第5話 【意味はない、だが捻る】
純増はメダルを一枚、ゆっくりと投入口へ落とした。カシャン。「……ふーん。」筐体を見つめる。少しだけ眉を上げる。
「一枚掛けか。三枚じゃないのね。」台を軽く叩き、ニヤリと笑う。
「センターライン一本勝負ってことね!」
レバーへ手を添える。
「異世界一打目……よろしく!」
カコッ。ウィィィィン。リールが回り始めた。
「ふぐぅぅぅ……。」純増の肩が小刻みに震える。
じゅわり、と脳汁が滲む。「はぁ、この回転……ずっと見ていたい。」
目を凝らす。回る図柄が徐々に見えてくる。
「チェリー、ベル、プラム、スイカ、赤七、BAR、チェリー、ベル、スイカ、プラム、ベル、スイカ……。」
純増は目を細めた。「DDTはボーナス絵柄狙いか…」一拍置く。「……いや、そもそもこの世界も四コマ滑り制御なのか?」首を傾げながら笑う。
「まっ、物は試しだ。」左。ポチッ。中。ポチッ。右。ポチッ。ネジネジ。何も揃わない。
無言でもう一枚。レバーオン。またハズレ。
三回転目。何もなし。
そして四回転目。左リールを止めた瞬間だった。
チェリーが中段へ滑り込む。ほぉぉぉん!」じわっ、と脳汁が滲む。
「滑ったねぇ!」口元がゆっくり吊り上がる。
「生意気だねぇ!」中リールへ指を添える。
「どうした?どうなる?」ポチッ。
「どうした?何引いた?」右リール。しかし、すぐには離さない。指先に力を込める。捻る。捻る。さらに、捻りこむ。
「来い……」そっと指を離した。
ドゥルゥルル。チャリン、チャリン、チャリン、チャリン。四枚。「ほぉう」払い出されたメダルを見つめる。
「チェリー重複は無し……ね。」純増は肩をすくめた。
「そんな簡単じゃないか…ふぅ、この捻りに意味なんかねぇ…」
メダルを掌の中で揃えながら「でも、俺は捻る」
こればかりは長年のクセだった。また回す。またハズレ。
気付けば掌の中、残り三枚。
「……欲しい。」ポツリと呟く。「当たりが欲しい。」レバーオン。ハズレ。残り二枚。ハズレ。
そして、最後の一枚。純増は深く息を吸った。
「ふぅぅぅぅ……。」レバーへ手を添える。
「いつだって、いつも、このラスト一打が俺を生き返らせる。」静かに笑う。「生きてる…」そっと目を閉じる。「俺……生きてるっ!!」
勢いよくレバーを叩いた。
「お願いしまぁぁぁぁぁすっ!!」
カコッ。リールが回る。何も起きない。それでも純増は諦めない。
「諦めるな……」左。ペシッ。中。ペシッ。右。ベシッ。最後まで、いつものように指先へ力を込める。
捻る。捻る。捻りこむ。そっと離す。静寂。
リールは止まってる。何も揃っていない。
「……終わった…」純増は静かに席から立ち上がる。
「あぁ、腹減ったなぁ…牛丼屋あるかな?」トボトボと歩き店を出ようとする。一度だけ台を振り返る。
「また、遊んでくれよ…。次はもっと楽しませられる打ち手になってくる…」
そう呟くと、後ろ髪を引かれる思いで店をあとにした。
続
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