでてくると必ず街から人が消えると言われている。
ヴァンパイアがでてくる前に浄化しないといけない。
「ノーマンそれで僕と勝負をしたかったんだよね?」
「あぁリリをかけて勝負だ」
「残念だけど、リリはかけられないよ。選ぶ権利はリリにあるからね。だからこうしないか。リリに選択権を与えるっていうのは?」
「ほぉ、いい度胸じゃないか。負けない自信があるようだけど、俺だって負けるつもりはないぜ。リリ、君のハートは絶対に俺がもらう。それじゃあ表にでろ。すぐに決着をつけてやる」
ノーマンは剣を持ち、早速外に出ようとするが、僕はそれを止める。
「ノーマン、まさかと思うが自分が得意な剣で勝負とかそんなわけないよな? そんなんで勝ってもリリは納得しないと思うんだよな。やっぱりここは平等に勝負できるものがいいと思うんだけどどうだ?」
「いいだろう。そこまで言うなら勝負の仕方はお前に任せてやる。どんな勝負だろうと俺は負けないからな」
「それじゃ、勝負は墓地の整備勝負としようか。墓地をどれだけ綺麗にできたかで決着はリリに決めてもらおう」
僕たちは元々救済の森のメンバーではあるが、今は部外者だ。
いくら庭園墓地の整備をした方がいいと言われても勝手に掃除するわけにはいかない。
それに、もし掃除するにしても人手は多い方がいい。
「ふっ俺は何をやっても天才だからな。絶対に負けないぞ」
「よし、じゃあ冒険者ギルドに行って最低価格の1ピトで依頼をだしてくれ。後で勝手にキレイに掃除したとか文句を言われても困るからな」
「わかった。それじゃあ今から行ってすぐに勝負だ」
僕たちは冒険者ギルドへ寄ってから庭園墓地へいく。
庭園墓地には先ほどよりも多くのゴーストたちが浮遊していた。
確実に魔力だまりが悪化している。
やっぱり早めに手を打たないとゾンビなどがでてきてしまう。
「ノーマンこれからやるのは草を刈って集めて燃やすまでな。それが全部燃やし終わったら、今度は墓石をキレイにするから。それが終わったら依頼終了だ」
「いいだろう。ところで、なんでお前が仕切っているんだ……」
ノーマンが話している途中でリリが開始の合図をかける。
「それじゃあみんな勝負開始よ!」
「おぉー!」
ノーマンとリリが草をかり僕とレイナが草を集めていく。
レイナはボランティアで掃除をするだけだから家に帰りなと伝えると、クリーンの魔法の練習をしたいからついて来ると言われてしまった。
別に無理には断る理由もないので無理のない範囲で手伝ってもらう。
ちなみに集めた草は全部ドラが灰にしてくれる。
思った通り、リリ1人で草を刈るよりも、ノーマンがいた方が草刈りが早く進んだ。
「どうだ! パック! 俺の剣さばきはすごいだろ」
「本当だな。リリ1人だとこんなに早く進まなかったよ」
「この勝負は俺の勝ちだろ?」
「さぁそれは終わってからじゃないとわからないな」
それからしばらく庭園の草刈りと片付けをしていると、品のあるおばあちゃんから声をかけられる。
「墓地の草刈りですか?」
「えぇ、墓地からアンデットが生まれてくると大変なので」
「そうなの。すごいわ。救済の森の方ですか?」
「あそこで草を刈っているノーマンはそうですが、他はボランティアです」
「あら、ボランティアも掃除していいんですね! 今まで救済の森の方にばかりお任せしていたので手を出しちゃいけないのかと思っていたのよ。それなら私も手伝っていいかしら?」
「もちろんいいですよ」
「じゃあちょっと待ってて。他にもここをキレイにしたいって人いたから呼んでくるわね」
街の人も墓地の状況は気になっていたが、救済の森が管理をしているからと手を出すのを躊躇していたようだ。
俺たちが墓地の半分をキレイにすると、街の人たちが続々と集まってきて掃除を手伝ってくれる。
「やっぱりここの庭園が荒れているとね。なんか寂しいのよ」
「今まで救済の森で管理してくれていたけど、急に荒れだしたから心配してたんだよ」
「ここはみんなの墓地でもあるからね」
住民たちは楽しそうにしながら、掃除を手伝ってくれた。
どんどんキレイになっていく庭園墓地が嬉しいようだ。
住民たちのおかげで、僕たちがキレイにした時間よりも圧倒的に早くキレイにすることができた。後はクリーンの魔法で墓石の汚れを落とすだけだ。
ついでにレイナへの実技訓練をする。
「レイナこっちへおいで」
「はーい! お兄ちゃん」
