↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/68

第17話 【たべっこ動物は当たり味】


 純増のボーナスの連打は、まだ終わらない。

「よぉぉぉしっ!!ハジマッタ!!」


 カコンッ。レバーオン。予告音。

 ビタッ。ズドンッ!リーチ目。ボーナス。

「うわははははっ!!」純増は笑いながら次々とボーナスを揃えていく。


「止まんねぇぞぉぉぉ!!」

 カコンッ。レバーオン。予告音…ヴォン…。

「……直で狙ってやるか…」ボーナス。

「うひゃぁぁぁぁ!!気持てぃぃぃぃ!!」


 さらにレバーを叩く。

「まるでボーナスの津波やぁぁぁぁ!!」

 店内へボーナス音が何度も鳴り響く。

 ホログラム店員は静かに微笑みながら見守っていた。

「……本当に楽しそうに打ちますね…」


◇◇◇


 一方その頃➖➖

 森ではジュリナがゴブリンを圧倒していた。

 剣が閃く。ザシュッ!肩、腕、足。次々とゴブリンに傷が増えていく。ゴブリンは苦しそうに後退した。

「ギュアァァッ!!」

 

 ジュリナは剣を構えたまま、小さく笑う。

「純増様……」赤い瞳が優しく細くなる。

「こんな私のような者に……これほど沢山の加護を与えてくださるなんて……本当に優しいお方です」

 胸へ手を当てる。そして、そのままゴブリンへ視線を戻した。

 笑顔はそのまま。だが瞳だけは凍っていた。

「喜んでください。下等な種族よ…」ゆっくりと歩き近付いて行く。


 一歩。また一歩。


「我が主人は今……」剣先をゆっくりと向ける。

「あなたを楽に殺せるよう、必死に頑張ってくださっています。良かったですねぇ…楽に死ねて。」さらに笑顔になる。


 ゴブリンは本能で悟った。勝てない。殺される。

 目の前にいるのは獲物ではない。天敵だ。


「ギュアッ!!」踵を返し、一目散に逃げ出す。

「あっ!」ジュリナが慌てて追い掛ける。

「こらっ!逃げちゃダメです!!ちゃんと殺されなさいっ!」森へ可愛い声で物騒な言葉が響いた。


◇◇◇


「うははははは!!」純増は止まらない。

 ビタッ。ボーナス。ビタンッ。またボーナス。

「最高ぉぉぉぉ!!」ライフは増え続ける。

 液晶のジュリナもどんどん強く速くなる。


◇◇◇


 ゴブリンは必死の形相だった。追いつかれそうになり、振り返り様、棍棒を全力で振り抜く。


「ギュアァァァッ!!」ドゴォン!!……のはずだった。

 バキィィィン!!棍棒の方が砕け散った。

 木片が宙を舞う。ゴブリンは固まる。


「……ギュ?」ジュリナは無傷だった。


「……。」ゆっくり近付く。ゴブリンは一歩下がる。

 また一歩。ゴブリンの足を斬り、跪かせる。

 ジュリナはその肩へ、そっと手を置いた。


「そろそろ……準備できました?」

 ゴブリンが歯をガチガチ鳴らしながら震える。

 首筋へそっと剣が添えられる。ジュリナは満面の笑みで囁いた。


「……死ぬ準備☆」


 その瞬間だった。剣の液晶から純増の声が響く。


『ジュリナー!』ジュリナの耳がぴくりと動く。

「はい。純増様」『そろそろいけそうかー!?』

「はい!純増様のタイミングでいつでもいけます」

『そっか!いけそうなら、もういっちゃっていいぞ!』


 レバーを叩く音が聞こえる。

『こっちも三十二ゲーム抜けそうだからさ!もう終わりにしちゃっていいよ〜!」


 ジュリナは胸が高鳴る。(純増様……。)

 その声だけでなぜか身体が熱くなる。自然と笑みが深くなった。


「はい。」メラメラと虹色に輝く剣を握り直す。

「では……。」ゴブリンを見る。「遠慮なく!」


 ザンッ!!一閃。ゴブリンの首が静かに宙を舞った。ドサリ。巨体が前のめりに崩れ落ちる。


 返り血が一滴。ジュリナの頬へ付く。

 指でそっと拭う。「……最後まで迷惑ですね。」


 そう呟いた瞬間、全身から力が抜ける。

「はぁ……。」その場へ座り込んだ。

 張り詰めていた糸が切れたように、肩が震える。

「終わった……よかった……」静かな笑みが浮かんだ。


◇◇◇


 同じ頃。ホールには、どこか懐かしい音楽が流れ始めていた。


 ♪蛍の光➖➖

 純増が顔を上げる。店内放送が響いた。

『戦闘終了。戦闘終了。本日の遊技は終了となります。』

「ふぅ、もう閉店かぁ……。」純増は少し名残惜しそうに笑った。


 そこへ店員が歩いて来る。

「お疲れ様でした。」深く一礼する。

「本日お客様の獲得ライフは1,280ライフ」空中へ数字が表示される。「差ライフは780ライフでした。」


 パチン。750ライフ分の特殊景品が現れる。

 店員は丁寧に手渡した。「こちらをどうぞ。」


 純増は景品を見つめる。「ありがとう」少し間を置いて聞いた。「……ちなみに、換金所ってどこ?」


 店員は営業スマイルのまま答えた。

「それは、お答えできない決まりとなっております。」「……。」純増は静かに頷く。そして何かを察する。


「あぁ。そこまで昔のままなんだね。」苦笑いする。

 店員も少しだけ笑った。「はい。外へ出ていただければ……きっと分かると思います。」「あははっ!了解!」


 すると店員は何かを思い出したように、小箱を差し出した。

「んっ?」「端数のお菓子です。」「おっ?」

 純増は受け取る。箱を見て思わず笑った。


「たべっ子どうぶつか…。よく帰り道に食ったな…」

 しばらく眺めてから、優しくポケットへしまう。

「ジュリナ、食べたことあるかなぁ?気に入ってくれるといいけど…」少し考えて笑う。「よし、帰ったら二人で食べよ。」


 出口へ向かう足取りは軽かった。

「あぁぁぁぁ……。」大きく伸びをする。

「楽しかったぁぁぁぁぁっ!!」


 眩い光が純増を包み込み、意識は再び現実へと戻っていった。



            続

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。