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始まりの時
「この協定で、魔王が選定した勇者が従者を伴い魔族領横断へ、侵攻へ、挑む事になったわけだが」
魔族領侵攻。間違いない。勇者が選ばれたんだ。
今年始めの協会報告。まれにしか表に出ないブラックコート姿が映えるボスが立ち会っていたときに、予感はしていた。勇者が現れる。いや、選ばれる、勇者選定。そして、その後だ。その後行われる従者選定。
「勇者選定式は明日」
張り詰めた雰囲気。もうこれ以上ないほどの緊張。心臓が高鳴る。従者選定だ。それこそが今日、ここに組合員が集められた理由、と思う。
従者選定。
英雄勇者エレノートは僧侶、魔法使いを皮切りに、無頼の徒や少年兵、老兵、人外の化物まで率いて魔族王と戦ったが、協定が結ばれ勇者が現れては魔王領横断に挑み、更新されてゆく中、従者供給に暗黙の了解が生まれていく。
「我が盗賊ギルドからも一名、従者が選定される運びとなっている」
心臓が飛び跳ねる。この中から魔族領に向かう人が出る。どうする。どうしよう。何を尋ねよう。何を話そう。左右に眼球を動かして、背中越しに、横顔に、わずかに映る正面顔に、顔と名前を当てはめてみる。リュキエラ、ヌース、トリス、カイト、サイス、そして、ヨギ。そうヨギだ。私の一番の仲間。そして、そして…。




