第44話 【巻き返しの瞬間こそ至高】
黒炎が、雨を焼くように揺らめいた。
全身から禍々しい魔力を噴き上げるジュリナを前に、山賊達は思わず一歩後ずさる。
「あら?」ジュリナは首を傾げた。
「さっきまでの勢いは、どうされたのですか?」
誰も動かない。いや、動けない。
「そうですか…来ないのでしたら、、」ドンッ!!
次の瞬間には、山田カイザーの目の前に立っていた。
「こちらから行きますよ☆」
黒炎を纏った拳がこめかみへめり込む。
「ごはぁぁっ!!」
巨体が宙を舞い、何軒もの木箱を巻き込みながら吹き飛んだ。
「カ、カイザー様!!」山賊達が一斉に飛び掛かる。
「ヒャッハァァァ!!ここからは通さねぇぜっ!」
ジュリナは虹色の剣を静かに構えた。
「……斬っても、宜しいですよね?」
ヒュンッ!!剣が大きく薙ぎ払われる。
山田カイザーは慌てて両手を掲げた。
「【守護者】!!」淡い光が山賊達を包む。
「ぎゃぁぁぁ!!」「腕がぁ!!」「足ぃぃ!!」
ギリギリで致命傷は避けたものの、全員が血を流して地面へ転がる。
「て、てめぇ……殺す気かよ……。」
一人の山賊が震える。ジュリナはクスッと笑った。
「ぷっ。面白い人。」剣先を向ける。
「殺すのは好きでも、殺されるのは嫌いなのですね♡」
山田カイザーの額から汗が流れた。
(何なんだ……何で全回復してる?さっきまでボロボロだったろ…しかも、この異常な強化……何だ、この魔法は!!)考え込んだ、その瞬間。
「ほらぁ?」ゾクリ。目の前にジュリナがいた。
「ぼーっとしているうちに、、死にますよ?」
虹色の剣が目前まで迫る。
「うぉぉぉぉっ!!」ギィィィン!!
巨大な斧で受け止める。だが、その直後。
「ぐはぁぁぁぁ!!」黒炎を纏った拳が腹へ突き刺さった。
「ぐぼぁっ!!」山田カイザーは膝をつく。
ジュリナは楽しそうに微笑む。
「あははっ!カイザーちゃん。隙ありです☆」
その笑顔に、山田カイザーは歯を食いしばった。
「……チッ。舐めやがって…」ゆっくり立ち上がる。
「お前ら!!もう手ぇ出すな!!」山賊達へ怒鳴る。
一斉に静まる。
「ここからは俺が一人でやる。」「カイザー様!?」
「全力で相手してやる。」両手を広げる。
「【戦士の咆哮】!!【狂戦士】!!【剛力】!!」補助魔法が次々と自身へ重なる。
筋肉がさらに膨れ上がる。
「ぶははははっ!!」巨大な斧を肩へ担ぐ。
「楽しむ暇もなく殺しちまったら悪ぃな!!」
しかしジュリナは微笑み、相手にする様子もないまま、お腹へそっと触れる。
そこには、、“碼樽純増”の文字。
(ふふふ……。純増様。楽しんでくださっていますか?ジュリナには伝わっていますよ。純増様の愛が……私を、どんどん強くしてくださっています。あぁ……私はなんて幸せなんでしょう♡)
「ニヤニヤしてる間に死ぬぞ!!」
山田カイザーが飛び込む。巨大な斧が振り下ろされた。
しかし。ジュリナは避けない。
ニコッ。ガキィィィン!!ジュリナの蹴りが斧へ直撃する。斧は大きく弾き飛ばされ、そのまま山田カイザーの顔面へ。
「ぶごっ!!」さらに追撃。ドゴォッ!!
