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第47話 【引き寄せる者、引き寄せられる物】


 山田カイザーは隣に座るなり、

「まずは謝らせてくれ。」そう言って頭を下げる。

「うちの連中がちょっかい掛けて悪かった。“やられた”なんて報告されてよ……俺も頭に血が上っちまった。」少し間を置き、続ける。

「……誰も殺さないでくれて、ありがとう。」


 純増は首を振った。

「いやいや。こっちも死ななくて良かったよ。」煙を夜空へ吐き出す。

「俺たちもまだ旅が始まったばっかりだからさ。」


「旅……か。」山田カイザーは焚き火を見つめる。

「どこか向かってるのか?」

「ん~、特に目的地って訳じゃないんだけど……“引きの指輪”ってのを探してるんだ。何か知らない?」純増は笑う。


 一瞬の静寂。次の瞬間➖➖


「あっはっはっはっ!!」山田カイザーは腹を抱えて笑い出した。

「お、お前、それ本気で言ってんのか!?」


 その瞬間。ムクッ。

 純増の膝枕で寝ていたジュリナがゆっくり起き上がる。

「……今…あなた…」赤い瞳が山田カイザーを射抜いた。

「純増様を笑いましたね。」黒炎が小さく揺れる。

「侮辱しましたね。」カイザーの髪を掴み拳を握る。

「許しません!!」「ひっ!?」山田カイザーの顔色が青くなる。


「ジュ、ジュリナ。」純増が慌てて肩へ手を置く。

「大丈夫、大丈夫。ただ笑っただけだから。俺は怒ってないよ」

「そうですか……純増様がそう仰るのでしたら。」

 黒炎が静かに消えていく。


 山田カイザーは胸を撫で下ろした。

「……悪かった。」苦笑する。

「まさか今どき、本当にあれを探してる奴がいるとは思わなくてな。」

「今どき?」純増は首を傾げる。

「あぁ。」山田カイザーは焚き火へ薪をくべた。

「百年以上前の昔話しだからな。」「百年?」

「俺の爺さんから聞いた話だ。」少し空を見上げる。


「昔、この世界は争いも少なく、平和だったらしい。でもある日、一人の者が指輪を手に入れた。その指輪は、ありとあらゆる物を”引き寄せた”。魔獣。魔族。強大な魔法。様々な種族。そして、戦争まで。」


 純増の表情が少しだけ真剣になる。

「最後はどうなったの?」

「世界中を敵に回して戦い続け……最後は一人で処刑された。」静かな声だった。

「最後に残した言葉だけが、今でも語り継がれている。」

「……探せっ!…でしょ?」純増が呟く。


 山田カイザーは目を丸くした。

「あははっ!知ってたか。」

「あははっ!巫女音から聞いた。」

「ふ〜ん。なるほどな。」少し笑って続ける。

「昔は皆、その指輪を探した。夢があるからな。でも誰も見つけられなかった。そしていつしか誰も探さなくなった。だが唯一、今も探してると言われてるのが、、アルジェ王国の王。ドン国王だ。」


「アルジェ王国?ドン国王?」

「この世界で一番大きい国だ。お前達が向かうビーハナ町も、その国の領土だ。」

「へぇ。」純増は頷く。

「じゃあさ、ビーハナ町行って、話聞いて、それからドン国王に会えばいいってことか。」


 山田カイザーは苦笑した。

「ははは、国王に会うのがそんな簡単なら苦労しねぇ。それにアルジェ王国は今、この世界を力で一つにまとめようとしてる。王国に近づくほど警戒が強くなる。しかも魔族との繋がりもあるらしい。それを止めなきゃならねぇ。」


 ジュリナが起き上がり静かに尋ねた。

「……それが、あなたが言っていた、“俺たちのやらなければならないこと”なのですか?」

「あぁ。」山田カイザーは静かに頷く。

「俺達は元々、ジャミー王国の兵士だった。王命でアルジェ王国へ潜入した。だが支援はいつしか途絶えた。帰る場所もない。俺たちは生きるために山賊になるしかなかった。」


「……そうだったのですね。」

 ジュリナは少しだけ表情を曇らせた。


 山田カイザーは笑う。

「ははは、でもまぁ、お前さんよりはマシだろ。ダークエルフがこの世界で生きる方が、よっぽど大変だ。」


 純増は煙草を口から離した。

「あっ、ごめん。素朴な疑問なんだけどさ。何でダークエルフって”マグロ”なんて呼ばれて嫌われてるの?」

「あぁ、それも爺さんから聞いた話だと、、」

 山田カイザーは答える。

「昔のダークエルフは強かった。強すぎた。圧倒的な武力で他国を飲み込み、世界を統一しかけた。戦って、戦って、戦って、止まれば死ぬ。まるで“マグロ”みたいだ。いつしか、忌み嫌われそう呼ばれるようになった。だがある日を境に誰も姿を見なくなった。今じゃ森の奥深くで暮らしてるなんて話を聞くくらいだ。」


 ジュリナが身を乗り出す。

「……まだ、ダークエルフは、みんなは生きているのですか?」

「あぁ。どこかの森の奥にな。たまに見たって噂も聞く。」


 純増はジュリナを見て笑った。

「ジュリナ。旅の途中で情報が入ったら行ってみようか。」一瞬。ジュリナの瞳が輝いた。

「えっ……本当に、宜しいのですか?」

「うん。せっかくだし、行ってみようよ。」

 ジュリナは花が咲いたような笑顔になる。

「はいっ!!ありがとうございます、純増様♡」


 山田カイザーは立ち上がった。

「ふぅ、長話ししちまったな。悪かった。次はビーハナ町だったな?町の近くまでは送らせてくれ。俺達もそこで別の用事がある。それ以上は一緒に行けねぇけどな。」


 純増の顔が明るくなる。

「えっ!?送ってくれるの!?やったぁ!!二択しなくて済むじゃん!」両手を上げて喜ぶ。そして少し考え込む。

「……いや待てよ。二択が無い旅って、それはそれで少し寂しい気もするな…。道を外してこその人生って言うしなぁ…」


 山田カイザーは首を傾げた。

「……何の話だ?」

「あははっ!こっちの話!」


 二人は笑い合った。

「じゃあ今日は、あの小屋でゆっくり休んでくれ。あいつらに準備させといたから。明日の朝、出発だ。」

「おぉ!ありがとう!おやすみ!」

「おやすみなさい♡」


 純増とジュリナは小屋へ向かう。

 静かな夜。隣同士で眠る。

 月明かりが二人の布団を優しく照らしていた。


 そして➖➖翌朝。

 山賊村に、柔らかな朝日が昇り始めるのだった。




            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

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