第55話 【その顔、抽選一桁だろ?】
牢屋の入口を埋め尽くす衛兵達。
槍を構え、一斉にライガン達へ迫る。
「囲めぇぇぇぇ!!逃すなぁ!!」
その瞬間➖➖
「おらぁぁっ!!道空けろぉぉぉ!!王のお通りだぞ、このボケ共ぉぉ!!」
タキシード姿のマングルの黒い影が地面を駆け抜けた。鋭い爪が閃き、一人の衛兵の槍を弾き飛ばす。
「ぐあっ!!」さらに跳び上がる。
「邪魔だぁぁっ!!」バシッ! ガッ!!
衛兵達は次々と吹き飛ばされ、入口にわずかな隙間が生まれた。
「さぁ!道は開いた!行けますぜぇぇぇ!!」
その隙を逃さず、ライガンがゆっくり歩き出す。
左右には山田カイザーと山賊達。
「ヒャッハァァァ!!」
「王様に指一本触れさせねぇぜぇぇ!!」
「今日は山賊じゃなく護衛だ!!」
怒鳴りながら武器を振るう。
その後ろを純増とジュリナがゆっくりついて行った。
「……あのさ。」純増はライガンへ声を掛けた。
「ん?どうした?」「これ、どこ向かってるの?」
ライガンは前だけを見て歩く。
「ふふ、さてな。」「さてなって……。」
「少し、ゆっくり話せる場所へ行こうと思ってな。ここは少々……騒がしい。」ライガンは小さく笑う。
その瞬間だった。ライガンの左手がゆっくり動く。
ブォンッ!!鋭い爪が空を裂く。
近付いてきた衛兵が三人まとめて吹き飛んだ。
「ぐはぁぁぁっ!!」石壁へ叩き付けられる。
純増はその光景を見て固まる。
「えっ?…………凄くない?」
ライガンは何事もなかったように歩き続ける。
「あはは、片腕が無くてもこれぐらい造作もない…。では、続けよう。」
「いやっ!!騒がしい原因ほぼあんただから!!」純増は思わず叫ぶ。
ライガンは豪快に笑った。
「あははっ!!それもそうだ。」
「笑うとこじゃないって!」
そして純増は横を歩くジュリナを見る。
「……ん?」
ジュリナの赤い瞳がギラギラ輝いていた。
頬は少し紅潮し、呼吸もどこか弾んでいる。
剣を握る手にも自然と力が入っていた。
「ジュ、ジュリナ?」「はい。」
「この状況……アドレナリン出ちゃってる感じ?」
「……いえ。私は至って冷静です。」ジュリナは真顔で答えた。
「いやいやいや!その目で言われても説得力ゼロだから!!」純増は全力でツッコむ。
ジュリナは純増を真っ直ぐ見つめる。
「はぁはぁ、純増様を守れると思うと……少しだけ胸が高鳴るだけです…はぁ、はぁ!」
「えぇぇぇ!!」純増は頭を抱える。
「完全に戦闘スイッチ入ってるじゃん!!」
「そうでしょうか?」ジュリナは首を傾げる。
「どう見てもそうだよ!!期待ではぁはぁしちゃってんじゃん!
純増は衛兵を指差した。
「この流れ百パーセント追われる側だからね!?プッシュボタン押したらプレミアカットイン入っちゃってるからね!?」「プレミア……?」
「そう、もう激アツ超えてからの鉄板なの!!」
◇◇◇
ゆっくりと出口に近づいて行く純増達。
しかし衛兵は次々と集まってくる。
「逃がすなぁぁぁ!!」「囲めぇぇぇ!!」
広場の向こうからも続々と増援が押し寄せる。
マングルが舌打ちした。
「ライガン王!!思ったより多い!!」
山田カイザーも顔をしかめる。
「このままじゃ囲まれるぞ!」
ライガンは一瞬だけ考える。
「……ふむ。」そして静かに命令を下した。
「では、散らすとするか…?」全員が耳を傾ける。
「左は山田。」「了解。」
「右はマングル。」「任せろ。」
「私は中央を突破する。」
最後に純増とジュリナを見る。
「虹色の剣を持つ者とダークエルフ。」
「へっ?俺?」「あぁ、私について来なさい。」
ライガンは町の西を指差した。
「みな、西門の外で落ち合う。」全員を見渡す。
「誰一人遅れるなよ。」「「了解!!」」
◇◇◇
散らばるのを確認したライガンは静かに腰を落とした。後ろ足の爪が石畳へ食い込む。
ギリッ……ギリギリッ。砂煙が舞う。
次の瞬間➖➖ライガンの姿が消えた。
ドゴォォォォォン!!前方の衛兵達だけが一斉に宙を舞う。
「えっ?……今、何が起きた?」純増は目を丸くした。
「ライオンさんですね…」
「ジュリナ。それ、説明になってないって!」
そしてその先では、ライガンがすでに衛兵達のど真ん中へ立っていた。
衛兵達は槍を構え、一斉に突き出す。
「止めろぉぉぉ!!」だがライガンは避けない。
爪を出した左手をゆっくり前へ差し出す。
ガギィィィンッ!!数本の槍がぶつかった瞬間、まるで枝でも折るようにまとめて弾き飛ばした。
「ば、化け物だ……!」怯んだ衛兵の懐へ一歩だけ踏み込む。
ドゴォッ!!胸元に腰を落とした、掌底一発。
鎧ごと衛兵が宙を舞い、後ろの仲間を巻き込みながら吹き飛んでいく。
「進むべき道は、誰かに与えられるものではない。自分の手で拓くものだ。そうだろ?虹色の剣を持つ者よ…」
その光景を見たジュリナは両手を胸の前で握り締める。
「うわぁぁぁ!!」突然奇声を上げ純増を見る。
「純増様!!私……もう我慢できません!!」
「え?」「お願いします♡……入ってください。」
目はギンギン。鼻息まで少し荒い。純増は苦笑した。
「ははは……。」ジュリナを見つめる。
「わかったよ!今のその顔、抽選で一桁引いた時の俺と全く同じ顔してるわ。押さえきれないその気持ち!それでは行きますか?」
敬礼する純増にジュリナは嬉しそうに頷いた。
「はいっ♡」「よしっ!」純増はホールソードに近づく。
「では、行ってきまーす!!」
瞬い光が純増を包み込む。純増の姿は、ホールソードの中へと吸い込まれていった。
続
読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。




