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第63話 【本気出されると安心する】


 ビーハナ町、西門。

 純増達とドン三兄弟が、ついに激突しようとしたその瞬間だった。青一の目が、大きく見開かれる。


「……おい。」視線の先。四つん這いになり、静かに獲物を見据えるライガン。前足には、鋭く伸びた爪が地面に食い込む。その姿は、かつてアルジェ王国最強と恐れられた獣王、そのものだった。


「おいっ!! お前ら止まれっ!!」青一が叫ぶ。

「あぁん!? 急に止まれっかよ!俺はこのまま行くぜぇ!!」赤ニは豪快に笑う。勢いは止まらない。


 一方、緑三だけは瞬時にスケボーの先端を持ち上げ、そのまま空高く跳び上がる。

「おっと!あっぶねぇ!あいつ手が戻ってんじゃん!!獣王AR(ビーストアタックラッシュ)モード入っちゃってんじゃん!」思わず苦笑する。

(ははっ! やっぱライガンはおもしれぇな……。)

 虹色に染まる戦場を見下ろし、口元だけが楽しそうに笑った。


◇◇◇

 

 一方ライガンは➖➖

「ふふ。向かって来るのは一人か……。」

 ライガンは小さく笑う。ズンッ。前足が地面へさらに深く食い込む。

 次の瞬間だった。ドォンッ!!大地が爆ぜる。ライガンの姿が消えた。

「なっ、、!」赤ニが反応するより早く、ドゴォォン!!右前足が顔面を踏み潰した。


「ぐあぁぁぁぁっ!!」赤ニはそのまま地面へ叩き付けられる。ライガンは赤ニの顔を踏み付けたまま、静かに微笑んだ。

「どうした?」爪先に少しだけ力が入る。

「抵抗しないのか……?」さらに笑みを深くする。

「それとも、このまま喉を噛み切られたいか?」

「ぐぅぅぅっ!!」赤ニの額に青筋が浮かぶ。

「獣人が舐めやがってぇぇぇ!!」左手を大きく掲げる。

「跡形もなく弾けろよ!!」巨大な魔法陣が展開された。

「【三尺大砲(さんしゃくキャノン)】!!」

 放たれた瞬間、轟音。巨大な魔力弾がライガンへ至近距離で襲い掛かる。


 しかし、ヒュン。ライガンは紙一重で身体を捻った。

 魔力弾は遥か上空で爆発する。

 ドゴォォォォォン!!火花と爆風が吹き荒れる中。

「あははっ。やはり強いと言うのは……楽しいな。」

 ライガンは心底楽しそうに笑っていた。


 右前足をゆっくり構える。

「今日で全て終わらしてやる……アルジェ王国よ!!」黄金の瞳が鋭く細まる。


 その姿を見たマングルの目に涙が浮かぶ。

「あはは……。山田、見ろよ!王国の復活だ……!」震える声。

 山田カイザーも拳を強く握り締めた。

「あぁ!!ちゃんと見てるぞ!これなら勝てる!!」笑みが止まらない。


 ライガンは後ろを振り返らない。視線は敵だけを見据えて指示を出した。

「マングルは意識を散らせ!」「了解!」

「山田は俺のサポート!」「任せろ!」

「その部下達は後方を守れ!」「「「ヒャッハッァー!!」」」

「虹色の剣は、、」そう言い掛けた瞬間だった。

 ヒュンッ!!ライガンの頭上を、一筋の黒い影が駆け抜けた。

「ふふふ、ライオンさん☆私は純増様の命令しか聞きませんよ!」ジュリナだった。

 凄まじい速度で一直線に青一へ迫る。

「……私達がマグロと呼ばれてる“本当の姿”を見せてあげますね!」


「なっ!?」青一の瞳が揺れる。

 一瞬で青一の間合いへ。キィィィン!!神速の一閃。青一は咄嗟にしゃがみ込む。銀色の斬撃が頭上を通り過ぎた。

「て、てめぇ!!」冷や汗が流れる。

「あっぶねぇじゃねぇかよっ!!」

 ジュリナは剣をゆっくり肩へ担ぐ。

「あらっ?首と胴体を切り離したつもりだったのですが……。」優しく首を傾げ、微笑む。


「“意外”とお強いのですね?」

 その笑顔だけは、どこまでも可憐だった。

 しかし瞳には、一切の温度がない。

「ですが、一回死んだぐらいで終わると思わないでくださいね♪」一歩踏み出し剣先を青一へ向ける。

「我が主人、純増様を殺めた罪は、何度死んでも私は許しませんから!!」

 二人が無言で睨み合い、空気が震える。


 ◇◇◇


 一方その頃➖➖

 純増はホールソードの中へ飛び込んでいた。


「あれ?変だなぁ?いつもと違う」足を止める。

「静かだな……。」いつものホールではない。

 BGMもない。ガヤガヤ音もない。

 シンと静まり返っている。

 奥を見ると、小さな白い扉が一つだけあった。

「なんだこれ……初めて見るんだけど…」

 恐る恐る近付く。コンコン。返事はない。

「失礼しまーす。」ガチャ。扉を開けた。

「…………えっ?!」


 そこは、これぞ女の子の部屋だった。

 ピンクと白を基調にした可愛らしい家具。

 ふわふわのベッド。棚には小さなぬいぐるみが並び、丸いテーブルの上には飲みかけのカフェラテ。

 ほんのり女子の甘い香りが漂っている。


「えぇぇぇ!?」純増は思わず声を上げた。

「もしかしてここ、店員さんの部屋?」


 その部屋の中央。ベッドにもたれ掛かるように座る一人の女性。ふわふわの可愛らしいパジャマ姿。膝の上には開きっぱなしの一冊の本。

 店員は静かにページを閉じると、ゆっくりとパックをした顔を上げ、眠たそうな瞳で純増を見つめる。


「……何か御用ですか?閉店してますが…」



            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

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