第34話 【赤ヒャッハッーは2チェを願う】
再び馬車は街道を走り出した。
草原を吹き抜ける風は心地よく、牛柄の馬も機嫌良さそうに鼻歌でも歌うように歩いている。
「………」純増は遠くの青空を見つめていた。
(今度こそ……。今度こそ俺がレバーオンする。)
その決意は固かった。
ガサガサッ!!また茂みが大きく揺れる。
「ヒャッハッハァァァ!!」またしても山賊の登場。
「来たっ!今度こそだ!」
純増は勢いよく立ち上がり、剣へ近付く。
しかし、それより早く、ジュリナがニッコリ微笑む。
「純増様。」「ぐっ!早い!」
「私にお任せください♡」
ドンッ!!「えぇぇぇぇぇぇ!?」
純増の叫びを置き去りに、ジュリナは黒炎を纏って飛び出した。
バキッ!!ゴンッ!!ドカッ!!
「ぎゃぁぁぁ!!」「ひぃぃぃ!!覚えてろぉぉぉ!」山賊達は悲鳴を上げる。
ジュリナは笑顔のまま拳を振るい、蹴りを放ち、最後の一人を軽々と地面へ転がした。
「終わりました♡」
「おいぃぃぃ!終わっちゃったよぉぉぉ!!」
純増は頭を抱える。
「ジュリナ…。俺……今日一回もスロット打ってないんだけど……。」
ジュリナは不思議そうに首を傾げた。
「はい?」「ずるいよ……。」純増は立ち上がる。
「自分ばっかり脳汁出してさ!俺もブッシャァァァしたいよぉぉぉ!!」草原へ悲痛な叫びが響き渡った。
ジュリナはハッとして、ゆっくりと純増へ歩み寄る。
「純増様……。申し訳ございません。ジュリナ、純増様のことばかり考えていたつもりでした。」そっと純増を抱き寄せる。
「でも、そのせいで純増様から楽しみを奪ってしまいました……。」純増の頭が、ふわりと柔らかな胸へ包まれる。
「私がレベルアップできたのは純増様のおかげです。」優しく頭を撫でる。
「その力を主人のために使うのは、ジュリナの使命です。」耳元で囁く。
「ですから……どうか、ごゆっくりお休みください♡」
「……。」純増は目を閉じた。
さっきまで荒れていた心が、不思議なくらい落ち着いていく。
「……うん。ありがとうね。」小さく笑う。
「はい♡」ジュリナはぎゅーっとする。
「でも…危なくなる前に剣使おうね…。危ないから…」純増は顔を上げた。
「はい!分かりました!」ジュリナは元気よく頷いた。
◇◇◇
再び馬車は進み始める。
二人はのんびりと景色を眺めていた。
「純増様。今度山賊が出たら、純増様が戦ってくださるのですか?」
「あぁ、もちろん!」純増は胸を張る。
「今度こそ俺のターンだ。」「はいっ♡分かりました」
その時だった➖➖
道の脇に、一枚の大きな木の看板が立っている。
純増は何気なく目を向けた。そこには乱暴な字で書かれていた。
【この先、何が起きても知らねぇからな 山賊ボス】
「「…………。」」二人はしばらく黙り込む。
純増がゆっくりジュリナを見る。
「……ジュリナ?」「はい。」
「たぶん……道、間違えたな。」
「はい。そのようですね。」二人は同時にため息をついた。
その瞬間➖➖
ガサッ。ガサガサッ。ガサガサガサッ。
左右の森から次々と人影が現れる。
一人。二人。五人。十人。まだ増える。
ガサッ。ガサガサッ。ガサガサガサッ。
合計二十人近くがあっという間に二人をぐるりと取り囲んだ。
「ひっひっひっ! ダメだよぉ! こんな所まで入ってきちゃ!」
ガリガリに痩せた男が、舌なめずりしながら笑う。
「おっ! 可愛い嬢ちゃんじゃねぇか!」
「俺が先だ!」「順番守れよ! あははは!」
「その兄ちゃんは荷物だけ置いて消えな!」
下品な笑い声が森へ響く。
ジュリナはぎゅっと拳を握り、純増を見つめた。
「純増様……。」純増は静かに山賊達を見つめている。その表情から笑みは消えていた。
ジュリナはその顔見て胸が高鳴る。
(うわっ、かっこいい♡純増様……。何と凛々しいお顔…私が言われてるのを見て……怒ってくださっている。そんなに私を大切に……。)頬がほんのり赤く染まる。
純増は低い声で呟いた。
「……ジュリナを見て、そんなこと考えてんのか……こいつら…許せんなぁ!」
ジュリナの心臓が跳ねた。
(きゃっ……。純増様……今度はそんな男らしい顔……す、好き……♡)思わず身体がふらりと揺れる。
しかしその頃、純増の頭の中は。
(よし。この人数なら確実にレバーオンできる。脳汁ブッシャァァァ確定からの鉄板だろ!!しかも赤ヒャッハッーもいるぞ!2チェ来なきゃ台パンだからなっ!)
ニヤリ。口元が緩む。
ジュリナはその笑みに胸を押さえた。
(うっはぁぁぁぁぁ……♡笑った……私を守るために覚悟を決めて笑ったんだ……やっぱり純増様……かっこいい……♡)完全に勘違いしていた。
一方、山賊達は純増の笑みを別の意味で受け取る。
「おいおい!こいつら囲まれて笑ってるぞ!」
「頭おかしいんじゃねぇか?」
「ひっひっひっ! すぐ泣くことになるさ!」
「ジュリナ。」「は、はいっ♡」
「今度こそ、俺のターンだっ!」一歩前へ出る。
その一言に、ジュリナの瞳はさらに潤んだ。
(純増様……私を守るために…。なんて素敵なんでしょう……♡)
その隣で純増は一人、静かに拳を握る。
(待ってろよ…久しぶりのレバーオンだ。今日はいっぱい脳汁出すぞぉぉぉ!!)
熱く燃えている理由だけが、誰とも噛み合っていなかった。
純増はゆっくりジュリナに近付いた。
ジュリナも黒炎を静かに纏い、剣に手をかける。
「純増様。今度は力をお借りしても宜しいですか?」ジュリナは優しく微笑んだ。
純増はニヤリと笑う。
「あぁ。もちろんだっ!こいつら倒すぞ!」
(あひゃー!もちのろん!リーチ目ちゅどん!)
その言葉と同時にジュリナが剣を抜き放つ。
それを合図に山賊達が一斉に襲いかかってきた。
続
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