第48話 【貰ったお菓子で飢えを凌いだ夜もある】
山賊の村に、穏やかな朝日が差し込んでいた。
小鳥のさえずりが聞こえる中、純増はゆっくりと目を開ける。「ふぁぁぁ……7時半か…?」
大きく欠伸をしながら身体を起こすと、すぐ隣ではジュリナが姿勢よく座っていた。
「あれ?ジュリナ…今日は早起きじゃん。」
純増は目をぱちくりさせる。
ジュリナは優しく微笑んだ。
「はい♡おはようございます。山賊さん達が、純増様の寝込みを襲うかもしれませんので、警戒しておりました。」
「……え?」純増は思わず固まる。
「それって……寝てないの?」
「いえ、少しだけ眠りました。」そして照れくさそうに頬を染める。
「あとは……純増様の寝顔を見ておりました♡ふふふ♡お口が開いていて可愛かったです」
「えっ、やめて、恥ずかしい」純増は耳まで赤くなる。
二人だけの穏やかな空気が流れた。
ドンドンドン!!その時、小屋の扉が乱暴にノックされる。
「うわぁ、ガサツだなぁ…。はーい。」
純増が返事をすると、扉が開いた。
「おう、起きてたか?そろそろ出発できるか?」
入ってきたのは山田カイザーだった。
「あぁ、ちょっと待って。」純増はショルダーバッグを漁る。
「歯だけ磨かせて。めっちゃ怒る人いるから……。」
バッグから歯ブラシを二本取り出した。
「はい、ジュリナ。」「わぁ♡」
ピンク色の歯ブラシを受け取り、嬉しそうに笑う。
「ピンクで可愛いです♡ありがとうございます。」
「あ、これ歯磨き粉もね。ちょっと辛いけど…」
「はいっ♪大丈夫です♡」二人は並んで歯を磨き始めた。
シャカシャカ……シャカシャカ……
その光景を眺めながら、山田カイザーは遠い目をする。
「……何で俺、負けたんだ……。」ぽつりと呟いた。
◇◇◇
準備を終え、一行は村の入口へ向かう。
先頭には山田カイザー。その後ろには約五十人の山賊達。そして純増達の馬車。
純増は周囲を見回して苦笑した。
「……ジュリナ。」「はい?」
「これさ……。」「はい。」
「俺達も山賊だと思われない?」
ジュリナは少し考えたあと、真面目な顔で答える。
「では、出発と同時に私たちも『ヒャッハァァァ!!』と叫びましょうか。」
「えっ!?マジで!?」
「………ごめんなさい。嘘です♡」
「あははははっ!!」純増は思わず吹き出した。
「ジュリナが冗談言うようになってる!」
そんなやり取りを見て、山田カイザーは笑う。そして大きく息を吸う。
「よし!出発するか。」そして後ろを振り返った。
「お前らぁ、火ぃ点けとけ。」「へい!」
次の瞬間。ボッ!!ボボボボボッ!!
村のあちこちから火の手が上がった。
「うぉぉぉぉい!!」純増が飛び上がる。
「何してんの!?何で燃やしちゃうの!?」
山田カイザーは笑った。
「あはは。ここに俺達がいた証拠を残さねぇためだ。移動するときは足跡を消す。追われる者の鉄則だ。」
「…………。純増は少し考える。
「……俺、足跡消したことないや。」そして小さく呟く。
「エロサイトの履歴なら消すけど……。」
ジュリナが不思議そうな顔で純増を見る。
「エロ…サイト…?」「あははははっ!気にしない!」
そんな二人を見て山賊達は笑い始めた。
◇◇◇
出発した一行は街道を進んでいた。
山田カイザーを先頭に、山賊達が馬車を囲むように歩く。その異様な光景に、旅人達は道の端へ避けていく。
「純増様。」「ん?どうした?」
「……お菓子が食べたいです。」
「あははっ。朝ご飯まだだったもんね。ちょっと待ってて!」
純増はゴソゴソとバッグを漁る。
「んー、何がいい?たべっ子?コアラのマーチ?前にいっぱい交換したからね。」
次々と駄菓子が出てくる。
「うまい棒、スニッカーズ、グミでしょ。あとチョコ、コンソメパンチ、キャラメル、ラムネ、まだあるよ。」
ジュリナの目が輝く。
「あっ!純増様!それが食べてみたいです♡それなんですか?」指差したのは、うまい棒。
「これ?うまい棒のシュガーラスク味。はい、どうぞ。」
ジュリナは袋を開ける。
サクッ。「…………。」目が丸くなった。
「美味しい……。」もう一口。サクッ。
「純増様!私、これも好きです♡何本でも食べられそうです♪」
「おぉ、気に入ってくれたならよかった。」
すると後ろからカウホースが顔を伸ばしてきた。
「ブルルル♪」「あら、カウちゃんも?」ジュリナが差し出す。
サクッ。ボリボリボリ。
「……嘘だろ。馬ってうまい棒食べるの?」純増が固まる。
カウホースは前歯を見せて笑った。
「ヒヒーン♪」「ふふふ。」ジュリナも笑う。
「カウちゃんもお気に入りみたいですね♡」
「あはは、なら、よかったわ…。腹壊すなよ…」
すると純増は今度は山賊達へ振り返る。
「みんなも食べる?口に合うか分からないけど。」袋ごと渡していく。
「う、美味ぇ!!」「何これ酸っぱ!!」
「何だこの食べ物!」「止まらねぇ!」反応は様々だった。
その中で山田カイザーだけは、コンソメパンチを抱え込んでいた。
「……これ。美味ぇな。」一枚。また一枚。静かに食べ続ける。
「……“生きてたら”…こういう店でもやるかな。」ぽつりと呟いた。
「絶対流行る!保証する。その時は絶対行くよ」
純増の笑顔に山田カイザーも照れくさそうに笑った。
◇◇◇
昼頃。街道沿いに小さな茶屋が見えてきた。
「そろそろ、昼飯食うか?」山田カイザーが指差す。
「おぉ!いいね!」純増の目が輝く。
「予約してあるの?」「……予約?」
「だって、急な団体だと入れないじゃん。」
山田カイザーは豪快に笑った。
「あはははっ!入れなきゃ厨房奪うまでだ!」
「…………。」純増は肩を落とした。
「考え方がDQNすぎるって。……ていうか、それ完全に営業妨害だからね。」
「あははっ♡私も手伝います。誰を屠ればいいですか?」ジュリナも腕まくりした。
「あははっ!手伝わなくてよろしい!」純増がジュリナを止める。
「「「あはは!」」」山賊達もつられて笑う。
青空の下、一行は笑い声を響かせながら、ゆっくりと茶屋へ向かって歩き出した。
続
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