第51話 【暗いホールの告知系はエロい】
広場に立つ巨大な処刑台。その異様な光景を胸に刻んだまま、純増とジュリナは静かにその場を後にした。町は祭りのような賑わいが相変わらず続いている。
笑い声。屋台の呼び込み。酒を酌み交わす人々。
けれど純増の胸には、小さな引っ掛かりだけが残っていた。
「……絶対、山田さん動くよね。」ぽつりと呟く。
ジュリナは真っ直ぐ前を見たまま、小さく頷いた。
「はい。」少しだけ考え込み、静かに続ける。
「もし……純増様が処刑されると分かったら……私は、たとえ死ぬと分かっていても……確実に一人でも多く殺し、純増様と一緒に死にます。」
赤い瞳がゆっくり細くなる。妖しく、それでいて幸せそうに微笑んだ。
純増は苦笑いする。
「いやいや……本当にやりそうだから怖いよ。」
「……えぇ。やりますとも!」ジュリナは拳をぎゅっと握る。
「なんだか想像しただけでムカムカしてきちゃいました!……このまま誰か殺りますか?」
「えぇぇぇぇ!?」純増は慌てて両手を振る。
「駄目駄目駄目!!それだけは絶対駄目だから!!」
ジュリナは数秒だけ真顔を続け、、くすりと笑った。
「ふふふ♡ごめんなさい。……半分だけ、嘘です♡」
「いやっ!半分なんかい!!残り半分は俺のGoGo待ちってこと?はぁ、本当に心臓フリーズするかと思った……。」純増は思わず頭を抱える。
「ごめんなさい。少しだけ、構ってほしかったのです♡真剣なお顔をしていたので」
ジュリナは純増の袖をちょこんと掴む。
「……もう。そういう構い方は寿命縮むって。」
純増は優しくジュリナの頭を撫でた。
「えへへ♡」「あはは」自然と二人は笑い合う。
「とりあえず、ご飯食べに行こうか。」
「はいっ♪私大盛りにしてもいいですか?」
「あははっ!じゃあ、俺、特盛〜」
「あっ!ジュリナもそれにします〜」
◇◇◇
食堂で夕食を済ませ、二人は宿へ戻った。
二人で洗いっこして湯船に浸かり、一日の疲れを流す。そして二人でベッドへ潜り込む頃には、町の喧騒も少し遠くなっていた。
純増はジュリナを腕枕しながら天井を眺め呟く。
「ねぇ?……ジュリナ。」「はい♡」
「明日さ、イッカク村で紹介された武器屋の人に会いに行こうか。」「はい。」
ジュリナは頷いたあと、少しだけ不安そうな表情になる。
「ですが……カイザーさんや山賊さん達は、よろしいのですか?」
純増は静かに目を閉じた。
「……うーん。そうなんだけどさぁ…無理に探して助けてもさ、“頼んでない”って言われたら、それまでじゃん?助けたい気持ちはあるけど……。本人達の覚悟まで、俺が勝手に決めちゃ駄目だと思うんだ。」
ジュリナは優しく微笑む。
「はい。分かりました。私は、純増様について行くだけです♡」
「ありがとう。いつも助かってる。」
「いいえ。純増様に着いて行くことが私の幸せですから♡」
純増は少し照れながら笑った。
「うん。……おやすみ。」「はい。おやすみなさいませ♡」
部屋の灯りが消え、静かな夜が更けていった。
◇◇◇
翌朝。窓から柔らかな朝日が差し込む。
純増はいつものように7時半起きし、小さなコンロとタバコに火を点けた。コポコポコポ……。
カフェラテの香ばしい香りが部屋いっぱいに広がる。
「ふぅ、7時半に起きても抽選には行けないと…。あぁ!激ヤバ脳汁抽選やりてぇな…。千人ぐらいの…」
呟きながら椅子へ腰掛け、異世界新聞を広げた。
「なんか宿泊まって、これ読むのが日課になったな……今日は何か面白い記事あるんかな〜。」
新聞を読み始めてしばらくすると➖➖
「ん……。」ベッドの上でジュリナがゆっくり目を覚ました。
「おっ!おはよう。」
「ふえっ!お、おはようございます!!」
飛び起きたジュリナは純増の顔と壁の時計を交互に見る。
「ご、ごめんなさい!!純増様。私、また寝過ぎてしまいました!!いつも純増様と契約した後は、とても気持ちよく眠ってしまって……。」
純増は笑いながら椅子を引いた。
「はいはい。気にしない気にしない。とりあえず座って、カフェラテできてるよ。」
「ありがとうございます♡」
ジュリナは嬉しそうに椅子へ座る。
湯気の立つカフェラテを両手で包み込みながら、新聞を一緒に覗き込んだ。
「「…………。」」次の瞬間、、
「えっ!!」「うおっ!?」純増が肩を跳ねさせる。
「ど、どうした!?大声出して…南国育ちじゃないんだから」
「あっ、ごめんなさい。これ、」
ジュリナは新聞の端を指差した。
「この記事です。」小さな囲み記事。そこには短く書かれていた。
【ドン国王、ビーハナ町へ向かう】
「……あれ?」純増は記事を読み返す。
「ドン国王って。引きの指輪を探してる王様だよね?」
「はい。カイザーさんが言ってました。」
ジュリナも真剣な顔になる。
「もしかすると、この町に重要な手掛かりがあるのかもしれません。」
「……よし。」純増は新聞を畳んだ。
「準備したら武器屋さんへ行こう。話を聞けば、何か分かるかもしれない。」
「はい!そうしましょう♡」
ジュリナは立ち上がる。
「では、お着替えを……。」
そう言って大きめのTシャツをすぽっと脱いだ。
ぷるるん。
「…………。」純増は勢いよく顔を逸らす。
「ちょっ!!いきなりそれはびっくりするって!!」
ジュリナはきょとんとする。
「あっ……。ご、ごめんなさい。いつも見ている物なので、大丈夫なのかと……。」
「いや!見てるんだけどっ!暗い所と明るい所じゃパンチ力が全然違うから!!」
純増は耳まで真っ赤にしながら叫ぶ。
「そういうものなのですね……。」ジュリナは少し考える。そして純増へ近付き、、ぎゅっ♡と顔を覆う。
「……えいっ♡これなら見えません。」
「…………。」純増は照れ笑いを浮かべた。
「……なんか…ありがとう♡」
そして深呼吸を一つ。
「よし。着替えて、武器屋さんへ行こう。」
「はいっ♡」二人は笑顔で支度を始める。
まだこの時の純増とジュリナは知らない。
この日が、旅の流れを大きく変える一日になることを。
続
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