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第26話 【台の設定?違う違う、俺の設定】


 コンッ!レバーを叩く。リプレイ。ベル。ハズレ。

 またレバー。また回る。また飲まれる。

 純増は黙ったままライフを流し込み続けていた。

「くそっ……。」

 液晶ではジュリナが必死に剣を振るっている。


 ガギィンッ!

 キノコ魔獣の体当たりを受け、数歩後ろへ押し返された。

『っ……!』「ジュリナ……!」画面越しに拳を握る。

 ボーナスが引けない。引けなければバフも乗らない。


 残りライフは➖➖200➖➖

 190、180、170、、静かに削られていく。

(頼むって…)レバーを叩く。

(一回でいい。きっかけをくれよ…そしたら俺が持ってくから…)また叩く。

(頼む…また…笑ってくれ。)


 そして➖➖リールを止めた。

「…………。」純増の指がゆっくりと離れる。

「ぷっはぁぁぁぁ!!」大きく息を吐く。

「呼吸……忘れてたぁぁぁ……。」額の汗を拭いながら笑う。

「でも……やっと来たな!」


 リーチ目。ゆっくりとボーナスを揃える。

「このリーチ目であの滑りなら、ほぼBIGだろ……。」

 青Vを狙う。➖➖ヌルン。

「……え?」揃わない。「えっ?」もう一度。ヌルン。

「いやいやいや……。」純増の顔が引きつる。

「BIG確定目じゃないのは分かるけどさ……。」

 恐る恐る、ため息混じりにREGを狙う。

 ピタッ。REG。

「…………なんでここでバケぇぇぇぇぇぇ!!」

 ホールへ純増の叫びが響いた。


 レギュラーボーナスを消化する。

(ん〜……なんかおかしい。)純増は腕を組む。

(何だ?何かが噛み合ってない。波の読みを間違えたか?それとも……爆発前のズレ…?)


 通常へ戻り、数ゲーム回す。またリーチ目。

「えっ?早っ!」REG。「また?」

 さらに数十ゲーム。またリーチ目。

「……」REG。「うん…そんな気がした…」


 純増は静かにボーナス履歴を見つめる。

 REG。REG。REG。ついにBIGを追い越した。

 普通なら嫌な展開。


 だが➖➖純増の口角が少しだけ上がる。

「そろそろ……来るか?」


 その瞬間。店内へ放送が流れる。

『ピンポンパンポーン♪特殊条件達成です♪』

 ホログラム店員が現れる。

「お客様。五十ゲーム以内のレギュラーボーナス三連、おめでとうございます。特殊効果を付与します。」

 純増が目を丸くする。

「へっ?マジ?まさかの救済処置!」

「今回は、、炎属性付与です。」店員が微笑んだ。


◇◇◇


 森。ジュリナのホールソードが赤く染まる。

 ゴォォォォ……。虹色の刀身が真っ赤に変わり、炎が噴き上がった。


『純増様!大変ですぅぅぅ!剣が真っ赤になっちゃいましたぁぁぁ!!』ジュリナが驚いた声を上げる。

『しかも、ちょっと熱いですっ!』


 純増は思わず笑った。

「あははっ!なんか付いたみたい!ジュリナ…こっちも今から熱くなりそうだ!」


◇◇◇


 数ゲーム後。再びリーチ目。純増は静かに呟く。

「……これがBIGなら…始まるか…?」

 ゆっくり青Vを狙う。ピタッ。綺麗に揃う。

 BIG BONUS「…………」ニヤリ。


「ジュリナ!たぶんいける。」拳を握る。

「この台、いけるぞ!!」


 液晶のジュリナの表情がぱっと明るくなる。

『はいっ!私は最初から信じていました!純増様なら、きっと出来るって!』炎を纏った剣を構える。


◇◇◇


「では、行きます。」スッと、一歩踏み込む。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」炎の斬撃がキノコ魔獣の頭から一直線に走る。


 ズバァァァァン!!

 一体。二体。キノコ魔獣がまとめて両断された。

「ピギィィィィィッ!!」

 斬り口が燃え上がり、痙攣しながら静かにになる。


 残るは一体。だが➖➖

 その最後の一体が仲間へ飛び付く。

「あっ、こらっ!またですかっ!」


 ムシャッ。ボリボリ。クチャクチャ。

 ズズズズズ……身体がさらに巨大化する。


「こらぁぁぁ!!キノコさん!お友達食べたらダメですよぉぉぉ!もう食うなぁぁぁぁ!!」ジュリナが思わず叫ぶ。

 巨大キノコは「ギクッ」と肩を震わせ、食べかけの仲間を慌てて離した。


『あははっ!お友達食べちゃダメって…。怒り方も可愛いなぁ…』純増の笑い声が剣から聞こえた。


◇◇◇


 そして、純増は➖➖

 BIG。BIG。BIG。REG。BIG。BIG。BIG。

 ボーナスの連打が止まらない。

「……、……あは、あははっ!!このボーナスの音…鼓膜から脳天まで伝わる…はぁ、、脳汁止まんねぇぇぇ!あはははっ!楽しいぃぃぃ」純増の笑いが止まらない。


 七連。八連。九連。十連。突然、台にキスをする。

「あははははははっ!!完全に壊れたぁぁぁ!!」

 目はギラギラ。瞳孔は開きっぱなし。口元からは、つーっと涎が垂れる。

「ここまで来りゃ設定なんて関係ねぇ!!俺がぁぁぁ!!この俺が設定8だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」拳を天に突き上げる。


 店員はその姿を見て小さく呟いた。

「いやいや……壊れたのは…台じゃなくて、あんただろ…」


◇◇◇


 森。ジュリナは燃え盛る剣を見つめていた。

『純増様……。』少し頬を赤らめる。

『私……強化されすぎて……鼻血が出そうです。』

 真っ赤な炎。漆黒の魔力。二つが混ざり合い、禍々しいほどのオーラが身体を包む。


 最後のキノコ魔獣が一歩後ずさる。

 本能が理解していた。➖➖勝てない。


 ジュリナは優しく微笑んだ。

「怖がる知能はあるのですね。でも…安心してください♪」炎の剣を静かに構える。


 その笑顔は美しかった。だからこそ、恐ろしかった。


「今なら……一瞬で灰になれますから。」

 炎が、夜の森を真っ赤に染め上げた。



            続

読んで頂きありがとうございます。気が向いたらでいいのでブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日0時30分更新予定です。

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