↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/68

第44話 【巻き返しの瞬間こそ至高】


 黒炎が、雨を焼くように揺らめいた。

 全身から禍々しい魔力を噴き上げるジュリナを前に、山賊達は思わず一歩後ずさる。

「あら?」ジュリナは首を傾げた。

「さっきまでの勢いは、どうされたのですか?」


 誰も動かない。いや、動けない。


「そうですか…来ないのでしたら、、」ドンッ!!

 次の瞬間には、山田カイザーの目の前に立っていた。

「こちらから行きますよ☆」

 黒炎を纏った拳がこめかみへめり込む。

「ごはぁぁっ!!」

 巨体が宙を舞い、何軒もの木箱を巻き込みながら吹き飛んだ。


「カ、カイザー様!!」山賊達が一斉に飛び掛かる。

「ヒャッハァァァ!!ここからは通さねぇぜっ!」


 ジュリナは虹色の剣を静かに構えた。

「……斬っても、宜しいですよね?」

 ヒュンッ!!剣が大きく薙ぎ払われる。

 山田カイザーは慌てて両手を掲げた。

「【守護者】!!」淡い光が山賊達を包む。

「ぎゃぁぁぁ!!」「腕がぁ!!」「足ぃぃ!!」

 ギリギリで致命傷は避けたものの、全員が血を流して地面へ転がる。


「て、てめぇ……殺す気かよ……。」

 一人の山賊が震える。ジュリナはクスッと笑った。

「ぷっ。面白い人。」剣先を向ける。

「殺すのは好きでも、殺されるのは嫌いなのですね♡」


 山田カイザーの額から汗が流れた。

(何なんだ……何で全回復してる?さっきまでボロボロだったろ…しかも、この異常な強化……何だ、この魔法は!!)考え込んだ、その瞬間。


「ほらぁ?」ゾクリ。目の前にジュリナがいた。

「ぼーっとしているうちに、、死にますよ?」

 虹色の剣が目前まで迫る。


「うぉぉぉぉっ!!」ギィィィン!!

 巨大な斧で受け止める。だが、その直後。

「ぐはぁぁぁぁ!!」黒炎を纏った拳が腹へ突き刺さった。

「ぐぼぁっ!!」山田カイザーは膝をつく。


 ジュリナは楽しそうに微笑む。

「あははっ!カイザーちゃん。隙ありです☆」

 その笑顔に、山田カイザーは歯を食いしばった。

「……チッ。舐めやがって…」ゆっくり立ち上がる。

「お前ら!!もう手ぇ出すな!!」山賊達へ怒鳴る。


 一斉に静まる。


「ここからは俺が一人でやる。」「カイザー様!?」

「全力で相手してやる。」両手を広げる。

「【戦士の咆哮】!!【狂戦士】!!【剛力】!!」補助魔法が次々と自身へ重なる。


 筋肉がさらに膨れ上がる。

「ぶははははっ!!」巨大な斧を肩へ担ぐ。

「楽しむ暇もなく殺しちまったら悪ぃな!!」


 しかしジュリナは微笑み、相手にする様子もないまま、お腹へそっと触れる。

 そこには、、“碼樽純増”の文字。

(ふふふ……。純増様。楽しんでくださっていますか?ジュリナには伝わっていますよ。純増様の愛が……私を、どんどん強くしてくださっています。あぁ……私はなんて幸せなんでしょう♡)


「ニヤニヤしてる間に死ぬぞ!!」

 山田カイザーが飛び込む。巨大な斧が振り下ろされた。

 しかし。ジュリナは避けない。

 ニコッ。ガキィィィン!!ジュリナの蹴りが斧へ直撃する。斧は大きく弾き飛ばされ、そのまま山田カイザーの顔面へ。


「ぶごっ!!」さらに追撃。ドゴォッ!!

