第40話 【遅れチェリーは神の悪戯】
雨が激しく地面を叩く。
「はぁっ!」ジュリナは黒炎を足へ纏い、一気に間合いを詰めた。
ドンッ!!空中で身体を捻り、黒炎を纏った回し蹴りが山田カイザーの顔面を襲う。
しかし➖➖
パシッ。山田カイザーは片手だけで受け止めた。
「へへっ。足癖の悪いマグロちゃんだなぁ。」口元を歪める。
「たっぷり身分を教えて、躾けてやらねぇとなぁ!」
ジュリナの紅い瞳が細くなる。
「ふふっ……。」静かに笑った。
「山賊さんごときが躾けられるのでしたら、ご自由にどうぞ。」黒炎が虹色の剣へ宿る。
「ですが、、」一瞬で空中を回転。剣を真っ直ぐ振り下ろした。
「ダークエルフを、あまり下に見ない方が宜しいですよ?」
ガギィィィン!!巨大な斧が受け止める。火花が散った。
「軽い剣だな。」山田カイザーは鼻で笑う。
「……今のところ、はですね♡」ジュリナは微笑んだ。
その笑みに、山田カイザーは僅かに眉を動かした。
(ふん、挑発……か。)だが、すぐに後方へ飛び退く。
「たかが女一人、俺が出るまでもねぇ。」
巨大な斧を肩へ担ぐ。
「おい、お前ら。」山賊達を見回した。
「たっぷり可愛がってやれ。」
ジュリナは口元だけで笑う。
「へぇ、大きなお身体をしているのに逃げるのですね。」一歩踏み出す。
「体に似合わず、臆病者なのですね。」
本当はジュリナは今すぐ斬り込みたい。
だが、純増がバフを掛けてくれた瞬間こそ最大のチャンス。その一瞬を狙っていた。純増を信じてる。だから、山田カイザーを近くに置いておきたかった。
山田カイザーは大笑いした。
「ぶははははっ!!」両手を広げる。
「逃げる?俺が?」首を横へ振る。
「違うなぁ。」ニヤリ。
「俺は“補助魔法使い”なんだよ。」
その瞬間だった。
「【牙を研げ】」淡い光が山賊達を包み込む。
「うぉぉぉ!!」「力が湧いてくる!!」
「これこれぇ!!」「さっきのお返し、たっぷりしてやるぜぇ!!」
五十人近い山賊達が一斉にジュリナを囲んだ。
ジュリナは静かに息を吐く。
「ふぅ、そういうことでしたか。」黒炎がさらに強く燃え上がる。
「でしたら、全員後悔するまで、まとめてお相手しますね☆」剣を構え直し、ニッコリと微笑んだ。
◇◇◇
一方その頃➖➖
勢いよくホールソードへ飛び込んだ純増。
「うひゃぁぁぁぁ!!よしっ!!」台にまっしぐらに駆け寄る。
……しかし筐体を見て立ち尽くした。
「………。えっ、何で……。」
目の前には前回と全く同じ台。
店員が静かに一礼する。
「いらっしゃいませ。前回は新装開店でした。そして今回は相手が変わっておりませんので、据え置きとさせていただきました。お気に召しませんでしたか?」
純増はゆっくり振り返る。
「…………。」数秒沈黙。
「何であの遅れがチェリーなんだよぉぉぉ!!」
店内へ叫び声が響く。
「あれ絶対ボーナスの手応えだっただろ!!侮辱だ!!冒涜だ!!俺の期待を返せぇぇぇ!!」
店員は静かに頷いた。
「……あの、でしたら、台変更されますか?」
純増は腕を組み、目を閉じる。
「…………。」長い沈黙。
「変えないけど…」「はい?」
「変えないっ!続行だ!!」拳を握る。
「この台と最後まで向き合う!!もう打っていいですか?」
店員は少し驚いたあと、小さく笑った。
「承知しました。どうぞ。」
純増がリールを回し始める。
カコン。カコン。
「おっ!そうきましたか!?うひひっ!」
その純増の楽しそうな背中を見ながら、店員はふと思い出していた。
◇◇◇
『なぁ。』『はい。どうしましたか?』
『いつかさ、俺じゃねぇ奴が、この剣を持つ日が来るんだろ?』
『……そうかもしれませんね。』
『だったらさ…もっと愛してくれる奴がいいよな。』煙草を咥えたまま笑った。
『俺、この機械のシステムよく分かんねぇし、別に分かりたくもねぇしなっ!あははっ!」
『…………。』
◇◇◇
(ふふっ。)店員は小さく微笑んだ。
(まさか……ここまで愛してくださる方になるとは思いませんでした。少し……気持ち悪いくらいですが。)純増の背中を見つめる。
純増はレバーを叩く。
「よしっ!はいっ!ちゅどぉぉぉん!!」リールが止まる。「ぶひぃぃぃ☆よしよし!」
液晶へ笑い掛ける。
「ジュリナぁぁ♡もう引いちゃったよぉぉぉ!」
画面の向こう。ジュリナが小さく頭を下げる。
『ありがとうございます、純増様。出来ましたら……もう少したくさん引いていただけると助かります。』
「ん?どうした?やばいの?」純増が首を傾げる。
液晶へ視線を向ける。そこには➖➖
五十人以上の山賊を相手に、休む暇なく剣を振るうジュリナの姿。
倒しても。倒しても。山田カイザーの補助魔法で再び立ち上がり強化される山賊達。
ジュリナは初めて困惑した表情を浮かべる。
『純増様。……山賊さん、何度倒しても、きりがありません……。』ジュリナの肩で息をする姿が液晶へ映る。
純増の笑みがゆっくり消えた。
(まだ足りねぇってか?面白い!)
純増の脳みそがボコボコと沸騰するほど熱くなり、脳汁がダラァ〜っと溢れる音がした。
「……ジュリナ。ちょっと踏ん張れ!すぐに引く!」
『はい。お任せ下さい。純増様!はぁぁぁぁぁ!!』
ホールと戦場の空気が少しだけ変わる。
純増のレバーオンが、戦局を大きく左右しようとしていた。
続
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