第62話 【虹色外れは警察呼びます】
ビーハナ町、西門。純増が目を覚ます、ほんの数秒前。ジュリナは純増を胸に抱き締めたまま、ただ祈ることしかできなかった。
その時、ホールソードが、眩く虹色に輝いた。
「えっ…!?純増様…?」
剣身から溢れ出した七色の光は、まるで生き物のように空へと駆け上がり、仲間全体を包み込んでいく。
西門の前に立つドン国王三兄弟も、その異変を見逃さなかった。
「んっ?」青一が眉をひそめる。
「なんだありゃ?あいつらなんか使いやがったな……。」嫌な予感が胸をよぎる。
「面倒臭くなりそうだな。お前ら行くぞ!」
「おう!ぶっ潰す!」「了解〜!」
赤ニと緑三も同時に駆け出した。
大地を砕きながら、三兄弟が一直線に突撃する。
緑三は兄達の背中を魔法のスケボーで追いながら、口元だけをわずかに緩めた。
(ははっ!ライガンはおもしれぇな……やっぱりここで死ぬ男じゃない…。さてと……どう兄貴達を止める……?)
遠くで虹色に輝く純増達と兄達の背中を見つめる。
一瞬だけ視線を伏せる。だが次の瞬間には、いつもの飄々とした笑みに戻っていた。
(まぁ!なるようになるか!死んだらそこまでってねっ!)
地面を蹴る。その速度は兄二人と変わらない。
しかし、その胸に抱く思惑だけは、誰とも違っていた。
◇◇◇
一方その頃➖➖
「お、おいおい……回復していくぞ……。」
最初に声を上げたのはマングルだった。
傷だらけだった身体から痛みが消えていく。
裂けた皮膚が塞がり、折れていた骨が元へ戻る。
「ヒャッハッァー!元気になったぜぇ!」
周囲の山賊達も次々と立ち上がった。
「うおっ!?身体が軽ぇ!なんだこの力……!力も湧いてくる……。どんな強化魔法使えばこうなんだよ……。」山田カイザーが拳を握る。誰も理解できない。
ただ、自分達が万全以上の状態になっていることだけは分かった。
そして少し離れた場所。
「あははっ……。」ライガンが静かに笑う。
「あはははっ!」失っていた右腕。その肩口から、新しい腕が生えていた。ゆっくり拳を握る。
ニギ……ニギ……。感触がある。思い通りに動く。 シャキンッ!鋭い爪が勢いよくギラリと伸びた。
「あははっ!!戻った……信じられん…。」
ライガンの口元が大きく歪む。歓喜が込み上げる。
「戻ったぞぉぉぉ!!また戦えるっ!!」
四つん這いになりライオンの様に走り回る。そして獣の咆哮にも似た叫びが戦場へ響いた。
◇◇◇
その声を聞いたジュリナは、静かに立ち上がる。
純増を胸に優しく片手で抱き締めたまま。
だが、その周囲だけ空気が揺らいでいた。
「……本当に。本当に私、怒ってますから。」
静かな声。普段の柔らかな笑顔はどこにもない。
「首を刎ねるぐらいじゃ……貴方達、許しませんからね。」
そのドン三兄弟の方向を見つめる真っ赤な瞳には、静かな怒りが宿っていた。
その時……
「ふわぁぁぁ……。」純増が小さく声を漏らす。
「まだ天国に居るみたい……ふわっふわっ〜。むにゅ……むにゅ。」寝ぼけたまま顔をすり寄せる。
「きゃっ!?純増様!?」ジュリナの身体がビクリと震えた。
純増はまだ半分夢の中だった。
「んっ?なに?……ふわふわでほかほかだぁ……。」すりすり。むにゅっ。
「純増様ぁぁぁ!!生き返ったぁぁぁ!!」
ジュリナの瞳から涙が溢れ出した。
「うわぁぁぁぁぁん!!」純増の顔を何度も確認する。
頬を触る。髪を撫でる。そしてまた胸へ抱き締める。
「生きてたぁぁぁ!!良かったぁぁぁ!!」
「ちょ、ちょっ!ジュリ、ナ……!」
もう離さないと言わんばかりにぎゅううううと力を込めるジュリナ。
「息が……吸え、無いっ……て!また、死ぬっ!」
「はっ!ご、ごめんなさい!嬉しすぎて…」
慌てて力を緩めるジュリナ。涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、純増を見つめた。
「純増様。……守るはずの私が、守られてしまい……申し、、」その言葉は最後まで続かなかった。
純増がそっとジュリナを抱き寄せたからだった。
「そんな顔すんなって。」優しく笑う。
「あははっ!俺、生きて帰ってきたんだから。」
ジュリナの身体が小さく震える。
「謝るのは禁止。ただいま。心配かけてごめん。」
純増は少し照れくさそうに笑った。その一言だけで十分だった。
ジュリナはもう我慢できなかった。
ぎゅっと純増を抱き締め返す。
「……お帰りなさい♡」「うん。ただいま♡」
二人の間に、穏やかな時間が流れる。
しかし、その時間は長くは続かなかった。
ライガン。マングル。山田カイザー。山賊達。
全員が二人の前へ集まる。ライガンは新しく生えた右腕の爪を構えながら、鋭く前を睨んだ。
「あれ〜!腕生えてるぅ!」
「あぁ、礼は後でちゃんとする。今は……感動の再会中、悪いが、、来るぞ!!」低い声が響く。
全員が視線を向ける。その先には➖➖
ドゴォォォォォンッ!!
大地を砕き、火花を上げながらながら突撃してくる三つの影。
青一。赤ニ(せきじ)。緑三。凄まじい勢いで一直線に迫ってくる。
純増はジュリナの腕から静かに降り立った。
ジュリナは虹色の輝きを纏うホールソードを握り締める。口元がゆっくりと笑みを描いた。そして純増がホールソードに近付く。
「ジュリナ。また行ってくるね!」
「はい。純増様!行ってらっしゃいませ!」
純増がホールソードに吸い込まれて行くと、三兄弟との距離が、一気にゼロへと縮まる。
続
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