「今からここの墓地にクリーンの魔法をかけて、アンデットがでてこないようにするから、手をだして。一緒に訓練をするよ」
「うん!」
レイナの手を持ち、クリーンの魔法をかける。
少し広いため時間がかかってしまうが、レイナに負担がいかないように調整をしながら墓石をキレイにし、墓地の魔力の乱れも正常にしていく。
「すごいな。墓石が新品のようになっている」
「淀んでいた空気が一瞬でキレイになっていくね」
「こんな魔法初めてみたわ」
みんながおおげさに言ってくれるがそんなことはない。
ただの生活魔法だ。
「お兄ちゃんってすごい魔法使いだったんだね」
「そんなことないよ。誰だってこれくらいはできるんだよ。みんな秘密にしてるけどね」
レイナはどこか嬉しそうで得意げだった。
「ノーマン、救護院にはあまっている回復薬の瓶ってあるのか?」
「あぁ、大量の在庫があるぞ」
「それ少し買い取っていいか」
「いいぞ。財政難だから瓶だけでも2割り増しだけどな」
「わかった。20本ほど取ってこれるか? 墓石をキレイにするのに、もう少しかかるからな」
「いいだろう」
ノーマンが取りに行ってもらっている間にレイナへさらに細かく魔力の流れを意識してもらう。
レイナはかなり繊細に流れを掴めてきている。
これならすぐにでもクリーンの魔法を覚えられそうだ。
「レイナ、クリーンの魔法は消費魔力は少ないからいいけど、魔法を使う時には常に魔力の残量には気をつけるんだよ」
「うん。なんとなくだけど身体の中をお兄ちゃんの魔力が流れているのがわかるよ。これが魔力なんだね」
「そうだよ。レイナには魔法の才能があるみたいだね」
俺とレイナがクリーンの魔法で最後の仕上げをしていると、品のあるおばあちゃんが俺の元へやってくる。
「ボランティアのお兄さん、あなたって冒険者の方? もし良ければなんだけど私の家の掃除も手伝ってくれないかしら」
「いいですよ。僕の名前はパックっていいます。冒険者ギルドに登録してますので、そちらから依頼をだしてもらえればと思います」
「ありがとうございます。私の名前ブレナって言います。今日中には依頼をださせてもらいますね」
「わかりました。後で確認しにいきますね」
そこへノーマンが戻ってくる。
「ほら、空き瓶持って来てやったぞ」
ノーマンの手には空き瓶がしっかり20本持たれていた。
「ありがとう。料金は後でギルドへ行った時に渡すよ」
「はいよ」
俺はノーマンから回復薬の瓶をもらうとそこへ回復薬をいれる。
「手伝ってくれた方々ありがとうございました。本当は自分たちだけでやるつもりだったんですが、住民の方のおかげで早く終わりました。これは参加してくれた方へのお礼です。下級の回復薬ですが使ってください」
「おぉ! 回復薬をもらえるのか」
「いや、でも回復薬ほど働いてはいないし。後が怖いんじゃ」
「パックさんこれはもらえませんよ」
「これは救済の森とは無関係の僕からのお礼ですから気になさらないでください。ただ、僕たちは旅の冒険者ですので、この墓地がまた荒地になってしまうとアンデットがでてきてしまう可能性があります。今度は住民の方々も一緒に掃除してもらえればと思います。何かあればここにいる救済の森の1000人長のノーマンが相談に乗りますので」
さらっと責任はノーマンになすりつけておく。
ノーマンは胸をはってドヤ顔をしているので、人の前に立つのは嫌いではないらしい。
「本当にいいのか? こんな高価な物」
「いいですよ。ただ、誤解をうけると困ってしまうので救済の森からもらったとか、無料でもらったとかは言いふらさないようにしてくださいね」
「もちろんです」
「ありがとうございます」
それから回復薬を配って解散するとノーマンが俺のところへ来て言った。
「それで、これはどっちが勝ったんだ?」
そういえば、ここをキレイにすることばかりを考えていて、決着の方法をどうするか考えていなかった。どっちでもいいとも言えないし。
僕が少し焦っていると僕の横でリリとドラがニコニコとしているのがわかる。
こいつら俺が困ってるの楽しんでいるな。
リリ「この勝負ってほぼ勝ちが決まっているわよね?」
パック「リリシッー!ノーマンは気が付いていないんだから」
ノーマン「俺の目の前でよく堂々とその会話できるな」
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