第49話 【彼女出来るとスロ行かなくなる(最初だけ)】
昼時。一行は街道沿いに建つ、小さな茶屋へと辿り着いた。山田カイザーは暖簾をくぐるなり、大きな声を張り上げる。
「おうっ!! 五十人だけど入れるかぁ!?」
店内にいた客が一斉に振り向いた。
茶屋の女将は目を丸くし、、
「ぶっ!! ご、ご、ご……五十人んん!?」思わず吹き出した。
「この店、見てみなさいよ!入れる訳ないでしょうが!」
「ふぅ、そうか……なら、やるしかねぇか。」
山田カイザーが腕をまくる。
「アホっ!!」純増がすかさず前へ出た。
「そんな理由でやるしかねぇ訳ねぇだろ!俺が今、大人の対応ってやつを見せてやる!!」
カイザーの肩を押し戻し、笑顔で女将へ向き直る。
「すみません。入りきれない人は外でも構いません。食事だけでもお願いできませんか?」
女将は厨房へ振り返る。
「あなたぁー!五十人だって!いける?」
奥から豪快な声が返ってきた。
「おぉう!!当たり前だろ!!」ガンッ!!中華鍋を叩く音が響く。
「お客さんが腹ペコって最高のスパイスを連れてきてくれたんだ!早く注文取れぇ!!」
女将は呆れたように笑う。
「……偉そうなんだから。」でも、その表情はどこか嬉しそうだった。
「はい、大丈夫みたいです。ご注文は?」
純増は壁の品書きを眺める。
「ん〜……昨日カレー食べたしなぁ……。」少し考え、、「あっ! 生姜焼き定食あるっ!これにしよう!ジュリナは何にする?」ジュリナへ振り向く。
「はい。私も純増様と同じ物をお願いいたします♡」迷いなく頷く。
「え、好きなの頼んでいいんだよ?」
ジュリナは微笑んだ。
「純増様と同じ物が食べたいのです。純増様は、いつも美味しい物を選ばれますから♡」
「……。」(本当、ジュリナって可愛いなぁ。)純増の頬が緩む。
一方、、山賊達は、、
「俺ぁ炒飯!!」山田カイザーが即答した。
「お前らも全員炒飯な!」「「「へいっ!!」」」
厨房から店主の叫び声が聞こえた。
「炒飯五十人前ぇぇぇ!?祭りでも始まったのかぁ!!」女将が笑う。
「五十人入った時点で祭りみたいなもんよ。さぁ、腕が千切れるほど鍋振りな!」
◇◇◇
純増、ジュリナ、山田カイザー達は店内へ。
残りの山賊達は外の長椅子や地べたでのんびり待つ。
厨房では、ゴォォォォッ!!炎が天井近くまで舞い上がる。店主は巨大な中華鍋を軽々と振り続けていた。
ガンッ!!ガガガガガッ!!炒飯が宙を舞い、香ばしい匂いが店いっぱいへ広がる。
次々と料理が運ばれ、最後の皿を出し終えた瞬間➖➖
「……終わった。」店主は女将を見る。
「暖簾……下げといてくれ……店じまいだ…」
バタッ。その場へ倒れた。女将は苦笑しながら薄い布を掛ける。
「無理しちゃって。」優しく頭を撫でた。
「でも……良かったね。今日はいっぱい料理できたもんね。」
◇◇◇
みんなで食事を楽しんでいると、隣の席から話し声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ。知ってる?ビーハナ町で明後日に公開処刑があるらしいわよ。」
「えっ!?本当に?誰の?」
「えー、詳しくは知らないけど……ライオンの獣人らしいわ。噂じゃ、どこかの王様なんだって。」
「王様ぁ?見に行こうかな。」「ん〜……悪趣味じゃない?」
その瞬間。山田カイザーの表情が変わった。
レンゲが止まる。ゆっくり立ち上がった。
「純増。ジュリナ。悪い。道案内はここまでだ。俺達ゃ先を急がなきゃならねぇ用事ができた」
「ん?用事?急に?」純増は首を傾げる。
「ここからの道って簡単?」
「あぁ。」山田カイザーは窓の外を指差した。
「この道を真っ直ぐ。太陽へ向かって歩けばビーハナ町だ。また会えたらよろしく。」
「おぉ、よろしく。元気でな!」
山田カイザーは笑うと、、
「お前ら!!行くぞ!!」「「へいっ!!」」
山賊達は一斉に立ち上がり、足早に茶屋を後にした。
純増とジュリナは静かにその背中に手を振る。
◇◇◇
そして店に戻り二人で食事を続けていると、ジュリナがぽつりと呟いた。
「……山賊さん。お金払っていきませんでしたね。」
純増の箸が止まる。「…………。」
「……あいつらめ、それが狙いだったのか?いっぱいぶん殴られたから、俺に飯を奢らせる……それがあいつらのやり方かっ!」一瞬だけ真顔になる。
だが、すぐ吹き出した。
「あははっ!!まぁいっか!昨日カレーゴチになったし!俺、ここんとこめっちゃ勝ってるし!チャラチャラ!なんならプラスぅぅ〜」
食べ終わり笑いながら会計へ向かう。
「お会計お願いしまーす!」
女将が笑顔で告げた。
「はーい。金貨四枚と銀貨八枚になります。」
「…………。」純増の笑顔が一瞬だけ固まる。
(高っ……まっ、そうだよな…五十人奢りだもんな…何なら安いぐらいあるか…)
ジュリナが心配そうに覗き込む。
「純増様。私、お金たくさんいただいておりますので……。私がお支払いしましょうか?」
「ん?あ、大丈夫だよ」純増は笑って支払い外に出る。
◇◇◇
「あはは。俺変な顔してた?大丈夫、また稼げばいいから。ジュリナは好きな物買いな。」
ジュリナは嬉しそうに頷く。
「はい♡実は……私、欲しい物が決まったんです。」
「え?何?買ってあげようか?」
ジュリナは首を横へ振る。
「いいえ。これは……自分のお金で買いたいのです。」
「えー、何買うの?気になる?」
ジュリナは少し照れながら微笑んだ。
「……純増様と、二人で住む家です♡」
聞いた瞬間、純増の思考が止まる。「……へ?」
「もしこの先、ダークエルフのみんなが住む場所を二人で見つけられたら、そこで、純増様と暮らしたいです。……嫌ですか?」
「い、嫌とかじゃなくて!」純増は慌てて両手を振る。
「俺でいいの!?俺、社会不適合者だよ!?たぶん働かないよ!?ご飯だって作れるのサッポロ一番みそラーメンくらいだよ!?」
ジュリナは優しく笑った。
「ふふふ。一緒にいられるなら。ジュリナは、それだけで幸せです♡」
「…………。」
(はぁぁぁぁぁ!!やべぇ!!どんだけ可愛いんだよ…。そうだよな…容姿端麗の人って大体やばいやつと付き合ってるんもんな…偏見だけど…。何だよ!この異世界、俺を更生させようとしてくる!!危うく就職サイト開きそうになった!!過酷なバイト探そうとしちゃったじゃん!違う幸せ見つけようとしちゃってんじゃん!)純増は顔を真っ赤にして天を仰いだ。
「ブルルルル♪」その横でカウホースが嬉しそうに鳴く。
ジュリナはそっと純増の手を握った。
「さぁ。行きましょう。純増様♡」
純増は照れ笑いを浮かべながら頷く。
「……うん。行こうか。」
穏やかな風が吹き抜ける。
二人は馬車へ乗り込み、新たな目的地➖➖
ビーハナ町へ向けて歩き始めた。
続
読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。




