第17話 【たべっこ動物は当たり味】
純増のボーナスの連打は、まだ終わらない。
「よぉぉぉしっ!!ハジマッタ!!」
カコンッ。レバーオン。予告音。
ビタッ。ズドンッ!リーチ目。ボーナス。
「うわははははっ!!」純増は笑いながら次々とボーナスを揃えていく。
「止まんねぇぞぉぉぉ!!」
カコンッ。レバーオン。予告音…ヴォン…。
「……直で狙ってやるか…」ボーナス。
「うひゃぁぁぁぁ!!気持てぃぃぃぃ!!」
さらにレバーを叩く。
「まるでボーナスの津波やぁぁぁぁ!!」
店内へボーナス音が何度も鳴り響く。
ホログラム店員は静かに微笑みながら見守っていた。
「……本当に楽しそうに打ちますね…」
◇◇◇
一方その頃➖➖
森ではジュリナがゴブリンを圧倒していた。
剣が閃く。ザシュッ!肩、腕、足。次々とゴブリンに傷が増えていく。ゴブリンは苦しそうに後退した。
「ギュアァァッ!!」
ジュリナは剣を構えたまま、小さく笑う。
「純増様……」赤い瞳が優しく細くなる。
「こんな私のような者に……これほど沢山の加護を与えてくださるなんて……本当に優しいお方です」
胸へ手を当てる。そして、そのままゴブリンへ視線を戻した。
笑顔はそのまま。だが瞳だけは凍っていた。
「喜んでください。下等な種族よ…」ゆっくりと歩き近付いて行く。
一歩。また一歩。
「我が主人は今……」剣先をゆっくりと向ける。
「あなたを楽に殺せるよう、必死に頑張ってくださっています。良かったですねぇ…楽に死ねて。」さらに笑顔になる。
ゴブリンは本能で悟った。勝てない。殺される。
目の前にいるのは獲物ではない。天敵だ。
「ギュアッ!!」踵を返し、一目散に逃げ出す。
「あっ!」ジュリナが慌てて追い掛ける。
「こらっ!逃げちゃダメです!!ちゃんと殺されなさいっ!」森へ可愛い声で物騒な言葉が響いた。
◇◇◇
「うははははは!!」純増は止まらない。
ビタッ。ボーナス。ビタンッ。またボーナス。
「最高ぉぉぉぉ!!」ライフは増え続ける。
液晶のジュリナもどんどん強く速くなる。
◇◇◇
ゴブリンは必死の形相だった。追いつかれそうになり、振り返り様、棍棒を全力で振り抜く。
「ギュアァァァッ!!」ドゴォン!!……のはずだった。
バキィィィン!!棍棒の方が砕け散った。
木片が宙を舞う。ゴブリンは固まる。
「……ギュ?」ジュリナは無傷だった。
「……。」ゆっくり近付く。ゴブリンは一歩下がる。
また一歩。ゴブリンの足を斬り、跪かせる。
ジュリナはその肩へ、そっと手を置いた。
「そろそろ……準備できました?」
ゴブリンが歯をガチガチ鳴らしながら震える。
首筋へそっと剣が添えられる。ジュリナは満面の笑みで囁いた。
「……死ぬ準備☆」
その瞬間だった。剣の液晶から純増の声が響く。
『ジュリナー!』ジュリナの耳がぴくりと動く。
「はい。純増様」『そろそろいけそうかー!?』
「はい!純増様のタイミングでいつでもいけます」
『そっか!いけそうなら、もういっちゃっていいぞ!』
レバーを叩く音が聞こえる。
『こっちも三十二ゲーム抜けそうだからさ!もう終わりにしちゃっていいよ〜!」
ジュリナは胸が高鳴る。(純増様……。)
その声だけでなぜか身体が熱くなる。自然と笑みが深くなった。
「はい。」メラメラと虹色に輝く剣を握り直す。
「では……。」ゴブリンを見る。「遠慮なく!」
ザンッ!!一閃。ゴブリンの首が静かに宙を舞った。ドサリ。巨体が前のめりに崩れ落ちる。
返り血が一滴。ジュリナの頬へ付く。
指でそっと拭う。「……最後まで迷惑ですね。」
そう呟いた瞬間、全身から力が抜ける。
「はぁ……。」その場へ座り込んだ。
張り詰めていた糸が切れたように、肩が震える。
「終わった……よかった……」静かな笑みが浮かんだ。
◇◇◇
同じ頃。ホールには、どこか懐かしい音楽が流れ始めていた。
♪蛍の光➖➖
純増が顔を上げる。店内放送が響いた。
『戦闘終了。戦闘終了。本日の遊技は終了となります。』
「ふぅ、もう閉店かぁ……。」純増は少し名残惜しそうに笑った。
そこへ店員が歩いて来る。
「お疲れ様でした。」深く一礼する。
「本日お客様の獲得ライフは1,280ライフ」空中へ数字が表示される。「差ライフは780ライフでした。」
パチン。750ライフ分の特殊景品が現れる。
店員は丁寧に手渡した。「こちらをどうぞ。」
純増は景品を見つめる。「ありがとう」少し間を置いて聞いた。「……ちなみに、換金所ってどこ?」
店員は営業スマイルのまま答えた。
「それは、お答えできない決まりとなっております。」「……。」純増は静かに頷く。そして何かを察する。
「あぁ。そこまで昔のままなんだね。」苦笑いする。
店員も少しだけ笑った。「はい。外へ出ていただければ……きっと分かると思います。」「あははっ!了解!」
すると店員は何かを思い出したように、小箱を差し出した。
「んっ?」「端数のお菓子です。」「おっ?」
純増は受け取る。箱を見て思わず笑った。
「たべっ子どうぶつか…。よく帰り道に食ったな…」
しばらく眺めてから、優しくポケットへしまう。
「ジュリナ、食べたことあるかなぁ?気に入ってくれるといいけど…」少し考えて笑う。「よし、帰ったら二人で食べよ。」
出口へ向かう足取りは軽かった。
「あぁぁぁぁ……。」大きく伸びをする。
「楽しかったぁぁぁぁぁっ!!」
眩い光が純増を包み込み、意識は再び現実へと戻っていった。
続




