第16話 【スランプグラフの波に乗って行け】
初ボーナスを引いた。しかし➖➖➖
「うーん……」純増は腕を組んだ。レバーを叩く。カコンッ。左、右、中。ベル。リプレイ。チェリー。スイカ。ライフは少し増える。だが、その後のボーナスが続かない。
「飲まれて…」ビック。
「飲まれて……」レギュラー。
「追いライフして……」ビック。
「そしてまた飲まれる」
純増はスランプグラフを眺めた。
「悪くはないんだけどなぁ…」だが決定打がない。
その横でホログラム店員が静かに立っていた。
「店員さん、ジュリナのバフって効果切れるの?」
「はい。一定時間経過で効果は終了します。」
「やっぱりか……」純増は顎へ手を当て、液晶の中のジュリナを見る。
「連チャンさせないと決め手にならないってことね」「はい。その通りです」
店員は微笑む。
「引くタイミングも、この剣の実力になります」
「なるほどねぇ……」純増はしばらく考え込んだ。
そしてふと、思い出したように顔を上げる。
「あっ!ちなみにトイレって行っていいの?」
「はい。大丈夫ですよ」店員は頷く。
「上部の休憩ボタンを押していただければ、外の時間は停止いたします。ただし休憩中は遊技できません」
「おぉ、便利だな。」純増はボタンを押した。
ピッ。液晶の映像が止まる。ジュリナが剣を構えたまま静止した。
「……。」純増は首を傾げる。もう一度押す。
映像が少し動く。また止める。「……。」さらにもう一度。
「お客様?」店員が不思議そうに首を傾げた。
「何をされているのですか?」
「あっ、いや。」純増は照れ臭そうに笑う。
「最初に止めた場所だとさ、、ジュリナ変な体勢で止まっちゃってたから」液晶を指差す。
「あはは。少しでも楽な体勢のところで止めようかなって…」
店員は目をぱちくりさせた。数秒沈黙する。
「では、トイレ行ってきます」純増は小走りでトイレに向かった。店員はその背中を見送った。
「……意外と……気が利く男なんですね」と呟いた。
◇◇◇
数分後。純増は戻ってきた。
カフェラテを一口飲む。タバコへ火を点ける。
紫煙が静かに漂う。そのままスランプグラフを眺めた。
(うん。悪くない。ハマりもない。でも、これじゃ山も谷も小さい。勝つだけなら、このままボーナスを引いて技術介入して削ればいい。)
肺一杯に煙を吸い込む。
(でも、それじゃ勝てない。俺たちが勝つには……。)煙を吐く。
(何かきっかけが欲しい。打つリズムを変えるか?それとも……)
「お客様。休憩時間終了です。」店員が声を掛ける。
「あぁ。」純増は吸い殻を灰皿へ押し付けた。
「さて、行きますか!」
◇◇◇
一方その頃➖➖
ジュリナもまた苦戦していた。
ゴブリンの棍棒をかわす。剣を振る。弾かれる。
魔法を放つ。かわされる。
(互角……。純増様のおかげでここまでは来ています)息が荒い。腹部へ走る鈍い痛み。服に血が滲む。
(ですが…トドメを刺す決定打がありません。)
ゴブリンを見据える。握る剣へ力を込める。
(私に、もう少し地力があれば……純増様のお手を煩わせずに済むのに……)
◇◇◇
その瞬間だった。店内へ軽快なアナウンスが響く。
『ピンポンパンポーン♪店員チャーンス!!』
純増が顔を上げる。店員が営業スマイルで一礼した。
「お客様。店員チャンスのお時間です。今回のミッションは左リールへ三連ボーナス図柄をビタ押ししてください。成功すると➖➖」
「ビタね。了解!」純増は最後まで聞かずレバーを叩く。
左リールを一瞬見つめる。
そして➖➖スパッーン!!ビタッ。
三連ボーナス図柄が寸分違わず停止した。
「……えっ?」店員が固まる。
純増は笑う。「このまま揃えちゃってオケ?」「……はい」
中リール。テレレレレン♪テレレレレン♪タラララランッ!!右リール。ボーナス図柄が一直線に揃った。ボーナス音が鳴り出す。
店員は思わず拍手していた。
「凄いですね。」
「あはは…」純増は頭を掻く。
「ありがとう。これぐらいしか取り柄なくて…」
「十分な取り柄だと思います。それでは特殊効果をご説明いたします。」「特殊効果?」
店員が指をパチンと鳴らす。空中へ文字が浮かぶ。
【純増】
・三十二ゲーム間ボーナス高確率
【ジュリナ】
・完全回復・バフ時間延長
「三十二ゲームの間、ボーナス当選率が大幅に上昇します。さらに、ジュリナ様は完全回復。加えて、現在付与されているバフの効果時間が延長されます。」
純増はニヤリと笑う。
「つまり、ここが攻め時ってことだね!」
「はい。」店員も微笑む。
「そして現在の内部状態は、、」一呼吸置く。
「裏モード突入です」
「……は?それって、裏モンに化けたってこと…?」静かに頷く店員。純増の眉が跳ね上がる。
「おいおい、この世界…俺の脳みそ焦がす気かよ!」
パンッ!両頬を勢いよく叩く。
「よぉぉぉし!!」目がギラギラと輝く。
「引いて!」レバーを叩く。
「引いて!」停止ボタンを捻りこむ。
「引きまくってやるっ!!」
◇◇◇
同じ頃。森では、ジュリナの全身が眩い光に包まれていた。
「これは……。」腹部の傷がみるみる塞がっていく。
呼吸が整う。失われた体力が戻ってくる。剣を握る手へ、さらに力が宿る。
ゴブリンが本能的に一歩後ずさった。
ジュリナは静かに剣先を向ける。口元には、美しい笑みが浮かんでいた。
「純増様。ありがとうございます。」赤い瞳が妖しく輝く。「今度は、、こちらの番ですね!」
続
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