第27話 【レバーオンもあっち向いてホイも力技】
真っ赤な炎を纏ったホールソードを肩へ担ぎ、ジュリナは最後の一体へゆっくり歩み寄った。
キノコ魔獣は後ずさる。一歩。また一歩。
逃げ道を探すように左右を見渡している。
ジュリナが距離を詰めた、その時だった。
『ジュリナー!』
キノコ魔獣の目の前でホールソードが止まり、純増の声が響く。
「はい?どうしましたか?」
『キノコ、まだ倒すの待てる?この台、まだ終わらない気がする!最後まで取り切りたいんだ!』
ジュリナはふっと笑った。
「ふふ、もちろんです。」優しく頷く。
「純増様のお気の済むまで。」
『ありがとう!わがまま言ってごめんね!』
「ふふっ。楽しそうですね。」頬を緩める。
ジュリナはキノコ魔獣へ視線を戻した。
震えながら後ずさる魔獣。
「キノコさん。予定変更みたいです」にこりと笑う。
「良かったですね…純増様の優しさでもう少しだけ、生きられるみたいですよ。うふふ」と小さく笑った。
キノコ魔獣は嬉しいのか怖いのか分からない声を漏らした。
◇◇◇
ホールの純増はご機嫌だった。
「はい〜っ!BIG!またBIG!うひゃああああ!」
純増は笑いながらレバーを叩き続ける。
ボーナス。ボーナス。またボーナス。
「あぁぁぁぁぁぁ!」テンパイ音だけで身体が震える。
「もうテンパイするだけでなぜかチンピクするぅぅぅぅ!!」
頭を抱え「狂いそうだぁぁぁ!!落ち着け!落ち着け俺。このままでは狂ってしまう…」
純増は勢いよく呼び出しボタンを押した。
「どうなさいましたか?」店員が現れる。
「すいません。」純増は満面の笑み。
「カフェラテ一つと、あとアメスピお願いします。」
「……かしこまりました。」
数分後。「お待たせしました。」
カフェラテ。アメリカンスピリットが純増に手渡される。
純増は早速一本取り出し火を付ける。
ゆっくり煙を吸い込む。肺いっぱいまで満たし、静かに白目を剥いて吐く。そしてカフェラテを一口。
「…………。」目を閉じる。
「うんまぁぁぁぁぁぁ!!!!」天を仰いだ。
「これを!この瞬間を!!幸せと呼ばずして何と呼ぶ!!!ぬはははははは!!」
店員は呆れた顔で小さく呟く。
「こいつ……戦闘中なの忘れてんの?ヤニとカフェインでキマッてる場合か?」
◇◇◇
森。ジュリナは退屈そうに座っていた。
「ん〜。」目の前ではキノコ魔獣が震えている。
「キノコさん…暇ですね〜」少し考える。
「あ。」ぽん、と手を叩いた。
「キノコさん。ゲームでもしましょうか?」
目の前でしゃがみ込む。キノコ魔獣が首を傾げる。
「じゃんけん。そのあと、あっち向いてホイです。分かります?」
キノコはコクコク頷いた。
「よかった!私に勝てたら逃がしてあげます。」
キノコはさらに激しくコクコク頷く。
「では。」ジュリナは微笑む。
「最初はグー…じゃんけん…ぽん!あいこでぽん!」
数回続く。キノコが勝つ。また勝つ。また勝つ。
ジュリナの笑顔が少しずつ固まる。
「…………。」ピキッ。ピキキッ。
ジュリナの中で何かが切れた。
「へぇ。」笑顔のまま言う。「そうきますか。」
ゆっくり立ち上がる。
「なら。」剣を地面へ突き立てる。
「もう手加減しませんよ…。私も本気でいきますね!」
「じゃんけん!ぽん!」ジュリナ勝利。
「あっち向いてホイッ!!」パァァン!!乾いた音が森へ響く。
ジュリナの平手がキノコの頬を叩き、無理やり指定方向へ顔を向けさせた。
「はい。私の勝ちですね。」にっこり。
キノコ魔獣はブルブル震え涙目。
「はい。次ですよ。じゃんけん。」パァン!
「次、じゃんけん。」パァン!
「次、じゃーー」パァァァン!!
勝敗などもう関係ない。ひたすら平手。
キノコ魔獣は震えながら地面へ顔を隠し座り込んだ。
「?」ジュリナが首を傾げる。
「あら?もうゲームしないのですか?私に負けたら待っているのは死ですよ?」ゆっくり笑う。
一歩。また一歩。ゆっくりと覗き込むようにキノコ魔獣を見る。
「ほら〜…」口角がゆっくり上がる。
「続けましょう?」キノコ魔獣はガタガタ震えた。
その後もゲームは続いた。
◇◇◇
『ジュリナー!』ゲームの途中、純増の声。
『そろそろ終わりにするけどー!そっちどう?』
「はいっ!こっちも大丈夫ですよ!純増様のおかげでいつでも終わらせられます」さっきまでの笑顔に戻る。
『オッケー!じゃあ、終わりにして換金してくるね〜」
「あ。」ジュリナが思い出したように言う。
「純増様。」『ん?どうした?」
「帰りに、あのお菓子お願いします♡」
『あはは! りょ〜かい!』
二人が話してるその隙を突いて、キノコ魔獣は、“今しかない!”と言わんばかりに静かに逃げ出そうとした。
しかし、目の前にジュリナが立っていた。
「……どちらへ?」静かに微笑む。キノコ魔獣が固まる。
「何を逃げようとしてるんですか?」
ジュリナは指を折る。「私、十勝。キノコさん、八勝。つまり…」炎を纏った剣を高く掲げる。
「キノコさんの負けですね。」満面の笑み。
「敗北者は……」剣を勢いよく振り下ろす。
「真っ二つの刑に処します♪」
ズバァァァァァン!!
「ピンギィィヂィィィィィッ!!」
断末魔とともにキノコ魔獣は真っ二つになり、ビクビクと痙攣して、とても香ばしい、いい匂いがした。
ジュリナは剣を一振りして炎を払う。
「汚い声でしたね…」にこりと笑う。
「次は、じゃんけんがもっと強くなってから生まれてきてくださいね☆生きるチャンスがありますから!」
静かな森に、ぱちぱちと斬り口の炎の消える音だけが残った。
続
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