第68話 【引き寄せられる同じ場所】
純増たちが花火を楽しんでる時、
一方その頃、ビーハナ町、西門前➖➖
凄まじい魔力がぶつかり合っていた。
ドォォォォン!!ドゴォォォォン!!
ライガンは四つん這いのまま、ドン三兄弟の放つ魔力弾を次々と受け流し返していく。
「ふっ……!」ゆっくりと身体を動かす。
その動きに合わせるように、相手の魔法の軌道が変化する。
ドォン!!ドンッ!!ドォォン!!
巨大な魔力弾同士が空中で激突し、次々と爆発していく。
「す、すげぇ……なんだよ…この戦い…」山田カイザーが呟いた。
「でもよ……マングル…?」ライガンの戦いを見ながら、マングルへ顔を向ける。
「このままやってても埒があかねぇぞ!強化が切れる前に、俺達も早く逃げねぇと……。」
「馬鹿野郎っ!あの三兄弟を一人で抑えてるだけで奇跡なんだぞ!」マングルが怒鳴る。
「わかってる!わかってるよ!でもよ!」
「それに……!ライガン様はもう手を……」
マングルは何かを言い掛けた。そして……。
「…………。」突然、表情が変わった。
「……?来たか?」マングルは地面へ耳を当てる。
しばらく沈黙。そして……
「……お前ら全員。」ゆっくり立ち上がり顔を上げる。
「逃げる準備だ。」「え?どうやって!」
「……来るぞっ!!」
その地響きは、ライガンにも届いていた。
ライガンはゆっくりとドン三兄弟へ視線を向ける。
「ドン三兄弟よ。どうやら……お前達と遊べるのも、ここまでのようだ。」ゆっくりとした動き。
「あぁん!?何言ってやがんでぇい!」
赤ニが怒鳴り、拳を握り締める。
「こっからが楽しいところだろうやいっ!!」
緑三はスケボーへ足を乗せた。その口元には、楽しそうな笑み。
青一は両手へ火花を集める。
「この状況でどうやって逃げる算段かは知らねぇけど……」
その瞬間だった。
➖➖ドドドドドドドドドドドドッ!!
「…………。」全員がその光景に固まった。
地平線の先。そこから……
巨大な黒い影が押し寄せてくる。
「……は?」青一が目を細める。
「なんだ……あれ?」
次の瞬間。視界いっぱいに、ヌーの群れが現れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!ヌーだぁぁぁぁぁ!!ヌーの大群だぁぁぁ!!」山田が叫ぶ。
「あははっ!やっと来やがったな!ヌー畜生共めっ!!」マングルは笑い叫ぶ。
そして……
「それでは三兄弟!またな!うおおおおおお!!」
ライガンがヌーへ飛び乗る。
「お前ら!掴まれ!!振り落とされるなよ!」
「えっ!?国王!?」山田も慌ててしがみつく。
「俺も!?」「全員乗れぇぇぇ!!」「「「ヒャッハッァー!!」」」山賊達まで次々とヌーへしがみつく。
「お、おいっ!てめぇらっ!待ちやがれぇぇぇ!!」青一が叫ぶ。
だが……ドドドドドドドドドドッ!!
ヌーの群れは、そのまま全速力で走り去っていった。
「…………にゃろう……」青一の額に青筋が浮かぶ。
バチ……。バチバチ……。両手から火花が漏れ始める。
「………… お、おもしれぇな……!ひっさびさに……こんなに頭にきたぜ。」
さらにバチバチッ!!青一の笑顔が引きつる。
赤ニを見る。「赤ニ!!」「おう!」
緑三を見る。「緑三!!」「あいよ。」
青一は両手を構える。「三連衝撃音……」
三人が同時に構えた。
「「「【三連衝撃音】!!」」」
巨大な魔力が三人に集束する。
「それで、逃げたつもりかよ……。」青一が笑う。
「ここら一帯まとめてぶっ飛ばしてやらぁぁぁ!!お前ら!気合い入れろよっ!!」「「あいよっ!!」」
「「「【九連衝撃音】!!!」」」
ドォォォォォォォォォンッ!!
