↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/68

第25話 【設定だけじゃ見れない景色】


 ボーナスを消化し終わる。純増はすぐに液晶へ向かって声を掛けた。

「ジュリナ!」『はいっ!』

「倒せそうなら、そのまま全部倒しちゃっていいぞ!」

 ジュリナは嬉しそうに頷く。

『はい。分かりました、純増様!』


 ホールソードを握り直し、一気に踏み込む➖➖

 その時だった。倒れたキノコ魔獣へ、残る三体が一斉に群がる。


「……え?」ボリッ。バリッ。ズズズッ➖➖➖

 三体は仲間だったはずのキノコを、ためらいなく食べ始めた。その身体が、みるみる膨れ上がる。

 傘は一回り大きくなり、腕は太く、足は岩のように逞しく変化していく。


『なっ……!』ジュリナが斬り掛かる。

 ボヨヨヨン!!またしても刃が弾かれた。


『純増様……。』少し困ったような声が響く。

『キノコさん……キノコさんを食べて、もっと大きくなっちゃいました……。』

「えぇっ!?」液晶を覗き込む。

「うわっ……。」確かにさっきより一回り大きい。

「キノコ食ってデカくなるってマ○オかよっ!」

思わずツッコミが漏れる。だが笑っている場合じゃない。


「ジュリナ!」『はい!』

「また引く! それまで持ち堪えて!」『はいっ!』

 ジュリナは剣を構え直し、大きく頷いた。


◇◇◇


 純増は再びレバーを叩く。

 ベル。リプレイ。レア役。ボーナス。

 だが回すだけ、どんどんと飲まれていく。

 決定打になるボーナスが続かない。

「くそっ……毎回これじゃん。連チャンしない限り決定的にならねぇぞ…」


 その時だった。ホール内へ軽快な音楽が流れる。

『ピンポンパンポーン♪店員チャーーンス!!』


「きたきた!待ってましたっ!」純増が立ち上がる。

 ホログラム店員が現れる。

「お客様。今回の店員チャンスはこちらになります。」指を鳴らす。二つの選択肢が空中へ表示された。


【一台だけ設定を見る】

【全六台・三千回転後のデータを見る】


「……。」純増は腕を組む。

「一台だけ設定を見る……。」そしてもう一つを見る。「三千回転後……。」休憩ボタンを押す。時間が止まる。


◇◇◇


(設定が一台分かれば……その台が高設定なら打つ。低設定なら捨てる。単純だ。しかし、それで残り五台を試す時間は無い。残りライフ、500…。いや、店員チャンス中にも戦闘は続いている。だったら……。)純増は静かに顔を上げた。


「三千回転後をお願いします。」

「かしこまりました。」


 次の瞬間。六台すべてのデータが空中へ並んだ。

 グラフ。合算。ボーナス履歴。

「……。」一台ずつ見ていく。


「これは……。」右肩下がり。

「これも。」モミモミして伸びてない。

「これは……。」大ハマり連発。


 そして、、「いた。」

 合算110分の1。綺麗な右肩上がり。

「うん。これだな。」自然と足が向く。


 しかし。途中で止まった。

(……待て。)もう一度グラフを見る。

(これは、俺が回した三千回転じゃない。誰かが回したであろう三千回転だ。)


 静かに目を閉じる。

(もし、このグラフが今日一番の頂点だったら……ここから下がるだけかもしれない。)


 ふっと笑う。視線を、自分がさっきまで座っていた台へ向ける。


 合算200分の1。誰が見ても弱い。ホールにあっても誰も座ろうとしない。設定も期待できない。


 純増は筐体へそっと手を置いた。

「……でもさ。」優しく撫でる。

「最初に俺へ笑ってくれたのは、お前だったよな。」

 胸の奥が少しだけ熱くなる。


◇◇◇


「お客様。休憩終了のお時間です。」店員が静かに告げる。

「はい。」純増は微笑んで頷いた。そして、迷わず元の席へ座る。


「こちらでよろしいのですか?」

「はい。たぶん、みんなと見たい景色が違うので。」


 店員が少し首を傾げた。

「見たい景色……ですか?」


 純増はレバーへ手を置く。

「ふふ、設定の先です。」少し笑う。

「この台と俺にしか見えない景色が、きっとある。」

 カチッ。休憩ボタンを解除する。時間が動き始めた。


◇◇◇


 液晶へ向かって声を掛ける。


「ジュリナ。」『はいっ!』

「……ごめん。俺、たぶん馬鹿なことしたかもしれない。あはは、もし失敗したら一緒に逃げよう。」


 ジュリナは一瞬だけ目を丸くした。

 そして、花が咲くように微笑んだ。

『はいっ!“一緒に”って言ってもらえて、とっても幸せです♡』剣を構える。

『だから大丈夫です。私は純増様を信じています。』


 その言葉と同時に。「えいっ!!」

 ドゴォォン!!キノコ魔獣を思い切り蹴り飛ばした。


「ギィィィィッ!?」魔獣が地面を転がる。

『斬れなければ…蹴ります!』

「あははっ!ジュリナ。俺、その戦い方好きだわ!」

 

 笑いながらレバーを叩く。

「よし!今度は、俺の番だ。」

 カコンッ!リールが勢いよく回り始めた。



            続


読んで頂きありがとうございます。気が向いたらでいいのでブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします。毎日0時30分更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。