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第31話 【無欲のレバーオンに勝るものなし】


「こらぁぁぁ!純増!逃げるなっ!!」

 部屋中が震えるほどの怒号。

「うわっ!?落ち着けって!!」

 鬼のような形相で純増を追いかける巫女音。


「指輪探しに行けぇぇぇぇぇ!!」

 ゴンッ!!「いっっったぁぁぁ!!」

 拳骨が純増の額にめり込む。

「痛い痛い痛い!誰かぁぁ!大人の人呼んでぇぇぇ!!」

「この野郎!何助け求めてんだ!!」さらにゴツン。

「ぎゃぁぁぁ!!」


 そこへジュリナが割って入った。

「ちょっと! いくら女神様でも純増様への暴力は許せませんっ!」

「はぁ!? あんたがそうやって甘やかすからこうなったんでしょうが!」


 二人は胸を押し付けて掴み合う。

「ちょっ、落ち着けって!」

 止めに入った純増は、、むぎゅっ。


「……ぷっはぁっ!」

 左右から大きな胸に押し潰される。

「おいっ!スロットレバーオン死除いたら一番幸せな死に方するところだったぞ!」


 ジュリナはにこり。

「純増様。亡くなられた時はジュリナにお任せください♡」「……はい♡安らかに逝きたいです」

 巫女音は額を押さえた。

「お前ら……イチャイチャすんな…異世界飛ばすぞ……。」


◇◇◇


 数分後。三人はカフェラテを飲みながら落ち着いていた。

「それで?あなた達はいつ出発するのですか?」

 巫女音が純増を見る。


「「…………」」二人は顔を見合わせる。

「ん~……特に決めてないけど……ここにいちゃダメなの?」


「いやっ!ダメだろっ!!」バーンと机を叩く巫女音。

「このタイトル知ってる!? スローライフとか入ってないから!今日行け!今すぐ行け!違う町行って揉め事起こしてバトルしろ!世界をめちゃくちゃにしてやれよ!」


「……女神の言葉かそれ?」

 純増が苦笑すると、ジュリナも小さく頷く。

「純増様。確かに巫女音様のおっしゃることも一理あります。私も引きの指輪が気になりますし……。」


「ほら!聞いたか?スロット中毒異常者!彼女もデート行きたいって!休みの日スロットとご飯だけじゃ嫌だってよ!」

「えぇ~……」純増はしばらく悩み、、

「……分かった。んじゃ、行くか。」立ち上がる。

「あっ。でも、その前に“ここに忘れ物”あるんだ…」


「「忘れ物??」」


◇◇◇


 町のカジノ➖➖

「あははっ!こいつの大当たり見てないから!」

 純増は嬉しそうに席へ座る。

「今なら金もある!今日はブン回せるぜぇぇぇ!」

 ジュリナは横でちょこんと立って見守る。


 巫女音は呆れ顔。

「あのさ、そんなに大当たり見たいなら私が当ててあげる。女神パワーで一発だか、、」

「うわぁぁぁ!」純増は全力で拒否した。

「マジで引くんだけど!ゴト師じゃん!?無理やり当てるとか全然こいつのこと考えてないじゃん!女神のふりした犯罪者だよっ!」

「はぁ、……なんか、お前スロットになるとムカつくな。」


◇◇◇


 十時間後➖➖

「……引けねぇ。マジで引けねぇ…」

 純増は泥のように椅子へ沈んでいた。

 髪はボサボサ。顔は脂ぎり、目はギンギンで涙目。唇はカラカラに乾き、指だけは機械のようにレバーを叩き続けていた。

「うっ……うぐっ……。」


 それを見てジュリナも涙ぐむ。

「もうおやめください……。そんな純増様、見ていられません!」


 純増は首を横に振った。

「ジュリナ……男には逃げたらいけない時がある。そこで逃げたら……もう男……いや、人として生きていけないんだ……。」


「うわぁぁん!純増様ぁぁぁ!」ジュリナは泣きながら拳を握る。

「はいっ!ジュリナは見届けます!必ず!最後まで!」

 横では巫女音が深いため息。

「あの〜……私、もう帰りたいんですけど。」


◇◇◇


 さらに回す。回す。回す。

 そしてついに➖➖➖

「……あ。」純増の身体が前へ倒れた。

「純増様っ!」ジュリナが咄嗟に抱き止める。

 その拍子にジュリナの大きな胸がレバーへ触れた。


 ぶにゃん、カコン。次の瞬間➖➖

 グゥゥゥゥゥン……。筐体の照明が落ちた。

 台から鐘の音が響く。

 ゴォォォォン……ゴォォォォン……


 誰も動かない。そして、、

 JACK POTの声と共に筐体上部。

 ど真ん中の真紅のランプが点灯した。

 ドバァァァァァッ!!メダルが滝のように下の払い出し口から噴き出す。


「「「うおおおおおお!!!」」」

 店中に歓声が湧く。

 ジュリナ越しにその光景を見た純増は、力なく笑う。

「あは……あはは……お前……そんな風に当たるのかよ……。綺麗だな……すっごい……綺麗だな……。」


 そのまま意識を失った。

「純増様ぁぁぁぁぁ!!」ジュリナが抱き寄せる。


 巫女音だけが呆然と呟く。

「……私は何見せられてんだ? これ。」


◇◇◇


 換金所。


「金貨百枚になります。初めて見たよ……あの台が当たるところを。おめでとう。」

「あはは……ありがとうございます。」


 そこへ以前メダルをくれた老人が歩いてきた。

「よくやった!」目を潤ませながら笑う。

「こいつが当たるところを死ぬ前に見られて良かったわい!」

「あはは。それはそれは。」

 カジノ中が拍手と歓声に包まれた。


◇◇◇


 一方その頃➖➖

 剣の中のVRホール。店員は液晶を見つめ、小さく微笑んだ。

(ふふふ……ついにあなたの作った台が当たったみたいですよ……。)昔の記憶が蘇る。


◇◇◇


『なぁ、店員。俺はこのスロットって機械が好きでよ。まぁ、意味はわからねぇんだけどよ!だから表の世界でも作ったんだよ。まぁ、簡単に当たらねぇように作ったんだけどよ!あはは!もし、あれが当てられるなら……この世界を変えられるかもな。』

『ふふふ。また面白いことを。いつかそんな時が来るといいですね。』


◇◇◇

 

 店員は現在へ戻る。筐体の前へ立つ。

 軽くレバーオン。グゥゥゥゥゥン……フリーズ。

「ふふ、簡単ですね……。」

 店員は静かに踵を返しコツコツと足音を立てて歩き出す。

「さて、お客様のレベルも上がりましたし……。」

 薄暗い通路の奥へ歩き出す。

「私は新台の準備でもしますか……」



            続

読んで頂きありがとうございます。気が向いたらでいいのでブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日0時30分更新予定です。

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