三人から放たれた魔力弾が、一つに集まろうとしながら巨大化していく。それはまるで……大陸そのものを消し飛ばすかのような巨大な魔力の塊だった。
「な、なんだありゃぁぁぁ!?」
逃げるヌーの群れから見ながら、山田が叫ぶ。
「ライガン国王!あれ、ヤバくないっすか!?」
ライガンは振り返る。そして……。
「あははっ。あれはヤバいな!」笑った。
そして大きく口を開く。口の中に光が集束されていく。
「ふふ、久々に楽しかったな…。また、どこかで会おう。」黄金の瞳が、遠ざかるドン三兄弟を捉える。
「ドン三兄弟!!グガァァァァァァァァァァッ!!」
「【王者の咆哮】!!」大地を震わせる咆哮。
ズガァァァァァァァン!!ライガンの口から巨大な衝撃波が放たれた。
そして、三方向から迫っていた三連インパクトが激突する。、、その瞬間。ギュンッ!!緑三の放った魔力弾が、不自然に右へ曲がった。ドォォォォォン!!
「なっ!?」赤ニの三連インパクトへ直撃。
「うおっ!?」二つの魔力がぶつかり合い……相殺。
同時にライガンの王者の咆哮が青一の三連衝撃音を飲み込んだ。
ズドォォォォォン!!巨大な爆発。
そして砂埃が消えるその頃には、ヌーの群れは遥か彼方へ走り去っていた。
「…………。」赤ニが隣を見る。
「なぁ、緑三…」「ん?どうした兄ちゃん?」
「……今、てめぇの魔法……俺のに当たんなかったか?」
「えっ?まっさかぁ!」緑三は笑顔で首を傾げた。
「兄ちゃんのが不発だったんじゃない?」
「なにっ!?俺のせいにすんのかっ!」
赤ニが怒鳴る。
「てめぇ!!」「知らねぇよぉ!」二人がギャーギャーと言い争い始める。
しかし……青一だけは、何も言わなかった。
しばらく爆煙の残りを見つめる。
「…………。」そして踵を返した。
「兄ちゃん? 追わねぇのかい?」赤ニが尋ねる。
「あぁ……興が失せた。」
青一は振り返らずに肩越しに答え、歩き出す。
「国に帰るぞ。」
「えぇ? せっかくここまで来たのに?」
緑三が笑う。青一は振り返らない。
「ふん。……“あの指輪”を探してりゃ、またそのうち同じ場所に引き寄せられるだろうよ。ケリつけるのはそん時でいい。」
そして、一瞬だけ緑三を見る。
「……あと、緑三。」「ん?」
「次は気をつけろよ。」「…………。」
緑三の笑顔が、ほんの僅かに固まった。
「……あはは。うん……」頭を掻く。
(うわちゃぁ……バレてんのかよ。)
「あと、ここの片付けお前な!終わるまで帰って来なくていい…」「……あぁ、分かったよ」
そうしてアルジェ王国、ドン国王たちは帰路についた。
◇◇◇
ライガンたちがしがみつくヌーの群れ。
しばらくしてヌーの群れはようやく足を止めた。
「ぜぇ……ぜぇ……。」山田が地面へ転がる。
「無事……逃げ切れたようっすね……。」
「国王。こっからどうすんだい?」
マングルも肩で息をしながらライガンを見る。
「虹色の剣を追って、俺たちも山笹の国へ向かいますか?」
「…………。」ライガンは何も答えず、戻った右腕をゆっくりと見つめ、さすった。そして……ぎゅっと拳を握る。
「彼らも……我々が一緒では、目立つだろう。それに……最後に目指す場所は、同じ場所だ。」遠くを見る。
「我々は…… ジンの国を目指すとしよう…」
ライガンは静かに告げる。
「……え?ジンの国?それって……まさか……。」
山田の目が大きく見開かれる。ライガンはニヤリと笑った。
そして、右腕を高く掲げる。
「あぁ。この右腕も戻った。」
黄金の瞳が輝く。そして拳を握り締める。
「国を取り返しに行くとしよう!!」
「うおおおおおお!!」「やったぜぇぇぇ!!」
「最強の国王が戻ってきたぞぉぉぉ!!」
マングル、山田、山賊達が一斉に歓声を上げる。
その声は、ビーハナ町から遠く離れた荒野へ響き渡った。
こうして……ビーハナ町を巡る決戦は、終わった。
だが、純増達の旅も、ライガンの戦いも、まだ、全てが始まったばかりだった。
続
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