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第35話 【遅れ演出考えた人優勝】


 山賊達が一斉に純増とジュリナに飛びかかる。

「ヒャッハァァァ!!荷物置いて、俺たちと楽しんでいけぇぇぇぇ!!」


 ジュリナは一歩前へ出ると、静かに微笑んだ。

「純増様。少しだけ、お待ちください♡」

 次の瞬間、ジュリナの姿が消えた。

 ドンッ!!「ぐぼぁっ!?」先頭の山賊が宙を舞う。

「さぁ、始めましょう♡」黒炎が両手両足へ絡みつく。「さぁ、純増様。お願いします」

 

 その言葉を聞いた純増は、嬉しそうに剣へ飛び込んだ。

「うひゃぁぁぁぁ!!行ってきまぁぁぁす!」


◇◇◇


 目を開けると、そこはいつものVRホール。純増は辺りを見回した。

「……お?なんか変わってる…」

 以前より照明は明るく、内装は高級感が増している。流れるBGMも軽快になり、壁や床の装飾まで一新されていた。


「へぇ〜……。」純増は感心したように歩き回る。

「なんか最新ホールって感じじゃん。」


 すると奥からコツコツと店員がゆっくり歩いてきた。

「いらっしゃいませ。」いつもの穏やかな笑みを浮かべ、一礼する。

「お客様のレベルが10へ到達しましたので、ホールをリニューアルさせていただきました。」


「へぇ!いいじゃん!」純増はキョロキョロ見回しながら笑う。「音も変わってるし、雰囲気めっちゃ好き。」

「お気に召していただけたようで何よりです。」

「うん!」そして純増は身を乗り出した。


「……で?」「はい?」「早く打たせて☆」

 店員は小さくため息をついた。

(たぶんこの人……原っぱに台だけ置いても喜んで打つんだろうな。)


「本日は新台も導入しております。」

「えっ!!」純増の目が輝く。

「新台!?」「はい。」

「早く早く早く!!」(うわっ、うるさいなぁ…)


 パチン。店員が指を鳴らす。目の前に一台の筐体が現れた。

「こちらはAタイプですが、前回とは演出が異なります。」


 純増は筐体へ近寄り、リールを眺め、ランプを眺める。パネルを撫で、舐めるように観察する。

「……このリール配列って…」ボソリと呟く。

「お客様。こちらの演出は、、」

 話しの途中で純増は指を倒しながら言う。

「音・消灯・光・“遅れ”、だろ?」


 店員は静かに目を閉じた。

「……さすがです。」少し間を置いて呟く。

「お客様に説明は不要でしたね。」

(この“スロット変態異常者”……私に仕事させろ。)


 純増はニヤニヤドヤドヤしながら席へ座る。

「もう打っていい?」「はい。」

「今すぐ打っていい!?」「どうぞ。」

「本当に打っていい!!」

「早く打てよ!このスロット変態野郎!」


「うひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!最高の褒め言葉頂きました!そして新台の一打目は、なぜか特別な背徳かぁぁぁんっ!」


 レバーオン。カコン。

「はぁぁぁ……回った。」純増は幸せそうに息を吐いた。ポチ。ポチ。ポチ。

「これこれ……。」もう一度レバーオン。

「うんうん。」さらにレバーオン。

「そうそう。」またレバーオン。

「はぁぁぁぁ……幸せぇぇぇ……♡やっと打てたぁ〜」


 その姿を見た店員は苦笑する。

「お客様。レベルアップに伴い、お客様の持ちライフは1500となりました。」

「ふ〜ん。」純増は目も離さず答える。

「三万分くらい打てるってことね。」

「はい。その認識で問題ありません。」

「よし。サクッと引いちゃいますか!」

 カコン。ポチ。ポチ。ポチ。

 今日も純増は幸せそうにリールを回し続ける。


◇◇◇


 一方その頃➖➖


「ヒャッハァァァ!!」山賊達が次々とジュリナに襲い掛かる。ジュリナは軽く身体を捻るだけで全てを躱した。


「遅いですね♡」ドゴッ!!

「ぐはぁっ!!」拳がこめかみにめり込む。

 続けて鼻に膝蹴り。ゴンッ!!「ぎゃぁぁぁ!!」


「あらまあ。」ジュリナは微笑む。

「お鼻が壊れた蛇口みたいですね。」

 ドロドロ、ドロドロと血が滴る。

「うふふ。ドバドバですっ☆」


 山賊達は思わず一歩引いた。

「な、なんだこいつ……。」「笑ってやがる……。」「……もしかしてヤバいやつ…」「だから…俺はマグロはやめようって言ったじゃん!」

 

 しかしジュリナ本人は真剣だった。

(う〜ん……。)バキッ。「ぎゃぁぁ!!」

(どれくらいのペースで殴ればいいのでしょうか……?)ドゴッ。(早く終わらせると……。)ゴンッ。「も、もう、や、やめっ……。」


(純増様がまたおかしくなってしまいますし……。)

 ジュリナは困ったように首を傾げる。

(でも、ゆっくり殴ると……。)山賊の髪を掴む。


「ひぃっ!」耳の後ろへ。ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ。

「ぎゃああああぁぁぁ!!何でそこばっか殴んだよっ!痛い、痛い、目がグルグルして怖いよぉぉぉ」


「うわぁぁぁ!もうやめてやってくれよぉぉ!そいつ白目剥いちゃってんじゃん!」

(山賊さんがこんな風に痛い痛いしちゃいますし……。)「う〜ん……私はどうすれば…??」


 ジュリナは本気で悩みながら、山賊の耳の後ろを執拗に殴り続けていた。



            続

読んで頂きありがとうございます。気が向いたらでいいのでブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日0時30分更新予定です。

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