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第54話 【ライオンカットインってプレミアかよっ!】


 ライガンの声が聞こえた瞬間一斉に、山田カイザー、山賊達、そしてタキシード姿のマングース・マングルまで、その場で深々と頭を下げた。


「お待たせしました。ライガン国王。」

 牢屋の中は静まり返る。

 鎖へ繋がれたライオンの獣人は、その光景を見つめると、小さく肩を揺らした。


「あははっ!」豪快な笑い声が石壁へ響く。

「よい、頭を上げろ。」全員、ゆっくり顔を上げる。

「傷だらけで、鎖に繋がれた王など……どこの世界にいる。」

 そう言って笑う姿には、不思議と惨めさなど一切なかった。


 王は王だった。


「それより、お前達。こんな所まで何用だ?」

 黄金色の瞳が山田カイザー達を見渡す。

 山田カイザーは真っ直ぐライガンを見つめる。


「王よ……まだ死ぬ時ではありません。……虹色の剣が見つかりました。」

「……。」ライガンの表情が止まる。


 そして山田カイザーは純増とジュリナへ視線を向けた。

「ジュリナ。」「はい。」

「その剣を……鞘から抜いて見せてもらってもいいか?」

 ジュリナは純増を見る。

「純増様?よろしいでしょうか?」

「あはは。見るだけなら全然いいよ。スロット打てなくなるからあげるのは無理だけどね〜」

「はい♡かしこまりました。」


 ジュリナは静かに頷き、ホールソードを鞘から引き抜いた。シャラン、、七色の光が薄暗い牢屋を照らす。

 ライガンは何も言わない。ただ静かに、その剣だけを見つめ続けた。


 そして➖➖

「……ふっ。」肩が震える。

「ふっ……ふはははははっ!!」牢屋中へ豪快な笑い声が響いた。

「爺さんの子守唄が……本当だったとはな!!」

 ライガンは空を仰ぐ。

「別にこのまま死んでもいいと思っていた。」

 ゆっくり笑う。「……だが。」黄金の瞳が純増を見る。

「死ぬ気が失せた。」「…………。」純増は目をぱちくりさせる。

「いやいやいや!!何でだよっ!!」思わず前へ出る。

「この剣見たら何で生きたくなるんだよ!?説明!説明して!ちゃんと!」

 その時だった。牢屋の小窓を見ていたマングルが舌打ちする。

「ライガン国王。そろそろ奴ら集まってきやした。急ぎましょう!」


 山田カイザー達は急いで鎖へ手を掛ける。

 山賊の一人が鉄の細い棒で鍵を開けていく。

 ガチャッ。ガシャン。重い鉄の鎖が次々と外れていく。

 自由になったライガンは、ゆっくり立ち上がった。

 大きな身体。無数の傷跡。右腕は失われている。

 それでも、その立ち姿だけで王だと分かる圧倒的な威厳があった。


 純増は思わず息を呑む。

(うっわっ!……このライオン?人?。腕一本無いのに……なんでこんな強そうなんだよ。昔、朝並んでシオサイ、スイカバージョンの裏物取った時に“俺の台だぞっ!”って怒られた反社の人ぐらい怖ぇって!)


 ライガンは静かに笑った。

「ふふ、そう騒ぐな、人間。歩きながら話すとしよう。急がないと“凶暴なマングース”が起こるからな…」


 ライガンはゆっくり歩きながら語り始める。

「私の祖父が幼い頃に聞いた昔話をな、子供の頃、毎晩寝る前によく祖父に聞かされた。”虹色の剣を持ちし者現れし日、世界は変わる。全ては剣の思うがままに。”そんな御伽話だ。」


「世界が……変わる?」純増は首を傾げる。

「あぁ、大昔、その剣の持ち主はこの世界へ混沌をもたらしたとも聞く。数多の種族がこの世界にいるのもその剣が影響している。」ライガンは優しく微笑んだ。


「さて。虹色の剣を持つ者よ。お主は、どう動く?さらなる混沌を招くか?それとも…楽園を築くか?…それを見届けてから死ぬのも……悪くない。」


「…………。」純増は困ったように頭を掻く。


「いや……俺にそんな期待されても。俺、前の世界じゃ社会不適合者のレッテル貼られて、こっち来ても昨日までパチスロ打って、美味い飯食って、ジュリナとムフフなおじさんなんだけど。いきなり世界をどうこう言われてもなぁ…」


 そんな純増を見てライガンは豪快に笑う。

「あははっ!!だから面白いのだ。」


 その瞬間➖➖

「囲めぇぇぇぇぇ!!」外から怒号が響いた。

 牢屋の入口を埋め尽くすほどの衛兵。槍が一斉に向けられる。


 隊長らしき男が叫んだ。

「やはり貴様らの仕業か!!せっかくスパイを捕らえたというのに!!まだ痛め足りなかったようだな!!もう一度捕まえて、今度こそ口も利けぬ身体にしてやる!!」


 しかし。ライガンは全く動じない。

 静かに牢屋から歩き出した。

「……さぁ。虹色の剣を持ちし者。後ろにいなさい。」

 そして衛兵をゆっくり見る。

「あまり自分の物差しを過信しない事だ…なぜ、私が静かに捕まったのか…なぜ抵抗しなかったのか…。あまり背伸びをするなよ…すぐに転ぶぞ」

 

 そしてライガンは大きく息を吸う。次の瞬間。

「ガァァァァァァァァァォォォォォォォォォッ!!」

 獅子王の咆哮。空気そのものが震えた。

 衛兵達の身体が一斉に縮み上がる。足が止まり、槍が震えた。


 ライガンはゆっくり歩く。


「次、痛めつけるなら…… もう少し強よめにした方がいいぞ…?」静かな声。そして震える衛兵達の前で立ち止まる。

「逃げられたくなければ、四肢を奪うぐらいに……」

 失われた右肩をポンポンと触り小さく笑う。

「……特に、ライオンの獣人にはな。あははっ。」


 その笑顔には、悲しみも怒りもなかった。

 ただ、全てを受け入れた王だけが持つ強さがあった。

「マングル。道を空けろ!帰るぞ」

「了解。おい山田!!ありったけ俺を強化しろ!!ぬるい強化しやがったら、テメェの目玉くり抜いてケツにねじ込むからな!!」


 山田カイザーは呆れ顔で空中に魔法陣を展開する。

「分かった分かった!山賊より口悪いマングースって何なんだよ!!」


 一方その頃。純増は現実逃避していた。

「あはは、ねぇ、ジュリナ。」「はい♡」

「……これ、この世界だと普通なんだよね?」「はい♡」

「俺……今さぁ、何か綺麗なお花とか見たいなぁ。」

「えっ?お花ですか?」

「あっ、うん。ハイビスカスとか。ピカピカしてるの。もう、俺、脳みそ追い付かない。」


 ジュリナは慌てて純増の両手を握る。

「純増様!!気を確かに!!ジュリナはここです!!ここにいますから!!」

「あはは……ありがとう。少し安心した。」純増は乾いた笑いを漏らした。


 その時だった。続々と集まる衛兵達を見据え、マングルがニヤリと笑う。

「お前ら……喉元、気を付けろよ。隙見せたら…食いちぎるからな!!」鋭い牙と爪がギラリと光った。



            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

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