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第9話 【小冊子はちゃんと読もう】


 朝日が木の窓から差し込み、部屋を淡く照らしていた。純増はゆっくりと目を開ける。

「んん……」身体を伸ばし、大きくあくびをする。隣を見ると、ジュリナが静かな寝息を立てていた。

「ふふ……朝まで付き合ってくれるなんて……」思わず笑みがこぼれる。「いい子だなぁ〜」


 その声に反応し、ジュリナがゆっくりと目を開けた。

「……ご主人様?」次の瞬間だった。彼女は飛び起き、慌てて床へ降りると、その場で正座した。

「ご主人様より遅く起きるなど、申し訳ございません!」深く頭を下げる。

「しかも“奴隷”の分際で、ご主人様のお隣で朝を迎えるなど……。」


 純増は数回まばたきを繰り返した。

「……“奴隷”?誰が?」一拍。「誰の?」最後に自分を指差す。「俺の?」


 ジュリナは静かに頷く。「はい」「はい?と、とりあえず服着ようか!」純増は慌てて目を逸らした。

「あと隣!座る時、正座じゃなくて隣!全部説明して!」

 ジュリナは服を整えると、隣へ静かに腰を下ろした。

「私は、ご主人様に買われた奴隷です。」「……うん。」

「生かすも殺すも、ご主人様のお考え一つです」「重い重い重い!」純増は両手を振る。


 ジュリナは続ける。

「昨夜、ご主人様との本契約も無事に完了いたしました」深く頭を下げる。

「どうか末永く、よろしくお願いいたします。」


 純増は固まった。「…………」数秒の沈黙。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」宿中に響きそうな叫びだった。

「一日じゃないの!?昨日だけじゃないの!?これからずっと!?」頭を抱える。「君を養うってこと!?」


 ジュリナは静かに頷く。

「はい。不出来ですがよろしくお願いします」

「無理無理無理!」純増は慌てて立ち上がる。

「俺、この世界来てまだ二日目だよ!?仕事もしてないし!自分一人で精一杯なのに!」


 ジュリナは静かに目を伏せた。

「……では。」ぽつりと呟く。「今日、処分されるのですね。」「処分しませんっ!!」純増は即座に否定した。「そんな物騒なこと言わないでぇぇぇ!」頭を抱えたまま苦笑する。

「ごめん!びっくりしてるだけ!」深呼吸してから笑う。

「朝一AT、倍々チャンスで万枚確定したくらいビックリしてるだけだから!」


 その瞬間だった。部屋の空間がぐにゃりと歪む。


「……えっ?何?今度は演出?」

 純増が不思議そうな顔をすると、光の中から見覚えのある女性が現れた。女神だった。


「ふぅ、本来は二度と会う事はないのですが、説明不足でしたので…。では、この世界とあなたに授けた剣について説明します」

「あぁ、この剣ね…」ベッド脇に置いてあった剣を持ち上げる。ジュリナは、純増が持ち上げた剣へ視線を向けた。


「……その剣は…」ジュリナを見て女神が静かに微笑む。「ようやく気付きましたか」「えっ?」純増は首を傾げる。

 ジュリナは恐る恐る鞘へ手を伸ばした。

「ご主人様。少しだけ……抜いて見せていただけますか?」

「うん。いいけど」純増が剣を少しだけ引き抜く。


 シャリン、、虹色の刀身が姿を現した。


 その瞬間だった。


「っ!!」ジュリナの瞳が大きく見開かれる。

「そんな……間違いありません……これは……ダークエルフの王が持っていた剣です……実物を見るのは初めてですが…小さな頃、本で読みました…」

「えぇぇっ!?王様の剣?」純増は慌てて剣を見る。

「これが?」「はい。間違いないです」


 女神が一歩前へ出る。

「正確には、かつてダークエルフの王が遺した神器。今では古い伝説となっています」


 純増は首を傾げた。

「でも、これ質屋で鈍って言われたぞ?」

 ゴッ!女神のチョップが額へ炸裂した。

「痛っ!」「普通売ろうとしないでしょ!」

「いや、金なかったし!」「うわっ!今の顔キモい!近寄るな!」「はぁ?今、顔関係ないっしょ!」


 ジュリナは二人を見比べ、小さく瞬きを繰り返していた。「ご主人様……お顔…キモく無いです…」と小さく呟く。


 女神は咳払いを一つする。

「……話を戻します。この剣には、本来対となる指輪が存在しました」

「指輪?」「ええ、王は自分の最後に、その指輪を世界のどこかへ隠しました」


 部屋が静まり返る。女神は静かに目を閉じる。

「そして最後に、こう言い残したそうです。」


 少しの静寂。


「引きが欲しいのか?くれてやる。全ての引きをそこへ置いてきた。探せ!見つければ、この世の引きはお前の思いのままだぁぁ!!」


 沈黙。純増は真顔で女神を見つめた。


「…………いや、どっかで聞いたセリフだろ、それ…」


 女神は目を逸らした。

「気のせいです」「絶対怒られるやつだよ!」

「怒られません!オマージュは愛です!」

「うわっ!言い方一つで乗り切ろうとしてる…」


 ジュリナは思わず吹き出しそうになる。

 純増はもう一度、静かに剣を見つめた。


「ふ〜ん……引きの王、か…」口元がゆっくりと緩む。

「世界中の引きとかの意味は、まだよく分かんない…でもさ……」剣を肩に担ぐ。おじさんが少年のような笑顔で言った。

「引きの王って響きは、めちゃくちゃカッコいいじゃん」

 ジュリナはその横顔を見つめる。女神も小さく微笑んだ。純増はニヤリと笑う。

「よし、なって見ちゃおうかな?その、引きの王ってやつに!」


 女神は大きくため息を吐いた。


「はぁ、この世界も剣の使い方も知らず大口を……いいですか」パチンと指を鳴らす。空中へ世界地図のような光景が浮かぶ。

「この世界には人間だけではなく、獣人、エルフ、ドワーフ、ダークエルフなど、数多くの種族が存在します。」


 また指を鳴らす。映像が切り替わる。


「魔法もあります。文明は地域によって差がありますが、暮らしそのものは現代に近い場所も少なくありません。そして、あなたの剣…」


 ホールソードが宙へ浮かぶ。


「この剣には特殊な空間があります。中へ入ると、スロットを打つことができます」


 純増の目が輝いた。


「マジ!?」「詳しいルールは中の管理者へ聞いてください。そこで得た力は、あなたとパートナーであるジュリナへ反映されます。攻撃、防御、回復、属性付与、その他すべて。つまり…」女神は二人を見た。


「あなた達は、今日から一心同体です。」


 純増は少しだけ真剣な顔になった。そして、、

「……スロット打てるんだ…。この世界でも脳汁垂れ流せるんだ……はぁ、はぁはぁ、、」


 女神は嫌な予感しかしなかった。


「はぁ、はぁ、今、入っていい?」

「いいですけど……ちゃんと話し聞いてます?本来は戦闘中じゃないと意味がありません」


 純増は笑った。「あははっ!」ホールソードを肩へ担ぐ。「“打つことに意味なんか求めたことない”!」

 そう言って剣へ手を添える。光が純増を包み込んだ。


 次の瞬間➖➖➖

 目の前へ広がった光景に、純増は両手を広げる。


「おいおいっ!!」満面の笑み。

「ここ!ちゃんとホールじゃねぇかぁぁぁっ!!」



            続

読んで頂きありがとうございます。気が向いたらでいいのでブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日0時30分更新予定です。

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