第65話 【アシストタイムはタイムアタック】
ジュリナは虹色の剣を構えたまま、西門まで一直線に駆け抜けていた。ヒュンッ!ヒュンッ!木々の間を縫うように飛ぶ。
(速く……!)純増からの命令は一つ。逃げる。
それだけだった。しかし、、
「おっと。追いついちまったな…」
すぐ真横から声がした。ジュリナの瞳が僅かに揺れる。
(速いっ……!)気付けば青一が、息一つ乱さず隣を走っていた。
「びっくりしてどうしたんでぇい?追いつかれないとでも思っていたのかい?」ニヤリと笑う。
右手を前へ突き出す。パチパチパチッ!!
火花が集まり、小さな炎の弾となる。
「ほらよっ!たまや〜ってね!」
ドドドドドッ!!ロケットのような火花が一直線に襲い掛かった。
ジュリナは身体をひねる。ヒュンッ!ヒュンッ!全て紙一重で回避する。
「ほぉ〜。」青一は楽しそうに笑った。
「ふふふ。」ジュリナは前だけを見据える。
次の瞬間、口元だけが微笑んだ。
「私が全力だと思っているのですか?ほんとは全力ですけど…少しムキになります!」
ドンッ!!さらに加速。景色が一気に流れていく。
「へぇ。」青一は口角を上げた。
「でもよ、そのくらいじゃ、俺からは逃げ切れねぇぞ。」
足元で火花が爆ぜる。バンッ!!一瞬で距離を詰める。また隣に並んだ。
(嘘でしょ…まだ……追いつく!?)
ジュリナの頬を汗が伝う。
(この人……純粋な速度だけならライオンさん以上……!)
青一は横目で見ながら笑う。
「あはは!がんばらせちゃって悪りぃなぁ。相手の全力を見ねぇと、戦う気が起きないタチでねぇ。ところで……もう終わりかい?」ニヤリ。
ジュリナはさらに加速しようと地面を蹴る。
しかし。ガシッ!!「えっ……!」右足首を掴まれた。身体が止まる。
「べらんめぇ!」青一の右手いっぱいに火花が集まる。バチバチバチバチッ!!
「一人、おわりでぇい!!」
巨大な炎弾を放とうとした、、その瞬間。
ズドドドドドドドッ!!
無数の魔法弾が上空から降り注いだ。
「なっ!?」青一は咄嗟に飛び退く。
ドゴォォン!!爆発。土煙が舞い上がる。
「ばっきゃろう!何やってんでぇ!!」空を見上げる。
そこにはスケボーへ寝転びながら空を滑る緑三。
片手で次々と魔法弾を落としている。
「おーい!緑三ぃ!!邪魔すんじゃねぇ!!」青一が怒鳴る。
緑三は頭をぽりぽり掻いた。
「あはは!わりぃわりぃ!」口では謝る。だが、笑っている。
「そのねぇちゃんに兄貴が逃げられると思ってよ!」
そう言いながら、また一発。ドォンッ!!
「やめろっ!だからそれが邪魔なんだってぇぇ!!」
その隙にジュリナは一気に距離を取る。
「ちっ!だから……。」青一は舌打ちした。足元が爆ぜる。
「俺からは逃げらんねぇって!!」一直線に追い掛ける。再び追いつこうとした、その瞬間だった。
「グガァァァァァァァァァッ!!」轟く雄叫び。
ドゴォォォン!!横から巨大な黄金の獅子が飛び込んできた。
「ちぃっ!!」青一は腕を交差させる。
ドォン!!そのまま大きく吹き飛ばされ、何度も地面を転がる。
「おいっ!赤ニは何やってんでぇい!!」
遠くには顔面から地面へ突き刺さったまま動かない赤ニ。
ライガンはゆっくりと着地した。
「あははっ!」鋭い牙を見せる。
「どうやら今日の私は、調子がいいみたいだ。」
黄金の瞳が青一を見据える。そこへジュリナが駆け寄った。
「ライオンさん。楽しんでいるところ申し訳ありません。我が主人、純増様から伝言です。」
「ほぅ。」ライガンは視線だけ向ける。
「どうやら、私たちのこの強化は一時的なものだそうです。ですので、私は逃げることへ専念いたします。」ジュリナは剣を握り直した。
ライガンの表情が引き締まる。そしてライガンは静かに四つん這いになる。
ズンッ。爪が地面へ食い込む。
「了解した。」小さく笑う。
「ならば。」黄金の瞳が細まる。
「君達が逃げ終わるまで、私達でこいつらを抑えるとしよう。」
ジュリナは柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは、私は失礼いたします。」ぺこりと頭を下げる。
そしてジュリナは大きく息を吸い込む。
「カウちゃぁぁぁぁぁん!!帰るよーーーーーー!!」町の方向へ響く声。
一瞬の静寂。その直後だった。
ドドドドドドドドドドッ!!
地鳴り。地面が大きく揺れる。
「……なんだ?」青一が眉をひそめる。
土煙の向こうから飛び出してきたのは、、
目をガン開き、鼻息は蒸気機関車、鼻の穴は全開、ベロをブルンブルンと揺らし、口から泡を飛ばしながら爆走する一頭の牛柄の馬。
「モォォォォォォヒヒィィィィィン!!」
牛とも馬ともつかない雄叫びを上げながら、猛スピードで馬車を引いてくる。
「怖ぇぇぇぇぇ!!なんだありゃ?!」思わず青一が叫んだ。
その勢いのまま、カウちゃんはジュリナの目の前で豪快に急停止した。ジュリナは優しく鼻先を撫でる。
「あれ?カウちゃん。……少し大きくなりました?」ふと首を傾げた。
「ブルルルッ♪」カウホースはどこか誇らしげに胸を張る。虹色の光が、その身体を淡く包み込んでいた。
「ふふふ。純増様の優しさが、カウちゃんにも効果あったんですね。」ジュリナは思わず笑みを浮かべる。
その様子を見ていた青一が舌打ちする。
「ちっ。」鋭い視線を後方へ向けた。
「おいっ!赤ニ!!いつまで寝てやがる!さっさと起きやがれっ!!」
「ふっぐぅぅ…… いってぇ!……顔が潰れたかと思ったぜ……。」
地面へ顔を埋めていた赤ニが、ふらふらと立ち上がる。
「おいっ!緑三!!おめぇも下来いっ!!」
青一が空へ怒鳴る。上空を滑っていた緑三は肩をすくめる。
「えぇ~?まだ空の方が楽しいんだけどなぁ。」
それでも渋々スケボーを降下させた。
トンッ。三兄弟が横一列に並ぶ。
青一はゆっくりとライガンを見据え、口元を吊り上げた。
「ライガン……。」足元で火花が弾ける。
「俺たちから逃げられるもんなら……逃げてみろよ!!」ニヤリ。バチバチッ!!
三兄弟から立ち昇る魔力が、空気全体を震わせた。
続
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