第24話 【予告、消灯、無音、飯うま!】
純増はゆっくりと淡々とレバー叩いた。
「……よし。」カコンッ。
リールが軽快な音を立てて回り始める。
五十ライフ。使い切ると席を立ち、隣へ移動する。
(ふぅ……。)また五十ライフ。何も起きない。
さらに隣に移動する。
(これで一回でもボーナス引けりゃ儲けもんなんだけどな……。)リールを止めながら考える。
(そもそも、この機種って子役に設定差あんのか?)
ハズレ。ベル。リプレイ。たまにレア役。
(まぁ……。千円で設定分かったら誰も苦労しねぇか。)苦笑いする。
また移動。また五十ライフ。
(引け……。)レバーを叩く。移動する。
(引け……。)さらに移動し叩く。
(頼む……引いちまえ!!)
◇◇◇
六台➖➖すべてのカニ歩きが終わった。
純増は深く息を吐き、休憩ボタンを押す。
「ふぅ……。」六台を順番に見渡す。ボーナスは無し。
しかし➖➖➖
「一番回ったのは……右から二番目か。」
小役の落ち。回転数。どれも僅かな差。
それでも今は、その僅かな違和感を信じるしかない。
「残り七百ライフ……。」椅子へ腰を下ろす。
「引くしかない。」レバーを叩いた。
◇◇◇
ベル。リプレイ。レア役。小役の落ちは悪くない。
(悪くない。)液晶へ目を向ける。ジュリナが剣を振るっている。
だが➖➖ぶよよんっ!!剣が弾かれた。
『っ……!』キノコの頭がぶよりと揺れるだけ。傷が浅い。
「くそっ……。火力が全然足りてない。」純増の表情が曇る。
画面のジュリナが距離を取りながら呼吸を整える。
四体。囲まれ、体当たりを躱す。まだ一体も倒せない。
「くそっ!ボーナスだ……子役引いてても勝てやしない!」レバーへ力が入る。「ボーナスだ!ボーナス引かなきゃ。」
ガッ!レバーオンが少し強くなる。
純増に焦りが生まれる。そして➖➖
無演出。何気なく押した第ニ停止。
「あっ……。」レア役の取りこぼし。
「くっ……。」歯を食いしばる。
(命が掛かると……スロットって、こんなに重いのかよ。)額へ汗が流れる。
今まで何百万回も叩いてきたレバー。
暇潰し。 遊び。 趣味。その全部が、今日は違う。
(今まで、どれだけ気楽にレバー叩いてきたんだ……俺。)
「くそっ……!」その瞬間だった。
➖➖コンッ、ヴォン、、予告音。
第一停止と同時に。フッと第一消灯。
「…………。」純増の動きが止まる。
第二停止。フッとさらに消灯。
「…………。」第三停止を押す指が震える。
「あ、あ、……あっつぅぅぅぅぅぅい!!熱々すぎて第三停止押せねぇぞ!!」心臓が暴れる。
「これで、スイカ否定なら……。」喉が鳴る。
「ボーナス……」スパンッ!!第三停止が止まる前に純増は目を閉じた。
ドクン…(頼む……)指先だけがボタンへ残る。
ドクン……(これを離して……)耳を澄ます。
(何も引かず、何も鳴らなければ……。)
一秒。二秒。
(もしスイカの払い出し音が鳴れば……絶望。)
脳の奥から、じゅわじゅわと脳汁が溢れてくる。
その脳汁は目から耳から鼻、口、毛穴…全てから垂れ流れてくる。熱すぎて、頭の中で脳みそが溶けていくようだった。
ボタンから指をそっ、と離す。
➖➖シン。無音。ゆっくり目を開ける。リールは何も揃ってない。
「…………はは…引いた。引いたぞ…」
口角が自然と上がる。耳まで裂けそうなくらい。
「……ジュリナ。」静かに笑った。「構えろ。」
液晶へ向かって親指を立てる。
「ボーナス引くぞ☆」
◇◇◇
森。ジュリナの瞳が輝く。
『はいっ!』剣を握り直す。『純増様!待ってました!』キノコを睨む。
『もう、このキノコさん……ぶよぶよして気持ち悪くて、気持ち悪くてぇぇぇ……!』少し涙目で訴える。
「あははっ!じゃあまずは一匹、気持ち良く真っ二つにしてやろう!」純増は笑った。
一枚掛け。レバーオン。回るリール。
タイミングを測ると視線すら向けず、手だけが動く。
ポチッ。ポチッ。ポチッ。V図柄が一直線に揃った。
ビックボーナス。鳴り響くボーナススタート音。
「はぁぁぁ!飯うまぁぁぁ!この音でご飯三杯はおかわりしちゃうね〜!」
同時に、ジュリナの体に力が湧き、ホールソードが七色の光を放つ。
「はぁぁぁぁぁっ!!」一閃。
ズバァァァァァァンッ!!
キノコ魔獣を頭頂部から股下まで、真っ直ぐ両断した。真っ二つになった魔獣は「ギィー!ギィィィィ!!」と断末魔を上げ、バタバタと暴れる。残る敵は、あと三体だった。
続
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