第57話 【空きっ腹のあいつは翼を授ける】
ホールソードの中で純増が店員と語り合っている頃➖➖
外の世界では、ジュリナとライガンが衛兵の波を切り裂きながら、西門へ向かっていた。
ガキィィンッ!!槍を受け流し、ジュリナの剣が一閃する。一人、二人、三人、ほぼ同時に衛兵達が崩れ落ちた。
息一つ乱さず剣を振るう姿を見て、ライガンは口元を緩める。
(……どんどん力が上がっているな。これが虹色の剣の特殊効果か…)
その視線にジュリナが気付いた。
「あら?ライオンさん。」「ん?」
「よそ見していると……もう片方の腕まで無くなっちゃいますよ☆」
ライガンは豪快に笑う。
「あははっ!忠告ありがとう。気を付けるとするよ!」
そう言うと、衛兵へ向かって大きく踏み込む。
ブォンッ!!鋭い爪が閃き、槍ごと衛兵を吹き飛ばした。
「うわぁぁぁっ!!」「ダメだ!止まらないっ!」
二人は並ぶように敵を薙ぎ倒し、西門へ向かって駆け抜けていく。
◇◇◇
しばらく進んだところで、ジュリナが小さく微笑んだ。
「……ライオンさん。」「どうした?」
「いつから、この状況になることを考えていたのですか?」ライガンはジュリナに目だけを向ける。
「この町へ入った時ですか?それとも、山賊さん達と戦っていた時ですか?」
ライガンは楽しそうに笑った。
「ふふふ。この状況が私の描いた絵だと…?ダークエルフも意外と賢いのだな。」
「はい?私は、何も考えず突っ込むタイプに見えますか?」ジュリナは首を傾げる。
「ふふ、少しな。」「あら。」二人は思わず笑う。
「だが……君の答えでは半分正解だ。」
「半分?ですか?」
「あぁ。」ライガンは衛兵の槍を左手だけで弾き飛ばしながら続けた。
「では、聞くぞ。この町へ進むよう勧めたのは誰だ?なぜ、この町だった?」
その瞬間、ジュリナの表情が変わる。
「……まさか、イッカク町から……。」
「あははっ!その通りだ。」ライガンは頷いた。
そしてライガンは懐かしそうに笑う。
「あの爺さんとは古くからの仲でな。虹色の剣を持つ者は、なぜかあの村へ流れ着くのだ。だから、ずっと張ってもらっていた。」
爪で槍を受け流しながら答える。
ジュリナは少し驚いた顔をした。
「では……純増様は最初から、この騒動に巻き込まれていた。」
ライガンは苦笑する。
「あはは……すまないな。普通に会いに行っても…ドラマチックではないだろ!?」
ジュリナは優しく笑った。
「うふふ。いけないライオンさんですこと♡」
そのまま衛兵を斬り伏せる。
「ですが、私はあの町で純増様とこの剣に出会えました。そしてこの剣の使い手になれました」
赤い瞳が嬉しそうに細くなる。そしてもう一人、衛兵を斬る。
「だから、巻き込まれは大歓迎です♡」
ライガンは静かにジュリナを見つめた。
(……奇しくも、これもまたダークエルフの宿命か。)ほんの一瞬だけ目を閉じる。
(だが、まだ若い。この芽をあいつら摘まれる訳にはいかんな。)
その時だった。バタバタと衛兵達が次々と倒れ始める。ジュリナは楽しそうに斬り笑う。
「あははっ!あはははっ!」
ライガンも口元を緩めた。
「どうした?随分と楽しそうだな」
「えぇ、純増様も向こうで乗ってきたようですよ♡力がどんどんと湧いてきます!」
ジュリナは西門を指差す。
「早く行きましょう!ライオンさん☆」
「……ライオンさん、か。」ライガンは苦笑した。
「えぇ。」ジュリナは真っ直ぐ前を見る。
「私は純増様以外に頭を下げる気は毛頭ありませんので♡」
「あははっ!気に入った。」ライガンは豪快に笑った。
◇◇◇
やがて西門が見えてきた。
その瞬間。左右から二つの影が合流する。
「おう!待たせたな。」山田カイザー率いる山賊達だった。
「山田!テメェ!少し遅刻だっ!」反対側からはマングル。
ライガンは満足そうに頷く。
「お前達、時間通りだな。」
「あぁ。当たり前ですよ。」マングルは牙を見せる。
「これ以上待たせる訳にはいきませんからね。」山田カイザーも肩を竦めた。
ジュリナはホールソードへ向かって声を掛ける。
「純増様〜!西門着きましたよ〜」『おぉ〜。』
剣の中から純増の呑気な声が返ってきた。
『無事に西門着いたのね〜?』「はい♡見えてきました!」
『オッケー!今から換金して戻りま〜す!』「はーい♡お待ちしております!」
◇◇◇
ホールソードの中➖➖
純増は店員に声をかける。
「店員さ〜ん!」「はい。」
「向こう終わったみたい。換金お願いしまーす。」
「かしこまりました。」店員は景品を並べる。
「特殊景品と、端数のお飲み物になります。」
「おぉっ!」純増の目が輝く。
「エナドリだぁぁぁ!!ドーパミンドパドパ!!」
プシュッ。ゴクッ。ゴクッ。ゴクゴクゴク、、。
「ぷっはぁぁぁぁ!!うんめぇぇぇ!やっぱ空きっ腹にこいつは翼を授けるぜぇ!」満足そうに天井を見上げる。
「げっぷぅぅぅ!!」静まり返るホール。
「あっ。……ごめん」純増は頭を掻いた。
店員は少しだけ眉をひそめる。
「……臭いです。」「あはははっ!ごめんて!」
純増は笑いながら出口へ向かった。
「じゃあ、帰ります」
店員はいつものように一礼する。
「ありがとうございました。」優しく微笑む。
「またのご来店を、お待ちしております。」
「はーい!また来まーす!」純増は軽く手を振る。
眩い光が純増を包み込む。その姿はゆっくりとホールソードの外へ吸い込まれ、再び現実世界へと戻っていった。
続
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