ヤンデレ兄とニート妹
今回はちと人によってはエロく感じるかもしれません。
(‥‥‥‥へ?)
一瞬、何が起こっているのかわからなかった。
目の前にあるのは、目を閉じた兄の顔、唇には、柔らかい何かが触れている感触があった。
ーー兄に、キスされている。
そう理解したのは、口の中にぬるりと舌が入ってきた時だった。
「んっ!? ふうっ‥‥!」
「‥‥‥‥。」
思わず暴れるものの、千尋は更に腕に力を込め観月に深く口づける。
いつの間にか背中から抱きつかれていた体勢はかわり、互いに向き合うような形になっていた。
上顎の筋をつぅっと舌でなぞられ、観月はびくりと体を震わせた。
ーーどのぐらい、経っただろうか。
容赦なく口内を貪られた後、唇を放される。
互いの唇は、まるで惜しむかのように細い糸で繋がっていた。
「‥‥はぁっ。ふっ‥‥!」
「‥‥大丈夫?」
息も絶え絶えな観月を気遣うように千尋は優しく抱きしめながら背中を擦る。
はふっと息をつきながら観月は千尋の胸に顔を埋める。
「ふ、なん、で?」
上にある兄の顔を見上げながら問いかける。
瞳は生理的な涙に濡れ、兄の表情を窺い知ることはできない。
「‥‥俺にこうされるのは嫌?」
質問に答えずに千尋は問いかける。
頬を優しく包まれながら観月は首を横に振った。
「やじゃ、ない‥‥。だけど、なんで?」
ーーそう、嫌ではなかった。
急にキスされて、ビックリして、思わず暴れてしまったけれど、決して嫌なわけでは無かった。
「愛してるからだよ。」
嬉しそうに、心の底から喜んでいるかのような声を出しながら千尋は答える。
頬に添えていた手で観月の髪を梳きながら言葉を続ける。
「‥‥初めて出会ったときからずっとずっと観月を愛していた。一緒に過ごせば過ごすほど、どんどんどんどん観月のことが欲しくてたまらなくなってった。‥‥これでも、結構我慢したんだよ? けど、観月があんな可愛く煽るから、我慢出来なくなっちゃった。」
「あおっ‥‥!?」
驚きで固まってしまった観月を愛おしそうに微笑みながら千尋は続ける。
梳いていた髪を観月の耳にかけて耳元で囁く。
「‥‥煽ってるんだよ。ハッキリ言おうか? 今すぐ襲っちゃいたいぐらい、俺は‥‥」
「ひゃっ‥‥!? いい、いいから!!」
耳元でさかれ、中々に際どいセリフを言われ、耐性のない観月は真っ赤になりながら観月は暴れる。
それをガッチリと抱き締めながら千尋は囁き続ける。
「‥‥観月は?」
「‥‥へ?」
「観月は、俺のこと、どう思ってるの?」
どこか固いその言葉に、観月は首を傾げ、考え始める。
すると、再び顔を真っ赤にして額を千尋の肩に押し付ける。
「どうしたの?」
かわいいなぁ、と微笑みながら問いかける千尋に呻きながら観月は答える。
「‥‥なんか、兄さんのこと考えると、すっごいドキドキする。兄さん以外に触られたくないし、兄さんに他の人を触って欲しくない。
‥‥さっきの、も、やじゃなかった。‥‥多分、兄さんのこと、好きなんだと、思う。」
ポソポソと、つっかえながら精一杯答える観月に千尋は目を細めた。
「‥‥俺のは、そんなに綺麗なもんじゃないけどね。」
ボソリと呟いた千尋の、どこか平らな言葉に観月は首を傾げる。
それに曖昧に微笑みながら観月の頭を撫で、答える。
「何でも無いよ。‥‥そうか、良かった。」
まるで何か安心したように千尋は呟いて腕を放す。
突然のことに混乱しながら観月は立ち上がった千尋を見上げた。
「兄さん‥‥?」
「ご飯、用意してくるよ。今日は疲れたでしょ?」
その言葉に、観月は泣きそうになる。
堪らず、尋ねていた。
「‥‥一緒に、作るのはダメ?」
「駄目じゃないけど‥‥じゃあ、少しだけ待って?」
どこか困ったように顔を曇らせる千尋に、観月は渋々頷いた。
「‥‥うん。」
「‥‥ほんとにかわいいなぁ。」
去り際に額にキスされ、兄が出て行くのを観月は呆然と見ていたが、理解した後真っ赤になって扉にクッションを投げつけた。
「‥‥兄さんの、バカァッ!!」
恥ずかしくて、顔を掌で覆う。
まだ、唇や額に兄の熱が残っているみたいで、心臓がひどくうるさかった。
「‥‥にいさんの、ばかぁ‥‥。」
でも、なぜか幸せで、緩む頬を抑えることが出来なかった。
「‥‥本当に、よかった。」
扉の外で、観月の声を聞きながら千尋笑みを浮かべる。
その手には、真新しいカッターが握られていた。
一応今回で連載部分は終わりです。
これからは気が向けば短編をちょくちょく投稿、ということになります。
まだまだ書きたいネタはあるのでお付き合いいただけたらうれしいです。