蹴りが胸へ炸裂し、巨体が地面を転がる。
「純増様の命令がない限り……」
ジュリナはゆっくり優雅に歩きカイザーに近づく。
「カイザーちゃんは、死ねませんよ♡」
クイクイ。指で手招きする。
「さぁ。もっと楽しみましょうか☆」
◇◇◇
一方その頃➖➖
VRホール内では純増の笑い声が響いていた。
「いひひひひっ!!」
純増は椅子の上で、子供みたいに身体を揺らし、足をバタバタさせていた。
「ここから五ゲーム脳汁だくだくゾーン!!うわぁぁぁ!!変な汁が毛穴から吹き出しそうぅぅぅ!!」
勢いよく振り返り、「店員さん!!カフェラテとアメスピお願い!!」
「はい。どうぞ。」数秒後には両方差し出されていた。
「ん?何で注文するって分かったの?」
店員は真顔で答える。
「……言いそうな顔をしていましたので。」
「あははは!!ありがとうございます〜!!」
笑顔の純増を見て店員はジト目になる。
「ヤニとカフェラテで汚れた口で、ニチャ〜っと笑わないでください。気持ち悪いです。」
「えっ?……ごめん。」純増は素直に謝った。
店員も少し反省したように目を逸らす。
「……すみません。言い過ぎました。」
純増は少し考える。
「じゃあ、後で歯ブラシと歯磨き粉お願い。」
「……はい。ご用意しておきます。」
「よしっ!!」両手を擦り合わせる。
「さぁて!!何回引けるかなぁ!!今なら一生終わる気しないけどね!!」
レバーオン。カコン。遅れからのトゥゥロロ〜ン♪
「はいぃぃぃ!!」純増が立ち上がる。
「これもう鉄板ねっ!!カッチカチのカチ子ちゃん!熱い所通り越して南極まで行っちゃったぁぁ!!あははははっ!!逆に寒いってね!ってなんでやねん!!」
ボーナス図柄を狙う。
「はいっ!!ズドン!!」ビッグボーナス。
ボーナス終了後、即レバーオン。
カコン。ポチ。ポチ。ポチ。リーチ目。
「あらまぁ〜。綺麗ですねぇ。この小山のような膨らみ……わたくし、興奮して目が離せませんっ!!」
再びビッグボーナス。
「あはははっ!!マッジで終わる気しないって!!半端ないって!純増半端ないってぇ!!」
店員は歯ブラシと歯磨き粉を持ったまま、その背中を眺める。
「……とりあえず、休憩押して歯を磨けよ……」小さく呟いた。
◇◇◇
その頃、ボーナスが揃うたび、ジュリナへ新たな力が流れ込む。黒炎はさらに濃く、虹色の剣はさらに輝く。
一方、山田カイザーも魔力を振り絞り、自分へ補助魔法を重ね続ける。
「はぁ……はぁ……。」息が荒い。
ジュリナはクスリと笑った。
「あらら、カイザーちゃん。息が上がってきちゃってますよ〜?」
足を引っ掛ける。
「うおっ!?」山田カイザーが転ぶ。
その首筋へ虹色の剣が添えられた。
「……まだ…」ジュリナは微笑む。
「純増様の許可がありませんので、死ねませんね♡」
ドゴッ!!「うぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
股間を押さえて転げ回る山田カイザー。
「て、てめぇぇぇ!!」怒りで魔力を全開にする。
「もう全部乗せだぁぁぁぁ!!」補助魔法を重ね、最後の力で斧を振り下ろす。
「死ねぇぇぇぇ!!」ジュリナは避けない。
斧がジュリナに触れる、その瞬間➖➖
ジュウゥゥゥ……斧が黒炎へ触れた瞬間、まるで蝋細工のように溶け始めた。
「……は?」柄だけを残し、巨大な斧は跡形もなく消えていく。山田カイザーの顔から血の気が引いた。
ジュリナはゆっくり歩み寄る。
「ふふふ。どうやら、愛、満タンです♡」
そっと山田カイザーの顎を掴む。逃げようとしても、身体は動かない。
「そろそろ……終わりが近いですかね?」
赤い瞳が優しく細められる。その瞳を見て山田カイザーは初めて、本当の恐怖に震えていた。
「震えちゃって…怖いんですか?うふふ、大丈夫ですよ。まだ純増様から、殺していいとは言われていませんので♡」
優しく微笑むジュリナの顔はどこまでも美しかった。
続
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