第41話 【復活の瞬間ほど神を信じる】
黒炎が雨の中で激しく揺れる。
ジュリナは何度も剣を振るい、拳を振るう。
しかし、倒しても倒しても山賊達は立ち上がる。
「ヒャッハァァァ!!」「きかねぇな!カイザー様の補助魔法のおかげだぁ!!」「今度はこっちの番だ!!」
山賊達が一斉に飛び掛かった。
ドゴッ!!ゴンッ!!バキッ!!
躱しきれなかった拳や蹴りが、次々とジュリナへ叩き込まれる。
「ぐっ……!」黒炎で受け流しても数が多い。
足が止まる。肩で息をする。雨で濡れた銀髪が顔へ張り付いた。
◇◇◇
一方その頃➖➖
ホールでは純増が必死にレバーを叩いていた。
カコン。カコン。カコン。
「頼む……急げ…」
ジュリナが映る液晶を見つめる。そしてリールを見る。
また液晶を見る。落ち着かない。
その様子を店員は静かに見守っていた。
やがてカウンターから一杯のカフェラテを持ってくる。
「集中できないみたいですね…どうぞ。」
純増は画面から目を離さない。
「……ありがとう。」
それだけ言って受け取ったカフェラテを一気に飲み干した。空になったカップを置き、煙草へ火を付ける。深く吸う。吐く。それでも視線はリールから動かない。
その瞬間だった。液晶の中で➖➖
ガシッ。ジュリナの髪が掴まれた。
◇◇◇
「ヒャッハァァァ!!」
山賊達は順番にジュリナを殴り始める。
「どうしたぁ!!」「もう終わりか!!」
「さっきの勢いはどうしたっ!」
ドゴッ!!ドゴッ!!腹へ拳がめり込む。
「うっ……!」ジュリナの口から血が零れた。
「……あまり……髪を掴まないでください……。純増様が……私の髪を気に入ってくださっているので……。」
「あぁ?知るかぁ!!」
ゴンッ!!また腹へ拳が入る。
「お前っ!よくも俺の仲間の耳の後ろばっか殴りやがったな!!」
山賊は仲間を指差す。
「あいつを見てみろ!!視点は合わねぇ!!舌もしまえなくなっちまったじゃねぇか!!」
「うぅっ……。」ジュリナは苦しそうに腹を押さえる。
「……あまり、お腹も殴らないでください……。」
「あぁん!何でだよ。女だから優しくしろってかっ!?」
ジュリナはそっと腹へ手を当てた。
そこには刻まれた、“碼樽純増”の文字。
「純増様のお名前が……書いてありますので……。傷付くと……私まで……悲しい気持ちになります……。」
髪を掴まれたまま膝をつく。視界が霞む。
(純増様……。ごめんなさい……。ジュリナは……この後山賊さんに酷いことされそうです……。どうか……嫌いにならないでください……。)
意識が遠のいていく。
「ヒャハハハ!!」「終わりだな!!」
「おい!!カイザー様の所へ連れて行くぞ!!」
一人の山賊が笑う。
「はひっ!ここでやっちまえばいいじゃねぇか。」
すると別の山賊が頭を叩いた。
「馬鹿!!勝てたのはカイザー様のおかげだろ!!」
「そういうとこだぞ!!」「いてっ!!」
ジュリナはそのまま肩へ担がれた。
◇◇◇
ホールソードの液晶から声が響く。
『ジュリナ!!おいっ!大丈夫か!!起きろ!!』
返事がない。
『ジュリナ!!聞こえるか!!連れてかれちゃうぞ!』何度呼んでも返事は返ってこなかった。
◇◇◇
「どうすんだよ……。」純増の声が震える。
「こんな時……。」 店員へ振り向く。
「なぁ、店員!!店員チャンスくれよ!!ほら!!いつものくれよ!何でもビタ押しするから!!」
店員は黙ったまま俯いていた。
「おい!!何だんまりしてんだよ!!」
純増は休憩ボタンを押し、店員へ詰め寄る。
「教えろ!!どうすれば助けられる!!何すればジュリナを助けられるっ!?」
店員は静かに純増を見る。
「少しは、ご自分でお考えください。お客様は、ピンチの時、どうやって復活してきましたか?どうやって乗り越えてきましたか?」
「………。」純増は考える。
(ピンチ……。どうやって……。消費者金融……違う。じゃあ、実家へ電話……それも違う。じゃあ……。)しばらく黙り込む。
そして➖➖
「あっ。」純増の表情が変わった。
「そうか。そういうことか!?」
台へ戻る。深呼吸。休憩ボタンを解除する。
力一杯MAXBET。そして腹の底から叫ぶ。
「ジュリナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
◇◇◇
その声は液晶を突き抜け、雨を突き抜けた。
意識の奥底まで沈んでいたジュリナの耳へ届く。
(……純増……様。)指先がピクリと動く。
山賊達は気付かない。黒炎が小さく揺れた。
(ジュリナ。立て。お前なら出来る。愛してる。大好き。今…そう言いました…?)
純増の声が勝手な妄想で胸へ響く。
ドクン。心臓が鳴った。
ドクン。黒炎が膨れ上がる。
ゆっくり目を開く。赤い瞳へ光が戻る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
黒炎が禍々しく爆発した。担いでいた山賊達が一斉に吹き飛ぶ。
「なっ!?なんだぁっ!」「立ったぁ!?」
ジュリナは剣を握り直した。
「純増様の声は……。」黒炎が身体を包み込む。
「何度でも……。私を立ち上がらせてくださいます。」
剣先を山賊達へ向ける。
「さぁ、戦いの続きを始めましょう。来いっ!!」
手招きをクイクイとする。
◇◇◇
ホールでは純増が液晶を見つめたまま涙を流していた。
「あは……。あはは……。立った……。」
震える手を胸の前で組む。
「……ありがとう。」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
ただ一つだけ確かなことがある。
ジュリナは、まだ戦っている。
ならば自分も➖➖
ひたすらレバーを叩き続けるだけだった。
続
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