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第66話 【スローコピーは禁止技】


 ビーハナ町、西門。


 睨み合うジュリナたちとドン三兄弟。

 その間にライガンが立っていた。

 しかし、その背後から聞こえてくるのは、さらに大勢の足音。


 ドドドドドドドドッ!!


 振り返れば、アルジェ王国の兵士達が次々と集まってくる。

「……やっと追いついてきやがったな…」青一が呟く。

 その光景を見ながら、ライガンはジュリナへ静かに口を開いた。


「ダークエルフよ…」「はい。」

「あちらの方角へ進めば、山笹の国がある。変わり者だが……悪い国王ではない。きっと、お前達の旅の役に立つだろう。」ライガンは遠くを見つめる。


 ジュリナはカウホースの手綱を握り直した。

「ありがとうございます。では、純増様に相談して……行き先を決めてみます。」

 そして、少しだけ不安そうにライガンを見る。

「ライオンさんは……どうされるのですか?」

「あはは……。」ライガンは苦笑した。


 ゆっくりとドン三兄弟へ視線を戻す。

「どうやら、そう簡単には逃がしてくれそうにないからな。上手く逃げられたら考えるとするよ…」


 次の瞬間……。

「グガァァァァァァァァァァッ!!」

 大地を震わせる雄叫び。ライガンの身体から凄まじい殺気が噴き上がった。

 ジュリナは一瞬だけ目を見開き、それから柔らかく微笑む。

「……分かりました。またどこかで…」

 カウホースへ向き直り走らせる。

 ライガンはジュリナの背中へ叫んだ。

「あぁ、また会えるさ!純増にも礼を言っといてくれ!さぁ、行け!!ここは私達に任せろ!!」

 四つん這いになり、爪を地面へ食い込ませる。


 ジュリナは振り返り小さく会釈した。

「ありがとうございます。」手綱を握る。

「カウちゃん、行きますよ!全速力です!」

「ブモルルルルッ!!」馬車が走り出す。

 ジュリナ達が西へ向かって離れていく。


 それを見送るライガン。そして➖➖


「おいっ!兄ちゃん!!あいつに逃げられちまうよ!!」赤ニが叫んだ。


 青一はジュリナを追おうとはしなかった。

 ただ、目の前でゆっくりと動くライガンだけを静かに見ている。

「…………。」そして、小さく呟いた。

「……てめぇ、それ……使うのかよ。」青一の目が細まる。


 ライガンは答えない。ただ、ゆっくりと動き始めた。一歩。また一歩。まるでその空間の時間そのものが遅くなったかのように。


「ふふ……いけないのか?」ライガンが微笑む。

「……この辺り一帯、何も無くす気か?」

 青一は周囲を見渡した。

「あはは、それは……お前達次第だよ。」

 ライガンはゆっくりと前へ進む。


 その言葉を聞いたマングルの身体が震えた。山田カイザーは首を傾げる。


「なぁ、マングル。」「あ?」

「何で国王、あんなにゆっくり動いてんだ?」

 マングルは青ざめた顔でライガンを見る。

「……お前は知らねぇか。」「何をだよ?」

「あれは……危険すぎるから、国王自ら封じた技だ。」

「封じた?」山田が目を丸くする。

「あぁ。」マングルは唾を飲み込んだ。


「【スローコピー】」「スロー……コピー?」

「あえてスローに動くことで、相手の技をコピーする。しかも……スローで動いている間は……コピーし続ける。」マングルの声が震える。


 山田が眉をひそめる。

「コピーするだけだろ?それの何が危険なんだ?」


 ライガンがゆっくりと振り返った。

「ふふふ、山田よ、なぜ……危険か?それはな……」黄金の瞳が山田を捉える。


 一歩。また一歩。ライガンは立ち上がりその両手へ、赤い火花が集まり始める。


 バチ……。バチバチ……。バチバチバチバチッ!!

 山田の顔が引きつった。「ま、まさか……。」

 ライガンが笑う。


「相手の最強技を……連発できるからだよ!!」

 ライガンの両手に巨大な魔力が集束する。

 ドォンッ!!「【三尺大砲W】!!」

 両手から放たれた巨大な魔力弾。


 それはゆっくり放たれてドンドンとスピードを増して、確実にドン三兄弟へ向かって進んでいく。


「ライガン!お前、おっもしれぇなぁ!!」

 青一が笑った。その両手にも、同じように火花が集まっていく。


「お前ら!!遠慮はいらねぇ!!」

 その声に赤ニと緑三も笑う。

 バチバチバチバチッ!!


「この大陸!ドーーーーンっと!消し炭にしちまえぇぇぇぇぇ!!」青一が両手を前へ突き出す。


 ドン三兄弟の手からも、無数の火花が弾けた。

 そして……大地を揺るがす巨大な魔力弾が、互いへ向かって放たれた。

 ドォォォォォォォォォンッ!!

 ビーハナ町西門を、凄まじい閃光が包み込んだ。


◇◇◇


 一方その頃➖➖店員の部屋。

 机の上に浮かんだ液晶には、ビーハナ町西門の戦場が映し出されていた。純増と店員は並んで画面を見つめている。

「うわぁ……。」画面いっぱいに広がる閃光。

 ライガンとドン三兄弟。互いに放った巨大な魔力が激突し、周囲の大地を揺らしている。


 純増は口を半開きにしたまま、画面を眺めていた。

「……これ、大丈夫なの?」「…………。」

 店員はしばらく無言で画面を見つめる。


 そして、、「ふぅ。」小さく息を吐いた。

「何とか逃げられそうですね……。」

「うそ。これで?花火大会爆発したみたいになっちゃってるよ。大丈夫?ライガンさん負けたら、次、ジュリナに来ない?」純増が振り向く。


 その言葉に店員は少しだけ笑った。

「ふふふ。」再び画面へ視線を戻す。

「あの若獅子は、そんなに弱くありませんよ。」

「そっか。」純増はホッとしたように笑う。


「それより、お客様。」「ん?」

「もうお帰りください。」店員は純増を見る。

「ここは私の部屋です。いつまでも居座られても困ります。」

「あぁ……ごめん。くつろいじゃった…」


 純増は少しだけ画面を見る。そして、ふっと笑った。


「うん。そうだね。早くジュリナに会いたい。」

 笑顔で立ち上がる。

「…………。」店員の口元が、ほんの少しだけ尖った。純増はそれに気付く。

「あれ、……店員さん?機嫌悪い?」

「はぁ?なんで?……なんでもありませんから。」

「いや、なんか怒ってない?」「怒ってません。」

「でも、なんか口がスネちゃまみたいに…」

「だから!怒ってません。」「…はい。」

 純増は店員の勢いに素直に引き下がった。


 店員は少しだけ頬を赤くすると、ぷいっと顔を逸らす。

「……早く帰れ!」「えぇ!?急に塩対応!」

「私はもう眠いんです!」店員はベッドへ倒れ込む。


 そして、、ぎゅっ。枕へ顔を埋めた。

「またのご来店をお待ちしています。……おやすみなさい。」くぐもった声が、小さく響く。


 純増は苦笑しながら扉へ向かう。

「うん。おやすみ、店員さん。また来るね」

 ガチャ。扉が開く。そして静かにしまる。


 店員は枕に顔を埋めたまま、しばらく動かなかった。そして、純増が出て行ったのを確認すると➖➖


「……なんか腹立つ…妬いてる?嘘?……ナイナイ!」誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。

 白とピンクの部屋に、静かな夜が訪れた。



            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

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