第67話 【花火絶景】
ビーハナ町、西門から離れた荒野➖➖
凄まじい爆発音から離れるように、ジュリナとカウホースはひたすら西へ向かっていた。
ドドドドドドドドッ!!馬車が大地を駆け抜ける。
ジュリナはしばらく前を見ていたが、ふと後ろを振り返った。
「……。」遠くに見えるビーハナ町。
その上空では……
ドォォォォン!!バチバチバチバチッ!!ドゴォォォォン!!次々と巨大な閃光が咲いていた。
まるで夜空を彩る大花火。ただし、一発一発が大陸を消し飛ばしかねないほど物騒な花火である。
「カウちゃん。」「ブルルルッ?」
ジュリナは後ろを見ながら、ぽつりと呟いた。
「離れて見ると……絶景ですねぇ。」
「ブルルルルッ♪」カウホースも同意するように鼻を鳴らす。
その時だった➖➖
「たっだいま~~!!」「……え?純増様っ!♡」
ジュリナが振り返る。すると、虹色に輝く剣の中から……ぴょんっ。
「ふぅ……。」純増が飛び出してきた。
「ジュリナ!ごめんね!閉店でちゃんと強化出来なくて……って。」純増はジュリナの顔を見る。
「……ジュリナ?」「はい。」
「なんか怒ってる?」「……いえ」
ジュリナの頬は、まるでフグが怒った時のようにぷっくり膨らんでいた。
「……お帰りなさいませ。ご主人様。」
「う、うん。ただいま…なんか怒ってない?」
「いえ、怒ってません……。」
「いや、絶対怒ってんじゃん!」
「怒ってません!と言っております!」
ジュリナはぷいっと顔を逸らす。
「どうせっ!私は奴隷ですから!」
「えぇ!?どうした?!どうした?」
「どうぞ、ご主人様のお好きに恋愛したらいいじゃないですか!」
「恋愛!?何のこと?」
「惚けないでください!何で彼女が剣の中にいるって言ってくれなかったんですか!」
「彼女!?」純増が目を丸くする。
「それならジュリナだって勘違いしないで……戦闘用奴隷として割り切っていられたのに……。」
そこまで言ったところで、ジュリナの声が小さくなった。
「…………。」瞳に涙が浮かぶ。
「……。」ぽろっ。一粒の涙が頬を伝った。
その隣では、カウホースがジト目で純増を見つめている。
「えぇぇ……カウちゃんまでその目するの?」
「ブルル……。」完全に呆れていた。
純増は少し考える。
「……ジュリナ?もしかして……さっきの女の人の声のこと?」
「…………。」こくこく。ぽろり。
「やっぱり!?」純増は思わず吹き出した。
「ぷっ……あはははっ!」
「何で笑うんですかっ!笑わないでください!」
「ご、ごめん!いや、だって……!あの人、剣の中の店員さんだよ!」純増は腹を抱えながら説明する。
「…………店員さん?ですか?」
「そうそう! ホールソードの中のことを説明してくれる人!閉店だったから、俺もいつもの場所じゃなくて店員さんの部屋に飛ばされちゃったみたいでさ。だから全然心配なしです☆」純増は親指を立てる。
「………本当にですか?」
ジュリナの表情が、少しずつ緩んでいく。
「本当、本当。」「……そうですか。」ジュリナは胸に手を当てた。
「よかった……。」そして、少しだけ俯く。
「私はまだ……勘違いしてて、いいんですか?」
「え?」ジュリナが純増の手をそっと握った。
「その……今まで通りで……いいのですね?」
純増は少しだけ顔を赤くする。
「………こんなおじさんでよければ…俺はそのままがいいです。」そして照れ臭そうに頭を掻いた。
「…………。」ジュリナは純増の手を両手で包み込む。
そして……ジュリナは……
「はい。分かりました♡」ふわりと微笑んだ。
「…………。」純増も少しだけ笑った。
その時だった。
「ブルルルルッ!!」「ん?止まった?」
カウホースが突然足を止めた。
「どうしました?カウちゃん。敵ですか?」
カウホースは前足を上げ……ぐいっ。戦場の方角を指した。
「「……?」」純増とジュリナが振り返る。
ドォォォォォン!!と遠くで巨大な光の華が咲いた。続いて……ドゴォォォォン!!さらにもう一発。空が虹色に染まる。
「うわぁぁぁ!」純増の目が輝いた。
「綺麗だなぁ……!」そして両手を口元へ。
「たぁぁぁまぁぁぁやぁぁぁぁぁ!!」
「ジュリナも言います!たぁぁぁまぁぁぁやぁぁぁぁぁ!!」ジュリナも続けて叫んだ。
カウホースがいちゃいちゃしてる二人を交互に見る。
「ブルル……。」どうやら呆れているらしい。
ジュリナは笑いながら、ふと尋ねた。
「……でも…」「はい?」
「この状況でライオンさん、逃げられるのでしょうか?
純増の表情が少し曇る。
「……え?ライガンさんとか、逃げてないの?」
「はい。先に逃げろ、と言われましたので。」
ジュリナは静かに答えた。
「そっか……。」「それと……言付けもあります。」
ジュリナは戦場を見つめる。
「山笹の国を目指せ、と。」「……山笹の国?」
「はい。何でも……その国の国王なら、純増様のお力になれるとか。」「へぇ……。」純増が首を傾げる。
「どんな人なんだろうな。」
その時だった。➖➖ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「……ん?」遠くから地響きが聞こえてきた。
純増とジュリナが顔を見合わせる。
「……何の音でしょう?」
「…………地震?かな?」
カウホースだけが、何かを察したように耳をピンと立てた。
続
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