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第50話 【前夜祭の匂いぷんぷんかよっ!?】


 山田カイザー達と別れた後➖➖

 ビーハナ町に向かう街道には穏やかな風が吹き、馬車はガタゴトと心地良い音を立てながら進んでいた。


 馬車の席では純増が大きく伸びをする。

「ふぁぁぁ〜……。」隣ではジュリナが手綱を握り気持ち良さそうに風を浴びていた。

「……ねぇ、ジュリナ。」「はい♡」

「山田さん、あんな急いで帰る用事って何だったんだろうね?」

 ジュリナは腕を組み、真剣な表情で考え始める。

「うーん……。」しばらく沈黙が流れた。

「あっ。」何か思い付いたように人差し指を立てる。

「もしかすると……漏らしてしまったのかもしれません。」

 「あははっ!えっ?まじで?大?小?」純増が吹き出す。


 ジュリナはさらに真剣な顔になる。

「ん〜……あの慌てようでしたら、、大の可能性……大です。」


 一瞬の静寂。

「ぶはははははっ!!ジュリナぁぁ!!ボケ倒しかよ!!」純増は腹を抱えて笑い転げた。

「ふふふ♡」ジュリナも楽しそうに笑う。

「実は山賊さん達が帰った時から、ずっと考えておりました♡」

「えっ!?そこから考えてたの!?」「はい♡」

「発想がおもろすぎるって!」


 二人の笑い声が街道へ響く。その後ろではカウホースまで嬉しそうに鼻を鳴らした。


「ブルルルル♪」

「ほら、カウホースも笑ってるよ!あははっ!あーおかしい!」

「ふふふ。本当ですね♡」

「いや、もしかして笑ってるんじゃなくて、腹が減っただけかもしれない!?」

「ふふふ。それもありえますね♡」「どっちだよ!」

「「あはははっ!」」笑いながら馬車は進んでいく。


◇◇◇


 それから数時間。夕日が山の向こうへ傾き始めた頃だった。

 純増が前を指差す。「あっ、あれじゃない?なんか見えてきた。」街道の先には、少し大きな城壁に囲まれた町が広がっていた。

「ビーハナ町……ですかね?」ジュリナも目を輝かせる。

 

 イッカク村とは比べ物にならないほど大きな町。

 高い門。行き交う人々。荷馬車。商人。冒険者。

 様々な種族が門を出入りしている。

「おぉぉ……。」純増は思わず声を漏らした。

「めっちゃ都会じゃん。」「はい♡賑やかですね。」


 二人は馬車を進め、門へ近付く。門番が手を挙げた。

「止まれ。」「はいはい。」

 純増はギルドカードを差し出す。


 門番は確認すると驚いたように純増を見る。

「……冒険者ランクE?」「えっ?俺ってそうなの?」

「なのにマグロの奴隷を従えているのか。」

「マグロって……従えてるっていうか……。」

 純増はジュリナを見る。ジュリナは気にしてない様子で嬉しそうに笑った。

「はい。私は純増様の奴隷と未来のお嫁さん候補です♡」

「わぁぁぁ!嘘!そうなの?そうなったの?」純増が慌てる。

「えっ?違うのですか?うっ、ジュリナばっかりそう思ってたってことですね…。すいません。奴隷の分際で思い上がった夢を…」涙目になる。

「うわぁぁぁ!ごめん!うん。その未来の認識で大丈夫!ぜっんぜん思い上がってない。」


 門番は吹き出した。

「ははっ!変わった二人だな。」ギルドカードを返す。「ようこそ、ビーハナ町へ。楽しんでいってくれ。」

「あはは、ありがとう!」二人は笑顔で門をくぐった。


◇◇◇


 町へ入った瞬間。

「うわぁ……。」純増は思わず辺りを見回した。

 通りには屋台がずらりと並んでいる。

 甘じょっぱい香ばしい匂い。ソースを炒める音。

 果物飴。串焼き。甘い菓子。

 大道芸人の周りでは子供達が歓声を上げ、大人達は酒を片手に笑っていた。

「何か夏祭りみたいだね。」

「はい♡とても賑やかで楽しい町です。」ジュリナも目を輝かせる。


「ねぇ、あれ見て。」「わぁ美味しそうです♡」

 屋台を見付ける度に二人は立ち止まる。

「純増様、このお菓子可愛いです♡」

「おっ、可愛い。こっちは串焼きだ。」

「あっ、お花も売っています。」

「あははっ。屋台でお花って!便乗商法にも程があるよ!」

 気付けば二人とも両手いっぱいに買い物をしていた。


◇◇◇


「……あっ。」純増が空を見上げる。

「そろそろ宿探さないと。」

「はい♡そうですね。ジュリナお風呂に入りたいです」

「俺も〜。今日はちょっと良い宿に泊まりたいな。」

 ジュリナは嬉しそうに頷く。「はい♡」


 そして満面の笑みで言った。

「今日は純増様と洗いっこをして、お布団で契約したいです♡」

「ぶふぅっ!!」純増は盛大にむせた。


「ジュリナぁぁ!!」「はい?」

「それ、外で大きな声で言っちゃ駄目なやつぅぅ!」

「ふぇ?言ってはいけないのですか?」首を傾げる。

「うん!」「では!今日は契約しないのですか?」

「いやっ!するけど!」「はい。昨日もしておりません。」

「……するんだけど!」純増は顔を真っ赤にした。

「そういうことは外で言っちゃ駄目なの!」


「……そうなのですね。」ジュリナは少し考え、、

「では、純増様へのおねだりはお布団まで我慢いたします♡」

「うわぁぁぁぁ!!」(激烈可愛いんですけどぉぉぉぉ!!)純増は頭を抱えた。


◇◇◇


 宿を見付け、馬車とカウホースを預ける。

「カウちゃん、いい子で待っててね。」「ブルル♪」

 荷物を置いた二人は、そのまま夕食を食べようと夜の町へ繰り出した。


 昼間以上に賑わう夜のビーハナ町。

 笑い声。音楽。屋台から漂う香り。まるで祭りの夜だった。

「本当に凄い町だね。」「はい♡」

 二人は肩を並べながら広場へ歩いていく。


 しかし➖➖

 広場へ足を踏み入れた瞬間、二人の足が止まった。

 賑やかな町並みには不釣り合いなほど巨大な木製の処刑台。赤い布が夕風に揺れている。


 その前には大きな看板が立てられていた。

 黒々とした文字が、月明かりに照らされる。


【ジャミー元国王 ライガン スパイ活動の罪により公開処刑】


 純増の笑顔が静かに消えた。

「確か……山田さんの国って……」

 ジュリナも看板を見つめる。

「……はい。ジャミー王国と仰っていました。」


 純増は小さく息を呑む。

「……まさか、山田さん…」

 ジュリナも頷いた。

「はい。……これを止めるために、急いでいたのかもしれません。」


 賑やかな広場の喧騒とは対照的に、二人の周囲だけが静まり返っていた。



            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

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