 蹴りが胸へ炸裂し、巨体が地面を転がる。


「純増様の命令がない限り……」

 ジュリナはゆっくり優雅に歩きカイザーに近づく。

「カイザーちゃんは、死ねませんよ♡」

 クイクイ。指で手招きする。

「さぁ。もっと楽しみましょうか☆」


◇◇◇


 一方その頃➖➖

 VRホール内では純増の笑い声が響いていた。


「いひひひひっ!!」


 純増は椅子の上で、子供みたいに身体を揺らし、足をバタバタさせていた。

「ここから五ゲーム脳汁だくだくゾーン!!うわぁぁぁ!!変な汁が毛穴から吹き出しそうぅぅぅ!!」

 勢いよく振り返り、「店員さん!!カフェラテとアメスピお願い!!」

「はい。どうぞ。」数秒後には両方差し出されていた。

「ん?何で注文するって分かったの?」


 店員は真顔で答える。

「……言いそうな顔をしていましたので。」

「あははは!!ありがとうございます〜!!」

 笑顔の純増を見て店員はジト目になる。

「ヤニとカフェラテで汚れた口で、ニチャ〜っと笑わないでください。気持ち悪いです。」

「えっ?……ごめん。」純増は素直に謝った。

 店員も少し反省したように目を逸らす。

「……すみません。言い過ぎました。」


 純増は少し考える。

「じゃあ、後で歯ブラシと歯磨き粉お願い。」

「……はい。ご用意しておきます。」


「よしっ!!」両手を擦り合わせる。

「さぁて!!何回引けるかなぁ!!今なら一生終わる気しないけどね!!」


 レバーオン。カコン。遅れからのトゥゥロロ〜ン♪

「はいぃぃぃ!!」純増が立ち上がる。

「これもう鉄板ねっ!!カッチカチのカチ子ちゃん!熱い所通り越して南極まで行っちゃったぁぁ!!あははははっ!!逆に寒いってね!ってなんでやねん!!」


 ボーナス図柄を狙う。

「はいっ!!ズドン!!」ビッグボーナス。

 ボーナス終了後、即レバーオン。

 カコン。ポチ。ポチ。ポチ。リーチ目。

「あらまぁ〜。綺麗ですねぇ。この小山のような膨らみ……わたくし、興奮して目が離せませんっ!!」


 再びビッグボーナス。

「あはははっ!!マッジで終わる気しないって!!半端ないって!純増半端ないってぇ!!」


 店員は歯ブラシと歯磨き粉を持ったまま、その背中を眺める。

「……とりあえず、休憩押して歯を磨けよ……」小さく呟いた。


◇◇◇


 その頃、ボーナスが揃うたび、ジュリナへ新たな力が流れ込む。黒炎はさらに濃く、虹色の剣はさらに輝く。

 一方、山田カイザーも魔力を振り絞り、自分へ補助魔法を重ね続ける。


「はぁ……はぁ……。」息が荒い。

 ジュリナはクスリと笑った。

「あらら、カイザーちゃん。息が上がってきちゃってますよ〜?」


 足を引っ掛ける。

「うおっ!?」山田カイザーが転ぶ。

 その首筋へ虹色の剣が添えられた。

「……まだ…」ジュリナは微笑む。

「純増様の許可がありませんので、死ねませんね♡」


 ドゴッ!!「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

 股間を押さえて転げ回る山田カイザー。

「て、てめぇぇぇ!!」怒りで魔力を全開にする。

「もう全部乗せだぁぁぁぁ!!」補助魔法を重ね、最後の力で斧を振り下ろす。


「死ねぇぇぇぇ!!」ジュリナは避けない。

 斧がジュリナに触れる、その瞬間➖➖

 ジュウゥゥゥ……斧が黒炎へ触れた瞬間、まるで蝋細工のように溶け始めた。


「……は?」柄だけを残し、巨大な斧は跡形もなく消えていく。山田カイザーの顔から血の気が引いた。


 ジュリナはゆっくり歩み寄る。

「ふふふ。どうやら、愛、満タンです♡」

 そっと山田カイザーの顎を掴む。逃げようとしても、身体は動かない。


「そろそろ……終わりが近いですかね?」

 赤い瞳が優しく細められる。その瞳を見て山田カイザーは初めて、本当の恐怖に震えていた。

「震えちゃって…怖いんですか?うふふ、大丈夫ですよ。まだ純増様から、殺していいとは言われていませんので♡」

 優しく微笑むジュリナの顔はどこまでも美しかった。

            続

読んで頂きありがとうございます。ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日7時30分更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。